物理化学II

科目基礎情報

学校 高知工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 物理化学II
科目番号 4426 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 1
教科書/教材 教科書:福地賢治編著「PEL物理化学」(実教出版) 参考書:千原英昭・稲葉章訳「アトキンス物理化学要論」(東京化学同人)
担当教員 藤田 陽師

到達目標

【到達目標】
1.熱力学第二/第三の法則の定義と適用方法を説明でき,エントロピーと自由エネルギー変化を計算できる。
2.化学平衡における質量作用の法則と平衡移動の概念を説明できる。
3.溶液の束一的性質を説明し,沸点上昇や浸透圧と溶質の量的関係を計算できる。
4.相変化,相平衡,および相図についてその概念を理解し,説明できる。
5.放射性壊変と放射線、および、核分裂反応と原子力について、説明ができる。










ルーブリック

理想的な到達レベルの目安 標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1熱力学第二・第三法則を理解し,様々な物質変化に伴うエネルギー変化の計算に応用できる。熱力学第二・第三法則に基づき,反応エンタルピー変化や自由エネルギー変化を正しく計算できる。エントロピーや自由エネルギーの値を計算で求めることがきない。
評価項目2化学平衡における平衡定数とその他のエネルギーとの関係を理解し,計算及び説明ができる。化学平衡における平衡定数,反応エンタルピー,自由エネルギーが正しく計算できる。平衡定数と反応エンタルピーや自由エネルギーの関係についての計算ができない。
評価項目3束一的性質に対する各種法則に対応する理論式を導出でき,その内容を十分理解したうえで説明できる。束一的性質とはどのような 性質化説明でき,その例を挙げることができ,各種法則を用いて必要な物性値を算出できる。束一的性質に対する各種法則を用いて必要な物性値を算出できない。
評価項目4相変化,相平衡,および束一的性質に対する各種法則に対応する理論式を導出でき,その内容を十分理解したうえで説明できる。複雑な相図について説明できる。相変化,相平衡に対する各種法則を用いて必要な物性値を算出できる。相図の概念を理解し,説明できる。相変化,相平衡,および束一的性質に対する各種法則を用いて必要な物性値を算出できない。
評価項目5放射性壊変と放射線、および、核分裂反応と原子力について、半減期、エネルギー計算ができる。放射性壊変と放射線、および、核分裂反応と原子力について、説明ができる。  放射性壊変と放射線、および、核分裂反応と原子力について、説明ができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
物理化学の基礎的事項について,3年に引き続いて学ぶ。特に,熱化学と化学平衡の基礎を理解し,化学反応等を熱化学的に解釈し説明できると共に,エネルギーや平衡に関する基礎的な計算問題を解くことができる能力を身につける。









授業の進め方・方法:
授業は随時演習を取り入れた講義形式で進めていく。この中で、各回において前回までの内容に関する小テストを実施する。また、必要に応じて随時課題がある。








注意点:
試験の成績90%,小テストと課題からなる平常点10% の割合で総合的に評価する。学期毎の評価は中間と期末の各期間の評価の平均,学年の評価は前学期と後学期の評価の平均とする。なお,後学期中間の評価は前学期中間,前学期末,後学期中間の各期間の評価の平均とする。技術者が身につけるべき専門基礎として,到達目標に対する達成度を試験等において評価する。









