物理化学1

科目基礎情報

学校 阿南工業高等専門学校 開講年度 令和06年度 (2024年度)
授業科目 物理化学1
科目番号 1413D04 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 化学コース 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 福地賢治編 Professional Engineering Library 「物理化学」 実教出版、千原秀昭・稲葉章・鈴木晴(訳)「アトキンス物理化学要論」東京化学同人
担当教員 小西 智也

到達目標

物理化学とは、主として化学現象を物理学(たとえば熱力学や量子力学)の知識に基づいて原子・分子構造から本質的に理解し、また諸性質を定量的に表現しようとする学問の一分野である(教科書「まえがき」より引用)。
●前期の到達目標
以下の各項目を説明でき、応用問題を解けるにようになること。
1. 物質の状態とその特徴、および各相間の状態変化
2. 理想気体と実在気体の違い、および状態方程式による取り扱い
3. 放射性物質における放射線・放射性崩壊・核エネルギーの利用
●後期の到達目標
1. 熱力学の知識を用いて、化学平衡・反応速度・反応解析について説明でき、関連する応用問題を解くことができる。
2. 量子力学の基礎について説明でき、基本的な問題を解くことができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1物質の三態と中間相に関する演習問題を解くことができる。物質の三態と中間相の特徴、および臨界点について説明でき、例題を解くことができる。物質の三態と状態変化について説明できない。
評価項目2理想気体について分子の運動論や速度分布の理論的な取り扱いができ、演習問題を解くことができる。理想気体について分子の運動論や速度分布の理論的な取り扱いができ、例題を解くことができる。理想気体の性質や法則を説明できず、状態方程式を使った基本問題を解くことができない。
評価項目3実在気体の状態方程式や一般化線図について説明でき、演習問題を解くことができる。実在気体の状態方程式や一般化線図について説明でき、例題を解くことができる。理想気体と実在気体の違いについて説明できない。
評価項目4放射線の性質と利用、核エネルギーについて説明でき、演習問題を解くことができる。放射線の性質と利用、核エネルギーについて説明でき、例題を解くことができる。放射性物質・放射能・放射線の違いを説明できない。
評価項目5化学平衡に関する演習問題を解くことができる。化学平衡について例題を解くことができる。化学平衡について説明することができない。
評価項目6反応速度に関する演習問題を解くことができる。反応速度について例題を解くことができる。反応速度について説明することができない。
評価項目7反応解析に関する演習問題を解くことができる。反応解析について例題を解くことができる。反応解析について説明することができない。
評価項目8量子力学の基礎に関する演習問題を解くことができる。量子力学の基礎に関する演量子力学の基礎について例題を解くことができる。量子力学の基礎について説明することができない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 D-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
週1回開講する。前期は、物質の状態・理想気体・実在気体について学習するとともに、状態方程式を用いて気体をどのように取り扱えばよいか理解する。この概念は、化学工業における高圧ガスの取り扱い、耐圧容器や高圧反応容器の設計等に際して、大いに役立つものである。さらに放射性物質の原子核反応と放射線の特徴について学習し、放射線や核エネルギーの利用についての理解を深める。後期は、化学平衡・反応速度・反応解析について学習し、物質の状態や物理法則に従って、化学反応がどのように進行するのかを理解する。この概念は、例えば、工場で化学製品を製造するとき、原料はどのように加えたら良いのか、温度はどのくらいにすればよいのか、時間はどのくらい待てばよいのか、製品はどのくらいの収率が期待されるのかを考える上で必要不可欠となる。さらに量子力学の基礎についても取り扱い、「量子化学」の分野への導入を行う。
授業の進め方・方法:
予習として事前に教科書を読み、予習問題も解いておくこと。授業は主に、(1)予習の確認テスト、(2)教科書の解説、(3)演習によって構成される。(2)教科書の解説では、身近な現象や具体例を挙げながら、スライドや動画による視覚的な学習も取り入れる。(3)演習では、例題の解き方を確認したあと、演習問題に取り組み、体験による知識や技能の定着を促すとともに、応用力を身につける。毎回、LMS(manaba)を使って、授業の振り返りを行い、学習内容の要点を整理する。
【授業時間30時間+自学自習時間15時間】
注意点:
予習と演習と通して知識と技能の定着を確たるものにすること。物理化学で取り扱う内容は、実際に「自分で手を動かして」演習問題に取り組まないと、学習効果は全く見込めないといってよい。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 物質の状態(1) - 物質の三態と状態変化 物質の三態における相互変化について説明できる。
2週 物質の状態(2) - 気体と液体 理想気体の状態方程式、実在気体のファン・デル・ワールス式、クラウジウス・クラペイロンの式による基本的な計算ができる。
3週 物質の状態(3) - 固体と中間相 固体の結晶構造および中間相としての液晶や柔粘性結晶の特徴を説明できる。
4週 理想気体(1) - 理想気体の性質 状態方程式を理解し、温度、圧力、体積を算出できる。
5週 理想気体(2) - 混合気体の性質 混合気体の分圧と全圧を理解し、理想気体の分圧と全圧をモル分率と状態方程式から計算できる。
