固体化学

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 固体化学
科目番号 0049 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質化学工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 『アトキンス物理化学』上・下巻 東京化学同人
担当教員 片倉 勝己

到達目標

前期中間試験:①群論の概要とつかんで分子を点群に分類する。②分子の対称操作をイメージして、群の掛算表との相互変換ができる。③指標表中の直交性を応用して、分子の自由度を判別する。 ④対称性に基づいて結晶系とブラベ格子で結晶を分類できる。⑤結晶面とミラー指数の相互変換ができる。⑥ブラッグ条件を証明できる。
前期末試験: ① X線回折パターンからブラベ格子と格子定数が算出でき、物質の密度を見積もることができる。②代表格子の結晶構造因子を誘導して、系統的消滅則と関連付けができる。③格子周期性に基づいたフーリエ解析の意義を理解する。⑤イオン性結晶におけるポーリングの法則が説明できる。⑥代表的な結晶構造を説明できる。⑦格子欠陥の種類を説明できる。⑧機能性結晶材料の代表例と特徴を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
分子の対称性分子をその構造の対称性によって点群に分類し、シェーンフリース記号を用いて標記できる。また、点群から分子の形状を予想できる。分子の対称性(点群)を用いて、分子の極性や光学活性(キラリティ)について説明できる。分子構造中の対象要素を図示できる。対称要素やそれに対応した対称操作を記号で標記し、その意味を理解している。分子の対称要素や対称操作、シェーンフリース記号が理解できない。
群の表現(既約表現、可約表現)、指標、内積、大直交定理について、これらの定義や公式を説明できる。内積演算を行うことができる。 群の掛算表と連続した分子の対称操作との関係を理解している。相似変換によって分子の対称要素を類に分類するなど、分子の点群に応用ができる。群の4つの定義と主要な用語や性質(掛算表、要素、位数、類、相似変換)を理解して、これらを説明したり演算したりできる。群の定義がかけない
対称種および指標表指標表利用の応用として、簡単な分子の運動(並進・回転・振動)の対称性を対称種と関連付けて説明できる。分子の構造に関した各種応用問題ができる。 指標表に基づいて、分子の赤外活性とラマン活性を判断できる。 教科書の分子の対称性と点群に関した問題を解くことができる。 また、簡単な点群を国際表記でも記述できる。対称種および指標表の性質やその見方を理解し、Mullikenの対称種の標記や指標の意味するところを理解して説明できる。対称種の性質(対称種の次元,数、直交性など)を理解し、この性質を利用して、簡単な分子の点群について指標表を作成できる。指標表の見方が判らない
結晶系とブラベ格子結晶系とブラベ格子を対称性に基づいて理解できている。結晶系とブラベ格子を対称性に基づいて分類したり説明したりできる。 代表的な簡単な結晶(ダイモンド、MX型(塩化セシウム型、岩塩型、閃亜鉛型)、MX2型(螢石型、逆螢石型、ルチル型、酸化レニウム型)、複酸化物(ペロブスカイト、タングステンブロンズ、スピネル型等)について、結晶構造を図示してブラベ格子を示し、密度算出ができる。結晶系、ブラベ格子を図示したり説明したりできない
結晶面と面指数ベクトル解析で、右の項目を誘導できる。 結晶面と面指数の関係が図示できる。また、立方晶、斜方晶、正方晶、六方晶について格子定数を用いた面指数と面間隔の関係式が誘導でき、実際に計算できる。結晶面と面指数が理解できない。図示できない。
結晶構造因子から消滅則結晶構造因子と結晶中の電子密度分布との関係式を示し、フーリエ解析によりX線回折データから電子密度分布関数が得られることを定性的に理解している。 単純、面心、立方、底心格子や実在結晶の結晶構造因子を誘導できる。また、結晶構造因子とX線回折強度との関係や原子形状因子について説明できる。さらに、結晶構造因子から消滅則を誘導できる。 立方晶における3つのブラベ格子からのX線回折データの特徴を説明できる。 また、X線回折データから、ブラベ格子の決定と格子定数や密度算出ができる。 KClとNaClの結晶について、結晶構造因子を用いてその差を説明できる。消滅則を理解できない。
格子欠陥代表的な二つの等比性格子欠陥の概要と特徴を説明できる。また、不定比性欠陥を有する酸化物材料の例とその特徴を1つ以上挙げることができる。代表的な二つの等比性格子欠陥の概要を説明できる。また、不定比性欠陥を有する酸化物材料の例とその特徴を1つ挙げることができる。格子欠陥の意味を理解できない

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
対称性について教授した後、結晶構造の分類や三次元周期構造について概説したのちX線回折法の原理と解析法について教授する。また、主たる結晶構造の特徴や用途について具体例を示しながら教授してその理解を深め、固体状態にある物質の性質について考察する。
授業の進め方・方法:
固体構造を物理化学的観点から学習するが、三次元周期構造をイメージだけでなくフーリエ解析等の数学的手法も交えて取り扱う。さらに、近年幅広く利用されている種々の固体材料の有用性とその性質をその構造から理解するための基礎を講義と演習を通じて学習する。
注意点:
関連科目
構造解析学は、「物理」「物理化学」、「無機化学」における固体の性質や構造と密接に関連する。
 学習指針
「機器分析化学」における重要分野のひとつでもあり、X線回折法の基礎から応用も含んでいる。また、数学や物理的な取り扱いを伴うので、その本質を捉えて学習する姿勢が重要である。また、空間や数学への理解も重要である。
 自己学習
 理解できなかった項目は次回までに十分復習し、課題を通じて理解を深めること。講義中に指示する次の単元箇所や配布した資料を精読するとともに、数学等の復習も欠かさないこと。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
分子の対称性と点群
対称要素と対称操作を理解する。
様々な分子の対称性と点群(シェーンフリース表記)について標記できる。

2週 群論と点群 群の定義、掛算表、位数
分子の対称操作と掛算表、双極子モーメントとキラル性の判定
3週 群論と点群 群の既約表現と指標表を理解する。
4週 群論と点群 分子の対称操作と掛算表を理解する。
5週 群と指標表 指標表の作り方と、指標の直交性を理解する。
6週 点群の応用 指標表の見方と分子の自由度予想への応用ができる。
7週 中間試験 定期試験の解答とベクトルの復習
8週 結晶格子 結合の差による結晶の種類とその特徴
空間格子、結晶系とブラベ格子を理解する。
2ndQ
9週 ミラー指数と
X線回折
様々な格子の結晶面とそのミラー指数および面間隔ブラッグ条件とX線回折を理解する。
10週 ブラッグ条件
と結晶構造因子
結晶によるX線の散乱とブラッグ条件
X線回折法とフーリエ解析を理解する。
11週 X線回折法の応用 結晶構造因子と消滅則、格子決定と結晶密度を理解する。
12週 固体結晶の構造 MX型イオン結晶、MX2型イオン結晶
スピネル、ペロブスカイト、イルメナイト構造等を理解する。
13週 結晶性固体の化学結合 ポーリングの法則
(配位数、多面体表記、半径比則)を理解する。
14週 結晶性固体の性質と
分析法
結晶性固体の電気的性質、分析法(顕微鏡、分光法)を理解する。
15週 格子欠陥
と機能性結晶材料
ショットキー欠陥とフレンケル欠陥、イオン伝導性
固体結晶の導電性(導体と半導体)を理解する。
16週 期末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学金属結合の形成について理解できる。4前1
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4前12

評価割合

試験レポート相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合604000000100
基礎的能力604000000100
専門的能力00000000
分野横断的能力00000000