授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 5-2 熱力学第一法則
◆熱力学で使用する微積分(1)
 ~微小変化と積分量~
◆熱力学第一法則周辺の復習
◆熱力学における微分,積分の取り扱い方,考え方について理解でき, 理論導出過程で使うことができる
各熱力学過程がどんな過程で第一法則に関与する熱力学量がどのように表されるか理解し,定義から導出できる。
2週 5-2 熱力学第一法則
◆熱力学サイクルと状態量
PVグラフにおける熱力学サイクルの各過程がどんな過程か説明できる。
各過程のΔp, ΔV,ΔT, ΔU,Q, Wを算出でき,熱効率を計算できる。状態量とは何か,その特性とは何か説明できる。
3週 6-1熱力学第二法則
◆カルノーサイクル
◆熱力学第二法則とエントロピー
カルノーサイクルとはどんな熱力学サイクルか説明できる。
熱力学第2法則とはどんな法則か理解できる。
エントロピーの定義を説明でき,どのような量か説明できる(エントロピーの大小は何を意味するか説明できる)。
相変化のエントロピー変化を計算できる。
4週 6-1熱力学第二法則
◆様々な過程に対するエントロピー変化の計算
定圧,定積過程のエントロピー計算,等温不可逆膨張のエントロピー計算ができる。
(具体例)室温でお湯が自発的に冷める理由,高温源から低温源へ熱が自発的に移動する理由を熱力学第二法則を利用して説明できる。
◆2種類以上の流動性の物質が自発的に混合することを理想気体を例にして熱力学第二法則に則って説明できる。
5週 6-2熱力学第三法則
◆微視的エントロピー
◆第三法則エントロピー
◆エントロピーと化学反応
ボルツマンの式を知ることができる。
熱力学第三法則を活かし,標準エントロピー変化より,各種反応や変化のエントロピー変化を計算できる。
6週 1週目~5週目までの復習 1週目~5週目までの復習を通して,ここまでの内容を定着できる
7週 前期中間試験 前期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
8週 6-3自由エネルギーの変化と方向
◆ギブズの自由エネルギーとヘルムホルツの自由エネルギー
◆ギブズの自由エネルギーと非膨張仕事
◆化学反応における標準ギブズエネルギー変化の計算
自由エネルギーの定義と根拠を理解できる。標準ギブズエネルギーを使い,化学反応等の化学量論計算ができる。
◆ギブズの自由エネルギーを非膨張仕事の関係を理解できる。
2ndQ
9週 6-4 熱力学の関係式
◆熱力学で使用する微積分(2)
 ~偏微分と全微分~
◆4種のエネルギーと4種の変数
◆閉鎖系の熱力学の基本方程式
◆Maxwellの関係式
熱力学における偏微分,全微分の取り扱い方,考え方について理解でき, 理論導出過程で使うことができる
◆閉鎖系の熱力学の基本方程式を理解でき,各熱力学量の定義から導出できる。
◆Maxwellの関係式を理解でき,導出できる。
10週 6-4 熱力学の関係式
◆ギブズ-ヘルムホルツの式
◆等温過程のギブズエネルギー変化
ギブズ-ヘルムホルツの式を理解し,道術できる
◆ギブズーヘルムホルツの式を使い,任意の温度の自由エネルギー変化を算出できる。
◆等温過程における圧力変化に対するギブズの自由エネルギー変化を計算できる。
11週 6-5化学ポテンシャル
◆部分モル量
◆化学ポテンシャルの概念
◆様々な化学ポテンシャル変化の計算
部分モル量と化学ポテンシャルの概念が理解できる。
様々な熱力学過程,反応の化学ポテンシャルが計算できる。
12週 7-1相転移と相律
◆平衡状態と化学ポテンシャル
◆物質の状態図と相律
平衡状態と化学ポテンシャルの関係を理解できる。
物質ごとにその状態の情報からギブズの相律を用いて自由度を算出できる。
13週 7-2純物質の相平衡
◆クラペイロンの式
◆クラウジウスークラペイロンの式
クラウジウスークラペイロンの式を理解し,導出でき,これを用いて計算できる。
14週 8週目~13週目までの復習 8週目~13週目までの復習を通して,ここまでの内容を定着できる
15週 前期期末試験 前期期末試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
16週
後期
3rdQ
1週 7-32成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質
◆ラウールの法則と理想溶液
◆ヘンリーの法則理想希薄溶液
ラウールの法則およびヘンリーの法則の概念について理解でき,溶液組成から蒸気圧組成を計算できる。蒸気圧降下度について計算できる
2週 7-32成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質
◆フガシティー
◆溶液の活量と非理想溶液
フガシティーおよび活量の意味を理解し、化学計算に活用できる
3週 7-4 2成分系の気相―液相状態図
◆2成分系の気相―液相状態図蒸留の関係
◆共沸混合物について学ぶ
2成分系の気相―液相状態図と蒸留の関係および共沸混合物について理解できる。
4週 7-5 束一的性質
◆沸点上昇,凝固点降下について学ぶ
沸点上昇,凝固点降下,浸透圧について理解でき,計算できる。
浸透圧について理解でき,計算できる。
5週 7-5 束一的性質
◆蒸気圧降下,浸透圧について学ぶ
蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下について理解でき,計算できる。
浸透圧について理解でき,計算できる。
6週 後期1週目~6週目までの復習 後期1週目~6週目までの復習を通して,ここまでの内容を定着できる
7週 後期中間試験 後期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
8週 9-1化学平衡
◆質量作用の法則,
◆ルシャトリエの原理
◆平衡定数
9-2 平衡組成の計算
◆平衡反応とギブズの自由エネルギーの関係
質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について理解できる。
平衡反応とギブズの自由エネルギーの関係について理解し,計算できる。
4thQ
9週 9-1化学平衡
◆質量作用の法則,
◆ルシャトリエの原理
◆平衡定数
9-2 平衡組成の計算
◆平衡反応とギブズの自由エネルギーの関係
質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について理解できる。
平衡反応とギブズの自由エネルギーの関係について理解し,計算できる。
10週 9-3化学平衡への諸条件の影響
9-4不均一反応
◆平衡反応への圧力,温度変化の影響
平衡反応への圧力,温度変化の影響および不均一系の平衡反応について理解できる。
11週 15-2原子核反応と放射線
◆原子核と放射線
放射性核種について、説明できる。
12週 15-4原子核反応と放射線
◆核反応と核エネルギー
放射性物質の半減期の算出ができ、14Cの半減期を用いて木材等の年代識別ができる。
13週 15-4原子核反応と放射線
◆核反応と核エネルギー
核分裂反応によるエネルギー授受の計算ができ、原子力発電への応用について理解する。
14週 後期8週目~14週目までの復習 後期8週目~14週目までの復習を通して,ここまでの内容を定着できる
15週 学年末試験 学年末試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学放射線の種類と性質を説明できる。4後11
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。4後12
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。4後12
核分裂と核融合のエネルギー利用を説明できる。4後13
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4前12
束一的性質を説明できる。4後4
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4後5
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4後4
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4前1,前2,前3
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4前1,前2,前3
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4後8,後9
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4後8,後9
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4後10
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4前3,前4,前5
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4前5
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4前5
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4前8
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後10
平衡定数の温度依存性を計算できる。4後10
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4前1,前2

評価割合

試験小テスト,課題合計
総合評価割合9010100
基礎的能力40040
専門的能力40848
分野横断的能力10212