社会科学

科目基礎情報

学校 宇部工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 社会科学
科目番号 15001 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 機械工学科 対象学年 5
開設期 1st-Q 週時間数 2
教科書/教材 使用しない
担当教員 小川 泰治

到達目標

① 福島原子力発電所の事故を事例として、原子力のような高度に専門的な科学技術との向き合い方をめぐる問題や課題にはどんなものがあるか、十分に理解し、説明できる。【現代の科学技術の課題の理解】                     
② 科学技術をめぐるコミュニケーションの困難さの要因やその解決策について、対話を通して粘り強く考え、自身の考えの到達地点を口頭や紙面上で表現できる。【科学技術コミュニケーションをめぐる対話と考察】

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安(優)標準的な到達レベルの目安(良)最低限の到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安(不可)
評価項目1 【現代の科学技術の課題の理解】原子力のような高度に専門的な科学技術との向き合い方をめぐる問題や課題にはどんなものがあるか、テキスト上にあるキーワードを示せば8割以上のものについて正しい理解を選び答えるか文章で説明できる。原子力のような高度に専門的な科学技術との向き合い方をめぐる問題や課題にはどんなものがあるか、テキスト上にあるキーワードを示せば7割以上のものについて正しい理解を選び答えるか文章で説明できる。原子力のような高度に専門的な科学技術との向き合い方をめぐる問題や課題にはどんなものがあるか、テキスト上にあるキーワードを示せば6割以上のものについて正しい理解を選び答えるか文章で説明できる。原子力のような高度に専門的な科学技術との向き合い方をめぐる問題や課題にはどんなものがあるか、テキスト上にあるキーワードを示しても6割未満のものについてしか正しい理解を選び答えたり文章で説明したりができない。
評価項目2 【科学技術コミュニケーションをめぐる対話と考察】科学技術をめぐるコミュニケーションの困難さの要因やその解決策について、対話にも真摯に取り組んだうえで、自身の考えの到達地点を口頭や紙面上で十二分に表現できる。科学技術をめぐるコミュニケーションの困難さの要因やその解決策について、対話に取り組んだうえで、自身の考えの到達地点を口頭や紙面上である程度まで表現できる。科学技術をめぐるコミュニケーションの困難さの要因やその解決策について、対話に取り組んだうえで、自身の考えの到達地点を口頭や紙面上で表現できる。科学技術をめぐるコミュニケーションの困難さの要因やその解決策について、対話に取り組めていない。あるいは、自身の考えの到達地点を口頭や紙面上で表現できていない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
【授業全体のテーマ】科学技術についてのコミュニケーションの難しさはどこにあるのか?ー原子力発電事故を例に考えるー

【テーマ設定の背景】
近年、科学技術の発展が目覚ましく、高専生もそのような技術の一端を担うべく日々専門的技術の習得に励んでいると思う。他方で、そういった科学技術の高度化や専門細分化は、その恩恵を受けるはずの市民と科学技術との距離をますます遠くさせるという面ももっている。確かに私たちは一部のマニアや専門家を除いて、自分の身の回りにある工業製品や自身の生活に大きな影響(利便性)を与えている科学技術の仕組みやリスクを十分には理解しないまま、日々の生活を過ごしている。だが、そういった自体はひとたび事故や災害によって科学技術のもろさが明らかになると一変する。その典型例が福島原発の事故である。科学技術が高度化・専門細分化すると同時にそれの与える影響があまりにも広範囲にーー時に一つの世代や地域には容易に収まらないほどにーーなった現代、その「当事者」の範囲もとても広がっているし、意思決定にかかわるべき人々も多くなるはずだ。

はたして、科学技術のリスクとメリットを天秤にかけながら、その技術の導入の是非や運用、リスク配分について誰が、どのように決めていけばよいのだろうか。こういった問題は現代では科学技術コミュニケーションと呼ばれ、専門家と市民がどのようにして話し合いを進めながら、意思決定をしていくことができるか、が実践され・研究されている。授業者の専門でもある「哲学対話」はこの分野にまだ直接関わっているわけではないが、隣接する分野ではありうる。また哲学対話とも縁が深い「サイエンスカフェ」は科学技術コミュニケーションの一分野だ。これらに共通するのは専門家を権威とし、市民をその知識や成果を(ありがたく、無批判に)受け取るものとみなす一方向的なモデルから脱却し、専門家と市民が双方向性のあるコミュニケーションをしていくための場を開く必要があるという問題意識である。

