倫理A

科目基礎情報

学校 宇部工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 倫理A
科目番号 32004 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 制御情報工学科 対象学年 2
開設期 3rd-Q 週時間数 4
教科書/教材 倫理(竹内整一ほか、東京書籍)
担当教員 小川 泰治

到達目標

①【哲学者たちの思索の理解】講義で取り上げられた哲学者や先人の考え方を理解し、他者とともに生きる自己という観点と結びつけて説明することができる。
②【自身での問いの設定と探究】普遍、自由、科学(理性)、善悪や正不正、宗教といった近代的な思想の根幹となる考え方をふまえ、現代における文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定し考察できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
評価項目1 【哲学者たちの思索の理解】講義で取り上げられた哲学者や先人の考え方を十分に理解し、他者とともに生きる自己という観点と結びつけて説明することができる。講義で取り上げられた哲学者や先人の考え方を概ね理解し、他者とともに生きる自己という観点と結びつけて説明することができる。講義で取り上げられた哲学者や先人の考え方を概ね理解することができる。講義で取り上げられた哲学者や先人の考え方を理解することができない。
評価項目2 【自身での問いの設定と探究】近代的な思想の根幹となる考え方を十分に踏まえ、現代における文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定し、考察を深めていくことができる。近代的な思想の根幹となる考え方を十分に踏まえ、現代における文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定することができる。近代的な思想の根幹となる考え方を踏まえ、現代における文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定することができる。近代的な思想の根幹となる考え方と現代における文化や社会の特質と課題について結びつけて問題を設定することができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
■第3学期開講

■本講義の二つの目標とその関係
本講義では①【哲学者たちの思索の理解】と②【自身での問いの設定と探究】の大きく二つの目標を掲げています。それに対応して、具体的に授業では以下の2つの内容を実施します。
① 哲学や倫理学がこれまで取り組んできたテーマの中から特に古代〜近代までに顕著な、普遍的真理、自由、科学的思考(理性)、宗教、善悪といった概念を取り上げ、これらの概念について思索を深めてきた先人の思想の理解をする。【哲学者たちの思索の理解】
② そういった先人の思索を踏まえ、受講者自身が自ら問いを立て、それを探究することで、日常生活や現代の文化や社会に潜む問いを発見し、当たり前を問い直す(=「哲学する」)姿勢や方法を身につける。【自身での問いの設定と探究】
一見すると、上記2点は全く異なる活動のように思われるかもしれませんが、そうではありません。なぜなら、哲学者たちが考えてきた内容を学ぶことは彼らが出した答えをただ暗記することではなく、彼らが世界の当たり前に対してどのように問いを抱き、どのように探究してきたのかを追体験しようとすることだからです。この追体験が授業内でうまく行われれば、私たちは自分自身の世界についての見方がいかに固定的なものだったかを理解することができ、自分たち自身の当たり前を問い直すための準備ができるでしょう。

■「倫理」という科目名についての誤解
「倫理」という科目名から中学校までの「道徳」という教科を思い出される方もいるかもしれません。確かに、倫理(ethic)と道徳(moral)は「人として守り、行うべき善悪の規範」を意味する類義語です。ですが、この授業では、みなさんに対して「他人に迷惑をかけないように生きるべき」であるとか「嘘をつかずに正直にいきるべき」とった“答え”を教えることは目指していません。むしろ、「他人に迷惑をかけるとはどういうことか」「そもそも本当に嘘はついてはいけないのか」といった“問い”を共に考えることを重視します。それを通して、社会一般でいう倫理や道徳といったものについて「なぜ○○はそうなっているのか」「そもそも××とはなんなのか」「どうやって△△すればよいのか」といった問いかけにより問い直す=哲学する、ことができるようになることを目指します。(これは一般には倫理学(ethics)という学問分野が担ってきたものと重なります。)

■なぜ当たり前を問い直すのか
なぜそのような問い直しが重要なのかは授業中に少しずつお伝えできればと思っていますが、一点だけ述べておくならば、「当たり前を問い直すことができる生き方ほうが私たち自身が生きやすい」ということです。学校や社会のルールや慣習、道徳に疑問を持たず生活ができているうちはあまり気になりませんが、実際はそれらは私たちの実際の生活における行動や物の見方、他人との関わり方を強く縛っています。これらの縛り(「呪い」と言っても良いかもしれない)は必ずしも絶対的なものではないこと、それに対してあなた自身が疑問を投げかけてよいということ、をこの授業を通して一緒に確認したいと思っています。
授業の進め方・方法:
■授業の進め方
上記概要にあるような授業内容を実現するために、教科書および配布資料をもとにした講義と同程度、学習内容をもとに問いを設定し、グループワークなどによって考察を行う時間を確保します。その際には、「子どもの哲学」や「哲学対話」と呼ばれる実践を参考にしながら、クラス全体ないしグループでの対話活動や、紙上での対話を行う予定です。

