到達目標
統計力学はミクロ力学からマクロ現象を説明する理論的枠組みである。(基礎物理学で学んだように)完成した理論体系をもつ平衡状態統計力学の復習からはじめ、それをもとに平衡状態から外れた系を扱うための数学的手法を身につける。とくに、流体をとりあげ、流体力学的方程式の導出を試みる。また、時間相関関数と確率過程、揺動散逸定理などの非平衡統計力学の基礎事項を学習し、非平衡状態に対する統計力学の方法を学ぶ。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 最低限の到達レベルの目安(可) |
局所平衡状態と流体力学的方程式 | 局所平衡状態の概念を理解し熱平衡状態を表す確率分布を用いて数式で表すことができる。それをもとに流体力学的方程式を導出することができる | 熱平衡状態を表す確率分布によって表された局所平衡状態から流体力学的方程式を導出できる | 熱平衡状態を表す確率分布を用いて平衡状態を数式で表すことができる |
時間相関関数と確率過程 | 揺動場の概念を理解し、流体力学的方程式から揺動場が満たす方程式を導き、時間相関関数の表式を導出できる。揺動場を確率変数とする確率過程を確率微分方程式をたてて説明できる | 流体力学的方程式から導かれる揺動場が満たす方程式から、時間相関関数の表式を導出できる。揺動場を確率変数とする確率過程を確率微分方程式をたてて説明できる | 平均値からの揺らぎとして揺動場の概念を説明できる。揺動場を変数として確率微分方程式を立てることができる |
揺動散逸定理 | 揺動場の流れを表す揺動カレント場の時間相関関数と流体力学的方程式を関係づける揺動散逸定理を導出でき、粘性係数や伝導率などの代表的な輸送係数の計算に利用できる | 揺動場の流れを表す揺動カレント場の時間相関関数と流体力学的方程式を関係づける揺動散逸定理を導出できる | 揺動散逸定理の内容を、揺らぎと散逸の概念をつかって説明できる |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
平衡統計力学の復習からはじめ、局所平衡状態の概念を導入しミクロ力学からマクロ現象である流体力学的方程式を導出する。剛体球ポテンシャルの場合についてボルツマン方程式とBBGKY階層性について説明し、平衡状態への接近を議論する。最後に、散逸の度合いを表す輸送係数を揺動場の相関関数の積分であらわすことができるという揺動散逸定理(久保公式)を導出することを目標として、必要な数学的手法とともに非平衡統計力学の基本事項を解説する。
授業の進め方・方法:
授業は教科書に沿って内容を説明する形で進めます。実際の問題に取り組むための演習も行います。
注意点:
充分な自学自習の時間を求めます。
試験は期末試験のみ。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
粒子系の力学モデル |
ニュートンとハミルトンの運動方程式 2体力ポテンシャル 境界条件
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2週 |
熱平衡状態を表す確率分布 |
位相空間と確率分布 熱平衡分布 n粒子分布関数
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3週 |
熱平衡状態を表す確率分布 |
熱力学極限 ビリアル定理
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4週 |
局所平衡状態と流体力学的方程式 |
流体場と連続の方程式 局所平衡状態
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5週 |
局所平衡状態と流体力学的方程式 |
オイラー方程式 ナビエストークス方程式
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6週 |
ボルツマン方程式と階層性 |
1粒子分布関数 リュウヴィルの定理
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7週 |
ボルツマン方程式と階層性 |
ボルツマン方程式
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8週 |
ボルツマン方程式と階層性 |
BBGKY階層性 低密度極限
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4thQ |
9週 |
時間相関関数と確率過程 |
揺動場 時間相関関数
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10週 |
時間相関関数と確率過程 |
線形化されたオイラー方程式 オルンシュタインウーレンベック過程
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11週 |
時間相関関数と確率過程 |
演算子行列の間の関係式
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12週 |
時間相関関数と確率過程 |
線形化されたナビエストークス方程式
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13週 |
揺動散逸定理 |
揺動カレント場
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14週 |
揺動散逸定理 |
グリーン久保公式
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15週 |
期末試験 |
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16週 |
期末試験返却 |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
評価割合
| 試験 | 小テスト | ポートフォリオ | 発表・取り組み姿勢 | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 | 100 |
基礎的能力 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 50 |
専門的能力 | 30 | 10 | 10 | 0 | 0 | 50 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |