倫理A

科目基礎情報

学校 宇部工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 倫理A
科目番号 42004 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 物質工学科 対象学年 2
開設期 1st-Q 週時間数 4
教科書/教材 なし(「現代社会AB」で使用した資料集『クローズアップ公共』を参考書として持参してもらう回があります。)
担当教員 小川 泰治

到達目標

①【哲学者の思索の理解】講義で取り上げられた哲学者や先人の考え方の特徴と相違点を理解し、キーワードを示せばその意味や現状・課題について、適切な理解を解答することができる。
②【問いの設定と探究】近代的な思想の根幹となる考え方をふまえ現代の文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定し考察できる。
③【対話的な態度や姿勢の獲得】問題に対して複数の考え方があることを十分に理解したうえで、対話に真摯に取り組むことができる。また、そういった対話のあり方を紙面上に再現できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安(優)標準的な到達レベルの目安(良)未到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安(不可)
評価項目1 【哲学者の思索の理解】哲学者や先人の考え方について、キーワードを示せばその意味や現状・課題について、適切な理解を即座に解答できる。哲学者や先人の考え方について、適切な理解を選択肢の中からおおよそ解答できる。哲学者や先人の考え方について、キーワードを示せばその意味や現状・課題について、適切な理解を選択肢の中から半分程度は解答できる。哲学者や先人の考え方について、キーワードを示せばその意味や現状・課題について、適切な理解を選択肢のなかから解答することが十分にできない。
評価項目2 【問いの設定と探究】近代的な思想の根幹となる考え方を十分に踏まえ、現代の文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定し、考察を深めていくことができる。近代的な思想の根幹となる考え方を十分に踏まえ、現代の文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定することができる。近代的な思想の根幹となる考え方を踏まえ、現代の文化や社会の特質と課題について自ら問題を設定することができる。近代的な思想の根幹となる考え方と現代の文化や社会の特質と課題について結びつけて問題を設定することができない。
評価項目3 【対話的な態度や姿勢の獲得】問題に対して複数の考え方があることを十分に理解したうえで、対話に真摯に取り組むことができる。そういった対話のあり方を紙面上で十分に再現できる。問題に対して複数の考え方があることを理解したうえで、対話に真摯に取り組むことができる。そういった対話のあり方を紙面上で再現しようと試みることができる。問題に対して複数の考え方があることを理解したうえで、対話に取り組むことができる。あるいは、そういった対話のあり方を紙面上で再現しようと試みることができる。問題に対して複数の考え方があることを理解したうえで、対話に取り組むことが十分にできていない。また、そういった対話のあり方を紙面上で再現しようと試みることができていない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
■本講義の3つの目標とその関係
本講義では①【哲学者の思索の理解】と②【問いの設定と探究】、そして③【対話的な態度や姿勢の獲得】の3つの目標を掲げています。それに対応して授業では以下の3つの内容を実施します。
① 哲学や倫理学がこれまで取り組んできたテーマからI部「考える」II部「自由」III部「幸福」IV部「普通」を取り上げ、これらのテーマについて思索を深めてきた先人の思想の理解をする。評価は小テストおよび期末試験で行います。【哲学者の思索の理解】
②先人の思索を踏まえ、受講者自身が自ら問いを立て探究する。ポートフォリオ課題のなかで授業の感想および自身で問いを立てる機会を設けます。【問いの設定と探究】
③哲学対話の活動を通して日常生活や現代の文化や社会に潜む問いを発見し、当たり前を問い直す(=「哲学する」)。また哲学するために必要な姿勢や方法を身につける。ワークシートの記入のほか、期末試験でも哲学対話を紙面上で再現するような問題を出題します。【対話的な態度や姿勢の獲得】
一見すると、上記3点は全く異なる活動のように思われるかもしれませんが、そうではありません。なぜなら、哲学者たちが考えてきた内容を学ぶことは彼らが出した答えをただ暗記することではなく、彼らが世界の当たり前に対してどのように問いを抱き、どのように探究してきたのかを追体験しようとすることだからです。この追体験が授業内でうまく行われれば、私たちは自分自身の世界についての見方がいかに固定的なものだったかを理解することができ、自分たち自身の当たり前を問い直すための準備ができるでしょう。

■「倫理」という科目名についての誤解
「倫理」という科目名から中学校までの「道徳」という教科を思い出される方もいるかもしれません。確かに、倫理(ethic)と道徳(moral)は「人として守り、行うべき善悪の規範」を意味する類義語です。ですが、この授業では、みなさんに対して「他人に迷惑をかけないように生きるべき」であるとか「嘘をつかずに正直にいきるべき」とった“答え”を教えることは目指していません。むしろ、「他人に迷惑をかけるとはどういうことか」「そもそも本当に嘘はついてはいけないのか」といった“問い”を共に考えることを重視します。それを通して、社会一般でいう倫理や道徳といったものについて「なぜ○○はそうなっているのか」「そもそも××とはなんなのか」「どうやって△△すればよいのか」といった問いかけにより問い直す=哲学する、ことができるようになることを目指します。(これは一般には倫理学(ethics)という学問分野が担ってきたものと重なります。)

