到達目標
物理化学とは、主として化学現象を物理学(たとえば熱力学や量子力学)の知識に基づいて原子・分子構造から本質的に理解し、また諸性質を定量的に表現しようとする学問の一分野である(教科書「まえがき」より引用)。物理化学演習では、以下の項目を目標とする。
1. 物質の状態とその特徴、および各相間の状態変化について説明でき、関連する応用問題を解くことができる。
2. 理想気体と実在気体の違いおよび状態方程式による取り扱いを説明でき、関連する応用問題を解くことができる。
3. 放射性物質における放射線と放射性崩壊について説明でき、放射線と核エネルギーの利用に関する応用問題を解くことができる。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
評価項目1 | 物質の三態と中間相に関する演習問題を解くことができる。 | 物質の三態と中間相の特徴、および臨界点について説明でき、例題を解くことができる。 | 物質の三態と状態変化について説明できない。 |
評価項目2 | 理想気体について分子の運動論や速度分布の理論的な取り扱いができ、演習問題を解くことができる。 | 理想気体について分子の運動論や速度分布の理論的な取り扱いができ、例題を解くことができる。 | 理想気体の性質や法則を説明できず、状態方程式を使った基本問題を解くことができない。 |
評価項目3 | 実在気体の状態方程式や一般化線図について説明でき、演習問題を解くことができる。 | 実在気体の状態方程式や一般化線図について説明でき、例題を解くことができる。 | 理想気体と実在気体の違いについて説明できない。 |
評価項目4 | 放射線の性質と利用、核エネルギーについて説明でき、演習問題を解くことができる。 | 放射線の性質と利用、核エネルギーについて説明でき、例題を解くことができる。 | 放射性物質・放射能・放射線の違いを説明できない。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
週1回開講する。物理化学演習では、物質の状態・理想気体・実在気体について学習するとともに、状態方程式を用いて気体をどのように取り扱えばよいか理解する。この概念は、化学工業における高圧ガスの取り扱い、耐圧容器や高圧反応容器の設計等に際して、大いに役立つものである。さらに放射性物質の原子核反応と放射線の特徴について学習し、放射線や核エネルギーの利用についての理解を深める。
授業の進め方・方法:
予習として事前に教科書を読み、予習問題も解いておくこと。授業は主に、(1)予習の確認テスト、(2)教科書の解説、(3)演習によって構成される。(2)教科書の解説では、身近な現象や具体例を挙げながら、スライドや動画による視覚的な学習も取り入れる。(3)演習では、例題の解き方を確認したあと、一人であるいはグループワークで演習問題に取り組み、体験による知識や技能の定着を促すとともに、応用力を身につける。毎回、LMS/ポートフォリオシステム(manaba)を使って、授業の振り返りを行い、学習内容の要点を整理する。
【授業時間30時間+自学自習時間15時間】
注意点:
すでに学習した内容を多く含んでおり、復習的な意味合いが強いが、予習と演習と通して知識と技能の定着を確たるものにすること。物理化学で取り扱う内容は、実際に「自分で手を動かして」予習・演習に取り組まないと、学習効果は全く見込めないといってよい。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
物質の状態(1) - 物質の三態と状態変化 |
物質の三態における相互変化について説明できる。
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2週 |
物質の状態(2) - 気体と液体 |
理想気体の状態方程式、実在気体のファン・デル・ワールス式、クラウジウス・クラペイロンの式による基本的な計算ができる。
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3週 |
物質の状態(3) - 固体と中間相 |
固体の結晶構造および中間相としての液晶や柔粘性結晶の特徴を説明できる。
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4週 |
理想気体(1) - 理想気体の性質 |
状態方程式を理解し、温度、圧力、体積を算出できる。
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5週 |
理想気体(2) - 混合気体の性質 |
混合気体の分圧と全圧を理解し、理想気体の分圧と全圧をモル分率と状態方程式から計算できる。
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6週 |
理想気体(3) - 気体分子運動論 |
気体分子運動論から気体の圧力を定義し、温度と分子の運動の関係を説明できる。
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7週 |
理想気体(4) - 分子速度の分布 |
マクスウェル-ボルツマン分布が分子の速度分布を表すことを説明でき、分子の平均速度や平均自由行程を計算できる。
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8週 |
【中間試験】 |
1〜7週に学習した内容について試験問題を解くことができる。
