到達目標
1.錯体の種類と化学構造および結合を理解できる。
2.酸化還元および電子移動に関わる平衡論、および電池や電気分解の原理と応用を理解できる。
3.固体の電気的物性とその用途について理解できる。
本講における学習内容の中でも特に錯体、電池・電気分解および半導体・誘電体・磁性体の各論については、化学工業界における無機化学および無機材料化学に関連する研究開発や製造の業務に従事する際に役立つ知識となります。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
評価項目1 | 結晶場理論、配位子場理論の概要を理解できる。 | 配位結合と錯体の種類を理解できる。 | 配位結合を理解できない。 |
評価項目2 | 平衡電位と電極反応論の概念を理
解できる。 | ネルンストの式を理解して起電力
を計算できる。 | 酸化と還元の違いが理解できない。 |
評価項目3 | 半導体性、誘電性、磁性が発現するための要件を化学構造の観点から説明できる。 | バンド構造と電気伝導性、イオン伝導性や誘電性の発現のメカニズムが理解できる。 | バンド構造を理解できない。 |
学科の到達目標項目との関係
C-1
説明
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JABEE C-1
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教育方法等
概要:
この科目では、3学年での無機化学に引き続き、無機化学の基礎と応用をバランスよく学びます。本講では、無機化合物の性質や応用を理解する上で必要な基礎分野(錯体化学,電気化学および固体化学)を学びつつ、各無機化合物の製法、性質および応用等の内容を詳しく学習します。これらの中には、無機化学だけでなくあらゆる化学分野での基礎となる重要な内容も含まれますので、十分な理解が必要になります。また、無機化学には有機化学とは切り離せない要素もあり、無機化学と有機化学との関連も重要な視点になります。なお、担当教員は企業において本講での技術分野での研究開発に携わった経験を有しており、その経験を活かして材料特性と工業的応用の視点も授業に織り込みます。本講における学習内容の中でも特に錯体、電池・電気分解および半導体・誘電体・磁性体の各論については、化学工業界における無機化学および無機材料化学に関連する研究開発や製造の業務に従事する際に役立つ知識となります。
授業の進め方・方法:
錯体化学の基礎を学習します。金属錯体は無機化合物の代表的な化合物群であり、基礎および応用ともに極めて重要です。したがって、錯体の構造や基礎的な性質を体系的に学習しておく必要があります。学習するにあたっては、配位子の種類、立体化学、結合論(結晶場、配位子場)の視点が重要なポイントになります。
電気化学の基礎を学習します。電気化学と聞くと難解で特殊な分野という印象を受けるかもしれませんが、電気化学とは電子授受の現象を取り扱う化学分野であり、酸化還元反応を考える上で極めて重要な学問体系です。無機化合物の性質や応用を理解しようとするとき、その構成原子の価数に注目する必要があることを考えると、電気化学は無機化学を理解する上で避けて通れない重要な化学分野であることがわかります。学習するにあたっては、電子受授とポテンシャルエネルギー(電位)との関係を理解することが重要なポイントになります。また、平衡論と速度論の2つの視点も重要です。電池反応や電気分解についても解説します。
固体化学の基礎も学習します。固体のエネルギーバンド構造を理解し、固体中での電子の動きについて学習します。絶縁体、半導体、良導体(金属)の違いを、エネルギーバンド構造から説明できるようにします。半導体の応用として、トランジスタ、太陽電池、光触媒の概要についても学習します。固体中でのイオン伝導のメカニズム、イオン伝導体の種類、構造およびその応用(燃料電池固体電解質、二次電池正極活物質、化学センサ)についても学習します。固体の誘電性および磁性の発生のメカニズム、誘電体および磁性体の種類と特性を学びます。
定期試験(70%)、小テスト・演習等(30%)を基準として評価します。
注意点:
指定した教科書および演習書の該当部分を事前に読んで予習しておいてください。必要に応じて、参考書を調査してください。教科書、参考書、授業ノートにより学習した内容を復習してください。必要に応じて、参考書を調査してください。適時、小テストを行ったりレポート課題を出すことがあるので、十分に復習をして準備をしておいてください。
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
年間の授業計画と、内容の概略説明 |
無機化学の概要を知ることができる。
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2週 |
錯体化学の基礎:Werner型錯体,配位結合,配位数 |
錯体の定義と種類を理解できる。
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3週 |
錯体化学の基礎:配位子の種類,命名法 |
配位子の種類と命名法を理解できる。
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4週 |
錯体の立体化学:立体構造,異性体 |
錯体の異性体を立体化学的に理解できる。
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5週 |
錯体の結合論:結晶場理論,配位子場理論,軌道の縮重 |
結晶場理論、配位子場理論を通して配位結合を理解できる。
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6週 |
錯体の安定性:安定度定数,反応性 |
錯体の安定度定数や反応性を理解できる。
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7週 |
有機金属錯体の概論 |
有機金属錯体の種類と特徴を理解できる。
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8週 |
錯体の応用 |
種々の錯体の応用事例を理解できる。
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2ndQ |
