物理化学II

科目基礎情報

学校 高知工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 物理化学II
科目番号 1086 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 1
教科書/教材 教科書:福地賢治編著「PEL物理化学」(実教出版) 参考書:田中・荒井「フレンドリー物理化学(三共出版)
担当教員 藤田 陽師

到達目標

【到達目標】
1.熱力学第一法則の定義と適用方法を説明でき,反応エンタルピーの計算ができる。
2.熱力学第二/第三の法則の定義と適用方法を説明でき,エントロピーと自由エネルギー変化を計算できる。
3.化学平衡における質量作用の法則と平衡移動の概念を説明できる。
4.溶液の束一的性質を説明し,沸点上昇や浸透圧と溶質の量的関係を計算できる。
5.相変化,相平衡,および相図についてその概念を理解し,説明できる。
6.さまざまな界面現象を理解し,各種法則から物性値を算出できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1熱力学第一法則を理解し,さらに化学反応における反応エンタルピーや内部エネルギー変化の計算に応用できる。熱力学第一法則を使って,仕事・内部エネルギー・熱および反応エンタルピーなどを正しく求めることができる。熱力学第一法則の意味を理解できない。
評価項目2熱力学第二・第三法則を理解し,様々な物質変化に伴うエネルギー変化の計算に応用できる。熱力学第二・第三法則に基づき,反応エンタルピー変化や自由エネルギー変化を正しく計算できる。エントロピーや自由エネルギーの値を計算で求めることがきない。
評価項目3化学平衡における平衡定数とその他のエネルギーとの関係を理解し,計算及び説明ができる。化学平衡における平衡定数,反応エンタルピー,自由エネルギーが正しく計算できる。平衡定数と反応エンタルピーや自由エネルギーの関係についての計算ができない。
評価項目4束一的性質に対する各種法則に対応する理論式を導出でき,その内容を十分理解したうえで説明できる。束一的性質とはどのような性質化説明でき,その例を挙げることができ,各種法則を用いて必要な物性値を算出できる。束一的性質に対する各種法則を用いて必要な物性値を算出できない。
評価項目5相変化,相平衡,および束一的性質に対する各種法則に対応する理論式を導出でき,その内容を十分理解したうえで説明できる。複雑な相図について説明できる。相変化,相平衡に対する各種法則を用いて必要な物性値を算出できる。相図の概念を理解し,説明できる。相変化,相平衡,および束一的性質に対する各種法則を用いて必要な物性値を算出できない。
評価項目6各種界面現象について,対応する理論式を導出でき,その内容を十分理解したうえで説明できる。各種界面現象について,対応する法則を用いて必要な物性値を算出できる。各種界面現象について,対応する法則を用いて必要な物性値を算出できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
物理化学の基礎的事項について,3年に引き続いて学ぶ。特に,熱化学と化学平衡の基礎を理解し,化学反応等を熱化学的に解釈し説明できると共に,エネルギーや平衡に関する基礎的な計算問題を解くことができる能力を身につける。
授業の進め方・方法:
授業は随時演習を取り入れた講義形式で進めていく。この中で、各回において前回までの内容に関する小テストを実施する。また、必要に応じて随時課題がある。
注意点:
試験の成績90%,小テストと課題からなる平常点10% の割合で総合的に評価する。学期毎の評価は中間と期末の各期間の評価の平均,学年の評価は前学期と後学期の評価の平均とする。なお,後学期中間の評価は前学期中間,前学期末,後学期中間の各期間の評価の平均とする。技術者が身につけるべき専門基礎として,到達目標に対する達成度を試験等において評価する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 5-2 熱力学第一法則
熱力学における微分,積分の取り扱い方,考え方について学ぶ
熱力学における微分,積分の取り扱い方,考え方について理解できる
2週 5-2 熱力学第一法則
仕事,熱,内部エネルギー,エンタルピーおよび熱力学第一法則の復習をする。各熱力学過程と上記熱力学量の関係を学ぶ。
各熱力学過程がどんな過程で第一法則に関与する熱力学量がどのように表されるか理解し,定義から導出できる。
3週 5-2 熱力学第一法則
仕事,熱,内部エネルギー,エンタルピーおよび熱力学第一法則の復習をする。各熱力学過程と上記熱力学量の関係を学ぶ。
各熱力学過程がどんな過程で第一法則に関与する熱力学量がどのように表されるか理解し,定義から導出できる。
4週 5ー3 反応熱
各種反応エンタルピーについて学ぶ
様々な反応,変化とエンタルピー変化を関係づけることができ,これに基づいた化学量論計算ができる。
5週 5ー3 反応熱
各種反応エンタルピーについて学ぶ
エンタルピー変化のデータをもとに,ヘスの法則に基づいた熱量計算ができる。各種標準エンタルピー変化を利用した熱量計算ができる
6週 5-3反応熱
反応熱の温度依存性について学ぶ
反応熱の温度依存性に関するキルヒホッフの法則を理解し,化学量論計算に活用できる。
7週 前期中間試験 前期期末試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
8週 6-1熱力学第二法則
不可逆な現象とエントロピーの概念をについて学ぶ
エントロピーの大小は何を意味するか説明できる。ボルツマンの式を知ることができる。エントロピーの熱力学的定義を知り,状態変化のエントロピー変化および気体の等温変化に活用できる。
2ndQ
9週 6-1熱力学第二法則
様々な過程に対するエントロピー変化について学ぶ
室温でお湯が自発的に冷める理由,高温源から低温源へ熱が自発的に移動する理由を熱力学第二法則を利用して説明できる。2種類以上の流動性の物質が自発的に混合することを理想気体を例にして熱力学第二法則に則って説明できる。
10週 6-2熱力学第三法則
熱力学第三法則,第三法則エントロピーについて学ぶ,化学変化のエントロピー変化について学ぶ
熱力学第三法則を活かし,標準エントロピー変化より,各種反応のエントロピー変化を計算できる。
