無機・分析化学実験

科目基礎情報

学校 宇部工業高等専門学校 開講年度 平成31年度 (2019年度)
授業科目 無機・分析化学実験
科目番号 42028 科目区分 専門 / 必修
授業形態 実験 単位の種別と単位数 履修単位: 3
開設学科 物質工学科 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 3
教科書/教材 無機分析化学実験 テキスト (講義第1回目に配布), 基礎化学実験(京都大学大学院人間・環境学研究科化学部会, 共立出版)
担当教員 茂野 交市,福地 賢治

到達目標

 本科目は1年次の基礎物質工学実験で習得した器具の使用方法,実験データの取扱い,計算方法を使って,基本的な定性・定量分析実験に関する知識と技術を習得する。次の6点が到達レベルである。
(1) 実験を行うにあたって安全に関する基本的知識を理解し、安全第一の意識を定着することができる。
(2) 化学実験の際に使用する実験器具の名称を理解し、基本的な計算ができる。
(3) 基本的な実験器具および化学薬品の使用方法を理解し、実際に使用することができる。
(4) 定量分析(中和滴定, キレート滴定,酸化還元滴定,沈殿滴定)の実験ができる。
(5) 無機陽イオンの定性分析(系統的定性分析と陽イオンの各反応)の実験ができる。
(6) 化学実験における報告書(レポート)の作成方法を習得し、実践できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安(優)標準的な到達レベルの目安(良)最低限の到達レベルの目安(良)未到達レベルの目安(不可)
評価項目(1)安全に関する基本的知識を理解し、実験室においては助言なしに安全第一の態度を実践できる。安全に関する基本的知識を理解し、実験室においては多少の意識欠如はあるが、自ら気づいて助言なしに安全第一の態度を実践できる。安全に関する基本的知識を理解し、実験室においては多少の意識欠如があり助言が必要ではあるが安全第一の態度を実践できる。安全に関する基本的知識を理解しておらず、実験室において安全第一の態度を実践できない。
評価項目(2)化学実験の際に使用する実験器具の名称をほぼ10割理解し、基本的な計算がほぼ10割できる。化学実験の際に使用する実験器具の名称を8割以上理解し、基本的な計算が8割以上できる。化学実験の際に使用する実験器具の名称を6割以上理解し、基本的な計算が6割以上できる。化学実験の際に使用する実験器具の名称を6割未満しか理解しておらず、基本的な計算が6割未満しかできない。
評価項目(3)基本的な実験器具および化学薬品の使用方法を習得し、実際の操作では助言なしに遂行することができる。基本的な実験器具および化学薬品の使用方法を習得し、実際の操作では多少のミスはあるが自ら気づいて助言なしに遂行することができる。基本的な実験器具および化学薬品の使用方法を習得し、実際の操作では多少のミスがあり助言が必要ではあるが遂行することができる。基本的な実験器具および化学薬品の使用方法を習得しておらず、実際の操作を行うことができない。
評価項目(4)定量分析のキレート滴定・酸化還元滴定・沈殿滴定の類似点と相違点を全て理解し,実験を進めることができる。定量分析のキレート滴定・酸化還元滴定・沈殿滴定の類似点と相違点を2/3を理解し,実験を進めることができる。定量分析のキレート滴定・酸化還元滴定・沈殿滴定の類似点と相違点を完全には理解していないが,実験を進めることができる。定量分析を理解していないため,実験を進めることができない。
評価項目(5)定性分析の系統的分析および陽イオンの各反応を理解し,実験を進めることができる。定性分析の系統的分析を理解し,実験を進めることができる。定性分析の陽イオンの各反応を理解し,実験を進めることができる。定性分析の系統的分析および陽イオンの各反応を理解していないため,実験を進めることができない。
評価項目(6)報告書(要旨・原理・方法・結果・考察・参考文献および課題)の作成方法を理解し,実験内容が明瞭に理解できる報告書を作成できる。報告書(要旨・原理・方法・結果・参考文献および課題)の作成方法を理解しているが,考察において更なる努力が必要な報告書を作成できる。報告書(原理・方法・結果・参考文献および課題)の作成方法を理解しているが,要旨・考察において更なる努力が必要な報告書を作成できる。報告書(要旨・原理・方法・結果・考察・参考文献および課題)の作成方法を理解していないため,報告書を作成できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
【第1,3,4学期開講】
本科目は基礎物質工学実験で習得した器具の使用方法,実験データの取扱い,計算方法を使って,基本的な定性・定量分析実験に関する知識と技術を習得する。
この科目は企業でセラミックス材料及びプロセスの開発を担当していた教員が、その経験を生かし、基礎となる無機分析化学について実験形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
【学習上の留意点・助言】実験は理工系学科の教育の根幹をなし,大きな意義を持つ。本実験では基礎物質工学実験で習得した技術の定着をはかりつつ、定性・定量分析で実践する。すべての物質は日常生活とは異なり高濃度のため危険と考えてよい。しっかりとした心構えで臨み,予習をきちんと行うことが履修上の要点である。準備学習としては,テキスト・補助資料を通読のこと。特に安全委関わる部分(試薬の性質・反応など)を熟読しておくこと。レポート作成としては,関連する基礎知識,またなぜ結果がそうなったのかその原理を,また予想された結果と異なった理由・原因,疑問に思うこと(課題発見力)をしっかりと考察すること。
