電気回路Ⅰ

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 2018
授業科目 電気回路Ⅰ
科目番号 0029 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電気工学科 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 「電気回路(1)直流・交流回路編」,コロナ社,早川義晴・松下祐輔・茂木仁博
担当教員 大谷 真弘

到達目標

1. 正弦波交流の表し方(瞬時値)を理解し,正弦波交流波形の周期,周波数と角周波数,位相差,ならびに正弦波交流波形や各種波形の平均値や実効値を計算することができる.また,ベクトル(フェーザ)表示を用いて正弦波交流の和と差を求めることができる.
2. 基本素子(R, L, C)の正弦波交流に対する振る舞い(電圧,電流,位相差の関係)とインピーダンスについて理解し,R, L, Cを組み合わせた簡単な直列・並列回路の計算ができ,ベクトル(フェーザ)図を描くことができる.
3. 複素数の計算を理解し,記号法を用いて正弦波交流回路の解析(計算)を行うことができる.網目法と接続点法を用いて複数の電源が存在する回路の解析(計算)を行うことができる.
4. 種々の定理,特に,重ねの理,テブナンの定理,ノートンの定理,ミルマンの定理を理解し,それらを用いて回路の解析(計算)を行うことができる.また,交流ブリッジ回路の平衡条件を求めることができ,直列共振,並列共振について説明することができる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1正弦波交流の発生方法について理解し,正弦波交流の瞬時値を表す式やグラフから周期や周波数,角周波数,位相を求めることができる.また,平均値や実効値の意味を理解し,正弦波交流波形や矩形波などの各種波形のそれらの値を求めることができる.正弦波交流の和と差を瞬時値を表す式およびベクトル(フェーザ)表示によって求めることができる.正弦波交流の瞬時値を表す式やグラフから周期や周波数,角周波数,位相を求めることができる.また,正弦波交流波形の平均値や実効値を求めることができる.正弦波交流の和と差をベクトル(フェーザ)表示を用いて求めることができる.正弦波交流の瞬時値を表す式から周期や周波数,角周波数,位相を求めることができない.また,正弦波交流波形の平均値や実効値を求めることができない.正弦波交流の和と差をベクトル(フェーザ)表示を用いて求めることができない.
評価項目2基本素子(R, L, C)に正弦波交流を加えた場合の電圧と電流の関係について説明できる.また,LとCのリアクタンスについて説明し,その値を求めることができる.RL,RC,RLC直列回路および並列回路における電圧と電流の関係を瞬時値の式およびベクトル(フェーザ)図から求めることができ,また回路のインピーダンスを求めることができる.基本素子(R, L, C)に正弦波交流を加えた場合の電圧と電流の関係を答えることができる.また,LとCのリアクタンスを求めることができる.RL,RC,RLC直列および並列回路における電圧と電流の関係をベクトル(フェーザ)図から求めることができ,また回路のインピーダンスを求めることができる.基本素子(R, L, C)に正弦波交流を加えた場合の電圧と電流の関係を答えることができない.また,LとCのリアクタンスを答えることができない.RL,RC,RLC直列および並列回路における電圧と電流の関係をベクトル(フェーザ)図から求めることができない.
評価項目3複素数の直角座標表示,極座標表示などを理解し,複素数の四則演算ができる.複素数とベクトルの関係を理解し,正弦波交流を複素数で表すことができる.複素数を用いて回路解析を行う記号法を理解し,正弦波交流回路におけるオームの法則,キルヒホッフの法則,分流の式,分圧の式を説明することができる.網目法と接続点法を理解し,複数の電源が存在する比較的複雑な回路を解析することができる.複素数の直角座標表示,極座標表示などを理解し,複素数の四則演算ができる.複素数とベクトルの関係を理解し,正弦波交流を複素数で表すことができる.複素数を用いて回路解析を行う記号法を理解し,正弦波交流回路におけるオームの法則,キルヒホッフの法則,分流の式,分圧の式を答えることができる.網目法と接続点法を理解し,複数の電源が存在する比較的単純な回路を解析することができる.複素数の四則演算ができない.複素数とベクトルの関係が理解できず,正弦波交流を複素数で表すことができない.複素数を用いて回路解析を行う記号法を理解できず,正弦波交流回路におけるオームの法則,キルヒホッフの法則,分流の式,分圧の式を答えることができない.網目法と接続点法を理解することができない.
評価項目4テブナンの定理やノートンの定理などの種々の定理を理解し,それらを用いて比較的複雑な回路の解析を行うことができる.また,交流ブリッジ回路の平衡条件を求めることができ,直列共振,並列共振について説明することができる.Δ-Y変換について導出し,それを用いて回路を解析することができる.テブナンの定理やノートンの定理などの種々の定理を用いて比較的単純な回路の解析を行うことができる.また,交流ブリッジ回路の平衡条件を答えることができ,直列共振,並列共振についてすることができる.Δ-Y変換を用いて回路を解析することができる.テブナンの定理やノートンの定理などの種々の定理を理解することができない.また,交流ブリッジ回路の平衡条件を答えることができず,直列共振,並列共振について説明することができない.Δ-Y変換を用いて回路を解析することができない.

