物理化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 奈良工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 物理化学Ⅰ
科目番号 0054 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質化学工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 〔教科書〕「アトキンス物理化学 上・下」(千原秀昭・中村恒男)/{補助教材・参考書〕「バーロー 物理化学 上」(大門 寛、堂免一成 共訳、東京化学同人)「ニューテック化学シリーズ 物理化学」(藤井信行 他、朝倉書店)
担当教員 山田 裕久

到達目標

前期中間試験:1)気体定数の意味を理解し使いこなす能力、2)理想気体の法則と状態方程式の理解、3)実在気体の状態方程式の意味を理解、4)気体の液化と臨界点を理解し、臨界定数を導出、5)物質の三態とそれらのエネルギーについての理解.
前期末試験:1)気体分子運動論の理解、2)エネルギー均分則の理解、3)Maxwell-Boltzmannの分布式と気体分子の平均の速さ、根平均二乗の速さ及び最大確率の速さの導出、4)気体分子の平均自由行程と衝突数の理解と計算、5)熱力学第一法則の理解.
後期中間試験:1)P-V仕事の理解、2)状態量と可逆過程の理解、3)Eulerの規準を利用した状態量の証明、4)等温可逆膨張における仕事の計算、5)断熱可逆過程とポアソンの法則、6)マイヤーの関係式とその利用、7)定圧反応熱と定積反応熱との関係式の理解、8)Hessの関係式を利用した反応熱の計算、9)Kirchhoffの式による生成エンタルピーの計算、10)Clausiusの不等式の理解11)エントロピーの理解と計算、12)トルートンの規則の理解と計算、13)理想気体のエンタルピー変化の計算、14)自由エネルギーと平衡の条件の理解、15)熱力学的性質間の関係式を理解、16)マクスウエルの関係式とギブズ‐ヘルムホルツの式を理解し応用する.
学年末試験:1)カルノーサイクルの理解と計算、2)フガシティーの理解と計算、3)第三法則の理解、4)自由エネルギーの理解の習熟を図る.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
【論理的思考能力】論理構成が明確であり、かつ自分なりに考えた独創性ある表現で、説明に工夫が見られる論理的に筋の通った説明ができており、説明の表現も適切である説明が不足、あるいは教科書等の文章を誤って引用した説明が多い
【知識の修得】課題解決に必要な、基 本的な公式や定理を理 解し、自在に使いこなすことができる課題解決に必要な、基本的な公式や定理をある程度理解している課題解決に必要な、基 本的な公式や定理の理 解が不足している
【課題】与えられた課題に自ら取り組み、解答を用いならがら知識の修得に努めている課題に取り組み、解答を行い足りない知識を把握できる課題への取り組みが不十分である

学科の到達目標項目との関係

準学士課程(本科1〜5年)学習教育目標 (2) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物質の性質や変化をエネルギーと関連させて熱力学を扱う。先ず気体分子運動論を展開するなかで、気体分子の運動エネルギーについて理解し、エネルギーの量的な関係を表す熱力学第一法則への導入を図る。さらに熱力学第二法則を化学反応や自然界に起こる現象を例示しながら、変化の方向が法則性をもっていることを考察する。
授業の進め方と授業内容・方法: 他の専門科目の理解に欠かせない重要な科目なので、基礎固めの学習を徹底的に行って欲しい。課題は必ず提出することが必須である。これらの課題は進路を決定する段階の復習に役に立つので、必ず自筆のコピーを作成し、活用してほしい。
授業の進め方・方法:
他の専門科目の理解に欠かせない重要な科目なので、基礎固めの学習を徹底的に行って欲しい。課題は必ず提出することが必須である。これらの課題は進路を決定する段階の復習に役に立つので、必ず自筆のコピーを作成し、活用してほしい。
注意点:
[関連科目]
3年次の基礎化学工学、4年次の物理化学、構造解析学、物質構造化学、5年次の基礎電子化学、吸着工学などの科目との関連が深い。物理化学は他の専門教科の基礎となるので、その都度関連付けて進めていきたい。教科書については物理化学IIでも引き続き用いる。
  [学習指針]
物理化学は化学全般にわたる通則を論ずる学問なので、あやふやな知識の理解にとどまらないよう基礎は徹底的に理解できるようにする。この学年では、化学熱力学の十分な理解のもとに、諸現象に対して巨視的なエネルギー論の展開ができる力を養う。
【事前学習】2年生までに学んできた数学および物理の内容についてしっかりと復習し、習熟しておくこと。これらの科目は専門科目では語学に相当する。また、シラバスに記載の各範囲についてテキストを予習しておくこと。
【事後展開学習】講義資料をまとめるノートを一冊用意し、各週4ページ程度にまとめ課題として提出すること。(講義資料の丸写しは認めない。)
TEAMSに課題を提出する際は、Office Lenz等のアプリを用いてPDF化したものを提出してください。

