自然科学概論

科目基礎情報

学校 宇部工業高等専門学校 開講年度 平成31年度 (2019年度)
授業科目 自然科学概論
科目番号 0087 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 経営情報学科 対象学年 5
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 なし(教科書の代替となるプリントを配布する)
担当教員 武藤 義彦

到達目標

(1) 力学現象,熱現象を説明できる,(2) 電磁気に関する現象を微分方程式を用いて記述できる,(3) 特殊相対論を支えるローレンツ変換を理解できる。(4)原子物理学など日常的に認知できない世界を論理的に説明できる,(5) メンデルの法則およびDNA,RNA,タンパク質を介した機能発現を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安(優)標準的な到達レベルの目安(良)最低限の達レベルの目安(可)未到達レベルの目安(不可)
評価項目1ニュートン力学則を微分方程式で表現できる。統計的観点から気体分子運動論を説明できる。運動量保存則の意味を説明できる。カルノーサイクルにおける熱収支,仕事,内部エネルギーの関係を説明できる。運動の三法則を説明でき,かつ位置・速度・加速度の関係を微積分を用いて記述できる。熱力学第1法則の考え方を説明できる。運動の三法則および熱力学第1法則を説明できない。
評価項目2電磁誘導の概念を理解・説明できる。磁場中を流れる電流に働く力をベクトル表記により理解できる。ローレンツ力を用いて,静磁場中の荷電粒子の運動を説明できる。クーロンの法則を用いて電荷間に働く力を求めることができる。金属内の自由電子の運動と電流を関連づけることができる。クーロンの法則を適用できない。金属内の自由電子の運動と電流を関連づけることができない。
評価項目3ローレンツ変換における不変量を認めた上で,質量とエネルギーの等価性を説明できる。ローレンツ変換に基づく「長さの収縮」「時間の遅れ」を説明できる。光速度不変の原理に基づく特殊相対論の考え方およびローレンツ変換の意図を説明できる。光速度不変の原理に基づく特殊相対論の考え方およびローレンツ変換の意図を説明できない。
評価項目4円軌道上の定常波とド・ブロイの式を関係づけ,電子の粒子性と波動性を説明できる。水素原子における電子の軌道半径を求めることができる。ボーアらの原子モデルおよび光電効果のメカニズムを説明できる。ボーアらの原子モデルおよび光電効果のメカニズムを説明できない。
評価項目5DNAにおける塩基・糖・リン酸の役割,DNAの複製・転写のメカニズム,RNAとタンパク質を介した機能発現を説明できる。メンデルの法則(優性の法則,分離の法則,独立の法則)に基づき,個体の遺伝子型と表現型の関係を説明できる。核に含まれる染色体の役割およびDNAの構造を説明できる。核に含まれる染色体の役割およびDNAの構造を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
経済における不確実性を記述する手法として自然科学,特に物理学が大きく寄与している。本講義では,最初に決定論的な物理学を概観した後,確率的に現象を捉える熱現象や原子物理学を学ぶ。また,終盤では生物学を分子レベルから捉える話題を取り上げる。
授業の進め方・方法:
スライドを多用し,物理現象と遺伝メカニズムについて直観的に理解できるよう,授業を進める。自然現象の記述には数式を用いるため,数式の意味を理解できるよう説明する。また,(細かい点に目をつぶってでも)全体的な論理展開の把握を優先する。さらに,昨年度の講義を撮影したビデオ映像を事前・事後学習用に提供する。
この科目は学修単位科目のため、事前・事後学習としてレポートや小テストを実施します。
注意点:
随所に数式が出てくるため,微積分,代数(ベクトル,行列とも),確率・統計の基礎知識,具体的には指数関数や対数関数の微積分,内積,外積などのベクトル演算,逆行列の計算,大数の法則,正規分布の解釈ができないと理解がおぼつかない。また,自然科学は論理的な枠組みを重視しているため,暗記でなく論理的思考により事象を理解すべきであり,配布するプリントを熟読すると共に,理解が困難ならば高校レベルの参考書(チャート式を推薦する)を随時,参照して欲しい。
また,数式が出てくると内容の理解を諦める学生に毎年のように出会う。数式を読む際の基本は,定数と変数を区別することにある。その結果として,「この式は1次式である」とか,「a と b の二乗が比例している」といった本質を掴めるようになる。
最後に,科目名が「概論」であるため幅広い話題を取り上げる。事前に配布するプリントをざっと読む程度の予習を期待する。

(1) ニュートン力学,熱現象などの古典物理学の概要を理解・説明できる。(10%)
(2) 電磁気に関する現象を代数や微分方程式を用いて記述・説明できる。(10%)
(3)特殊相対論による現象を理解し,説明できる。(10%)
(4)原子の構造,電子のもつ粒子性・波動性を説明できる。(10%)
(5) メンデルの法則およびDNA,RNA,タンパク質を介した機能発現を説明できる。(10%)
(5) 授業計画に挙げた各項目の演習課題を解くことができる。(50%)

