一般化学

科目基礎情報

学校 津山工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 一般化学
科目番号 0044 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 総合理工学科(先進科学系) 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 【教科書】アトキンス 物理化学要論 第7版 (P. W. Atkins他), 演習化学熱力学(渡辺啓)【参考URL】予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」https://yobinori.jp, EMANの物理学 https://eman-physics.net
担当教員 守友 博紀

到達目標

学習目標:化学を学ぶ上で必要不可欠な量子論・分光学・熱力学の基礎基本を理解する。

到達目標
1. 量子化学の考え方を身につけ、化学結合を量子論に基づいて理解する。
2. 分光学的な測定が、原子や分子の振る舞いを理解するために有効であることを理解する。
3. 熱力学の第1~3法則を理解し,各種エネルギーや熱化学に関する計算ができる。

ルーブリック

不可
評価項目1量子論の立場から化学結合、分子の形状を説明できる。原子や分子の世界が量子化されていることを説明できる。原子や分子の世界が量子化されていることを概ね理解している。量子化学の考え方を説明することができない。
評価項目2分光学的な測定の原理や利点を、具体的な例を挙げながら説明することができる。分光学的な測定の原理や利点を説明することができる。分光学的な測定の原理や利点を概ね理解している。分光学的な測定の原理や利点を説明できない。
評価項目3物質の状態の変化や化学反応を、熱力学的な観点から具体的な例を挙げながら説明できる。物質の状態の変化や化学反応を、熱力学的な観点から説明できる。物質の状態の変化や化学反応を、熱力学的な観点で概ね理解できている。物質の状態の変化や化学反応を、熱力学的な観点から説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
一般・専門の別:専門

基礎となる学問分野:無機化学・物理化学・有機化学

学習教育目標との関連:本科目は総合理工学科学習教育目標「(3) 基盤となる専門性の深化」に相当する科目である。

授業の概要:これから先, 理科系の専門科目を学ぶ上で必要不可欠な考え方・知識を身につけることを目標とする。前期は、原子や分子の世界を理解する上で欠かすことのできない「量子論」の考え方を解説する。量子化学のイメージをつかみ、化学結合の形成、分子の形を深く理解することを目指す。さらに、量子論に基づいて分光学を解説し、分子構造を解析するために分光学的な手法が有用であることを理解してもらう。後期は熱力学を俯瞰し、全ての化学反応が熱力学の法則に従うことを解説する。
授業の進め方・方法:
授業方法:講義は全てプロジェクタ, 電子黒板を利用して行う。資料等は, Web上に公開する。

成績評価方法:4回の定期試験の得点をそれぞれ同等に評価し,各定期試験までのレポートをこれに加味して,その都度評価する。評価割合(予定)は以下の通り。変更があれば逐次アナウンスをするので注意しておくこと。
【前期中間】試験70%, 小テスト30%
【前期末】試験60%, 実験レポート40%
【後期中間】試験60%, 実験レポート30%, 小テスト 10%
【後期末】試験60%, 実験レポート30%, 小テスト 10%
各期の成績点を単純平均し, 60点以上であれば単位を認定する。
※試験返却日にはスコアを集計した成績表を渡すので, 誤りがないかよく確認をすること。
成績点が60点に満たない者に対しては, 再試験を実施する場合がある。その際、再試験の素点を本試験の点数と入れ替え, 成績点を60点を上限として評定する。

【重要】実験レポートに関して, データの改竄, 盗用, 剽窃, 剽窃幇助など研究倫理に反する不正行為があると担当教員が判断した場合は, そのレポートは0点として処理し, 原則として再提出を認めない。(研究倫理に関する資料は日本学術振興会のWebページからも確認できる。 https://www.jsps.go.jp/j-kousei/rinri.html )
注意点:
履修上の注意:本科目は必履修科目のため,3学年課程修了には履修(欠課時数は年間の出席日数の1/3以下)が必須である。

履修上のアドバイス:この科目は専門科目である。受動的な態度で講義に臨んでいては,決して内容は身につかない。安易に「暗記」に頼ることがないよう心掛けよ。化学という学問の本質を理解できるよう,常にLogicalな思考を続けながら講義に臨んでほしい。
(事前に行う準備学習)講義の前には,テキストの指定した箇所を必ず読んでくる。参考URL(予備校のノリで学ぶ大学の数学・物理, EMANの物理学)に目を通しておく。

基礎科目:化学I(全系2年),化学II(全系3年), 物理I(全系1年), 物理II(全系2年), 微分積分I(全系2年), 微分積分II(全系3年), 基礎微分方程式(全系3年)

関連科目:無機化学(先進4),有機化学I(先進4)およびII(先進5),化学実験(先進4)


受講上のアドバイス:
・本講義では, 2年次までに学んだ物理学ならびに数学(微積分)が身についている前提で進める。
・物事を学ぶためには, 同じ事柄が記述してあるテキストを最低3冊は読む必要がある。授業中に紹介する参考書にも目を通し,自ら学びを深めていく姿勢を望む。
・後期に扱う熱力学は, 徹底した演習によって身につけることができる。問題集を繰り返し解くことで, 本質を身につけてほしい。
・遅刻の取扱については,授業開始時に出席を取った段階で不在の場合, その授業を「欠席」したとみなす。社会は時間に厳しい。そのことを知ってほしい。

参考書:アトキンス物理化学, サイモン・マッカーリ物理化学など。図書館にある物理化学系のテキストを積極的に活用することを強く勧める。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業
必履修

