電力変換回路

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 2018
授業科目 電力変換回路
科目番号 0052 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電気工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 〔教科書〕なし ・・・教科書等に書かれている内容より,実践的に攻めます。 〔補助教材・参考書〕・回路解析シミュレータPSIM,Powersim社製(国内販売代理店:Mywayプラス株式会社)評価版がフリーでダウンロード可。 「スイッチングコンバータ回路入門」,日刊工業新聞社,岡山 努 著  「世界を動かすパワー半導体―IGBTがなければ電車も自動車も動かない」,電気学会,児玉 浩憲 著  補助教材は適宜準備(先輩たちの要望もあり教科書をやめたので,補助資料をたくさん配布します。)  個々のポイントに関心があれば,適切な参考書や技術資料等を紹介します。
担当教員 石飛 学

到達目標

前期中間試験 : 1)定数係数をもつ線形常微分方程式,2)線形素子の特性,3)微分方程式を用いた過渡解析
前期期末試験 : 1)微分方程式を用いない過渡解析,2)半導体スイッチの理解,3)パルス変調方式,4)平均値・実行値・電力の計算、高調波と力率の導出,5)ダイオード
後期中間試験 : 1)各種半導体スイッチ,2)ソフトスイッチング,3)AC-DC変換回路の動作理解,4)高調波問題の理解,5)チョッパ回路の動作理解
学年末試験 : 1)チョッパ回路の拡張,2)DC-AC変換回路の動作理解,2)モード解析,3)PWMパルス発生回路,4)各種電力変換回路の理解      以上の修得

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1定数係数をもつ線形常微分方程式,線形素子の特性,微分方程式を用いた過渡解析について理解し,応用問題を解くことができる。定数係数をもつ線形常微分方程式,線形素子の特性,微分方程式を用いた過渡解析について理解し,基本的な問題を解くことができる。定数係数をもつ線形常微分方程式,線形素子の特性,微分方程式を用いた過渡解析について理解することができない。
評価項目2微分方程式を用いない過渡解析,半導体スイッチ,パルス変調方式,平均値・実行値・電力の計算、高調波と力率の導出,ダイオードについて理解し,応用問題を解くことができる。微分方程式を用いない過渡解析,半導体スイッチ,パルス変調方式,平均値・実行値・電力の計算、高調波と力率の導出,ダイオードについて理解し,基本的な問題を解くことができる。微分方程式を用いない過渡解析,半導体スイッチ,パルス変調方式,平均値・実行値・電力の計算、高調波と力率の導出,ダイオードについて理解することができない。
評価項目3各種半導体スイッチ,ソフトスイッチング,AC-DC変換回路の動作,高調波問題,チョッパ回路の動作について理解し,応用問題を解くことができる。各種半導体スイッチ,ソフトスイッチング,AC-DC変換回路の動作,高調波問題,チョッパ回路の動作について理解し,基本的な問題を解くことができる。各種半導体スイッチ,ソフトスイッチング,AC-DC変換回路の動作,高調波問題,チョッパ回路の動作について理解することができない。
評価項目4チョッパ回路の拡張,DC-AC変換回路の動作理解,モード解析,PWMパルス発生回路,各種電力変換回路について理解し,応用問題を解くことができる。チョッパ回路の拡張,DC-AC変換回路の動作理解,モード解析,PWMパルス発生回路,各種電力変換回路について理解し,基本的な問題を解くことができる。チョッパ回路の拡張,DC-AC変換回路の動作理解,モード解析,PWMパルス発生回路,各種電力変換回路について理解することができない。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる
JABEE基準 (d-2a) 説明 閉じる
JABEE基準 (d-2b) 説明 閉じる
システム創成工学教育プログラム学習・教育目標 D-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
家電製品,電車,自動車はもちろんのこと,再生可能エネルギーやガス,水道,通信網といった社会インフラまで電気エネルギーで動いており,このエネルギーの扱い方を学ぶ学問をパワーエレクトロニクスといいます。この授業では,パワーエレクトロニクスの心臓部であるスイッチング電力変換回路を取り上げ,各種電力変換回路がどうやって動き,家電等の中で何が行われているのか学びます。また,環境と共存していくための省エネ技術や高調波障害等にも触れていきます。これらを通して,受験や就職してから役立つ回路解析法も伝授します。
授業の進め方・方法:
電力形態を変換およびコントロールするスイッチング電力変換回路の回路方式および変調方式を中心に講義を行います。電力回路を理解する上で必須となる単発過渡現象,電力変換に用いる半導体デバイスの特性等の基礎を修得し,回路の動作解析を行っていきます。
注意点:
関連科目
複合領域の応用分野なので,全ての電気に関する科目と関連する数学が基礎となります。特に基礎電気回路,電気回路ⅠⅡⅢ,アナログ回路,電子工学および基礎数学の知識が必要です。
学習指針
様々な回路における動作を丸暗記せず,シミュレータ等積極的に利用して,手を動かしながら理解してほしい。また,板書の全コピーをやめて必要な個所だけメモし(口頭で“重要”と念押しする個所は特に大事),できるだけ耳を使って,その場で考えてほしい。一方的な授業はつまらないので,質問攻撃を望みます。
自己学習
複合領域の応用分野なので,授業で引っかかった箇所に関連する基礎科目を再復習の上,次の授業に挑んでほしい。基礎科目ででてきた理論が,実際のものと繋がってきます。またシミュレータを用いて,授業で出てきた回路の確認を随時行ってほしい。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 イントロダクション,3年次微分方程式の確認

