電磁気学Ⅱ

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 電磁気学Ⅱ
科目番号 0052 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電気工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「新装版 電気磁気学 その物理像と詳論」,森北出版,小塚洋司 著  ← 辞書のように使うとよい本  参考書:「今度こそ納得する物理・数学再入門」,技術評論社,前野昌弘 著,「なっとくする物理数学」,講談社,都筑卓司 著  補助教材:適宜配付 
担当教員 石飛 学,頭師 孝拓

到達目標

・電磁気の理解に必要なベクトル解析を修得(まずベクトル基礎と微分・積分の概念,公式としてではなく図に描いて説明できるように)
・電磁気における基本用語の定義,単位を他の用語とリンクさせながら修得(定義は図に描いて説明できるように)
・電場と磁場におけるガウスの法則(積分形,微分形)を修得
・ポアソン方程式の意味を理解した上で使うことができる。
・オームの法則,電荷保存の法則,変位電流とキルヒホッフの法則を理解
・アンペールの法則(積分形)とビオ・サバールの法則を現象に当てはめて使うことができる。
・電磁力とローレンツ力を理解の上,レンツの法則と電磁誘導現象を説明できる。
・ファラデー・ノイマンの法則とファラデー・マクスウェルの法則を現象に当てはめて使うことができる。
・静電誘導と誘電分極(誘電体),磁気誘導と磁化(磁性体)の現象を理解し,境界条件が使える。
・基本法則を使って,キャパシタンスとインダクタンスを導出できる。(トランスの基本も理解)
・電場・磁場エネルギーとそれぞれの体積密度を導出できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1 ベクトル解析の基本を修得(ベクトルの回転を含む)ベクトル解析の基本を修得(ベクトルの回転を省く)ベクトル,線・面・体積積分と空間微分が扱えない。
評価項目2 基本用語が生まれた背景まで把握している。定義,単位を理解の上,正しく基本用語が使える。基本用語の単位が書けず,定義を理解していない。
評価項目3電場と磁場におけるガウスの法則(積分形,微分形)を理解し,応用問題に適用できる。電場と磁場におけるガウスの法則(積分形,微分形)を理解し,基本問題に適用できる。電場と磁場におけるガウスの法則(積分形,微分形)が使えない。
評価項目4ポアソン方程式の意味を理解した上で使うことができる。ポアソン方程式を使うことができる。ポアソン方程式が使えない。
評価項目5オームの法則,電荷保存の法則,変位電流とキルヒホッフの法則を応用できる。オームの法則,電荷保存の法則,変位電流とキルヒホッフの法則を理解している。オームの法則,電荷保存の法則,変位電流とキルヒホッフの法則が理解できていない。
評価項目6アンペールの法則の微分形も扱うことができる。アンペールの法則(積分形)とビオ・サバールの法則を現象に当てはめて使うことができる。アンペールの法則とビオ・サバールの法則を使うことができない。
