概要:
工学共通の専門基礎として、高校課程の物理の履修を前提として、ベクトルと微積分を利用した質点・質点系・剛体の力学に関する授業を実施する。授業を通して,微分方程式としての運動方程式の解法を学習する。また,運動方程式と導出される保存則との関係を学習する。更に,運動する観測者の立場からの運動方程式を学習する。これらの多角的な学習から,力学問題を解決できる基礎的な能力を体得する。質点力学で学習したこれらの結果を踏まえて,質点系力学および剛体力学の問題の解決方法を学習する。
授業の進め方・方法:
授業計画を参照
注意点:
【成績評価の基準・方法】
前学期中間・前学期末・後学期中間・後学期末の各期の成績は、定期試験の成績を60%、平素の学習状況等(提出物・平常(実力)試験等)を40%の割合で総合的に評価する。
年度当初から前学期中間迄の総合評価・前学期末迄の総合評価・後学期中間迄の総合評価・学年末迄の総合評価は,年度当初から当該期迄の各期の評価の平均とする。学年の評価は年度当初から学年末迄の総合評価とする。
技術者が身につけるべき専門の基礎科目として、上記の到達目標に対する達成度を試験等において評価する。
※ただし、遠隔授業の実施状況により、定期試験の回数などが変更になることがある。
【事前・事後学習】
事前学習として、教科書の該当部分を読んだ上で、理解が難しかった部分をまとめて授業に臨むこと。また、事後学習として、授業内で出てきた公式等を再確認し、取り組んだ演習問題を独力で解けるようにすること。
【履修上の注意】
この科目を履修するにあたり、1・2年生の物理Ⅰ・物理Ⅱ・力学基礎、1・2年生の基礎数学ⅠAB・基礎数学ⅡAB・線形代数ⅠAB、微分積分IAB、3年生の微分積分Ⅱの内容を十分に理解しておくことが期待されている。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
第1章 質点力学 1節 運動の表し方 物体の位置と速度と加速度の関係 (1) 直線上の運動 (2) 平面内の運動 |
物体の位置(変位)、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。
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2週 |
第1章2節 運動の三法則 (1) 慣性の法則 (2) 運動の法則 (3) 作用反作用の法則 |
運動の三法則を説明できる。運動方程式における加速度を、速度の時間微分、位置の二階微分を用いて表せることを理解する。
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3週 |
第1章3節 運動方程式の解き方《落体》 (1) 重力:鉛直投げ上げ、斜方投射 1.変数分離法 2.予想解の方法 |
落体の運動方程式(微分方程式)を立て、初期値問題として解くことができる。また、一般解を複数の方法で求めることができる。
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4週 |
3.非同次方程式の解法 (2) 重力と空気抵抗(粘性抵抗)力 1.変数分離法 |
空気抵抗を受ける落体の運動方程式を立て、変数分離法を用いて一般解を求め、初期値問題を解くことができる。
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5週 |
第1章4節 運動方程式の解き方《単振動》 (1) 弾性力:単振動 2.予想解(特性方程式)の方法 |
弾性力が働く単振動の運動方程式を立てて、設定した予想解を用いて一般解を求め、初期値問題として解くことができる。
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6週 |
(2) 弾性力と重力:単振動 (3) 弾性力と振動する外力:強制振動 3. 非同次方程式の解法 |
弾性力の外に重力や振動する外力が働く場合における運動方程式を立てて、非同次方程式の解法を用いて解くことができる。
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7週 |
第1章 総合演習 |
運動方程式の解法である変数分離法、予想解(三角関数・特性方程式)の方法、非同次方程式の解法を応用することができる。
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8週 |
第1章4節 運動方程式の解き方《単振動》 (4) 弾性力と粘性抵抗力:減衰振動1 2. 予想解(特性方程式)の方法 |
弾性力と粘性抵抗力が働く質点の運動方程式を立てて、特性方程式の方法を用いて解くことができる。
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2ndQ |
9週 |
4. 関数変換の方法 |
前週の運動方程式を、関数変換の方法で解き直して、減衰振動解・臨界振動解・過減衰解と解が質的に変化することを理解する。
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10週 |
第2章 運動方程式の仲間たち 1節 力と運動量 (1) 運動量変化と力積 |
運動方程式を運動量を用いて表現できる。運動量変化が力積に等しいことを理解できる。運動量保存の法則を使うことができる。
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11週 |
第2章2節 力のモーメントと角運動量 (1) 回転の運動方程式 (2) 角運動量変化と力のモーメントの力積 |
角運動量と力のモーメントを用いた回転の運動方程式を導ける。角運動量変化が力のモーメントの力積に等しいことを理解する。
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12週 |
(3) 角運動量保存の法則 |
回転の運動方程式を用いて、角運動量を求めることができる。角運動量保存の法則について具体的な例を挙げて説明できる。
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13週 |
第2章3節 仕事とエネルギー (1) 微小仕事と運動方程式 (2) 運動エネルギー変化と仕事 |
微小仕事を積分して質点がされた仕事を計算できる。運動エネルギー変化が質点にされた仕事に等しいことを理解する。
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14週 |
(3) 保存力と位置エネルギー (4) 力学的エネルギー保存の法則 |
保存力と位置エネルギーの関係を理解し、一方から他方を算出できる。力学的エネルギー保存の法則の適用範囲を理解できる。
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15週 |
第2章 総合演習 |
運動量・角運動量・運動エネルギーと視点を変えて運動方程式を見ることにより得られた結果を、力学問題に使える。
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16週 |
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後期 |
3rdQ |
1週 |
第3章 運動する観測者 1節 並進運動する観測者 (1) 慣性系と非慣性系 |
運動方程式は静止(慣性系)観測者が立てる。加速度運動する観測者立てる運動方程式には慣性力が必要になることを理解する。