まず,本教科のやり方,進め方およびパワエレとは何か?について説明する。続いて,3年次にやってきた常微分方程式の確認を行う。
左記の内容の修得
2週 常微分方程式Ⅰ

回路の過渡解析に必要な微分方程式の確認+α(記号法を用いた解法)を行う。4週目に確認テストを行う可能性あり。(編入試験対策としても効果大)
左記の内容の修得
3週 常微分方程式Ⅱ

回路の過渡解析に必要な微分方程式の確認+α(記号法を用いた解法)を行う。4週目に確認テストを行う可能性あり。(編入試験対策としても効果大)
左記の内容の修得
4週 常微分方程式Ⅲ

回路の過渡解析に必要な微分方程式の確認+α(記号法を用いた解法)を行う。4週目に確認テストを行う可能性あり。(編入試験対策としても効果大)
左記の内容の修得
5週 交流理論から過渡現象へ

R,RL,RC回路を用いて線形素子の特性を確認し,交流理論の世界から一般的世界への誘導を行う。
左記の内容の修得
6週 PSIM演習Ⅰ

回路シミュレータ(PSIM)の使い方を復習(スイッチが組み合わさった回路の演習)し,視覚的に過渡現象を確認する。
左記の内容の修得
7週 確認と演習

これまで習得した内容の確認と演習を行う。
左記の内容の修得
8週 過渡現象の確認

まず定期テストの模範解答を行う。次に家電(例)が単発過渡現象の繰り返しで動いていることを示し,回路動作の要が単発過渡現象にあることを確認する。
左記の内容の修得
2ndQ
9週 直感的過渡解析(単エネルギー回路)Ⅰ

初期値をもつRL、RC回路にスイッチ(ダイオードを含む)が組み合わさったものを取り上げ,微分方程式を用いずに過渡解析を行う。(数週間にまたぐ宿題を予定)
左記の内容の修得
10週 直感的過渡解析(単エネルギー回路)Ⅱ

初期値をもつRL、RC回路にスイッチ(ダイオードを含む)が組み合わさったものを取り上げ,微分方程式を用いずに過渡解析を行う。(数週間にまたぐ宿題を予定)
左記の内容の修得
11週 電力制御の基礎(線形orスイッチング)Ⅰ

トランジスタやサーモスタットによる温度制御から電力変換の基礎を学び,各種パ
ルス変調方式(PWM,PFM,PAM,PDM,PSM)を理解する。
左記の内容の修得
12週 電力制御の基礎(線形orスイッチング)Ⅱ

トランジスタやサーモスタットによる温度制御から電力変換の基礎を学び,各種パ
ルス変調方式(PWM,PFM,PAM,PDM,PSM)を理解する。
左記の内容の修得
13週 電力等の計算,理想スイッチと実際

平均値・実行値・電力の計算,THDについて確認する。続いて,理想スイッチと実際のスイッチの違い及び特徴を学ぶ。 (夏休みにダイオードに関する復習&調査の宿題を予定)
左記の内容の修得
14週 半導体スイッチⅠ