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス,原子の構造、放射性壊変 原子の構造を復習し, これからの学習に備える。
2週 放射性壊変,核融合 核エネルギーについて理解する。
3週 量子論の基礎:前期量子論, 不確定性原理, シュレディンガーの波動方程式 量子論の概念を理解する。
4週 原子の電子構造①:水素原子の波動方程式とその解 水素原理の波動方程式を解くプロセスを理解し, 電子軌道の考え方を身につける。
5週 原子の電子構造②:多電子原子の電子配置 多電子原子の電子配置をかけるようになる。
6週 化学結合と分子軌道法 化学結合を理解する種々の理論の特徴を理解する。
7週 混成軌道の考え方 混成軌道の考え方を理解し, 代表的な有機化合物の構造や性質を説明できるようになる。
8週 【中間試験】
2ndQ
9週 光と物質の相互作用 光吸収, ラマン散乱について理解する。
10週 二原子分子の振動 赤外遷移, 振動ラマン散乱について理解する。
11週 二原子分子の回転 マイクロ波遷移, 回転ラマン散乱について理解する。
12週 電子遷移 電子励起された物質がたどる運命を理解する。
13週 レーザーと非線形光学効果 レーザーの特徴を理解した上で, レーザーの進歩とともに発展してきた非線形光学効果の概要を理解する。
14週 物理化学実験①(沈澱滴定) 実験結果を整理し, コンピュータにより解析する力を身につける。
15週 【期末試験】
16週 物理化学実験②(凝固点降下法による分子量の決定) 実験結果を整理し, コンピュータにより解析する力を身につける。
後期
3rdQ
1週 気体分子運動論 気体の法則を理解する。
2週 熱力学第一法則 熱力学の第一法則を理解し, 使えるようになる。
3週 エントロピーと変化の方向 エントロピーの概念を理解する。
4週 ギブズエネルギー ギブズエネルギーの概念を理解し, 反応の方向性を判断できるようになる。
5週 相平衡 相平衡を熱力学に基づいて説明できるようになる。
6週 溶液の混合 混合に関する熱力学を理解する。
7週 溶液の性質 束一的性質を理解する。
8週 【中間試験】
4thQ
9週 化学平衡 平衡定数とギブズエネルギーの関係を理解する。
10週 電気化学と平衡 電池の起電力を計算できる。
11週 典型金属の性質 代表的な典型金属の性質を理解する。
12週 遷移金属の性質 代表的な遷移金属の性質を理解する。
13週 錯体化学の基礎 金属錯体の命名法, 構造を理解する。
14週 物理化学実験③(ヨウ素デンプン時計反応の活性化エネルギーの測定) 実験結果を整理し, コンピュータにより解析する力を身につける。
15週 【期末試験】
16週 答案返却・解説

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学σ結合とπ結合について説明できる。3前6,前7
混成軌道を用い物質の形を説明できる。3前6,前7
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。3前6,前7
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。3前6,前7
無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4前3,前4,前5
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4前3,前4,前5
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4前3,前4,前5
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4前3,前4,前5
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4前3,前4,前5
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4前3,前4,前5
イオン結合と共有結合について説明できる。4前6,前7
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4前6,前7
金属結合の形成について理解できる。4前6,前7
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4前6,前7
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4前6,前7
配位結合の形成について説明できる。4前7
水素結合について説明できる。4前7
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。3後11,後12,後13
錯体の命名法の基本を説明できる。3後11,後12,後13
配位数と構造について説明できる。3後11,後12,後13
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。3後11,後12,後13
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。3後11,後12
分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。3後11,後12
光吸収について理解し、代表的な分析方法について説明できる。4前9,前10,前11
Lambert-Beerの法則に基づく計算をすることができる。4前9,前10,前11
物理化学放射線の種類と性質を説明できる。4前1,前2
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。4前1,前2
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。4前1,前2
核分裂と核融合のエネルギー利用を説明できる。4前1,前2
気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4後1
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4後1
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4後1
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4後1,後5
混合気体の分圧の計算ができる。4後1,後5
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4後5
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4後5,後6
束一的性質を説明できる。4後7
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4後7
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4後7
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4後5,後7
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4後2
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4後2
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4後2
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4後2
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4後2
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4後9
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4前1,後9
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4後9
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4後3
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4後3
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4後3
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4後4
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後4
平衡定数の温度依存性を計算できる。4後4,後9
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4後4
化学工学SI単位への単位換算ができる。4後14
物質の流れと物質収支についての計算ができる。4後14
蒸留の原理について理解できる。4後5,後6,後7
単蒸留、精留・蒸留装置について理解できる。4後5,後6,後7
蒸留についての計算ができる(ラウールの法則、マッケーブシール法等)。4後5,後6,後7
基本的な抽出の目的や方法を理解し、抽出率など関係する計算ができる。4後5,後6,後7
吸着や膜分離の原理・目的・方法を理解できる。4後5,後6,後7
分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】物理化学実験各種密度計(ゲールサック、オストワルド等)を用いて、液体および固体の正確な密度を測定し、測定原理を説明できる。4後14
粘度計を用いて、各種液体・溶液の粘度を測定し、濃度依存性を説明できる。4後14
熱に関する測定(溶解熱、燃焼熱等)をして、定量的に説明できる。4前16
分子量の測定(浸透圧、沸点上昇、凝固点降下、粘度測定法等)により、束一的性質から分子量を求めることができる。4前14
相平衡(液体の蒸気圧、固体の溶解度、液体の相互溶解度等)を理解して、平衡の概念を説明できる。4後5,後6,後7
化学工学実験液体に関する単位操作として、特に蒸留操作の原理を理解しデータ解析の計算ができる。4後5,後6,後7
流体の関わる現象に関する実験を通して、気体あるいは液体の物質移動に関する原理・法則を理解し、物質収支やエネルギー収支の計算をすることができる。4後1

評価割合

試験小テスト実験レポート合計
総合評価割合601030000100
基礎的能力0000000
専門的能力601030000100
分野横断的能力0000000