日本語表現法

科目基礎情報

学校 米子工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 日本語表現法
科目番号 0002 科目区分 一般 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 専攻科 生産システム工学専攻 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 なし(配布プリントのみ)
担当教員 辻本 桜介

到達目標

1.日本語の歴史と各地の方言について知り、日本語が通時的・地理的に変わる存在であることを理解している。
2.漢字能力検定試験2級程度の知識を持ち、かつ、準1級程度の知識もある程度持っている。
3.漢字に関する背景的知識(構成原理、字体・書体等)を持っている。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
日本語の文献資料を見て、およそどの時代の日本語かを判断でき、諸方言における標準的な現代語の位置づけを述べることができる。日本語の文献資料を見て、大まかにどの時代の日本語かを判断でき、標準的な現代語と異なる複数の方言の存在を知っている。日本語の文献資料を見ても、どの時代の日本語か見当をつけることができず、方言の分布状況についてもほとんど理解していない。
本講義中に出題した漢字能力検定試験2級・準1級相当の漢字の読み書きが8割以上できる。本講義中に出題した漢字能力検定試験2級・準1級相当の漢字の読み書きが6割以上できる。本講義中に出題した漢字能力検定試験2級・準1級相当の漢字のうち、読み書きできるものが6割に満たない。
漢字の構成原理や字体の概念について具体例を挙げながら詳述できる。漢字の構成原理や字体の概念を概ね理解している。漢字の構成原理を知らず、字体の概念についても理解していない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 A-2 説明 閉じる
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教育方法等

概要:
昨今のクイズ番組や一部の報道・教育などで見られることだが、『広辞苑』等の記述を絶対のものとして妄信したり、科学的根拠の無いまやかしの語源説を恰も真実であるかのごとく語る風潮はいかがなものか。自分勝手に定めた「正しい」日本語を他人に強制しようとする向きも、さまざまな職場にあると聞く。このように日本語に対する“まずい”態度が世間に横行する中で、大学の文学部・人文系の大学院は、日本語に対して持つべき姿勢を身に付ける場所として一定の役割を担ってきた。ところが、そうした貴重な場所も失われようとしている。平成27年6月8日、文部科学省は、国立大学における人文社会科学系学部・大学院の廃止を求めるような通知を出した(「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」)。この通知についての解釈は分かれるが、歴史学や文学、言語学といった、経済・産業の発展と直接的な繋がりの見えにくい分野が、淘汰されつつあることを感じる時代となっているのである。
本講義は、以上の社会的情勢の中で、言語学的な視座に立って日本語の歴史を眺めることを大きな目的の一つとする。これは、決して社会的要請が皆無のことではない。私たちが普段用いる日本語は、常に古来からの変化の中にあり、今後も変化していく。地域的にも、アクセントや語彙の差が生まれ続けており、どこの方言が「日本語として正しい」かを定めることはできない。自身の日本語の望ましい姿を考えるためには、当然のことながら、日本語の多様性・流動性についての理解が前提となるのであり、日本語の歴史と地理的変異を学ぶ過程を欠かすことはできないのである。
また、日本語についての理解を深めつつ、一方では、実用的な日本語の知識を蓄えることも重要である。そこで“漢字力”の向上を本講義における第二の目的としたい。漢字・漢語の知識は、言うまでもなく日本語の極めて大きな一角を占め、日本人の表現力・読解力のみならず思考力をも支える要素である。本科の国語Ⅰ・国語Ⅱにおいて漢検2級程度に到達することを目標としていることを踏まえ、専攻科では漢検2級程度の知識の確実な定着を図りながら、社会人レベルの知識である漢検準1級相当の漢字についても一定量を取り上げて学習する。
授業の進め方・方法:
まず授業の前半では、漢字のルーツ、構成原理、各時代の言葉、各地の方言について学ぶ。そしてそれらと現代の標準的な日本語を見比べることによって、現代の日本語が歴史的・地理的な動きの中の一部でしかないことを知る。授業の後半では、我々の表現の広がりを支える漢字の知識を拡充し、日本語の表記・読解能力を高める。毎回のはじめに、前週に指定した範囲の小テストを行う。この小テストに向けての学習と、期末試験に向けての復習とに、60時間以上が必要である。
注意点:

