無機化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 高知工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 無機化学Ⅰ
科目番号 T3050 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 SD 新素材・生命コース 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材  教科書:伊藤和男 他「演習で学ぶ無機化学」(三共出版) 参考書:シュライバー・アトキンス 「無機化学」(東京化学同人)
担当教員 藤田 陽師

到達目標

【到達目標】
1.原子の電子配置とオービタルのエネルギーについて説明できる。
2.原子のイオン化エネルギー,ならびに,電子親和力と電気陰性度について理解している。
3.混成軌道を答えることができ,2原子分子の分子軌道が書ける。
4.錯体と錯イオンの構造を理解し,錯体の命名法を使うことができる。
5.錯体におけるd軌道の分裂,高スピン錯体と低スピン錯体について理解できる。
6.配位子場理論について理解できる。
7.錯体の立体化学に関して,ヤーン-テラー歪み,幾何異性,光学異性について理解できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1 電子配置、軌道、およびエネルギー準位関連標準的な到達に加え、マイナーな元素、イオンの電子配置が答えられる。分子軌道図から分子の特性を説明できる。複雑な分子の混成軌道を答えることができる。原子やイオン種与えられればその電子配置が答えられる。二原子分子の分子軌道図を書くことができ、各準位の項の記号および結合特性が答えられる。基本的な分子の混成軌道を答えることができる。原子やイオンが与えられて、その電子配置が答えられない。基本的な二原子分子の分子軌道図を書くことができない。簡単な分子の混成軌道を描くことができない。
評価項目2 イオン化エネルギー、電子親和力、原子の半径、イオン半径と周期律、物性標準的な到達に加え、遷移金属やランタノイドについてもイオン化エネルギー、電子親和力における傾向が説明できる。初歩的なイオン化エネルギー算出ができる。初歩的な電気陰性度の算出ができる。第二周期元素までについてはイオン化エネルギー、電子親和力と周期律の関係性について説明できる。原子半径、イオン半径と周期律の関係について説明でき、これらに関する専門用語について説明できる。初歩的なイオン化エネルギー算出や電気陰性度算出ができない。イオン化エネルギー、電子親和力、原子半径、イオン半径と周期律、物性を対応して説明できない。
評価項目3 分子の電子状態原子価結合法と分子軌道法の違いを明確に答えることができる。第二周期までの分子軌道図を正しく描けるとともに各準位の軌道の形を正しく描くことができる。分子中の原子の混成状態を正しく答えることができる。第二周期までの2原子分子の分子軌道図を正しく描くことができる分子中の原子の混成状態を正しく答えることができない。第二周期までの2原子分子の分子軌道図を正しく描くことができない
評価項目4 錯体の命名,立体化学錯体と錯イオンの構造をよく理解し,錯体の命名法を十分に使うことができる。錯体の立体化学に関して,ヤーン-テラー歪み,幾何異性,光学異性についてよく理解できる。   錯体と錯イオンの構造を理解し,錯体の命名法を使える。錯体の立体化学に関して,ヤーン-テラー歪み,幾何異性,光学異性について理解できる。      錯体と錯イオンの構造を理解せず,錯体の命名法を使うことができない。錯体の立体化学に関して,ヤーン-テラー歪み,幾何異性,光学異性について理解できない。   
評価項目5 d軌道の分裂,高スピン錯体と低スピン錯体錯体におけるd軌道の分裂,高スピン錯体と低スピン錯体について十分に理解できる。   錯体におけるd軌道の分裂,高スピン錯体と低スピン錯体について理解できる。   錯体におけるd軌道の分裂,高スピン錯体と低スピン錯体について理解できない。   
評価項目6 配位子場理論配位子場理論についてよく理解できる。   配位子場理論について理解できる。   配位子場理論について理解できない。   
評価項目7 古典的な分子構造、分子の形標準的な到達に加え、複雑な分子に関してもその形、極性を類推することができる。分子式が与えられればその分子のLewis構造が描け、分子の形を予測でき、極性を答えることができる。分子のLewis構造を描くことができない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 (B) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
材料を学ぶ基礎となる無機化学を学ぶ。原子の電子配置,周期律, 分子軌道,錯体の分子軌道について学び,そこから得られる基礎的な性質についても学習する。
授業の進め方・方法:
授業は随時演習を取り入れた講義形式で進めていく。この中で、各回において前回までの内容に関する小テストを実施する。また、必要に応じて随時課題がある。
注意点:
【成績評価の基準・方法】
 試験の成績90%,小テストと課題からなる平常点10% の割合で総合的に評価する。学期毎の評価は中間と期末の各期間の評価の平均,学年の評価は前学期と後学期の評価の平均とする。
なお,後学期中間の評価は前学期中間,前学期末,後学期中間の各期間の評価の平均とする。技術者が身につけるべき専門基礎として,到達目標に対する達成度を試験等において評価する。
【事前・事後学習】
 本科目は事後学習に重点を置いている。授業終了後は事後学習を十分に進めたうえで次の授業の最初に実施する小テストに臨むこと。適宜出題される課題も真摯に取り組み,自身で熟慮して回答したうえで〆切厳守で提出すること。
【履修上の注意】
 この科目を履修するにあたり,1年生の化学IⅠ,2年生の化学Ⅱ, 材料学基礎, 物理Ⅱの一部(第Ⅱ章「波動」および第Ⅳ章「原子」)の内容を十分に理解しておくこと。





