電気回路A(留学生)

科目基礎情報

学校 香川高等専門学校 開講年度 令和07年度 (2025年度)
授業科目 電気回路A(留学生)
科目番号 5201 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 通信ネットワーク工学科(2019年度以降入学者) 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 ディジタル回路分野の教科書:伊原充博 他 著 「(電気・電子系 教科書シリーズ 13)ディジタル回路」コロナ社,関連プリント
電気回路分野の教科書:高田進 他著 「電気回路」実教出版
担当教員 井上 忠照

到達目標

編入留学生が不足している知識を補充して講義・演習を実施し,専門分野の学習に備えることを目的とする。

まず,ディジタル回路の基礎についての過年度科目内容を扱って,留学生が日本人学生と等しく学習を進められるようにすることを目標とする。
計算機科学の基礎の一つであるブール代数とその電気回路的な実現である論理回路の関係を,数学的概念と物理実現の対応として理解する。具体的には,情報と電気信号の対応,組み合わせ論理回路,順序回路を理解する。
1. 数の体系を理解し,応用できる。
2. 論理関数と論理回路,相互の関連を理解し,応用できる。
3. 組み合わせ回路を理解し,設計できる。
4. 順序回路を理解し,設計できる。

また,電気回路(交流回路)分野の知識のない留学生に対しては,本科目で「電気回路Ⅱ」の学習内容を与える。
交流回路の取り扱い方や電気回路の解析方法を習得し,電気・電子工学を履修するのに必要な基本的な能力を養うことを目標とする。
1. 瞬時値,フェーザ,複素数表示を理解し,これらを正弦波交流回路の計算に用いることができる。
2. 共振回路や磁気結合回路等を計算できる。
3. 電気回路各部の電流,電圧を的確に計算できる回路解析手法を用いることができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
数体系整数,小数を2進数,10進数,16進数で表現できる。 基数が異なる数の間で相互に変換できる。 2進数,16進数の加減算を理解し,応用できる。 整数をコンピュータのメモリー上でディジタル表現する方法を理解している。 各種符号を理解している。 関連する問題に80%以上正答できる。整数,小数を2進数,10進数,16進数である程度表現できる。 基数が異なる数の間で相互にである程度変換できる。 2進数,16進数の加減算を理解し,である程度応用できる。 整数をコンピュータのメモリー上でディジタル表現する方法をである程度理解している。 各種符号をである程度理解している。 関連する問題に70%以上正答できる。整数,小数を2進数,10進数,16進数で表現できない。 基数が異なる数の間で相互に変換できない。 2進数,16進数の加減算を理解し,応用できない。 整数をコンピュータのメモリー上でディジタル表現する方法を理解していない。 各種符号を理解していない。 関連する問題に60%以上の正答することができない。
論理関数と論理回路基本的な論理演算を組合わせて、論理関数を論理式として表現できる。 基本的な論理演算を行える。 ブール代数の法則を理解し,真理値表から標準形を導ける。 論理式から真理値表を作れる。 論理式の簡単化の概念を説明できる。 論理ゲートを用いて論理式を組合せ論理回路として表現できる。 与えられた簡単な組合せ論理回路の機能を説明できる。 論理回路を論理式で表現できる。 論理式をMIL記号を使って図示できる。 組合せ論理回路を設計できる。 論理関数の簡単化ができる。 関連する問題に80%以上正答できる。基本的な論理演算を組合わせて、論理関数を論理式としてある程度表現できる。 基本的な論理演算をある程度行える。 ブール代数の法則をある程度理解し,真理値表から標準形をある程度導ける。 論理式から真理値表をある程度作れる。 論理式の簡単化の概念をある程度説明できる。 論理ゲートを用いて論理式を組合せ論理回路としてある程度表現できる。 与えられた簡単な組合せ論理回路の機能をある程度説明できる。 論理回路を論理式である程度表現できる。 論理式をMIL記号を使ってある程度図示できる。 組合せ論理回路を設計することがある程度できる。 論理関数の簡単化がある程度できる。 関連する問題に70%以上正答できる。基本的な論理演算を組合わせて、論理関数を論理式として表現できない。 基本的な論理演算を行えない。 ブール代数の法則を理解し,真理値表から標準形を導けない。 論理式から真理値表を作れない。 論理式の簡単化の概念を説明できない。 論理ゲートを用いて論理式を組合せ論理回路として表現できない。 与えられた簡単な組合せ論理回路の機能を説明できない。 論理回路を論理式で表現できる。 論理式をMIL記号を使って図示できる。 組合せ論理回路を設計できる。 論理関数の簡単化ができる。 関連する問題に60%以上の正答することができない。
組み合わせ回路各種組合せ回路を理解し,基本的な組合せ回路の設計ができる。 関連する問題に80%以上正答できる。各種組合せ回路をある程度理解し,基本的な組合せ回路の設計がある程度できる。 関連する問題に70%以上正答できる。各種組合せ回路を理解が不十分で,基本的な組合せ回路の設計ができない。 関連する問題に60%以上の正答することができない。
順序回路各種順序回路を理解し,基本的な順序回路の設計ができる。 関連する問題に80%以上正答できる。各種順序回路をある程度理解し,基本的な順序回路の設計ができる。 関連する問題に70%以上正答できる。各種順序回路を理解が不十分で,基本的な順序回路の設計ができない。 関連する問題に60%以上の正答することができない。
交流回路の基礎瞬時値,フェーザ,複素数表示を理解し,これらを用いて種々の交流回路を計算できる。瞬時値,フェーザ,複素数表示を理解し,これらを用いて基礎的な交流回路を計算できる。瞬時値,フェーザ,複素数表示を理解できず,基礎的な交流回路も計算できない。
共振回路・磁気結合回路共振回路や磁気結合回路等の説明と計算ができる。共振回路や磁気結合回路等を計算できる。共振回路や磁気結合回路等の計算ができない。
回路解析法適切な回路解析法を選択して回路解析ができる。回路解析法による手順に従った回路方程式を導出できる。回路方程式を適切に立てることができない。