評価項目7電磁力とローレンツ力を理解の上,レンツの法則と電磁誘導現象を説明できる。電磁力とローレンツ力について理解できている。電磁力とローレンツ力が理解できていない。
評価項目8ファラデー・マクスウェルの法則からファラデー・ノイマンの法則を導出できる。ファラデー・ノイマンの法則を現象に当てはめて使うことができる。ファラデー・ノイマンの法則を現象に当てはめて使うことができない。
評価項目9誘電体と磁性体における物性の詳細まで理解している。静電誘導と誘電分極(誘電体),磁気誘導と磁化(磁性体)の現象を理解し,境界条件が使える。静電誘導と誘電分極(誘電体),磁気誘導と磁化(磁性体)について理解できていない。
評価項目10トランスまで自由に扱える。基本法則を使って,キャパシタンスとインダクタンスを導出できる。基本法則を使って,キャパシタンスとインダクタンスが導出できない。
評価項目11電場・磁場エネルギーとそれぞれの体積密度を使って,各種応用問題が解ける。電場・磁場エネルギーとそれぞれの体積密度を導出できる。電場・磁場エネルギーとそれぞれの体積密度を導出できない。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
新しいものを産み出すには,この世界のしくみ(物理学)を知って応用する必要がある。「電磁気学」は,「電子工学」とならび “電気のなぜ” に迫っていく科目で,電気工学の中心に立つ柱。ここがわかると,光,電磁波,物質の特性や回路現象など,現在と未来の広い世界が見えてくる。この先,電気関係で困ったとき,各専門書を開いて読んでいくための基礎力を身につけてほしい。
授業の進め方・方法:
この科目でつまずかないポイントは,基本用語の理解(絵を描きながら定義を他者に説明できるように)と各用語間に成り立つ関係式の数学的表現(ベクトルと微積分を使って)にある。これらをふまえ,まず,何のために学ぶのか再確認するところからスタートする。その後,3次元ベクトル解析,微積分の意味や使い方を確認しながら,電場と磁場の性質を学んでいく。また非正弦波で動く実際の電気製品(4年次からの回路系科目で学ぶ)とリンクさせるため,回路的観点も入れてキャパシタ,インダクタおよびトランスを確認する。時間に制約があるので,難しい積分を使った問題等,演習色が強い項目は演習科目に回す。
注意点:
受け身の勉強で太刀打ちできない!また積み上げ科目なので,1回1回の授業に集中し,“その場で考える勉強法(実は負担が少ない勉強法)”にチェンジしてほしい。科目の特性上,板書中心に行わず(口頭で“重要”と念押しする所は特に大事。耳を使って!),みんなの疑問点に焦点を当てて進めていきたい。質問攻撃を望む。また,2年の数学に欠けがあると八方ふさがりになるので,足りない部分に気づいたら早めに解消すること。図書館等も使って他の参考書も活用し,とにかく疑問を後に残さないように。特に次の勉強方法が通用しなくなると考えてよい。どうすれば良いかも授業を通して伝えていきたい。
1) 演習を数こなして身につけ,そのパターンを当てはめていく考え方
2) 授業中板書の写しに専念し,後で読み返しながら問題演習する方法
3) 定期テスト前に問題演習を繰り返し,パターンを身に着ける方法

