到達目標
1. 電子や原子等の基本的性質を説明し、それらの性質を金属、半導体、絶縁体の物性の理解に適用できる。
2. 半導体の基本的性質を説明し、それらの性質を基にしてpn接合やトランジスタ等の基本的な電子デバイスの動作原理を説明できる。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
電子や原子等の基本的性質に関する理解度 | 電子や原子等の基本的性質を説明し、それらの性質を金属、半導体、絶縁体の物性の理解に適用できている。 | 電子や原子等の基本的性質を説明し、それらの性質を金属、半導体、絶縁体の物性の理解に限定的に適用できている。 | 電子や原子等の基本的性質を充分に説明できず、それらの性質を金属、半導体、絶縁体の物性の理解に全く適用できていない。 |
半導体の基本的性質に関する理解度 | 半導体の基本的性質を説明できている。 | 半導体の基本的性質を限定的に説明できている。 | 半導体の基本的性質を全く説明できていない。い。 |
基本的な電子デバイスの動作原理に関する理解度 | 基本的な電子デバイスの動作原理を説明できている。 | 基本的な電子デバイスの動作原理を限定的に説明できている。 | 基本的な電子デバイスの動作原理を全く説明できていない。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
半導体デバイスを中心とした各種のデバイスの動作・特性の理解のために必要となる基本的な電子物性と基本的な電子デバイスについて学習する。
授業の進め方・方法:
講義とともに適宜課題を実施する。適宜プリントで補足しながら教科書に沿って説明する。
注意点:
本科目は学修単位であり、授業の進み方が速いことから、下記に注意すること。
事前学習: 教科書や参考書を用いて予習し、授業範囲の中の専門用語の意味を理解した上で、その範囲に書かれている内容の概要を説明できるようにしておくこと。
事後学習: 毎授業後に復習することにより学習した内容を正しく理解し、次の授業や定期的に出される課題および定期試験に備えていくこと。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
オリエンテーション(電子工学と物質科学、電子のはたらき)、電子の電荷量・質量、エレクトロンボルトの定義とジュールへの単位換算 |
電子のはたらきの重要性および電子工学の発展の歴史の概要を説明できる。電子の基本性質(電荷量、質量)を説明できる。eVとJの間の単位換算ができる。
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2週 |
原子の構造、原子の発光、光電効果・コンプトン効果と光の粒子性、電子の波動性 |
原子の構造、原子が発光する機構、光の粒子性、電子の波動性について説明できる。
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3週 |
シュレーディンガーの波動方程式 |
電子の波動関数が与えられたときに、電子の運動エネルギーと力学的エネルギー、電子の存在確率を計算できる。
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4週 |
パウリの排他律、原子の電子配置、原子の結合と結晶 |
定常状態の電子を記述する時間に依存しない波動方程式および原子の中の電子軌道・電子の配置について、それらの概要を説明できる。価電子が原子の化学的性質を決めること、原子間の結合の種類および代表的な結晶構造について説明できる。
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5週 |
固体結晶中の電子とエネルギー帯の形成、自由電子との比較 |
固体結晶中の電子に関して、エネルギー帯(許容帯・禁制帯)ができる機構の概要をクローニッヒペニーのモデルを用いて説明できる。
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6週 |
粒子統計(マクスウェル-ボルツマン統計、フェルミ-ディラック統計、ボーズ-アインシュタイン統計) |
マクスウェル-ボルツマン統計、フェルミ-ディラック統計、ボーズ-アインシュタイン統計を区別し、それぞれの統計に従う粒子を説明できる。
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7週 |
金属の電気的性質(移動度と導電率、熱平衡とドリフト) |
熱平衡時と電界が印加された場合の電子の波数分布の変化および電子のドリフトの概念、移動度の概念、移動度と導電率の関係を説明できる。
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8週 |
半導体の導電現象(導電率とその温度変化、不純物とn型・p型・真性半導体およびエネルギー帯図中のフェルミレベル)、金属・半導体・絶縁体のエネルギー帯図の比較 |
半導体の導電率の温度変化の機構を説明できる。またn型・p型・真性半導体ができる機構とフェルミレベルの位置関係を説明できる。
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2ndQ |
9週 |
電子の群速度・有効質量、半導体のキャリア密度とnp積 |
電子の群速度・有効質量の概念および半導体のキャリア密度の計算法を説明できる。
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10週 |
半導体の電気伝導(キャリアのドリフト・拡散)、アインシュタインの関係式、電界がない場合の少数キャリアの連続の式 |
半導体中のキャリアのドリフトと拡散を現象論的に説明し、それぞれの流束密度の表式を説明でき、さらにそれらを組み合わせて全電流を説明できる。また拡散係数と移動度との関係および電界が存在しない場合の少数キャリアの連続の式についても説明できる。
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11週 |
p-n接合の構造・エネルギー帯図・電圧電流特性 |
p-n接合のエネルギーバンド図を描くことができ、その図からp-n接合の電圧電流特性を定性的に説明できる。
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12週 |
バイポーラトランジスタ(Ⅰ)(構造、エネルギー帯図、動作原理) |
バイポーラトランジスタの構造およびエネルギーバンド図を描くことができ、それらの図からバイポーラトランジスタの動作原理を定性的に説明できる。
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13週 |
バイポーラトランジスタ(Ⅱ)(エミッタ接地・ベース接地の静特性) |
バイポーラトランジスタの静特性を定性的に説明できる。
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14週 |
MIS構造 |
MIS構造の蓄積・空乏・反転状態のエネルギーバンド図を描き、これらの現象を定性的に説明できる。
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15週 |
電界効果トランジスタ(MOSFETの構造と動作原理) |
MOSFETの構造と動作原理、特性を定性的に説明できる。
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16週 |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 電気・電子系分野 | 電子工学 | 電子の電荷量や質量などの基本性質を説明できる。 | 4 | 前1 |
エレクトロンボルトの定義を説明し、単位換算等の計算ができる。 | 4 | 前1 |
原子の構造を説明できる。 | 4 | 前2 |
パウリの排他律を理解し、原子の電子配置を説明できる。 | 4 | 前4 |
結晶、エネルギーバンドの形成、フェルミ・ディラック分布を理解し、金属と絶縁体のエネルギーバンド図を説明できる。 | 4 | 前4,前5,前6,前8 |
金属の電気的性質を説明し、移動度や導電率の計算ができる。 | 4 | 前7 |
真性半導体と不純物半導体を説明できる。 | 4 | 前8 |
半導体のエネルギーバンド図を説明できる。 | 4 | 前8 |
pn接合の構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてpn接合の電流―電圧特性を説明できる。 | 4 | 前11 |
バイポーラトランジスタの構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてバイポーラトランジスタの静特性を説明できる。 | 4 | 前12,前13 |
電界効果トランジスタの構造と動作を説明できる。 | 4 | 前15 |
情報系分野 | その他の学習内容 | トランジスタなど、ディジタルシステムで利用される半導体素子の基本的な特徴について説明できる。 | 4 | 前11,前13,前15 |
評価割合
| 試験 | 課題 | 合計 |
総合評価割合 | 60 | 40 | 100 |
基礎的能力 | 0 | 0 | 0 |
専門的能力 | 60 | 40 | 100 |