伝熱工学

科目基礎情報

学校 津山工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 伝熱工学
科目番号 0069 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学科 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:平田哲夫他「例題でわかる伝熱工学 第2版」(森北出版) 参考書:日本機械学会「JSMEテキストシリーズ・伝熱工学」(日本機械学会)
担当教員 佐伯 文浩

到達目標

学習目的:機械技術者として必要と考えられる伝熱学全般(熱伝導,対流熱伝達,ふく射熱伝達)の基礎的な知識を習得する。

到達目標:
1.熱伝導の基本法則に基づき,物体の温度,熱通過率,伝熱量を求めることができる。
2.流れの状態に応じて適切な熱伝達関係式を選択し,熱伝達率よび伝熱量を求めることができる。
3.ふく射熱伝達の基本法則を理解し,ふく射熱交換に関する基礎的な問題を解くことができる。
4.相変化を伴う熱伝達の特徴や分類について説明でき,凝縮と沸騰に関する基礎的な問題を解くことができる。

ルーブリック

不可
評価項目1温度や伝熱量に関する要求事項を満たすように,物体の厚さや物質を設定・選択することができる。平板および円筒の定常一次元熱伝導問題を解き,物体の温度,熱通過率,伝熱量を求めることができる。平板の定常一次元熱伝導問題を解き,平板内の温度分布と熱流束を求めることができる。左記に達していない。
評価項目2熱伝達関係式に基づき伝熱量を適切に評価できることに加え,局所量の式から平均量や積分量の式を導出することができる。流れの状態に応じて適切な熱伝達関係式を選択し,熱伝達率および伝熱量を求めることができる。無次元パラメータを正しく求め,流れの状態に応じた適切な熱伝達関係式を選択することができる。左記に達していない。
評価項目3閉空間系のふく射熱交換について,形態係数に関する関係式を列記できる。また,放射率について理解し,灰色面間のふく射熱交換について説明できる。黒体面間のふく射熱交換について説明できる。また,形態係数の基本特性について説明できる。ステファン・ボルツマンの法則について説明できる。また,黒体面,灰色面,実在面の違いを説明できる。左記に達していない。
評価項目4膜状凝縮の理論を理解し,凝縮膜厚や熱伝達率などを求めることができる。凝縮の各種分類について説明できる名できる。また,沸騰の分類と沸騰曲線について説明できる。潜熱について説明できる。また,工学技術における相変化の応用について,具体例を挙げて説明できる。左記に達していない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
※実務との関係:この科目は,企業で燃焼施設の排ガス測定や温泉水発電実証事業などに従事していた教員が,その経験を活かし,熱移動の基礎と工学的応用について講義形式で授業を行うものである。

一般・専門の別:専門

学習の分野:エネルギーと流れ

必修・履修・履修選択・選択の別:履修

基礎となる学問分野:工学/機械工学/熱工学

学科学習目標との関連:本科目は機械工学科学習目標「(2)エネルギーと流れ,材料と構造,運動と振動,設計と生産・管理,情報と計測・制御,機械とシステムに関する専門技術分野の知識を修得し,工学現象の解析や機械の設計・製作に応用できる能力を身につける。」に相当する科目である。

技術者教育プログラムとの関連:本科目が主体とする学習・教育到達目標は「(A)技術に関する基礎知識の深化,A-2:「材料と構造」,「運動と振動」,「エネルギーと流れ」,「情報と計測・制御」,「設計と生産・管理」,「機械とシステム」に関する専門技術分野の知識を修得し,説明できること」である。

授業の概要:熱力学が平衡状態にある系を扱うのに対して,伝熱工学では温度差の結果として物体間に生じるエネルギー伝達を扱う。熱エネルギー伝達の3つの形式である熱伝導,対流熱伝達,ふく射熱伝達の基礎を,実際の問題への応用も考慮して解説する。
授業の進め方・方法:
授業の方法:授業は板書を中心に進める.理論的な事項に加え,身近な現象や実際の機器への応用についても具体的に解説する.基本原理に対する理解を深め,基礎的な計算手法を身に付けるために,適宜,演習・レポートを課す。