授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 2 原子モデルと周期表
◆補助単位換算
◆光と波の復習
◆光電効果
◆無機化学で用いる単位系を正しく理解できる。
◆光波の諸物性の計算ができる。
◆光のエネルギー計算ができる。
2週 2 原子モデルと周期表
◆水素原子の発光スペクトルについて学習する。
◆水素原子の発光スペクトルについて説明できる。
3週 2 原子モデルと周期表
◆ボーアの水素モデルについて学習する。◆ド・ブロイ波について学習する。
◆ボーアの水素モデルについて、その導出を理解し、各量子数でのエネルギー計算ができる。
◆ド・ブロイ波とは何かを理解し、説明できる。
4週 2 原子モデルと周期表
◆Shrodinger方程式
◆原子軌道の意味と性質
◆シュレディンガー方程式の存在を理解しており、軌道関数の意味を説明できる。
5週 2 原子モデルと周期表
◆量子数とエネルギー,波動関数の関係
◆電子スピン
◆電子の配置則
◆Caまでの電子配置
◆現れた各種の量子数と軌道の関係が理解できる。原子軌道の図を正しく書くことができる。 電子スピンとは何かを理解できる。
◆パウリの排他則およびフントの規則を利用して、各原子の電子配置を正しく書くことができる。
6週 前期1週目~5週目までの復習 前期1週目~5週目までの復習を通して,ここまでの内容を定着できる
7週 前期中間試験 前期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
8週 2 原子モデルと周期表
◆Rnまでの電子配置
◆周期表との関係
◆パウリの排他則およびフントの規則を利用して、各原子の電子配置を正しく書くことができる。
◆周期表と電子配置の相関を理解できる。周期表上の各種ブロックを答えることができる。
2ndQ
9週 2 原子モデルと周期表
◆単純イオンの電子配置
◆典型元素の電子配置
◆遷移元素の電子配置
◆ランタノイドの電子配置
◆パウリの排他則およびフントの規則を利用して、各イオンの電子配置を正しく書くことができる。
10週 2 原子モデルと周期表
◆有効殻電荷
3化学結合
◆イオン化エネルギー,電子親和力序論
◆各元素、イオンの有効核電荷を計算できる。電子軌道の貫入とは何かを理解し、説明できる。
11週 3化学結合
◆イオン化エネルギー,電子親和力,原子半径、イオン半径と周期表
◆原子番号とイオン化エネルギー、電子親和力、イオン半径の相関グラフをもとにして、その相関性について説明できる。
◆ランタノイド収縮とは何か説明できる。
12週 ◆イオン化エネルギー,電子親和力,原子半径、イオン半径と周期表 ◆原子番号とイオン化エネルギー、電子親和力、イオン半径の相関グラフをもとにして、その相関性について説明できる。
◆ランタノイド収縮とは何か説明できる。
13週 3化学結合
◆電気陰性度
◆ポーリングの電気陰性度
◆Mullikenの殿筋制度
◆オールレッドロコウの電気陰性度
◆各種の電気陰性度の特徴を説明でき、必要な物性データを用いて算出できる。
14週 前期8週目~13週目までの演習 前期8週目~13週目までの演習を通して,ここまでの内容を定着できる。
15週 ◆分子のルイス構造 ◆共鳴構造を含む分子のLewis構造を描くことができる。
16週
後期
3rdQ
1週 ◆分子のルイス構造
◆ルイス構造を基にした、分子の形の予測
◆超原子価原子を含む分子のLewis構造を描くことができる。
◆VSEPR理論を使い、分子の形を正しく答えることができる。
2週 ◆ルイス構造を基にした、分子の形の予測
◆結合の分極と分子の極性
◆VSEPR理論を使い、分子の形を正しく答えることができる。
◆分子式、分子名を見てその分子の形からその分子が極性分子か、無極性分子か判別できる
3週 3化学結合
◆原子価軌道法
◆混成軌道
◆原子軌道の混成のイメージを理解している。指定した原子の混成軌道を正しく答えることができる。
4週 3化学結合
◆分子軌道法
◆H2の分子軌道
◆分子軌道に関する専門用語が意味するところを理解したうえで水素分イオン、水素分子、ヘリウム二量体等のの分子軌道図を描ける。