ダイオードとその高耐圧化,リカバリ電流について解説する。
左記の内容の修得
15週 確認と演習

これまで習得した内容の確認と演習を行う。
左記の内容の修得
16週
後期
3rdQ
1週 半導体スイッチⅡ

ダイオードとその高耐圧化,リカバリ電流について解説する。
左記の内容の修得
2週 半導体スイッチⅢ

サイリスタ(SCR,GTO,トライアック),バイポーラパワートランジスタ,パワーMOS-FET及びIGBTについて解説し,各種半導体スイッチの特性をまとめる。SiCやGaNなどの最新動向は,最前線のエンジニアの方による講演を予定している。
左記の内容の修得
3週 半導体スイッチⅣ

ダイオードとその高耐圧化,リカバリ電流について解説する。
左記の内容の修得
4週 各種スイッチの使い方
と注意点等

交流電圧源と抵抗負荷による簡単な回路に各種スイッチを挿入し,その使い方を確認する。次に,スイッチングサージ及び損失について解説し,回路の寄生成分,高周波スイッチングの必要性,半導体スイッチに求められていること等にも触れる。
左記の内容の修得
5週 AC-DC変換(+PSIM演習Ⅱ)

抵抗負荷をもつ半波及び全波整流回路の確認を行い,誘導性負荷の場合も解説する。ここで環流ダイオードの重要性を取り上げる。次に容量性負荷をもつ整流平滑回路について学ぶ。その中で,入力高調波の問題にも触れる。
左記の内容の修得
6週 DC-DC変換(非絶縁型)Ⅰ

降圧,昇圧及び昇降圧チョッパについて学ぶ。回路動作の理解から入り,定常状態を用いた入出力関係の導出(状態平均化法を用いた3方式)まで行う。
左記の内容の修得
7週 DC-DC変換(非絶縁型)Ⅱ

降圧,昇圧及び昇降圧チョッパについて学ぶ。回路動作の理解から入り,定常状態を用いた入出力関係の導出(状態平均化法を用いた3方式)まで行う。
左記の内容の修得
8週 確認と演習

これまで習得した内容の確認と演習を行う。
左記の内容の修得
4thQ
9週 DC-DC変換(進化型)

定期テストの結果をもとに勘違い点,ミスしやすい点を確認する。その後,双方向チョッパ,フォワードコンバータ,フライバックコンバータを紹介する。これらを通して、絶縁の必要性と高周波トランスの難しさについて解説する。
左記の内容の修得
10週 DC-AC変換Ⅰ

ブリッジ形インバータ(フルブリッジ,ハーフブリッジ,SEPP)を紹介し,インバータの基本動作を確認する。続いて,LR負荷をもつフルブリッジインバータとSEPPインバータを例にモード解析の演習を行う。デッドタイムの必要性にも触れる。
左記の内容の修得
11週 DC-AC変換Ⅱ

ブリッジ形インバータ(フルブリッジ,ハーフブリッジ,SEPP)を紹介し,インバータの基本動作を確認する。続いて,LR負荷をもつフルブリッジインバータとSEPPインバータを例にモード解析の演習を行う。デッドタイムの必要性にも触れる。
左記の内容の修得
12週 DC-AC変換Ⅲ

ブリッジ形インバータをPSIMで動かし,各種変調方式とソフトスイッチングについて確認を行う。次に,フルブリッジインバータによる正弦波PWMを学び,PWMパルス発生回路についても触れる。
左記の内容の修得
13週 DC-AC変換Ⅳ

ブリッジ形インバータをPSIMで動かし,各種変調方式とソフトスイッチングについて確認を行う。次に,フルブリッジインバータによる正弦波PWMを学び,PWMパルス発生回路についても触れる。
左記の内容の修得
14週 総合演習+確認テスト

総合演習を通して電力変換回路の解析力を磨く。後半,これまでの確認テストを行う。
クラスの理解度により演習を延長し,標準の定期テスト期間にテストを移動する。
左記の内容の修得
15週 各種電力変換回路,現代の課題と将来展望

テスト返却後,高周波ACリンクDC-DCコンバータ,マトリクスコンバータ,MPPTコンバータ等を紹介する。また,省エネルギーなどについて認識を深める。
左記の内容の修得
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路RL直列回路やRC直列回路等の単エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。4
RLC直列回路等の複エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。4
電力変圧器の原理、構造、特性を説明でき、その等価回路を説明できる。4
半導体電力変換装置の原理と働きについて説明できる。4

評価割合

定期試験課題授業への取り組み(良い質問に加点,欠席や遅刻が多いとき減点)合計
総合評価割合702010100
基礎的能力702010100
専門的能力0000
分野横断的能力0000