【成績評価方法】各実験テーマごとに実験結果報告書(小テスト含む)及び報告書(レポート)を提出させ,実験に対する姿勢(実験ノート,予習状況,当日の実験操作)と共に総合的に評価する。単位を取得するためには原則としてすべてのレポートを提出する必要がある。報告書の採点には,別紙のルーブリック資料があり,授業開始時に配布する。原則として,正当な理由なくして欠席した場合には単位を与えない。
注意点:
補助教材:「ダイナミックワイド図説化学」 (東京書籍),「溶液の化学と濃度計算」 立屋敷哲著 (丸善)
なお、以下の授業計画における○は座学、★は実験項目を示す。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 実験全体の説明
○安全教育1
実験を進めるうえでの注意事項を各実験テーマの概略,レポートの作成方法について理解する。
危険物の取り扱い、危険な操作の際の注意点について理解する。
2週 ○濃度の計算
★基本操作の復習
駒込ピペット・メスシリンダー・ホールピペット・バーナーの使い方を復習する。
3週 ○中和滴定の説明
★中和滴定(1)
(1)試薬の調製3(シュウ酸標準溶液、NaOH水溶液)について理解する。
4週 ○イオン交換の説明
★中和滴定(2)
(2)陽イオン交換樹脂による陽イオンの除去(酸試料溶液の作成)について理解する。
5週 ★中和滴定(3) (3)NaOH水溶液の評定+標定されたNaOHと酸試料溶液の中和滴定について理解する。
6週 ○金属イオンの反応の説明
★金属イオンの反応(1)(2)
(1)1属:Ag+, Pb2+の反応、(2)2属:Cu2+, Bi3+の反応について理解する。
7週 ★金属イオンの反応(3)(4) (3)3属:Al3+, Cr3+, Fe2+, Fe3+の反応、(4)4属:Zn2+, Mn2+, Ni2+, Co2+の反応について理解する。
8週 まとめ 過去の小テストの解答および実験操作の講評を理解し、次回以降の操作に生かす。
全体の学習事項のまとめを行う。
2ndQ
9週
10週
11週
12週
13週
14週
15週
16週
後期
3rdQ
1週 【定性分析】
○金属イオンの反応と系統分析の準備
(1) 基本操作:蒸発乾固
2週
★1,2属金属イオンの系統分析
(1)第1,2属金属イオンの系統分析ができる。
3週
★3,4属金属イオンの系統分析
(1)第3,4属金属イオンの系統分析ができる。
4週
★1,2,3,4属金属イオンの系統分析
(1)第1,2,3,4属金属イオンの系統分析が連続してできる。
5週
★定性実技試験
(1)未知試料の系統分析
6週
★セラミックスの作製と評価
(1)セッコウ硬化体の作製と簡易評価ができる。
7週 【定量分析】
○キレート滴定の説明
★キレート滴定
★定量実技試験
(1)ZnO標準溶液の調製、(2)EDTA標準溶液の調製と標定ができる。
8週
★キレート滴定
(1)MgSO4・7H2O中のMgの定量、(2)宇部水道水中の硬度測定ができる。
4thQ
9週 ○沈殿滴定の説明
★沈殿滴定
(1)硝酸銀の調製、(2)Mohr法による硝酸銀の標定ができる。
10週
★沈殿滴定
(1)Fajans法による硝酸銀の標定、(2)硝酸銀による塩化銅(Ⅱ)溶液の標定ができる。
11週 ○I2法による酸化還元滴定の説明
★酸化還元滴定(I2法)
(1)I2標準溶液の調製、(2)Na2S2O3標準溶液の調製と標定ができる。
12週
★酸化還元滴定(I2法)
(3)宇部水道水中の溶存酸素の定量ができる。
13週 ○KMnO4法による酸化還元滴定の説明
★酸化還元滴定(KMnO4法)
(1)Na2C2O4標準溶液の調製、(2)KMnO4溶液の標定、(3)モール塩の標定ができる。
14週
★定量実技試験
 =酸化還元滴定(KMnO4法)
(1)定量分析の実技試験(H2O2の標定)
15週 まとめ
★後片付け
過去の小テストの解答および実技試験の説明講評を理解し、次回以降の操作に生かす。
全体の学習事項のまとめを行う。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。3
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。3
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。3
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3
専門的能力分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】分析化学実験中和滴定法を理解し、酸あるいは塩基の濃度計算ができる。4
酸化還元滴定法を理解し、酸化剤あるいは還元剤の濃度計算ができる。4
キレート滴定を理解し、錯体の濃度の計算ができる。4
陽イオンおよび陰イオンのいずれかについて、分離のための定性分析ができる。4

評価割合

実験レポート小テスト実技テスト態度(日報)合計
総合評価割合50201515100
知識の基本的な理解30155050
思考・推論・創造への適用力20510540
態度・志向性(人間力)0001010