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス /漢字(1)漢字の起源・書体 / 漢字(1)実力試験 漢字の起源や書体の概念を理解する。
2週 漢字(2)造字と運用の原理(六書) / 漢字(2)読み 「六書」について理解する。
3週 漢字(3)仮名の誕生、幕末~現代の漢字制限 / 漢字(3)読み 漢字から平仮名・片仮名が生まれる経緯を理解し、また、現代の常用漢字表が決まるまでの歴史を知る。
4週 日本語の歴史(1)日本語の起源 / 漢字(4)書き取り 他言語と比較しながら、日本語が孤立語であることを知る。
5週 日本語の歴史(2)奈良時代までの日本語 / 漢字(5)書き取り 奈良時代までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
6週 日本語の歴史(3)平安時代中期までの日本語 / 漢字(6)書き取り 平安時代中期までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
7週 日本語の歴史(4)院政期・鎌倉時代の日本語 / 漢字(7)四字熟語 鎌倉時代までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
8週 日本語の歴史(5)室町時代の日本語 / 漢字(8)四字熟語 室町時代までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
2ndQ
9週 日本語の歴史(6)江戸時代前期の日本語 / 漢字(9)四字熟語 江戸時代前期までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
10週 日本語の歴史(7)江戸時代後期の日本語 / 漢字(10)総合問題 江戸時代後期までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
11週 日本語の歴史(8)幕末・明治期の日本語 / 漢字(11)総合問題 明治時代までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
12週 日本語の歴史(9)大正・昭和期の日本語 / 漢字(12)総合問題 昭和時代までの日本語の姿を、主な資料とともに知る。
13週 現代日本語についての考え方 / 漢字(13)総合問題 現代語についての簡単な研究方法を実践できる。
14週 方言(1)現代の諸方言 / 漢字(14)総合問題 現代における諸方言の実態を大まかに把握している。
15週 方言(2)古代~近世の諸方言 / 漢字(15)総合問題 近代以前にも各地に方言が存在したことを理解している。
16週 期末試験 前期全体で得た知識を定着させている。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学国語国語論理的な文章(論説や評論)の構成や展開を的確にとらえ、要約できる。4前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
論理的な文章(論説や評論)に表された考えに対して、その論拠の妥当性の判断を踏まえて自分の意見を述べることができる。4前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
文学的な文章(小説や随筆)に描かれた人物やものの見方を表現に即して読み取り、自分の意見を述べることができる。4前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
常用漢字の音訓を正しく使える。主な常用漢字が書ける。4前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
類義語・対義語を思考や表現に活用できる。4前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
社会生活で使われている故事成語・慣用句の意味や内容を説明できる。4前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
専門の分野に関する用語を思考や表現に活用できる。4前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
実用的な文章(手紙・メール)を、相手や目的に応じた体裁や語句を用いて作成できる。4前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
報告・論文の目的に応じて、印刷物、インターネットから適切な情報を収集できる。4
収集した情報を分析し、目的に応じて整理できる。4
報告・論文を、整理した情報を基にして、主張が効果的に伝わるように論理の構成や展開を工夫し、作成することができる。4
作成した報告・論文の内容および自分の思いや考えを、的確に口頭発表することができる。4
課題に応じ、根拠に基づいて議論できる。4
相手の立場や考えを尊重しつつ、議論を通して集団としての思いや考えをまとめることができる。4
新たな発想や他者の視点の理解に努め、自分の思いや考えを整理するための手法を実践できる。4
分野横断的能力汎用的技能汎用的技能汎用的技能日本語と特定の外国語の文章を読み、その内容を把握できる。5前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
他者とコミュニケーションをとるために日本語や特定の外国語で正しい文章を記述できる。5前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
他者が話す日本語や特定の外国語の内容を把握できる。5前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,前16
日本語や特定の外国語で、会話の目標を理解して会話を成立させることができる。5
円滑なコミュニケーションのために図表を用意できる。5
円滑なコミュニケーションのための態度をとることができる(相づち、繰り返し、ボディーランゲージなど)。5
他者の意見を聞き合意形成することができる。5
合意形成のために会話を成立させることができる。5
グループワーク、ワークショップ等の特定の合意形成の方法を実践できる。5
書籍、インターネット、アンケート等により必要な情報を適切に収集することができる。5前13
収集した情報の取捨選択・整理・分類などにより、活用すべき情報を選択できる。5前13
収集した情報源や引用元などの信頼性・正確性に配慮する必要があることを知っている。5前13
情報発信にあたっては、発信する内容及びその影響範囲について自己責任が発生することを知っている。5前13
情報発信にあたっては、個人情報および著作権への配慮が必要であることを知っている。5前13
目的や対象者に応じて適切なツールや手法を用いて正しく情報発信(プレゼンテーション)できる。5
あるべき姿と現状との差異(課題)を認識するための情報収集ができる5前13
複数の情報を整理・構造化できる。5前13
特性要因図、樹形図、ロジックツリーなど課題発見・現状分析のために効果的な図や表を用いることができる。5
課題の解決は直感や常識にとらわれず、論理的な手順で考えなければならないことを知っている。5前13
グループワーク、ワークショップ等による課題解決への論理的・合理的な思考方法としてブレインストーミングやKJ法、PCM法等の発想法、計画立案手法など任意の方法を用いることができる。5
どのような過程で結論を導いたか思考の過程を他者に説明できる。5
適切な範囲やレベルで解決策を提案できる。5
事実をもとに論理や考察を展開できる。5
結論への過程の論理性を言葉、文章、図表などを用いて表現できる。5前13

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオ小テスト合計
総合評価割合75000025100
基礎的能力5500002580
専門的能力200000020
分野横断的能力0000000