6週 理想気体(3) - 気体分子運動論 気体分子運動論から気体の圧力を定義し、温度と分子の運動の関係を説明できる。
7週 理想気体(4) - 分子速度の分布 マクスウェル-ボルツマン分布が分子の速度分布を表すことを説明でき、分子の平均速度や平均自由行程を計算できる。
8週 演習 1〜7週に学習した内容について演習問題を解くことができる。
2ndQ
9週 実在気体(1) - 理想気体からの偏倚 実在気体が理想気体の法則から偏倚する原因を、分子サイズおよび分子間引力の観点から説明できる。臨界温度を説明できる。
10週 実在気体(2) - 状態方程式 ファン・デル・ワールス式あるいはビリアル状態方程式を使って、実在気体のp-Vm-T関係を計算できる。
11週 実在気体(3) - 対応状態原理 対応状態原理に基づく一般化Z線図を用いて、実在気体のp-Vm-T関係を求めることができる。
12週 実在気体(4) - 混合物への適用 実在混合気体のp-Vm-T関係をファン・デル・ワールス式、ビリアル状態方程式および一般化Z線図を用いて得ることができる。
13週 原子核反応と放射線(1) - 放射線とその性質 放射線の種類と性質について説明できる。
14週 原子核反応と放射線(2) - 放射性物質・放射能・放射線 放射性物質・放射能・放射線の違いについて説明でき、放射性崩壊に関する各種計算問題を解くことができる。
15週 原子核反応と放射線(3) - 放射線および核エネルギーの利用 放射線および核エネルギーの利用方法について説明でき、核エネルギーを計算できる。
16週 演習 9〜15週に学習した内容について演習問題を解くことができる。
後期
3rdQ
1週 化学平衡(1) 1) 質量作用の法則を説明できる。
2) ルシャトリエの原理を説明できる。
3) 平衡状態で濃度・圧力・温度が変わった時の平衡移動の方向を答えられる。
2週 化学平衡(2) 1) 濃度平衡定数・圧力平衡定数を説明できる。
2) 圧力平衡定数をギブスエネルギーで表すことができる。
3) 平衡定数を用いて平衡組成(分圧)を計算できる。
3週 化学平衡(3) 1) 化学平衡の圧力による影響を圧平衡定数で説明できる。
2) 化学平衡の温度による影響を圧平衡定数で説明できる。
3) ファント・ホッフの式を用いて、異なる温度における圧平衡定数を計算できる。
4週 化学平衡(4) 1) 不均一反応の平衡定数を表すことができる。
2) 解離圧の温度依存性について説明できる。
3) 固相がかかわる反応の化学平衡に関する問題を解くことができる。
5週 反応速度(1) 1) 反応速度を濃度で表すことができ、計算することができる。
2) 反応速度式を表すことができ、反応次数について説明できる。
3) 反応次数を実験的に決定する方法について説明することができる。
6週 反応速度(2) 1) 1 次反応の積分型の速度式を計算できる。
2) 2 次反応(単分子反応・2分子反応)の積分型の速度式を計算できる
3) 半減期を計算できる。
7週 演習 1〜6週に学習した内容について演習問題を解くことができる。
8週 【中間試験】
4thQ
9週 反応解析(1) 1) 逐次反応の速度式を立て、問題を解くことができる。
2) 可逆反応の速度式を立て、問題を解くことができる。
10週 反応解析(2) 1) 素反応と律速段階について説明できる。
2) 素反応群に律速段階がある時の反応速度式を導出できる。
3) 併発反応の速度式を導出できる。
11週 反応解析(3) 1) 活性化エネルギー、反応速度の温度依存性について説明できる。
2) アレニウスの式を用いて活性化エネルギーを求めることができる。
3) 触媒の定義と触媒が反応速度を加速する機構について説明できる。
12週 量子化学基礎(1) 1) 量子論が誕生した背景を説明できる。
2) 黒体放射分布とエネルギー量子仮説について説明できる。
3) 光電効果と光量子仮説について説明できる。
13週 量子化学基礎(2) 1) 光電効果と光量子仮説について説明できる。
2) 水素原子の線スペクトルについて説明できる。
3) ボーアの原子モデルついて説明できる。
14週 量子化学基礎(3) 1) ボーアの量子条件と振動数条件について説明できる。
2) 不確定性原理について説明できる。
3) シュレーディンガー方程式の概要について説明できる。
15週 量子化学基礎(4) 1) 時間に依存しないシュレーディンガー方程式を導出できる。
2) 波動関数の意味と性質を説明できる。
3) 一次元の箱の中の粒子のシュレーディンガー方程式を解くことができる。
16週 演習 9〜15週に学習した内容について演習問題を解くことができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学放射線の種類と性質を説明できる。4
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。4
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。4
核分裂と核融合のエネルギー利用を説明できる。4
気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4
混合気体の分圧の計算ができる。4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4
平衡定数の温度依存性を計算できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。4
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。4
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。4

評価割合

試験ポートフォリオ提出物合計
総合評価割合70525100
基礎的能力3051045
専門的能力4001555
分野横断的能力0000