無機化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 無機化学Ⅰ
科目番号 0034 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質化学工学科 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 シュライバー・アトキンス無機化学第6版上・下巻
担当教員 松浦 幸仁,山田 裕久

到達目標

前期:基礎無機化学として下記項目についての概念を理解する。
後期:無機各論を通じて工業的に一般的に用いられているそれぞれの反応を通じて様々な元素の反応に慣れ親しみ、幅広い分野の化学反応についての知識を身につける。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
【論理的思考能力】論理構成が明確であり、かつ自分なりに考えた独創性ある表現で、説明に工夫が見られる論理的に筋の通った説明ができており、説明の表現も適切である説明が不足、あるいは教科書等の文章を誤って引用した説明が多い
【知識の修得】課題解決に必要な、基本的な公式や定理を理 解し、自在に使いこなすことができる課題解決に必要な、基本的な公式や定理をある程度理解している課題解決に必要な、基本的な公式や定理の理 解が不足している
【課題】与えられた課題に自ら取り組み、解答を用いならがら知識の修得に努めている課題に取り組み、解答を行い足りない知識を把握できる課題への取り組みが不十分である

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
マテリアルサイエンスやバイオサイエンス分野の進展は著しく、両分野に関わる多くの元素を取り扱う無機化学の重要性が高まっている。無機化学は炭素を含めたすべての元素が関与する物質の構造や性質、反応を取り扱う学問で、それらの系統的な理解のためには、物質を構成する原子・分子の構造や結合に関する知識が不可欠となる。本科目では、これらの事項の理解を深め、無機化学に必要な各項目について会念的に理解することを目標とする。
  到達目標
   1. 原子の構造と電子配置が理解できること。
   2. 化学結合と物質の構造・性質との関係を理解できること。
   3. 各種の無機化合物がどのような材料として利用されているか理解できること。
    4. 無機各論を通じて工業無機化学反応の知識を身につけること。
授業の進め方・方法:
他の専門科目の理解に欠かせない重要な科目なので、基礎固めの学習を徹底的に行って欲しい。課題は必ず提出することが必須である。これらの課題は進路を決定する段階の復習に役に立つので、活用してほしい。
注意点:
[関連科目]
3年次、4年次の物理化学I・II、構造解析学、物質構造化学、5年次の基礎電子化学などの科目との関連が深い。無機化学は他の専門教科の基礎となるので、その都度関連付けて進めていきたい。教科書については無機化学IIでも引き続き用いる。
[学習指針]
無機化学は広範にわたる各元素の各論や量子論など化学全般にわたる通則を論ずる学問なので、あやふやな知識の理解にとどまらないよう基礎は徹底的に理解できるようにする。この学年では、無機化学の基礎について網羅的に修め、3年次以降の各専門教科の理解へとつなげたい。
【事前学習】1年生で学んできた一般化学の内容についてしっかりと復習し、習熟しておくこと。シラバスに記載の各範囲についてテキストを予習しておくこと。
【事後展開学習】講義資料をまとめるノートを一冊用意し、各週4ページ程度にまとめ課題として提出すること。(講義資料の丸写しは認めない。)
TEAMSに課題を提出する際は、Office Lenz等のアプリを用いてPDF化したものを提出してください。

学修単位の履修上の注意

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 原子構造(物質と原子、原子核の構造) 原子構造について
2週 周期表の外観(1)(元素の分類・同位体・元素の分類・原子半径) 元素の分類・同位体・元素の分類・原子半径の概念について理解する。
3週 周期表の外観(2) (イオン化エネルギー・電親和力・元素の生化学) イオン化エネルギー・電親和力・元素の生化学について理解する。
4週 共有結合(1)(ルイス構造・オクテット則・分子軌道法基礎) 基礎的な分子軌道法の概念について理解する。
5週 共有結合(2) ルイス構造とオクテット則について理解する。また、形式電荷VSEPR則の基礎的な概念について理解する。
6週 イオン結合 イオンのモデルを用いて共有結合との違いを理解する。
7週 金属結合 剛体球の充填をモデルとして素の充填配列に関する知識を身につける。
8週 中間試験 1−7週目までの学習内容に関する理解を確認
2ndQ
9週 単純な固体の構造 固体構造の基礎知識を身につける。
10週 酸と塩基(1) Arrhenius・Bronstedの酸・塩基について理解する
11週 酸と塩基(2) Lewisの酸・塩基について理解する
12週 酸と塩基(3) HSAB則について理解する
13週 酸化と還元(1) 酸化数の考え方を身につける
14週 酸化と還元(2) pHと酸化還元電位について理解する
15週 酸化と還元(3) 標準酸化還元電位と自由エネルギー変化、ラティマーの電位図と不均化反応について理解する
16週 期末試験 9−15週目までの学習内容に関する理解を確認
後期
3rdQ
1週 導入 元素の周期律表の見方を理解
周期律表を用いて元素を分類し性質の概要を理解
天然の無機資源の概要を知る。
2週 周期性 量子数と原子軌道、原子スベクトル、構成原理について周期表と関連づけて理解するとともに、副核構造と混成軌道を含む軌道の形を学ぶ
3週 水素 気体の物理的性質や化学的性質を理解するとともに、空気の組成や気体の単離法を知る。身の回りにおける当該元素の役割、化学的性質を学ぶ。
4週 1族元素
当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りにおける当該族中の代表元素の役割、産出、単離法、化学的性質を知る。
5週 2族元素 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りにおける当該族中の代表元素の役割、産出、単離法、化学的性質を知る。
6週 13族元素 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りにおける当該族中の代表元素の役割、化学的性質を知る。
7週 14族元素 1−6週目までの学習内容に関する理解を確認
8週 中間試験 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りや工業的な当該族中の代表元素の役割、産出、単離、性質、代表的化合物の合成と性質を知る。
4thQ
9週 テスト返却・復習 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りや工業的な当該族中の代表元素の役割、産出、単離、性質、代表的化合物の合成と性質を知る。
10週 16族元素 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りや工業的な当該族中の代表元素の役割、産出、単離、性質、代表的化合物の合成と性質を知る。
11週 16族元素続き 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りや工業的な当該族中の代表元素の役割、産出、単離、性質、代表的化合物の合成と性質を知る。
12週 17族元素 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りや工業的な当該族中の代表元素の役割、産出、単離、性質、代表的化合物の合成と性質を知る。
13週 17族元素続き 当該族元素の物理的・化学的性質を学び、身の回りや工業的な当該族中の代表元素の役割、産出、単離、性質、代表的化合物の合成と性質を知る。
14週 d-ブロック元素、f-ブロック元素 ウェルナー錯体を中心に、結晶場理論に基づいて配位化合物を知る上で必要な用語と性質を学ぶとともに、構造と命名法を理解する。
15週 期末試験 鉱物資源を中心として、天然界に存在する代表的な無機資源の産出やその現状を知るとともに、身の回りの無機材料の性質やその工業的製法を学ぶ。
16週 試験返却 8−15週目までの学習内容に関する理解を確認

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。3
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。3
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。3
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4前1
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4
イオン結合と共有結合について説明できる。4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4
金属結合の形成について理解できる。4
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。1
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。1
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4
配位結合の形成について説明できる。4
水素結合について説明できる。4
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。4
錯体の命名法の基本を説明できる。4
配位数と構造について説明できる。4
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。4
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。4

評価割合

試験授業中の取り組み合計
総合評価割合15050200
基礎的能力7525100
専門的能力702090
分野横断的能力5510