■授業の方法の特徴
・対話的活動を行う際には必ずしも発言を必須とはしません。(発言の量・質を成績評価には結び付けません。)その代わりに、他者の発言をよく聴き、共に考えているかどうか、を確認するためにワークシートの提出を課します。
・それぞれのテーマについて、課題に対して自身の考えを記述することで受講者の授業の理解度を確認したり、対話的活動を通してなにを考えたのかを記録し、さらにどのような問いを発見したかを書き留めていくためのポートフォリオを継続的に実施し、成績評価の資料とします(オンライン上での実施を予定)。
・授業内容に関するレポート(「第8回 世界の宗教」で実施予定)の作成及び授業内でのプレゼンテーションも実施し、成績評価の資料とします。
・各テーマの学習終了ごとにオンライン上で小テストを行う予定です。

■授業の約束
教員からは以下のことをお約束します。
・みなさんにとって意味のあることだと信じた内容を一生懸命授業します。
・評価や授業の進め方を含むさまざまなことについて理不尽なやり方をしません。
・ほぼすべての正当なしかたでなされた質問、問い合わせ、要望については真摯に対応します。
受講生のみなさんには以下のことを約束してもらうようお願いをします。
・一緒に授業を受けているクラスメイトにも、授業担当者にも、迷惑となる言動はしないてください。
・教室を授業を真面目に楽しみ、哲学しようとしている人のための空間にすることに協力してください。
※グループワーク中などのスマホの使用を見つけた場合、指摘し、回収することもあります。
注意点:
・授業計画は,授業の進捗や実際の社会の動向などの状況に応じて内容や順番を変更する可能性があります。
・本講義では課題や小テストの実施のほか、補足資料の配布、欠席者への資料の共有などの際に、Microsoft Teamsを活用する予定です。あらかじめ自身のアカウントを確認し、ログインができるように準備をしておいてください。
・新型コロナウイルス感染症への不安などから授業でのディスカッション活動に不安を感じる、授業を欠席したいという希望や悩みがある場合は、担当教員まで相談をしてください。そういった申し出は勇気がいると思いますが、不安があればそれを教えてもらって、一緒に、どうしていくのがよいかを考えたいと心から思っています。申し出た方に不利益が生じないように、学習内容や方法を検討し、提案します。もちろん、小川個人の授業にとどまらず、不安や悩みもあると思います。なにかあれば相談していただいて、一緒に解決策を考えましょう。
・現在本校では、英語系科目以外でも日常的に英語に触れることを目的とし、授業内で英語による説明を取り入れることとしています。本講義でもそれに順じ、必要に応じて授業で取り上げる語句などに対応する英単語を紹介する、重要な文については短い英文で説明する場合があります。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 1回目 導入:「倫理」ってどんなこと?
2回目 哲学対話の体験①:不思議や驚きを「問い」にしよう
・シラバスの意図するところが概ね理解できる。
・哲学対話に真剣に取り組み、楽しむことができる。
2週 3回目 古代ギリシアの哲学①:哲学者とはだれのことか?①
4回目 古代ギリシアの哲学②:永遠に変わらないものは存在するか?
・取り上げられた問いに関連する哲学者や先人の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
3週 5回目 自由①:自由とわがままはどう違う?
6回目 自由②:自由ってよいこと、わるいこと?
・取り上げられた問いに関連する哲学者や先人の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
4週 7回目 哲学対話の体験②:お互いに問いかけあう
8回目 世界の宗教:絶対的なものを信じるってどういうことだろうか?
・哲学対話を通して他者の意見をよく聴き、問うことができる。
・レポートを作成し、相互に批評することを通して、キリスト教、仏教、イスラームについての特徴と違いについて理解することができる。
5週 9回目 宗教と科学:信じることと考えることはどう違うだろうか?
10回目 近代の科学的思考:科学的とはどういうことか?
・西洋世界でのキリスト教の展開と近代科学の誕生について、関連する哲学者や先人の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
6週 11回目 善と悪①:善・悪の基準はどこにある?
12回目 善と悪②:嘘をつくことは悪いこと?
・取り上げられた問いに関連する哲学者や先人の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
7週 13回目 新型コロナウイルス感染症と倫理的課題
14回目 哲学対話の体験③:当たり前を問い直す
・新型コロナウイルス感染症に関する倫理的課題にはどんなものであるかを理解し、これまでの授業で取り上げた内容と関連づけて考察をすることができる。
・哲学対話を通して、自他の当たり前について問い、考えることができる。
8週 15回目 定期試験
16回目 答案返却・解説
・第3学期の内容について試験を行う。
・試験を返却し、解説を行う。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会地理歴史的分野民族、宗教、生活文化の多様性を理解し、異なる文化・社会が共存することの重要性について考察できる。2
公民的分野人間の生涯における青年期の意義と自己形成の課題を理解し、これまでの哲学者や先人の考え方を手掛かりにして、自己の生き方および他者と共に生きていくことの重要性について考察できる。3
現代社会の考察現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。3

評価割合

期末試験小テストポートフォリオ(=各種提出物)レポート(世界の宗教)合計
総合評価割合50202010100
知識の基本的な理解 【知識・記憶、理解レベル】40205065
思考・推論・創造への 適用力【適用レベル】10010525
態度・志向性(人間力) 【理解レベル】005510