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
電力会社から工場や家庭に供給されている電気が正弦波交流である.本講義では,まず,正弦波交流とはどの様なものかを学び,回路の基本素子である抵抗,コイル,キャパシタに正弦波交流を加えた場合の振る舞いについて理解する.次に,ベクトル(フェーザ)表示や複素数表示を用いて,正弦波交流回路における電圧や電流を解析する手法を学ぶ.以上により,正弦波交流回路を解析するための基礎的な能力を身につける.
授業の進め方・方法:
座学による講義が中心である.講義の節目には演習課題に取り組み,各自の理解度を確認する.
注意点:
関連科目:
 数学,物理,基礎電気回路,電気回路演習,電気回路Ⅱ,電気回路Ⅲなど専門科目全般
学習指針:
 回路計算を習得するには多数の問題を解くことが大切である.授業中に配布するプリントや参考書などを活用し,自ら多数の問題に挑むことを推奨する.また,オフィスアワーを利用するなど,積極的に予習・復習を行い,理解に努めるようにして欲しい.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 正弦波交流とは 本講義の概要を理解し,直流と交流の違い,正弦波交流,基本素子(R, L, C)の特性について説明できる.
2週 三角関数 弧度法ならびに,三角関数の定義やグラフ,公式・定理について説明できる.
3週 正弦波交流電圧の発生 正弦波交流電圧の発生方法(交流発電機の原理)ならびに,周期,周波数,角周波数,位相・位相差について説明できる.
4週 平均値と実効値 平均値と実効値の定義を理解し,正弦波交流および各種波形の平均値と実効値を求めることができる.また,波形率と波高率を求めることができる.
5週 三角関数による正弦波交流の取り扱い 三角関数を用いて正弦波交流の和ならびに差を求めることができる.
6週 正弦波交流のベクトル(フェーザ)表示 正弦波交流をベクトル(フェーザ)として表す方法を理解し,これを用いて正弦波交流の和と差を求めることができる.
7週 前期中間試験 授業内容を理解し,試験問題に対して正しく解答することができる.
8週 試験返却・解答 試験問題を見直し,理解が不十分な点を解消する.
2ndQ
9週 基本素子(R,L,C)の性質 基本素子(R, L, C)に正弦波交流を加えた場合の電圧と電流の関係について説明できる.さらに,リアクタンスについて説明できる.
10週 RL直列回路 RL直列回路における電圧と電流の関係を求めることができ,また回路のインピーダンスを求めることができる.
11週 RC直列回路 RC直列回路における電圧と電流の関係を求めることができ,また回路のインピーダンスを求めることができる.
12週 RLC直列回路 RLC直列回路における電圧と電流の関係を求めることができ,また回路のインピーダンスを求めることができる.また,直列共振について説明できる.
13週 RL・RC並列回路 RLおよびRC並列回路における電圧と電流の関係を求めることができ,また回路のアドミタンスを求めることができる.
14週 RLC並列回路 RLC並列回路における電圧と電流の関係を求めることができ,また回路のアドミタンスを求めることができる.
15週 前期期末試験 授業内容を理解し,試験問題に対して正しく解答することができる.
16週 試験返却・解答 試験問題を見直し,理解が不十分な点を解消する.
後期
3rdQ
1週 複素数の計算と正弦波交流の複素数表示 複素数の直角座標表示,極座標表示などを説明でき,複素数の四則演算ができる.複素数とベクトルの関係を理解し,正弦波交流を複素数で表すことができる.
2週 記号法 インピーダンスの複素数による表現を学び,複素数により電圧,電流,インピーダンスを表すことで回路計算を行う記号法を理解する.
3週 記号法による回路計算 記号法を用いて直列回路,並列回路,直並列回路の計算を行うことができる.
4週 オームの法則とキルヒホッフの法則 記号法を用いることにより,直流回路で成り立つオームの法則,キルヒホッフの法則,分流の式,分圧の式が交流回路でも成り立つことを理解する.
5週 網目電流法による回路解法 網目方程式の立て方およびその解法について理解し,それを用いて回路を解析することができる.
6週 節点電位法による回路解法 節点方程式の立て方およびその解法について理解し,それを用いて回路を解析することができる.
7週 後期中間試験 授業内容を理解し,試験問題に対して正しく解答することができる.
8週 試験返却・解答 試験問題を見直し,理解が不十分な点を解消する.
4thQ
9週 等価電圧源と等価電流源 等価電圧源と等価電流源の相互変換について理解し,それを用いて回路を解析することができる.
10週 種々の定理Ⅰ 重ねの理,テブナンの定理を理解し,それらを用いて回路を解析できる.
11週 種々の定理Ⅱ ノートンの定理,ミルマンの定理を理解し,それらを用いて回路を解析できる.
12週 交流ブリッジ回路 交流ブリッジ回路について理解し,ブリッジの平衡条件を求めることができる.
13週 共振回路 直列共振回路,並列共振回路について理解し,共振周波数などを求められる.
14週 Δ-Y変換 Δ-Y変換について理解し,それを用いて回路を解析することができる.
15週 学年末試験 授業内容を理解し,試験問題に対して正しく解答することができる.
16週 試験返却・解答 試験問題を見直し,理解が不十分な点を解消する.

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。4前1,前3,前7,前8
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。4前4,前7,前8
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。4前6,前7,前8
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。4前1,前7,前8,前9
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。4前3,前4,前5,前7,前8
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。4前6,前7,前8,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16,後1,後2,後3
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。4前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16,後3
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。4前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16,後3,後4,後7,後8,後9,後11,後12,後14
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。4後4,後7,後8,後9
直列共振回路と並列共振回路の計算ができる。4前14,後13,後15,後16
交流電力と力率を説明し、これらを計算できる。3前10,前11,前12
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。4後10,後15,後16
網目電流法を用いて回路の計算ができる。4後5,後7,後8,後15,後16
節点電位法を用いて回路の計算ができる。4後6,後7,後8,後15,後16
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。4後10,後11,後12,後15,後16

評価割合

試験課題合計
総合評価割合8020100
基礎的能力401050
専門的能力401050