無機・分析化学実験

科目基礎情報

学校 高知工業高等専門学校 開講年度 2019
授業科目 無機・分析化学実験
科目番号 T3049 科目区分 専門 / 必修
授業形態 実験・実習 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 SD 新素材・生命コース 対象学年 3
開設期 前期 週時間数 4
教科書/教材 教科書:「実験テキスト」(高知高専) 参考書:増田他、「フォトサイエンス化学図録」(数研出版) 日本工業化学教育研究会、「実験・実習の安全 -化学編-」(実教出版)
担当教員 三嶋 尚史,藤田 陽師

到達目標

【到達目標】
1.教科書で学習した内容について,実験できる。
2.無機合成実験の基礎技術を実践できる。
3.各種滴定の原理を理解している。
4.分析化学の理論を実践的に理解し,解析法を習得する。
5.種々の金属イオンを含む溶液の中からそれぞれの金属イオンの分離・定性分析ができる。
6.実験ノートを正しく作成できる。
7.実験結果について考察でき,これを論理的に論文形式の文章としてまとめ,報告できる。
8.基本的な実験器具の使用方法,基本操作を習得する。
9.分析用実験器具を取り扱い,分析化学に求められる器具の洗浄ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1実験方法,合成実験による収率計算、各種濃度計算,観察事項などが実験レポートに記載され,実験結果に関する深い考察もなされている。実験方法,合成実験による収率計算、各種濃度計算,観察事項などが実験レポートに記載されている。実験レポートとしての体裁が整っておらず,実験方法や結果が誤って記載されている。
評価項目2実験ノートに各実験の予習が十分に記され,実験結果,観察事項,考察も十分に記載されている。実験ノートに各実験の予習や実験結果がわかりやすく記載されている。実験ノートに各実験の予習や実験結果があまり記載されていない。
評価項目3種々の金属イオンを含む溶液の中からそれぞれの金属イオンの分離・定性分析が詳細にできる。種々の金属イオンを含む溶液の中からそれぞれの金属イオンの分離・定性分析ができる。種々の金属イオンを含む溶液の中からそれぞれの金属イオンの分離・定性分析ができない。
評価項目4実験テーマを理解し、安全な実験操作で正しい実験結果を導き、検証を加えることができる。実験テーマを理解し、安全な実験操作で正しい実験結果を導くことができる。実験テーマへの理解が足りず、正しい実験結果を導くことが出来ない。安全に関する認識が乏しい
評価項目5分析用実験器具を取り扱い,分析化学に求められる器具の洗浄が充分にできる。分析用実験器具を取り扱い,分析化学に求められる器具の洗浄ができる。分析用実験器具を取り扱い,分析化学に求められる器具の洗浄ができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
【授業の目標等】
 化学技術者が身につけるべき専門基礎として,無機化合物・無機材料について合成を中心とする実験を行い,無機の合成化学に関する実験技術を習得する。実験とその結果と考察を論理的にまとめ,文章で報告できる能力を身につける。
 無機イオンの定量分析実験を通して,溶液内での多様な反応を確認し,さらに分析化学の基本概念や理論を理解し,定量分析操作や計算を実践的に習得することを目標とする。
 定性分析化学の基本操作を理解し身につけるため,金属イオンの定性分析実験を通して,器具の使い方や洗浄方法,種
々の金属イオンを含む溶液からの各金属イオンの分離・定性分析等を実践的に学習する。
授業の進め方・方法:
各実験のはじめには実験に関する注意事項を講義し、その後各自その週のテーマの実験を始める。実験授業中は操作が正しいか、安全な実験をしているか、実験ノートは正しくつけているかを教員が監督しながら実験を進める。実験内容、結果は各自レポートにより報告する。
注意点:
レポート80%,平素の学習状況(実験の予習・準備,取り組み姿勢及び実験技術の修得度等)20%,の割合で総合的に評価する。全てのレポート及び実験ノートが提出されていることが求められる。技術者が身につけるべき専門基礎として,到達目標に対する達成度を総合的に評価する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 1.導入:無機化学実験を行うに当たっての注意。実験ノートの取り方,レポートの作成方法について,実験器具の基本的使用方法の習得 合成実験に関する基本的なレポートの書き方について理解し、次回からのレポート執筆に実践できる。基本的な実験器具を使用することができる。