というわけで、この授業では具体的には福島原発事故をとりあげたテキストをともに読みながら、現代の高度に専門化した科学技術コミュニケーションの難しさの要因を学んでいく。そして、そのうえで、最終的にはその困難さを乗り越えるためのコミュニケーションのあり方についても共に考えていきたいと考えている。
授業の進め方・方法:
【学修単位科目】
この科目は学修単位科目のため、事前・事後学習としてレポートやポートフォリオを実施する。
その際には、Teamsによるオンライン上での課題提出を指示する予定である。また、資料共有についてもTeams上で行うことがあるので、あらかじめ自身のアカウントとパスワードを確認しておくこと。

【使用テキストおよびグループワーク】
授業計画にある「テキストを読む」の回では、直江清隆(2012)「原子力とどのように向き合えばよいのだろうか」(直江、越智編『高校倫理からの哲学 別巻 災害に向き合う』、岩波書店、pp.219-240)をグループごとに読み、ディスカッションをしていく予定である。その際にはあらかじめ担当者を1名決める。担当者は①その回の範囲についての要約の報告、②グループディスカッションでの司会や報告、③授業後のレポートの作成、を行う予定である。また担当者以外も毎回の授業後には感想の提出を課す。

【評価】
期末試験50%:50点満点の期末試験を実施する。テキストや教員によるミニレッスンの内容についての理解を問う問題に加えて、授業内容の理解を前提とした記述問題(複数の人物による架空の対話文の作成)を出題する予定。
ポートフォリオ30%:授業後に各回の内容を踏まえた感想を提出する。5点×6回(※自身の担当回を除く授業回数)=30。
レポート20%:「テキストを読む」の自身が担当する回についての報告資料および授業後レポートを作成する。
注意点:
【注意】
新型コロナウイルス感染症への不安などから授業でのディスカッション活動に不安を感じる、授業を欠席したいという希望や悩みがある場合は、担当教員まで相談をしてください。そういった申し出は勇気がいると思いますが、不安があればそれを教えてもらって、一緒に、どうしていくのがよいかを考えたいと心から思っています。申し出た方に不利益が生じないように、学習内容や方法を検討し、提案します。もちろん、小川個人の授業にとどまらず、不安や悩みもあると思います。なにかあれば相談していただいて、一緒に解決策を考えましょう。

【授業の約束】
教員からは以下のことをお約束します。
・みなさんにとって意味のあることだと信じた内容を一生懸命授業します。
・評価や授業の進め方を含むさまざまなことについて理不尽なやり方をしません。
・ほぼすべての正当なしかたでなされた質問、問い合わせ、要望については真摯に対応します。
受講生のみなさんには以下のことを約束してもらうようお願いをします。
・一緒に授業を受けているクラスメイトにも、授業担当者にも、迷惑となる言動はしないてください。
・教室を授業を真面目に楽しみ、哲学しようとしている人のための空間にすることに協力してください。
※グループワーク中などのスマホの使用を見つけた場合、指摘し、回収することもあります。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 導入、担当決め&プレ対話&ミニレッスン①「福島原子力発電をめぐる今」 授業テーマの背景を理解したうえで、ディスカッションを通して問題を把握することができる。
2週 「アクティブ・ブックダイアログ」でテキストを読む。 テキストのポイントをまとめ、メンバーに理解しやすいような説明ができる。
ディスカッションを通してテキストが示す科学技術の課題を理解することができる。
3週 「アクティブ・ブックダイアログ」続き+哲学対話 テキストのポイントをまとめ、メンバーに理解しやすいような説明ができる。
ディスカッションを通してテキストが示す科学技術の課題を理解することができる。
4週 ミニレッスン②「技術者とは何をする人か」
ミニレッスン③「安全神話はなぜ生まれるのか」
講義ポイントを理解したうえでグループワークに参加できる。また授業後には指示された課題について自分の考えを述べることができる。
5週 ミニレッスン④「リスク配分NIMBY問題、未来世代への責任」
ミニレッスン⑤「科学技術コミュニケーションの二つのモデル」
講義ポイントを理解したうえでグループワークに参加できる。また授業後には指示された課題について自分の考えを述べることができる。
6週 これまでの授業を踏まえて全体でのディスカッションor紙上対話① これまでの授業を踏まえ、科学技術コミュニケーションをめぐる課題について問いを立て、ディスカッションを通して考察を深めることができる。
7週 これまでの授業を踏まえて全体でのディスカッションor紙上対話② これまでの授業を踏まえ、科学技術コミュニケーションをめぐる課題について問いを立て、ディスカッションを通して考察を深めることができる。
8週 期末試験および答案返却 第一学期の内容についての期末試験および答案返却を行う。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会公民的分野人間の生涯における青年期の意義と自己形成の課題を理解し、これまでの哲学者や先人の考え方を手掛かりにして、自己の生き方および他者と共に生きていくことの重要性について考察できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前8
現代社会の考察現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。4前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8

評価割合

試験ポートフォリオ(提出物)レポート合計
総合評価割合503020100
基礎的能力30201060
専門的能力5005
分野横断的能力15101035