到達目標
1.量子化学の基本的近似法である摂動法, 変分法の概略を理解し、これら2種の近似法でHe原子の基底状態エネルギーを算出できる。
2.電子スピン、多体系反対称性波動関数としてのスレーター行列式を理解し、2電子系問題に適用しエネルギー準位を導出する方法を説明できる。この過程でクーロン積分, 交換積分についても物理的意味を説明できる。
3.軌道, スピン, 全角運動量演算子の各々の性質及び合成の規則を理解し、各原子軌道を項記号で表現できる。またフントの規則から各軌道の安定性を評価できる。さらに原子状態間遷移を項記号で表現でき、許容・禁制の選択側を判定できる。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 最低限の到達レベルの目安(可) |
評価項目1 | 量子化学の基本的近似法である摂動法, 変分法の概略を理解し、これら2種の近似法でHe原子の基底状態エネルギーを算出できる。 | 量子化学の基本的近似法である摂動法, 変分法の概略を理解し、どちらかの近似法でHe原子の基底状態エネルギーを算出できる。 | 量子化学の基本的近似法である摂動法, 変分法の概略を理解し、これら2種の近似法でHe原子の基底状態エネルギーを算出する方法を説明できる。 |
評価項目2 | 電子スピン、多体系反対称性波動関数としてのスレーター行列式を理解し、2電子系問題に適用しエネルギー準位を導出する方法を説明できる。この過程でクーロン積分, 交換積分についても物理的意味を説明できる。
| 電子スピン、多体系反対称性波動関数としてのスレーター行列式を理解し、2電子系問題に適用しエネルギー準位を導出する方針を説明できる。 | 電子スピン、多体系反対称性波動関数としてのスレーター行列式について説明できる。 |
評価項目3 | 軌道, スピン, 全角運動量演算子の各々の性質及び合成の規則を理解し、各原子軌道を項記号で表現できる。またフントの規則から各軌道の安定性を評価できる。さらに原子状態間遷移を項記号で表現でき、許容・禁制の選択側を判定できる。 | 軌道, スピン, 全角運動量演算子の各々の性質及び合成の規則を理解し、各原子軌道を項記号で表現できる。またフントの規則から各軌道の安定性を評価できる。 | 軌道, スピン, 全角運動量演算子の各々の性質及び合成の規則を理解し、各原子軌道を項記号で表現できる。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
本講義は、化学分野の基盤科目である物理化学の中でも、20世紀前半に急速に進展した量子化学について、その基礎を数学的手段を駆使した一貫した理論体系として把握する。次に化学への重要な応用として、いくつかの近似法を用いて多電子原子の電子状態を数理的に理解することを学ぶ。具体的問題解法を多く取り入れることで理解力を涵養し、応用化学分野への適応能力を身につける。この科目は企業で、半導体集積素子の設計及び製造プロセスの研究・開発を担当していた教員が、その経験を活かし、多電子原子について量子化学に基づき講義形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
授業内容は授業計画を参照すること。基本的に講義形式をとる。板書が主体であるが,関連資料のスライド紹介も取り入れる(特に分子軌道).学生への発問はするので(3-5回/1コマ),積極的に答えること。指名されない学生も積極的に考えること。計15回(計約60問)の課題は、自主的に考えて解き問題解法の力を養うこと。授業中に解法の説明を課すことがある。
注意点:
5年生前期までの数学・物理・物理化学系科目の知識を前提として活用するので、これらの内容をしっかり復習しておくこと。また授業各回毎に出された課題の実施を含む自学自習が不可欠である。授業時間内に自学自習課題の解説を十分に行うことは不可能なので、疑問点があれば質問に来ること。質問にあたっては、先ず自分で調べ考えてみて、何が理解できなかったのかをはっきりさせてから質問に来ること。
シラバス指定参考書:千原秀昭・江口太郎・斉藤一弥訳 「マッカーリ・サイモン 物理化学(上)・(下)」 東京化学同人
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
量子化学における近似法の基礎 |
摂動法(1次)によりHe原子の基底状態エネルギー準位を導出することができる。
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2週 |
量子化学における近似法の基礎 |
変分法(試行関数をH原子1s状態とする)によりHe原子の基底状態エネルギー準位を導出することができる。
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3週 |
電子スピン |
シュテルン-ゲラッハの実験、電子スピン角運動量の演算子・固有関数・固有値(固有方程式)について説明できる。
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4週 |
波動関数の対称性・反対称性 |
波動関数の対称性と反対称性(電子は交換に対しては反対称)を数理的に表現できる。パウリの排他律と反対称性波動関数の関係を説明できる。
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5週 |
スレーター行列式 |
多体系反対称性波動関数としてのスレーター行列式について説明できる。
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6週 |
反対称性波動関数とHe原子モデル |
He原子中の2電子に2×2のスレーター行列式(反対称性波動関数)を適用し、エネルギー準位を導出する方法を説明できる。クーロン積分, 交換積分について数理的に説明できる。
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7週 |
前半のまとめと演習問題 |
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8週 |
中間試験 |
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4thQ |
9週 |
ハミルトニアンの角運動量演算子 |
ハミルトニアンと軌道角運動量L^2, Lz及びスピン角運動量s^2, szの交換関係を算出できる。これらの同時観測性を説明できる。
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10週 |
スピン軌道相互作用 |
スピン軌道相互作用のハミルトニアンHsoを数理的に表現でき、軌道角運動量Lz, スピン角運動量Sz, 全角運動量Jz, J^2(J=L+S)との交換関係を算出できる、これらの同時観測性を説明できる。
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11週 |
原子の項記号 |
原子の項記号(L, S)を理解し、原子軌道を項記号によって表現できる。
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12週 |
ラッセル-ソーンダース(LS)結合 |
LS結合法による全角運動量の合成を理解し、原子軌道を項記号で表現できる。
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13週 |
フントの規則 |
フントの規則にしたがって項記号で表現された原子軌道の安定性を評価できる。
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14週 |
原子スペクトルと項記号 |
L, S, Jの変化で表現された原子状態間遷移の選択側を項記号表現に適用し、遷移の許容・禁制の判定ができる。
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15週 |
後半のまとめと演習問題 |
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16週 |
期末試験答案返却及び解説 |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
評価割合
| 定期試験 | 小テスト | ポートフォリオ | 発表・取り組み姿勢 | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 50 | 0 | 0 | 0 | 50 | 100 |
基礎的能力 | 10 | 0 | 0 | 0 | 10 | 20 |
専門的能力 | 30 | 0 | 0 | 0 | 30 | 60 |
分野横断的能力 | 10 | 0 | 0 | 0 | 10 | 20 |