成績評価方法:4回の定期試験の結果をそれぞれ同等に評価する(70%)。試験には,自筆ノート・電卓等の持ち込みを許可する場合がある。演習・レポート(30%)。成績が60点未満の学生に対して,再試験を実施する場合がある。その場合,定期試験と再試験の平均点を試験分として成績を再評価する。ただし,再評価による成績の上限は60点とする。なお,再試験の実施および受験資格は,該当者の学習態度を踏まえて判断する。
注意点:
履修上の注意:なし

履修のアドバイス:微分積分,熱力学,流体工学など,広範囲にわたる工学基礎知識が必要となる。

基礎科目:微分積分Ⅰ(2年),微分積分Ⅱ(3),熱力学Ⅰ,Ⅱ(4),流体工学Ⅰ,Ⅱ(4)など

関連科目:熱機関(5年),機械工学実験実習Ⅴ(5),エネルギーシステム工学(専1),流体力学(専2)など

受講上のアドバイス:広範囲にわたる基礎知識が必要となるため,基礎・関連科目の内容も参考にしながら学習すること。20分を越える遅刻・早退は1欠課,65分を超える遅刻・早退は2欠課とする。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス,概要〔伝熱の3形態〕
熱伝導の基礎1〔フーリエの法則〕
・伝熱の3形態について説明できる。
・熱力学第二法則に基づき,熱移動の向きについて説明できる。
・フーリエの法則を説明できる。
2週 熱伝導の基礎2〔熱伝導方程式と境界条件〕
定常熱伝導1〔平板の熱伝導〕
◎平板の熱伝導に関する課題
・熱伝導方程式と境界条件について説明できる。
・平板の熱伝導に関する基礎的な微分方程式を解くことができる。
3週 定常熱伝導2〔熱通過率・熱抵抗〕
◎熱通過率に関する課題
・多層平板の熱通過率・熱抵抗に関する計算ができる。
4週 フィンの伝熱1〔フィン内部の温度分布〕 ・フィンの効果について説明できる。
・フィンの熱移動の特徴について説明できる。
5週 フィンの伝熱2〔フィンからの放熱,フィン効率〕
◎フィンの伝熱に関する課題
・フィンからの放熱量とフィン効率について理解し,単純な形状のフィンに対してそれらの値を求めることができる。
6週 熱交換器1〔隔壁式熱交換器の分類,伝熱量〕
◎熱交換器に関する課題
・隔壁式熱交換器を流れの向きにより分類できる。
・高温流体から低温流体への伝熱量を求めることができる。
7週 熱交換器2〔対数平均温度差〕 ・対数平均温度差の式を導出でき,具体的な状況に対してその数値を求めることができる。
8週 前期中間試験
2ndQ
9週 前期中間試験の返却と解答解説
対流熱伝達の基礎〔対流熱伝達の分類,熱伝達率〕
・対流熱伝達の分類と熱伝達率について説明できる。
・層流と乱流の違いを説明できる。
10週 強制対流熱伝達1〔境界層,水平に沿う流れの熱伝達〕
◎平板に沿う流れの熱伝達に関する課題
・境界層について説明できる。
・平板に沿う流れの熱伝達について,レイノルズ数と臨界レイノルズ数を理解し,流れの状態に応じた適切な熱伝達関係式を選択できる。
・局所熱伝達率の式から平均熱伝達率を導出できる。
11週 強制対流熱伝達2〔管内および円柱まわりの強制対流熱伝達〕
◎円柱まわりの強制対流熱伝達に関する課題
・管内および円柱まわりの強制対流熱伝達について,レイノルズ数と臨界レイノルズ数を理解し,流れの状態に応じた適切な熱伝達関係式を選択できる。
12週 自然対流熱伝達1〔浮力,物体まわりの自然対流熱伝達〕
◎自然対流熱伝達に関する課題