学科の到達目標項目との関係

 学習・教育到達度目標 2(エレクトロニクス・回路) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 留学生向けの授業科目である。情報と電気信号の対応,組み合わせ論理回路,順序回路,電気回路(交流回路)などを講義する。留学生の学習履歴に応じて授業内容を変更し,日本人学生向けの専門科目に対応できるように授業内容を構成する。
 第3学年に留学生がいない年度には未開講科目となる。
授業の進め方・方法:
・留学生の理解を確認しながら,講義を進める。
・ディジタル回路の基礎となる2進数と符号の表現法、ANDやORなどの論理演算,組合せ回路の設計法と順序回路の代表例としてフリップフロップ,カウンタなどについて講義する。これにより論理回路の基礎理論を習得する。また,論理回路の基礎的な設計法を学ぶ。
・正弦波交流回路についての知識がない留学生については,「電気回路Ⅱ」の科目内容を併せて授業する。このため,適時に授業内容(シラバス)を変更する。
注意点:
オフィスアワー:毎週水曜日 16:00~17:00 

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 数の体系,基数変換,2進数と16進数の加減算
10進数,2進数,16進数(2)
整数,小数を2進数,10進数,16進数で表現できる。基数が異なる数の間で相互に変換できる。2進数,16進数の加減算を理解し,応用できる。
2週 補数加算,負数の補数表示;論理関数,集合論と命題論理;ブール代数の基本演算と論理ゲート(MIL記号) 整数・小数をコンピュータのメモリー上でディジタル表現する方法を説明できる。;論理関数を理解している。;ブール代数の基本演算ができる。
3週 加法形と乗法形,真理値表と標準形, ブール代数の法則を理解し,真理値表から標準形を導ける。論理式から真理値表を作れる。ブール代数の法則を理解し,真理値表から標準形を導ける。論理式から真理値表を作れる。
4週 カルノー図による簡単化,冗長項を用いた簡単化,クワイン・マクラスキー法による簡単化 論理式の簡単化の概念を説明できる。論理関数の簡単化ができる。
5週 組合せ論理回路,回路構成の変換 与えられた簡単な組合せ論理回路の機能を説明できる。
6週 SR-FFと状態遷移表,JK-FF,タイミングチャート 各種FF,状態遷移表,特性方程式,状態遷移図,タイミングチャートを理解している。
7週 D-FF,T-FF,レジスタ,カウンタ レジスタやカウンタなどの基本的な順序回路の動作について説明できる。
8週 論理回路の実際 与えられた簡単な順序回路の機能を説明できる。
簡単な順序回路を設計できる。
2ndQ
9週 正弦波交流と複素数表示;複素インピーダンスと複素アドミッタンス 正弦波交流の瞬時値表現式を複素数を用いて表示できる。正弦波交流の複素数表示を直交形式表示,極形式表示,フェーザ表示できる。;R,L,C素子における電圧・電流の関係をフェーザを用いて表現できる。インピーダンスとアドミタンスを説明でき,これらを計算できる。
10週 複素インピーダンスと複素アドミッタンスの合成 合成インピーダンス,合成アドミッタンスの計算ができる。直列接続での各部の電圧を導出できる。並列接続での各部の電流を導出できる。
11週 フェーザによる回路解析;複素電力とその計算,電力最大供給条件(負荷整合条件) 直並列回路について,フェーザを用いた交流回路の計算ができる。;瞬時電力,平均電力を説明できる。複素電力表示を用いて,正弦波交流回路の有効電力,無効電力,皮相電力を計算できる。力率の計算ができる。また,インピーダンス整合の条件を計算できる。
12週 RL 直列回路,RC 直列回路 各部の電流,電圧を計算できる。また,電流,電圧の関係をベクトルによる図として表示できる。インピーダンスとアドミッタンスのベクトル軌跡を図で表示できる。
13週 RL 並列回路,RC並列回路 各部の電流,電圧を計算できる。また,電流,電圧の関係をベクトルによる図として表示できる。インピーダンスとアドミッタンスのベクトル軌跡を図で表示できる。