9週 |
中間試験 |
中間試験
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10週 |
電解質溶液論:溶液の電気伝導(イオン伝導) |
電解質溶液論の基礎、イオン伝導を理解できる。
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11週 |
電解質溶液論:電離平衡,強電解質と弱電解質 |
強電解質と弱電解質との違いを理解できる。
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12週 |
電子移動化学:酸化と還元,電極反応,電気化学セル |
酸化還元反応を電気化学反応として理解できる。
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13週 |
電子移動の平衡論:電極電位,電気化学ポテンシャル |
電極電位の考え方を理解できる。
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14週 |
電子移動の平衡論:ネルンストの式,電位と電位差 |
ネルンストの式と平衡電位の考え方を理解できる。
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15週 |
期末試験 |
期末試験
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16週 |
試験答案返却・解答解説 |
試験答案返却・解答解説
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後期 |
3rdQ |
1週 |
電子移動の平衡論と速度論:電池の構成 |
電池の概要と作動原理を理解できる。
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2週 |
電池の種類と応用 |
電池の種類と応用を学び、一次電池と二次電池との違いを理解できる。
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3週 |
電子移動の平衡論と速度論:電気分解と過電圧 |
電気分解の概要と電極反応の動力学を理解できる。
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4週 |
電気分解の応用 |
種々の電気分解の応用事例を理解できる。
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5週 |
電気化学測定法 |
ボルタンメトリー、アンペロメトリー、交流インピーダンス法等の電気化学測定法の概要を理解できる。
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6週 |
固体電子伝導論:フェルミ準位,エネルギーバンド |
固体のバンド構造を学び、フェルミ準位との関連を理解できる。
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7週 |
固体電子伝導論:不純物半導体 |
固体中の不純物の挙動を理解し、p型/n型半導体の違いを理解できる。
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8週 |
固体電子伝導論:半導体の応用 |
ダイオード、太陽電池等の半導体の応用事例について理解できる。
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4thQ |
9週 |
中間試験 |
中間試験
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10週 |
固体電解質論:拡散機構,電気伝導率,輸率、活性化エネルギー |
固体中のイオン伝導の考え方を学ぶ。拡散のメカニズムについても学ぶ。イオン伝導における活性化エネルギーの考え方を理解できる。
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11週 |
固体電解質論:イオン伝導体の応用 |
燃料電池やセンサー等のイオン伝導体の応用事例について理解できる。
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12週 |
誘電体論:誘電性,誘電率 |
誘電体の基礎と誘電性発現のメカニズムを理解できる。
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13週 |
誘電体論:誘電体の種類,圧電性,焦電性 |
誘電体の種類と応用事例(圧電体等)について理解できる。
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14週 |
磁性体論:磁性,磁化率,磁性体の種類 |
磁性体の基礎と磁性発現のメカニズムについて理解する。磁性体の種類と応用についても理解できる。
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15週 |
期末試験 |
期末試験
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16週 |
試験答案返却・解答解説 |
試験答案返却・解答解説
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 無機化学 | 錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。 | 4 | 前2 |
錯体の命名法の基本を説明できる。 | 4 | 前3 |
配位数と構造について説明できる。 | 4 | 前2,前3 |
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。 | 4 | 前5 |
物理化学 | 電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後3,後4 |
評価割合
| 試験 | 課題・小テスト等 | 合計 |
総合評価割合 | 70 | 30 | 100 |
基礎的能力 | 35 | 15 | 50 |
専門的能力 | 35 | 15 | 50 |