2週 2.硫酸銅の合成:銅を硝酸に溶かし,炭酸ナトリウムを加え,得られた合成物に硫酸を加えて硫酸銅を合成する。 硫酸銅の合成を手順通りに実施することができ、実験中の観察とともにその場での実験ノート書き込みができる。正しくレポートが書ける。
3週 2.硫酸銅の合成:銅を硝酸に溶かし,炭酸ナトリウムを加え,得られた合成物に硫酸を加えて硫酸銅を合成する。
※レポート指導
硫酸銅の合成を手順通りに実施することができ、実験中の観察とともにその場での実験ノート書き込みができる。正しくレポートが書ける。
4週 3.酸化亜鉛の合成:銅と亜鉛のイオン化傾向の差を利用し、亜鉛粉末と硫酸銅から硫酸亜鉛と粉末銅を得る。 酸化亜鉛の合成を手順通りに実施することができ、実験中の観察とともにその場での実験ノート書き込みができる。正しくレポートが書ける。
5週 3.酸化亜鉛の合成:銅と亜鉛のイオン化傾向の差を利用し、亜鉛粉末と硫酸銅から硫酸亜鉛と粉末銅を得る。 酸化亜鉛の合成を手順通りに実施することができ、実験中の観察とともにその場での実験ノート書き込みができる。正しくレポートが書ける。
6週 4. コバルト錯体の合成 :塩化コバルト(II)六水和物をアンモニア存在下で酸化し,触媒を用いてヘキサアンミンコバルト(III)塩化物を合成する。 コバルト錯体の合成を手順通りに実施することができ、実験中の観察とともにその場での実験ノート書き込みができる。レポートが書ける。
7週 5.分析化学実験に用いる濃度計算演習 モル濃度に加え,規定度に関しても理解し,実験テキスト記載の規定度情報から実験遂行に必要な化学量論計算を実施することができる
8週 6.酸塩基滴定:水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合水溶液の定量 水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合水溶液の酸塩基滴定を通じて,塩基混合物中の各物質の定量ができる。
2ndQ
9週 7.酸化還元滴定:CODの測定 有機物が溶存するモデル水溶液のCOD測定ができる。
10週 8.錯滴定:EDTA標準液調製 錯滴定のためのEDTA標準溶液の調製ができる。
11週 8.錯滴定:キレート滴定による水の硬度測定 市販のミネラルウォーターの硬度測定を通じて,水の硬度測定ができる。
12週 9.無機各論:無機金属元素の性質について学ぶ。 陽イオンの定性分析法に基づき,各グループ(属)における共通的な性質を理解し,その知識を実験に応用できる。
13週 10.分属:第1属から第5属の陽イオンの分離・検出する 第1属から第5属までの陽イオンの分離・検出の操作技術を学び,各属の性質を理解する。
14週 10.分属:第1属から第5属の陽イオンの分離・検出する 第1属から第5属までの代表的な陽イオンを含む未知試料の分離・検出を行うことができる。
15週 11. 片付け・まとめ[15]
適宜レポートを課し,実験内容を確認・報告させることにより,内容の理解度・到達度を確認する。
実験器具を正しく点検できる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。3
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。3
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。3
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。4
分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。4
中和滴定についての原理を理解し、酸及び塩基濃度の計算ができる。4
酸化還元滴定についての原理を理解し、酸化剤及び還元剤の濃度計算ができる。4
キレート滴定についての原理を理解し、金属イオンの濃度計算ができる。4
分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】分析化学実験中和滴定法を理解し、酸あるいは塩基の濃度計算ができる。4
酸化還元滴定法を理解し、酸化剤あるいは還元剤の濃度計算ができる。4
キレート滴定を理解し、錯体の濃度の計算ができる。4
陽イオンおよび陰イオンのいずれかについて、分離のための定性分析ができる。4

評価割合

実験レポート予習・実験ノート取り組み姿勢合計
総合評価割合801010100
基礎的能力5010060
専門的能力300030
分野横断的能力001010