学修単位の履修上の注意

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 物理化学の学び方 物理化学で学ぶ内容を概観し、その勉強の仕方にヒントを与える。
2週 物質の三態と分子のボルツマン分布 物質の構成と物質の三態、分子のボルツマン分布について理解させる。
3週 理想気体の状態方程式 理想気体の法則と状態方程式を理解させ、気体定数を扱えるようにする。
4週 実在気体の状態方程式 標準大気圧と実在気体の状態方程式、Boyle温度を理解させる。
5週 気体の液化と臨界点 臨界定数の意味とそのファンデルワールス定数との関係を理解させる。
6週 気体分子の運動 気体分子の運動の自由度と気体分子運動論の基本公式を理解させる。
7週 気体分子運動論と理想気体の状態方程式 理想気体の法則を気体分子運動論を用いて導出できるようにする。
8週 前期中間試験 試験後テスト返却、テスト直し
2ndQ
9週 気体分子の根平均二乗速度 エネルギー均分則と気体分子の根平均二乗の速さを理解させる。
10週 マクスウエル・ボルツマンの分布式 Maxwell-Boltzmannの式から気体分子の速さを算出できるようにする。
11週 気体分子の平均速度と最大確率速度 気体分子の平均の速さと最大確率の速さを算出できるようにする。
12週 気体分子の平均自由行程と衝突数 気体分子の平均自由行程と衝突数を算出できるようにする。
13週 液体の表面張力と粘性 液体の表面張力と粘性の特徴を物質の三態との関係で理解させる。
14週 熱力学 熱力学の意味と関係する用語を理解させる。
15週 熱力学第一法則 熱力学第一法則とP-V仕事、可逆過程について理解させる。
16週 前期末試験 試験後テスト返却、テスト直し
後期
3rdQ
1週 状態量とEulerの規準 Eulerの規準を使って状態量の証明をできるようにする。
2週 膨張仕事と熱量 膨張仕事と定積及び定圧下での吸収熱量の計算をできるようにする。
3週 マイヤーの関係式とポアソンの法則 マイヤーの関係式と断熱膨張におけるポアソンの法則を理解させる。
4週 定圧反応熱と定積反応熱 定圧反応熱と定積反応熱の関係とHessの関係式を理解させる。
5週 キルヒホッフの式 Kirchhoffの式、結合及び原子化エネルギーを理解させる。
6週 熱力学第二法則 熱力学第二法則とエントロピーを理解させる。
7週 エントロピー Clausiusの不等式を理解しエントロピー変化を算出できるようにする。
8週 後期中間試験 試験後テスト返却、テスト直し
4thQ
9週 熱力学的性質の関係式 熱力学的性質の基本式とそれらの間の関係式を理解させる。
10週 ジュール・トムソン効果 Joule-Thomson効果と断熱膨張を理解させる。
11週 カルノーサイクル Carnot cycleと熱機関の効率の求め方を理解させる。
12週 化学ポテンシャル 化学ポテンシャルの概念を導入し、フガシティーについて理解させる。
13週 熱力学第三法則 熱力学第三法則と絶対エントロピーを理解し、応用できるようにする。
14週 ヘルムホルツの自由エネルギー クラウジウスの不等式から自由エネルギーの概念について説明する。
15週 ギブズの自由エネルギー 第二法則で導入した自由エネルギーに関する概念の習熟を図る。
16週 学年末試験 試験後テスト返却、テスト直し

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4前1,前2,前3
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4前6,前7
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4前4
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4前5
混合気体の分圧の計算ができる。4前3
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4前14,前15,後1
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4後3,後4
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4後5
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4後4
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4前15,後2,後4
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4後6
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4後13
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4後13
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4後12,後14,後15
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後12,後14,後15
平衡定数の温度依存性を計算できる。4後14,後15
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4後11

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合70000300100
基礎的能力3500015050
専門的能力3500015050
分野横断的能力0000000