14週 交流ブリッジ回路 種々のブリッジ回路の平衡条件について計算ができる。
15週 前期期末試験 前期末試験
16週 試験返却と解説 試験返却と解説
後期
3rdQ
1週 直列共振回路 直列共振回路の計算ができる。基本的な共振回路の性質を理解し,共振周波数を求めることができる。共振現象について説明できる。
2週 直列共振回路 共振周波数,半電力周波数,半値幅,帯域幅,Q値などを求めることができる。
3週 並列共振回路 直列共振回路と同様に,並列共振回路の計算ができる。
4週 並列共振回路 反共振周波数,半電力周波数,半値幅,帯域幅,Q値などを求めることができる。
5週 磁気結合回路 磁束と電磁誘導現象について理解できる。
6週 相互誘導回路の等価回路 磁気結合回路の等価回路を書くことができ,これを用いて基本的な回路を解くことができる。
7週 理想変成器 理想変成器を説明することができ,理想変成器を用いた回路を計算できる。理想変成器によるインピーダンス変換ができる。
8週 後期中間試験 後期中間試験
4thQ
9週 試験返却と解説 試験返却と解説
10週 テブナンの定理(Thevenin's theorem)とテブナンの等価回路 重ね合わせの理によってテブナンの定理を証明・説明でき,応用して電気回路の計算ができる。
11週 ノートンの定理(Norton's theorem)とノートンの等価回路 重ね合わせの理によってノートンの定理について証明・説明でき,応用して電気回路の計算ができる。
12週 補償の定理(compensation theorem),帆足-ミルマンの定理,相反定理,双対性 各種の定理を知っている。双対性から,各種定理の双対定理を考えられる。
13週 接点解析と接点方程式(node equation) 接点方程式を書き出せる。ノートンの等価回路を接点解析に応用できる。回路方程式を解くことができる。
14週 網目解析と網目方程式(mesh equation) 網目方程式を書き出せる。テブナンの等価回路を網目解析に応用できる。回路方程式を解くことができる。
15週 後期末試験 後期末試験
16週 試験返却と解説 試験返却と解説

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。4前9
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。4前9
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。4前9
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。4前9
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。4前9
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。4前9
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。4前9,前10
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。4前10,前11,前12,前13,前14
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。4前10
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。4後10,後11,後12
網目電流法を用いて回路の計算ができる。4後14
節点電位法を用いて回路の計算ができる。4後13
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。4後10
直列共振回路と並列共振回路の計算ができる。4後1,後2,後3,後4
相互誘導を説明し、相互誘導回路の計算ができる。4後5,後6
理想変成器を説明できる。4後7
交流電力と力率を説明し、これらを計算できる。4前11

評価割合

試験小テストレポートノート合計
総合評価割合800200100
専門知識800200100