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2週 |
第3章 運動する観測者 2節 回転運動する観測者 (1) 静止観測者による極座標表示
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回転運動する観測者の慣性力を調べる準備として、静止観測者による物体の運動の極座標表示を理解する。
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3週 |
第3章2節 回転運動する観測者 (2) 回転運動する観測者の極座標表示 (3) 回転運動する観測者の慣性力
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回転運動する観測者による極座標表示との比較から,慣性力を導くことができる。
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4週 |
(4) 地球上の遠心力とコリオリの力 |
地球と一緒に回転運動する観測者として、地球上の物体の運動方程式を、遠心力とコリオリ力を用いて立てることができる。
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5週 |
第4章 質点系力学 1節 重心と全運動量
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質量中心と重心の違いを説明できる。重心の運動量と全運動量の関係を理解して,重心の運動方程式を立てることができる。
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6週 |
第4章2節 重心の運動と重心周りの運動 (1) 全角運動量の分離 (2) 回転運動の運動方程式の分離 |
全角運動量を重心と重心周りの角運動量に分離できる。回転運動の運動方程式を公転運動と自転運動の運動方程式に分離できる。
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7週 |
第4章2節 重心の運動と重心周りの運動 (3) 運動エネルギーの分離 |
全運動エネルギーを重心の運動エネルギーと重心周りの回転運動の運動エネルギーに分離することができる。
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8週 |
第3、4章 総合演習 |
加速度運動する観測者がみた物体の運動の簡単な応用問題を解くことができる。質点系の簡単な応用問題を解くことができる。
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4thQ |
9週 |
第5章 剛体力学 1節 剛体の運動方程式 (1) 剛体の重心 (2)重心の運動方程式 |
離散系の和公式を連続系の積分公式に変換できる。剛体の重心の計算ができる。剛体の重心の運動方程式を立てることができる。
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10週 |
第5章 剛体力学 1節 剛体の運動方程式 (2) 回転運動の運動方程式 |
剛体の固定軸周りの回転運動の運動方程式を導き、運動方程式を立てることができる。
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11週 |
第5章1節 剛体の運動方程式 (3) 慣性モーメント 1. 平行軸の定理 2. 薄板の定理 |
慣性モーメントの定義から基本的な形状の慣性モーメントを計算できる。平行軸の定理と薄板の定理を理解して使うことができる。
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12週 |
第5章 剛体力学 2節 固定軸の周りの運動 (1) 定滑車 (2) 剛体振子 |
簡単な固定軸の周りの剛体の運動を、回転運動の運動方程式を立てて、解くことができる。
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13週 |
第5章 剛体力学 3節 直線上の運動 (1) 直線上を運動する剛体 |
簡単な直線上の剛体の運動を、並進運動と回転運動の運動方程式を立てて、連立させて解くことができる。
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14週 |
第5章 剛体力学 4節 平面内の運動 (1) 坂を転がり落ちる剛体 |
簡単な平面内の剛体の運動を、並進運動と回転運動の運動方程式を立てて、連立させて解くことができる。
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15週 |
第5章 総合演習 |
剛体の運動の簡単な応用問題を解くことができる。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 物理 | 力学 | 平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。 | 3 | 前1,前3 |
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。 | 3 | 前1,前3,前5 |
慣性の法則について説明できる。 | 3 | |
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。 | 3 | |
運動方程式を用いた計算ができる。 | 3 | |
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。 | 3 | 前3,前4,前5 |
運動の法則について説明できる。 | 3 | |
仕事と仕事率に関する計算ができる。 | 3 | |
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | |
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | |
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | |
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。 | 3 | |
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。 | 3 | |
運動量の差が力積に等しいことを利用して、様々な物理量の計算ができる。 | 3 | |
運動量保存則を様々な物理量の計算に利用できる。 | 3 | |
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。 | 3 | |
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。 | 3 | |
力のモーメントを求めることができる。 | 3 | |
角運動量を求めることができる。 | 3 | 前11,前12,後6 |
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。 | 3 | 前12 |
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。 | 3 | 後11,後14 |
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。 | 3 | 後12,後13,後14 |