■公共×技術×倫理
1年次ではみなさんは「公共」の教科書を使って学習をしてきました。倫理もその延長線上として、現代の社会の課題や問題を意識しながら講義を計画していきます。実際に、資料集『クローズアップ公共』を参考書として持参してもらう回があります。また技術と社会とのかかわりを倫理・哲学の視点から考える機会も作っていきます。これらの点は普通科高校で行われる「倫理」とは異なる本講義の特色となるでしょう。

■授業の約束
教員からは以下のことをお約束します。
①みなさんにとって意味のあることだと信じた内容を一生懸命授業します。②評価や授業の進め方を含むさまざまなことについて理不尽なやり方をしません。③ほぼすべての正当なしかたでなされた質問、問い合わせ、要望については真摯に対応します。
受講生のみなさんには以下のことを約束してもらうようお願いをします。
①一緒に授業を受けているクラスメイトにも、授業担当者にも、迷惑となる言動はしないてください。 ②教室を授業を真面目に楽しみ、哲学しようとしている人のための空間にすることに協力してください。※グループワーク中などのスマホの使用を見つけた場合、指摘し、回収することもあります。
授業の進め方・方法:
■授業の進め方
上記概要にあるような授業内容を実現するために、配布資料をもとにした講義と同程度、学習内容をもとに問いを設定し、グループワークなどによって考察を行う時間を確保します。

■授業の方法の特徴
・対話的活動を行う際には必ずしも発言を必須とはしません。(発言の量・質を成績評価には結び付けません。)その代わりに、他者の発言をよく聴き、共に考えているかどうか、を確認するためにワークシートの提出を課します。
・それぞれのテーマについて、課題に対して自身の考えを記述することで受講者の授業の理解度を確認したり、対話的活動を通してなにを考えたのかを記録し、さらにどのような問いを発見したかを書き留めていくためのポートフォリオを継続的に実施し、成績評価の資料とします(オンライン上での実施を予定)。
・各テーマの学習終了ごとにオンライン上で小テストを行う予定です。
注意点:
・授業計画は,授業の進捗や実際の社会の動向などの状況に応じて内容や順番を変更する可能性があります。
・課題や小テストの実施のほか、補足資料の配布、欠席者への資料の共有などの際にTeamsを使用します。
・現在本校では、日常的に英語に触れることを目的とし英語系科目以外でも授業内で英語による説明を取り入れることになっています。本講義でも英単語を紹介したり重要な文の英訳を紹介する場合があります。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 1回目 導入:「倫理」ってどんなこと?
2回目 第I部:考える① 哲学者とはだれのことか?
・シラバスの意図するところが概ね理解できる。
・テーマに関連する哲学者や先人(パスカル、ソクラテスなど)の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
2週 3回目 第I部:考える② 適切に考えるためには? 考えないでいるとどうなる?
4回目 哲学対話①:不思議や驚きを「問い」にしよう
・テーマに関連する哲学者や先人(ベーコン、デカルト、アレントなど)の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
・哲学対話に真摯に取り組み、すぐに答えの出ない問いについての探究を楽しむことができる。
3週 5回目 第II部:自由① なんで子どもの自由を大人が制限してもいいの?
6回目 第II部:自由② 自由って何をしてもいいってこと?
・テーマに関連する哲学者や先人(カント、サルトル、ミルなど)の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
4週 7回目 哲学対話②:お互いに問いかけあう
8回目 第III部:幸福① やらない善よりやる偽善?
・哲学対話を通して他者の意見をよく聴き、質問することができる。
・テーマに関連する哲学者や先人(ベンサム、ミルなど)の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
5週 9回目 第III部:幸福② 幸せが期待できなくてもやらなくてはいけないことはあるか?
10回目 哲学対話③:ふつうとはなんだろう?
・テーマに関連する哲学者や先人(カントなど)の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
6週 11回目 第IV部:普通① たくさん宗教や文化があるなかで「ふつう」とはなにを指すのか?
12回目 第IV部:普通② 多様な性のあり方があるなかで「ふつう」とはなにを指すのか?
・テーマに関連する哲学者や先人の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・小テストに8割程度正解することができる。
7週 13回目 第IV部:普通③ 「ちがう」人たちが共に生きていくためにはなにが必要か?
14回目 哲学対話④:「人それぞれ」ってなんだ?
・テーマに関連する哲学者や先人の思考過程を概ね理解し、さらに自ら問いをたて考えることができる。
・哲学対話を通して、「人それぞれでよい場面、こまる場面」について考えることができる。
8週 15回目 定期試験
16回目 答案返却・解説
・第1学期の内容について試験を行う。
・試験を返却し、解説を行う。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会地理歴史的分野民族、宗教、生活文化の多様性を理解し、異なる文化・社会が共存することの重要性について考察できる。3前6,前7,前8
公民的分野人間の生涯における青年期の意義と自己形成の課題を理解し、これまでの哲学者や先人の考え方を手掛かりにして、自己の生き方および他者と共に生きていくことの重要性について考察できる。3前1,前2,前3,前5,前6,前7,前8
現代社会の考察現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。3前1,前4,前7,前8

評価割合

期末試験小テストポートフォリオレポート合計
総合評価割合50202010100
知識の基本的な理解 【知識・記憶、理解レベル】40205065
思考・推論・創造への 適用力【適用レベル】10010525
態度・志向性(人間力) 【理解レベル】005510