11週 6-2熱力学第三法則
化学変化のエントロピー変化について学ぶ
熱力学第三法則を活かし,標準エントロピー変化より,各種反応や変化のエントロピー変化を計算できる。
12週 6-3自由エネルギーの変化と方向
自由エネルギーの概念,およびギブズの自由エネルギーとヘルムホルツの自由エネルギーについて学ぶ
標準ギブズエネルギーを使った,化学反応等について学ぶ
自由エネルギーの定義と根拠を理解できる。標準ギブズエネルギーを使い,化学反応等の化学量論計算ができる。
13週 6-5化学ポテンシャル
化学ポテンシャルの概念について学ぶ
化学ポテンシャルの概念について理解する。
14週 6-5化学ポテンシャル
化学ポテンシャル変化の扱い方について学ぶ
化学ポテンシャル変化の計算ができる。
15週 前期期末試験 前期期末試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
16週
後期
3rdQ
1週 9-1化学平衡
質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について学ぶ
9-2 平衡組成の計算
平衡反応とギブズの自由エネルギーの関係について学ぶ
質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について理解できる。
平衡反応とギブズの自由エネルギーの関係について理解し,計算できる。
2週 9-3化学平衡への諸条件の影響
9-4不均一反応
平衡反応への圧力,温度変化の影響および不均一系の平衡反応について学ぶ
平衡反応への圧力,温度変化の影響および不均一系の平衡反応について理解できる。
3週 7-1相転移と相律
相転移と相律,純物質の状態図,2成分系の平衡条件について学ぶ
相転移と相律,純物質の状態図,2成分系の平衡条件について理解できる。
4週 7-2純物質の相平衡
クラウジウスークラペイロンの式とその扱い方について学ぶ
クラウジウスークラペイロンの式を理解し,これを用いて計算できる。
5週 7-32成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質
ラウールの法則の概念とその扱い方について学ぶ
ラウールの法則の概念について理解できる。
6週 7-32成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質
ヘンリーの法則および溶液の活量について学ぶ
ヘンリーの法則および溶液の活量について理解し,計算できる。
7週 後期中間試験 後期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
8週 7-4 2成分系の気相―液相状態図
2成分系の気相―液相状態図と蒸留の関係および共沸混合物について学ぶ
2成分系の気相―液相状態図と蒸留の関係および共沸混合物について理解できる。
4thQ
9週 7-5 束一的性質
蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下について学ぶ
7-5 束一的性質
浸透圧について学ぶ
蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下について理解でき,計算できる。
浸透圧について理解でき,計算できる。
10週 8-1コロイドの分散と運動
8-2コロイド分散系
コロイドの分類,比表面積の求め方,コロイドの安定性等について学ぶ
コロイドの分類,比表面積の求め方,コロイドの安定性等について理解できる。
11週 8-3気体/液体表面・液体/液体界面の特性
表面張力・界面張力について学ぶ
表面張力・界面張力について理解できる。
12週 8-4液体/固体界面の特性
接触角について学ぶ
接触角について理解できる。
13週 8-5吸着平衡
物理吸着と化学吸着の特性,吸着等温線について学ぶ
物理吸着と化学吸着の特性,吸着等温線について理解できる。
14週 8-6界面活性剤
界面活性剤の分類と特性について学ぶ
界面活性剤の分類と特性について理解できる。
15週 学年末試験 学年末試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。2
束一的性質を説明できる。3
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。3
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。3
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。3
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。3
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。3
エンタルピーの温度依存性を計算できる。3
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。3
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。3
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。3
均一および不均一反応の平衡を説明できる。3
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。3
純物質の絶対エントロピーを計算できる。3
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。3
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。3
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。3
平衡定数の温度依存性を計算できる。3
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。3

評価割合

試験小テスト,課題合計
総合評価割合9010100
基礎的能力40040
専門的能力40848
分野横断的能力10212