5週 3化学結合
◆第二周期の分子軌道
◆分子軌道に関する専門用語が意味するところを理解したうえで等核二原子分子,異核二原子分子の分子軌道図を描ける。
◆分子軌道図からその分子の磁性について、答えることができる。
6週 5錯体化学
◆金属錯体の種類とその命名法
◆錯体および錯イオンを正しく命名することができる。錯体および錯イオンの名称から分子式を書くことができる。
7週 5錯体化学
◆金属錯体の立体異性体
◆金属錯体とd軌道
◆錯体の構造異性体を区別して書くことができる。
◆錯体の名称から立体構造を書くことができる。
8週 後期1週目~6週目までの演習 後期1週目~6週目までの演習を通して,ここまでの内容を定着できる
4thQ
9週 後期中間試験 後期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
10週 5錯体化学
◆d軌道の分裂
◆八面体錯体、四面体錯体、正方錯体、直線錯体について、d軌道の分裂を描くことができ、なぜそのような分裂になるのかを結晶場理論に基づいて説明することができる。
11週 5錯体化学
◆錯体のスピン状態
◆八面体錯体について、高スピン錯体と低スピン錯体を区別して電子配置を書くことができる。
◆錯体の電子配置からCFSEを計算することができる。
12週 5錯体化学
◆ヤーンテラー効果
◆錯体の物性
◆ヤーンテラー効果とは何か、電子配置図とともに説明することができる。
◆d軌道分裂の特性からその錯体が何色か、予想できる。
◆電子配置からその錯体の磁気モーメントを計算することができる。
13週 5錯体化学
◆配位子場理論序論
◆配位子の種類と配位子場理論
◆配位子場理論がどのようなものか概略を説明できる。
◆σ配位子を持つ錯体の分子軌道を描くことができる。
14週 5錯体化学
◆配位子の種類と配位子場理論
◆配位子場理論を用いた錯体の物性
◆σ配位子、π供与体配位子、π受容体配位子とは何か説明でき、それぞれの場合の錯体の分子軌道を描くことができる。
15週 後期10週目~14週目までの演習 ◆後期10週目~14週目までの演習を通して,ここまでの内容を定着できる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4前5
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4前4
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4前6,前8
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4前6,前8
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。3前6,前8
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4前10,前11,前12
イオン結合と共有結合について説明できる。3前12
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4前15,後1,後2
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4後3,後4,後5
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4後3
配位結合の形成について説明できる。4
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。4後8
錯体の命名法の基本を説明できる。4後8
配位数と構造について説明できる。4後9
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。4後12,後14

評価割合

試験小テスト、課題合計
総合評価割合9010100
基礎的能力40545
専門的能力40545
分野横断的能力10010