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2ndQ |
9週 |
実在気体(1) - 理想気体からの偏倚 |
実在気体が理想気体の法則から偏倚する原因を、分子サイズおよび分子間引力の観点から説明できる。臨界温度を説明できる。
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10週 |
実在気体(2) - 状態方程式 |
ファン・デル・ワールス式あるいはビリアル状態方程式を使って、実在気体のp-Vm-T関係を計算できる。
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11週 |
実在気体(3) - 対応状態原理 |
対応状態原理に基づく一般化Z線図を用いて、実在気体のp-Vm-T関係を求めることができる。
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12週 |
実在気体(4) - 混合物への適用 |
実在混合気体のp-Vm-T関係をファン・デル・ワールス式、ビリアル状態方程式および一般化Z線図を用いて得ることができる。
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13週 |
原子核反応と放射線(1) - 放射線とその性質 |
放射線の種類と性質について説明できる。
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14週 |
原子核反応と放射線(2) - 放射性物質・放射能・放射線 |
放射性物質・放射能・放射線の違いについて説明でき、放射性崩壊に関する各種計算問題を解くことができる。
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15週 |
原子核反応と放射線(3) - 放射線および核エネルギーの利用 |
放射線および核エネルギーの利用方法について説明でき、核エネルギーを計算できる。
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16週 |
【期末試験答案返却】 |
期末試験で間違った箇所と正解を確認し、正しく解き直すことができる。
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 化学(一般) | 化学(一般) | 物質を構成する分子・原子が常に運動していることが説明できる。 | 4 | 前1 |
水の状態変化が説明できる。 | 4 | 前1 |
物質の三態とその状態変化を説明できる。 | 4 | 前1 |
ボイルの法則、シャルルの法則、ボイル-シャルルの法則を説明でき、必要な計算ができる。 | 4 | 前2 |
気体の状態方程式を説明でき、気体の状態方程式を使った計算ができる。 | 4 | 前2 |
原子の構造(原子核・陽子・中性子・電子)や原子番号、質量数を説明できる。 | 4 | 前13 |
同位体について説明できる。 | 4 | 前13 |
放射性同位体とその代表的な用途について説明できる。 | 4 | 前13 |
原子の相対質量が説明できる。 | 4 | 前13 |
天然に存在する原子が同位体の混合物であり、その相対質量の平均値として原子量を用いることを説明できる。 | 4 | 前13 |
アボガドロ定数を理解し、物質量(mol)を用い物質の量を表すことができる。 | 4 | 前2 |
分子量・式量がどのような意味をもつか説明できる。 | 4 | 前2 |
気体の体積と物質量の関係を説明できる。 | 4 | 前2 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 物理化学 | 放射線の種類と性質を説明できる。 | 4 | 前13 |
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。 | 4 | 前13,前14 |
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。 | 4 | 前14,前15 |
核分裂と核融合のエネルギー利用を説明できる。 | 4 | 前15 |
気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。 | 4 | 前2,前4 |
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。 | 4 | 前6,前7 |
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。 | 4 | 前2,前9,前10,前11,前12 |
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。 | 4 | 前3 |
混合気体の分圧の計算ができる。 | 4 | 前5 |
評価割合
| 試験 | 発表 | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 70 | 0 | 0 | 0 | 5 | 25 | 100 |
基礎的能力 | 30 | 0 | 0 | 0 | 5 | 10 | 45 |
専門的能力 | 40 | 0 | 0 | 0 | 0 | 15 | 55 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |