概要:
物理化学は全ての化学分野の理論的な面を担う科目である。本講義の物理化学では主に①化学熱力学と②化学平衡論について学ぶ。登場する概念(エンタルピー,エントロピー,ギブズエネルギー,化学ポテンシャルなど)は,多くの応用実用分野に登場し,その概念はさらに高度に拡張されていく。そのため,材料系分野の学習において極めて重要である。本講義では,まず原子や分子をミクロに取り扱い,またそれらを集団的に取り扱う考え方について学び,化学熱力学の学習に移る。その後,化学平衡論に進む。熱力学の基礎を確立したのち,①電気化学への応用 ② 反応速度論について簡単に学ぶ。
授業の進め方・方法:
定期テスト80%、課題・小テスト等を20%として評価する。
注意点:
本科目では低学年で学習した物理・化学の内容の知識が前提になる。また,微分・積分・三角関数など,数学の知識も多く必要となり,これら基礎科目の復習が大変重要である。物理化学で学んだ概念は,高学年に続く専門科目(材料物理化学,表面工学,無機材料学など)の土台となる。そのため,学習内容の確実な理解が望まれる。また物理化学の学習では,実際に手を動かし,多くの計算問題を解くことがもっとも早い理解への道である。学習当初は難しく感じるものも多いが,挫けずにトライし続けることが肝要である。
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 無機材料 | 原子の構成粒子を理解し、原子番号、質量数、同位体について説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3 |
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。 | 4 | |
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。 | 4 | 後5 |
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質について説明できる。 | 4 | 前1 |
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。 | 4 | 前3,後5 |
化学結合の初期理論としてのオクテット則(八隅説)により電子配置をルイス構造で示すことができる。 | 4 | 前3 |
原子価結合法により、共有結合を説明できる。 | 4 | 前3 |
イオン結合の形成と特徴について理解できる。 | 4 | 前3,後5 |
金属結合の形成と特徴について理解できる。 | 4 | 前3,後5 |
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比などの基本的な計算ができる。 | 4 | 後12 |
酸化還元の知識を用いて酸化還元の反応式から酸化剤、還元剤の濃度等の計算ができる。 | 4 | 前14 |
イオン化傾向と電池の電極および代表的な電池について説明できる。 | 4 | 前14 |
電気分解に関する知識を用いてファラデーの法則の計算ができる。 | 4 | 前14 |
物理化学 | 熱力学第一法則と内部エネルギーの概念を説明できる。 | 4 | 前5,前6 |
内部エネルギー、熱、仕事の符号の規則を説明でき、膨張の仕事を計算できる。 | 4 | 前5,前6 |
エンタルピーの定義およびエンタルピーが状態量であることを説明できる。 | 4 | 前7 |
断熱変化に伴う温度変化を計算できる。 | 4 | 前7 |
標準生成エンタルピーの物理的意味を理解し、反応エンタルピーを計算できる。 | 4 | 前7 |
定圧熱容量と定容熱容量の関係式が導出できる。 | 4 | 前7,前11 |
エントロピーの定義を理解し、不可逆過程におけるエントロピー生成について説明できる。 | 4 | 前11,後1,後2,後3,後4,後5 |
ヘルムホルツエネルギーとギブズエネルギーの定義および自発的変化の方向性との関連について説明できる。 | 4 | 前12,後1,後2,後3,後4,後5 |
標準モルギブズエネルギーの定義に基づいて標準反応ギブズエネルギーを計算できる。 | 4 | 前12,後1,後2,後3,後4,後5,後12,後13 |
内部エネルギーと巨視的熱力学量の関係を導出できる。 | 4 | 前13,後1,後2,後3,後4,後5 |
純物質の化学ポテンシャルの定義と物理的意味を理解し、理想気体の化学ポテンシャルを計算できる。 | 4 | 前13 |
理想溶液と実在溶液の違いを説明できる。 | 4 | 前13 |