・物体まわりの自然対流熱伝達について,流れの状態に応じた適切な熱伝達関係式を選択できる。
13週 ふく射熱伝達1〔ふく射熱伝達のメカニズムと保存則,ふく射熱流束,黒体〕 ・電磁波を波長に基づき分類できる
・ふく射熱伝達のメカニズムと保存則,黒体の性質について説明できる。
14週 ふく射熱伝達2〔形態係数,実在面・灰色面〕
◎ふく射熱伝達に関する課題
・形態係数とその基本特性について説明できる。
・実在面と灰色面について説明できる。
・灰色面間のふく射熱交換について説明できる。
15週 前期末試験
16週 前期末試験の返却と解答解説
後期
3rdQ
1週 定常熱伝導3〔円筒の熱伝導〕
◎多層円筒の熱抵抗に関する課題
・円筒の熱伝導に関する基礎的な微分方程式を解くことができる。
・多層円筒の熱抵抗を求めることができる。
2週 定常熱伝導4〔内部発熱を伴う熱伝導〕
◎内部発熱を伴う熱伝導に関する課題
・内部発熱項を有する1次元の熱伝導方程式を解くことができる。
3週 非定常熱伝導〔温度が一様な物体の温度変化〕
・温度が一様な物体の温度変化に関する計算ができる。
4週 強制対流熱伝達3〔強制対流の基礎式と無次元化〕 ・強制対流の基礎式と関係する無次元パラメータについて説明できる。
5週 強制対流熱伝達4〔円柱群まわりの強制熱伝達〕
◎円柱群まわりの強制熱伝達に関する課題
・円柱群まわりの流れについて,レイノルズ数と臨界レイノルズ数を理解し,流れの状態に応じた適切な熱伝達関係式を選択できる。
6週 自然対流熱伝達2〔自然対流の基礎式,垂直平行平板間の自然対流〕
◎垂直平行平板間の自然対流に関する課題
・自然対流を理解し,垂直平行平板間の自然対流に関する基礎的な微分方程式を解くことができる。
7週 ふく射熱伝達3〔ふく射熱伝達の復習,形態係数の計算〕
◎形態係数に関する課題
・形態係数とその基本特性について説明でき,閉空間系の形態係数を計算できる。
8週 後期中間試験
4thQ
9週 後期中間試験の返却と解答解説
10週 相変化を伴う熱伝達1〔相変化と潜熱,相変化を利用した伝熱技術〕 ・相変化と潜熱について説明できる。
・相変化を利用した工学的技術について例示し,説明できる。
11週 相変化を伴う熱伝達2〔凝縮の分類,膜状凝縮の理論〕
◎膜状凝縮に関する課題1
・膜状凝縮の理論について理解し,凝縮膜厚および熱伝達率を導出できる。
12週 相変化を伴う熱伝達3〔膜レイノルズ数,沸騰の分類〕
◎膜状凝縮に関する課題2
・膜状凝縮における膜レイノルズ数について理解し,流れの状態に関する計算ができる。
・沸騰を流動形態や流体温度に基づき分類できる。
13週 相変化を伴う熱伝達4〔沸騰曲線,核沸騰,膜沸騰〕 ・沸騰曲線および核沸騰・膜沸騰について説明できる。
14週 相変化を伴う熱伝達5〔膜沸騰の理論〕
◎膜沸騰に関する課題
・膜沸騰の理論について理解し,蒸気膜厚および熱伝達率を導出できる。
15週 学年末試験
16週 学年末試験の返却と解答解説

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学機械系分野熱流体層流と乱流の違いを説明できる。4前9,前10,前11,後12
レイノルズ数と臨界レイノルズ数を理解し、流れの状態に適用できる。4前12,前13,前14,後4,後5,後12
熱力学の第二法則を説明できる。4前1

評価割合

試験課題合計
総合評価割合7030100
基礎的能力000
専門的能力7030100
分野横断的能力000