次の授業までに前の授業の疑問点を全て解消する復習中心の学習を心がけること。できれば,理解度に限らず絵を描きながら基本事項を他者に教え,本当の理解に至っていなかった箇所のあぶり出しと伝える側の視点にたったアクティブラーニングを行ってほしい。過去に習った数学で忘れているところは,随時補填してほしい。

学修単位の履修上の注意

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 何のために学ぶのか?
基礎数学(宿題)の確認
電磁気などなくてもモノは作れるのではないか?そもそも電磁気とは何を学ぶのか? について理解する。また基礎数学を補完する。
2週 基礎数学理解度確認テスト
電磁気学Ⅰの復習Ⅰ
ガウスの法則まで思い出す。
3週 電磁気学Ⅰの復習Ⅱ 電気力線と電束の違いを理解して,ガウスの法則に当てはめることができる。
4週 刻々と変化する量の扱いⅠ 微分表示した各量のもつ意味を理解する。また,電場の勾配(1次元→3次元→∇)について図を通して理解する。
5週 刻々と変化する量の扱いⅡ 積分(線積分、面積分、体積積分)と内積の使い方を修得する。
6週 ガウスの法則の微分形 電束の発散を通して,ガウスの法則(微分形)を理解する。
7週 ポアソン方程式
これまでの確認
ポアソン方程式を理解し,使えるようにする。また演習を通して,これまで学んだ技術を定着させる。
8週 ガウスの定理と法則 ガウスの法則を使って,ガウスの定理を理解する。
2ndQ
9週 平行平板キャパシタⅠ これまでに学修した基本法則を用いて,Q, E, Vとキャパシタ形状の関係を導出できる。
10週 平行平板キャパシタⅡ 静電誘導と誘電分極(誘電率,分極ベクトル)を理解する。
11週 平行平板キャパシタⅢ 境界条件について理解する。また演習を通して,これまで学んだ技術を定着させる。
12週 平行平板キャパシタⅣ 静電エネルギーと電場エネルギー密度を扱えるようにする。また,平行平板キャパシタを通して学んだ基本をそれ以外の形状にも適用できるようにする。
13週 定常電流Ⅰ 表皮効果等例に挙げ,電流密度j=ρvと分布について理解する。また,電場で表すオームの法則も使えるようにする。
14週 定常電流Ⅱ 電荷保存の法則(キルヒホッフ第1法則),保存場と非保存場(周回積分とキルヒホッフ第2法則)について理解する。
15週 問題演習 演習を通して,これまで学んだ技術を定着させる。
16週 理解度確認テスト これまで学んだ技術を定着させる。
後期
3rdQ
1週 電場と磁場の類似 電場と磁場の類似(E-H対応)から基本用語と単位等を身につける。
2週 磁場とは? 磁石を例に磁場と電流の関係,磁場が閉じていること,磁荷による考え方を理解する。磁性体,ヒステリシスについても理解を深める。
3週 アンペールの法則Ⅰ アンペールの周回積分の法則を理解する。
4週 アンペールの法則Ⅱ 演習を通して,アンペールの法則の使い方を身につける。
5週 ビオ・サバールの法則Ⅰ 演習を通して,ビオ・サバールの法則(スカラー量で)の使い方を身につける。
6週 電磁力と外積 電磁力とフレミング左手法則について解説。sinθがなぜいるかにも触れながら,ベクトルの外積を理解する。
7週 導線同士に働く力
これまでの確認
演習を通して,電磁力の考え方を身につけ,これまで学んだ技術
も定着させる。
8週 ビオ・サバールの法則Ⅱ ビオ・サバールの法則をベクトルで表せるようにする。
4thQ
9週 ローレンツ力と電磁誘導Ⅰ フレミングの左手法則(電磁力)を使って,ローレンツ力が表現できる。
10週 ローレンツ力と電磁誘導Ⅱ 定常電流時の電場・磁場による力の釣り合い,レンツの法則を理解する。
11週 ファラデー・ノイマンの法則 ファラデー・ノイマンの法則(相対論的考え方も)を理解する。
12週 インダクタとトランスⅠ 鎖交磁束と鎖交電流を理解し,自己インダクタンスを理解する。
13週 インダクタとトランスⅡ 自己インダクタンスと相互インダクタンスが導出できる。
14週 インダクタとトランスⅢ トランスの基本を身につける。
15週 磁気エネルギー 磁気エネルギーと磁気エネルギー密度を扱えるようにする。最後にこれまで学んだことをまとめ,マクスウェル方程式として理解する。
16週 理解度確認テスト これまで学んだ技術を定着させる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電磁気電荷及びクーロンの法則を説明でき、点電荷に働く力等を計算できる。4
電界、電位、電気力線、電束を説明でき、これらを用いた計算ができる。4
ガウスの法則を説明でき、電界の計算に用いることができる。4
導体の性質を説明でき、導体表面の電荷密度や電界などを計算できる。4
誘電体と分極及び電束密度を説明できる。4
静電容量を説明でき、平行平板コンデンサ等の静電容量を計算できる。4
コンデンサの直列接続、並列接続を説明し、その合成静電容量を計算できる。4
静電エネルギーを説明できる。4
磁性体と磁化及び磁束密度を説明できる。4
電流が作る磁界をビオ・サバールの法則を用いて計算できる。4
電流が作る磁界をアンペールの法則を用いて計算できる。4
磁界中の電流に作用する力を説明できる。4
ローレンツ力を説明できる。4
磁気エネルギーを説明できる。4
電磁誘導を説明でき、誘導起電力を計算できる。4
自己誘導と相互誘導を説明できる。4
自己インダクタンス及び相互インダクタンスを求めることができる。4

評価割合

定期試験その他(課題,授業への取り組み(授業中,特に積極的でない場合に減点))合計
総合評価割合7030100
基礎的能力7030100
専門的能力000
分野横断的能力000