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ニュートン力学(1):時間・距離・速度,剛体と質点,ニュートンによる「慣性系の導入」と「運動の三法則」 ・質点という理想形の仮定を理解できる。
・運動の三法則(慣性の法則,運動方程式,作用・反作用の法則)の考え方を理解できる。
2週 ニュートン力学(2):微積分を用いたニュートン力学則,運動量保存則 ・微積分を用いて力学則を表現できる。
・運動方程式から運動量保存則を導出できる。
3週 熱現象(1):気体の状態方程式,気体分子運動論,ジュールの実験,熱力学第1法則 ・理想気体の状態方程式の意味を理解できる。
・気体分子運動論に基づいて,気体の温度と運動エネルギーを関連づけることができる。
・熱,仕事に加えて,内部エネルギーの概念を理解でき,熱力学第一法則によるエネルギーの収支を説明できる。
4週 熱現象(2):気体の内部エネルギー,準静的変化とカルノーサイクル,熱力学第2法則 ・熱機関の基礎であるカルノーサイクルを用いて準静的変化を記述できる。
・熱機関の効率を計算できる。
5週 電気:クーロンの法則,静電場,電位,自由電子,電流 ・クーロンの法則を用いて荷電粒子間に働く力を求めることができる。
・静電場の概念を理解できる。
・金属内の自由電子の運動と電流を関連づけることができる。
6週 磁気:磁場,電流と静磁場(ローレンツ力,電流の作る磁場),磁束,電磁誘導 ・磁場中を流れる電流に働く力(フレミングの左手の法則)をベクトル表記により理解できる。
・ローレンツ力を用いて,静磁場中の荷電粒子の運動を説明できる。
・電磁誘導の原理を説明できる。
7週 中間試験
8週 相対論(1):マイケルソン・モーレーによるエーテル流の測定実験 とローレンツ収縮,特殊相対性理論 ・マイケルソン・モーレーの実験の意義を理解できる。
・光速度不変の原理に基づく特殊相対論の考え方およびローレンツ変換の意図を理解できる。
2ndQ
9週 相対論(2):運動による長さの収縮,運動による時間の遅れ,質量とエネルギーの等価性 ・ローレンツ変換に基づく「長さの収縮」「時間の遅れ」を説明できる。
・ローレンツ変換における不変量を認めた上で,質量とエネルギーの等価性を説明できる。
10週 原子物理学(1):陰極線の発見,エネルギー量子,光電効果と光量子仮説 ・Tomson, Ratherford, Bohrらの提案した原子モデルの概要および問題点を説明できる。
・エネルギー量子を用いた光電効果の論理を理解できる。
11週 原子物理学(2):ボーアの原子モデル,電子のもつエネルギー(ポテンシャル),円軌道上の定常波,ド・ブロイの式,電子のもつ波動性 ・水素原子における電子の軌道半径を求めることができる。
・円軌道上の定常波とド・ブロイの式を関係づけることができる。
・電子の粒子性と波動性という二面性を理解できる。
12週 細胞生物学:表現型と遺伝子型,メンデルの法則(優性の法則,分離の法則),遺伝子と染色体 ・メンデルの遺伝に関する実験方法を理解し,優性の法則,分離の法則を説明できる。
・二遺伝子雑種における独立の法則を確認できる。
13週 分子生物学:核酸(DNA,RNA),タンパク質(アミノ酸)の化学構造,ゲノム,DNAの複製・転写(RNAの生成),mRNA からタンパク質への翻訳 ・遺伝子の有する自己複製能力,遺伝情報発現能力の重要性を理解できる。
・DNAにおける塩基・糖・リン酸の役割を説明できる。
・DNAの複製・転写のメカニズムを理解できる。
・mRNA, tRNA, rRNA の役割を説明できる。
14週 ニューロン(神経細胞) ・ニューロンの特殊性および感覚・運動・介在ニューロンの役割を説明できる。
・シナプスを介した興奮伝達メカニズムを説明できる。
15週 定期試験
16週 学習事項のまとめおよび授業改善アンケートの実施 古典物理学および現代物理学における自然現象の記述を整理できる。また,生物学における遺伝をマクロ・ミクロレベルで整理できる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。3
原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。3
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。3
電気導体と不導体の違いについて、自由電子と関連させて説明できる。3
電場・電位について説明できる。3
クーロンの法則が説明できる。3
クーロンの法則から、点電荷の間にはたらく静電気力を求めることができる。3
オームの法則から、電圧、電流、抵抗に関する計算ができる。3
抵抗を直列接続、及び並列接続したときの合成抵抗の値を求めることができる。3
ジュール熱や電力を求めることができる。3

評価割合

試験発表相互評価態度小テストレポート合計
総合評価割合500001040100
知識の基本的な理解 【知識・記憶、理解レベル】30000102060
思考・推論・創造への 適用力【適用、分析レベル】2000002040
汎用的技能 【  】0000000
態度・志向性(人間力) 【  】0000000
総合的な学習経験と 創造的思考力【  】0000000