概要:
物理化学の基礎的事項について,3年に引き続いて学ぶ。特に,熱化学と化学平衡の基礎を理解し,化学反応等を熱化学的に解釈し説明できると共に,物質の状態変化に伴う仕事やエネルギーに関する基本法則を学び、さらに化学平衡に関する基本的な事項を学習することによって、化学技術者としての専門的基礎知識を習得する。ものづくりの現場で実務経験のある教員によって,基本的な生産工学,ものづくりのプロセス,システムについて,実務的な面も含めて解説し,社会で幅広く活用できる能力を養成する。
授業の進め方・方法:
授業は随時演習を取り入れた講義形式で進めていく。この中で、各回において前回までの内容に関する小テストを実施する。また、必要に応じて随時課題がある。
注意点:
【成績評価の基準・方法】
試験の成績90%,小テストと課題からなる平常点10% の割合で総合的に評価する。学期毎の評価は中間と期末の各期間の評価の平均,学年の評価は前学期と後学期の評価の平均とする。
なお,後学期中間の評価は前学期中間,前学期末,後学期中間の各期間の評価の平均とする。技術者が身につけるべき専門基礎として,到達目標に対する達成度を試験等において評価する。
【事前・事後学習】
本科目は事後学習に重点を置いている。授業終了後は事後学習を十分に進めたうえで次の授業の最初に実施する小テストに臨むこと。適宜出題される課題も真摯に取り組み,自身で熟慮して回答したうえで〆切厳守で提出すること。
【履修上の注意】
この科目を履修するにあたり,1年生の化学IⅠ,2年生の化学Ⅱ, 物理化学Ⅰの内容を十分に理解しておくこと。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
5-2 熱力学第一法則 ◆熱力学で使用する微積分(1) ~微小変化と積分量~ ◆熱量変化の例 |
◆熱力学における微分,積分の取り扱い方,考え方について理解できる。この一例として熱容量が温度の関数であった場合に熱量変化,反応熱を計算できる。
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2週 |
5-2 熱力学第一法則 ◆熱と平衡 ◆仕事,熱,内部エネルギー,エンタルピーおよび熱力学第一法則の復習 ◆定圧変化,定積変化の復習 ◆等温変化 |
◆時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。 ◆動摩擦力がする仕事は一般に熱となることを説明できる。 ◆定積変化,定圧変化,等温変化がどんな過程で第一法則に関与する熱力学量がどのように表されるか理解し,定義から導出できる。
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3週 |
5-2 熱力学第一法則 ◆断熱過程の復習 |
◆断熱過程について理解し,Q, Wを算出できる。 ◆マイヤーの関係式を導出でき,利用できる ◆ポアソンの式を導出し,利用できる。
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4週 |
5-2 熱力学第一法則 ◆熱力学サイクルと状態量の復習 ◆カルノーサイクルと熱効率 |
◆PVグラフにおける熱力学サイクルの各変化がどんな変化か説明できる。 ◆各サイクル変化のΔp, ΔV,ΔT, ΔU,Q, Wを算出できる。 ◆カルノーサイクルの各過程を理解したうえで仕事,熱を計算でき,熱効率を計算できる。
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5週 |
6-1熱力学第二法則 ◆カルノーサイクル ◆熱力学第二法則とエントロピー |
◆熱力学第2法則とはどんな法則か理解できる。 ◆エントロピーの定義を説明でき,どのような量か説明できる(エントロピーの大小は何を意味するか説明できる)。 ◆相変化のエントロピー変化を計算できる。
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6週 |
6-1熱力学第二法則 ◆様々な過程に対するエントロピー変化の計算 |
◆定圧,定積過程のエントロピー計算,ができる。 ◆室温でお湯が自発的に冷める理由,高温源から低温源へ熱が自発的に移動する理由を熱力学第二法則を利用して説明できる。
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7週 |
前期1週目~6週目までの復習 |
前期1週目~6週目までの復習を通して,ここまでの内容を定着できる
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8週 |
前期中間試験 |
前期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
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2ndQ |
9週 |
6-1熱力学第二法則 ◆様々な過程に対するエントロピー変化の計算 6-2熱力学第三法則 ◆微視的エントロピー |
◆等温不可逆膨張のエントロピー計算ができる。 ◆2種類以上の流動性の物質が自発的に混合することを理想気体を例にして熱力学第二法則に則って説明できる。 ◆ボルツマンの式を知ることができる。
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10週 |
6-2熱力学第三法則 ◆第三法則エントロピー ◆エントロピーと化学反応 |
◆熱力学第三法則を活かし,標準エントロピー変化より,各種反応や変化のエントロピー変化を計算できる。
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11週 |
6-3自由エネルギーの変化と方向 ◆化学反応におけるエントロピー変化の温度依存性 ◆ギブズの自由エネルギーとヘルムホルツの自由エネルギー |
標準モルエントロピーの値と定圧熱容量を利用して任意のおんどでの化学反応におけるエントロピー変化を求めることができる。自由エネルギーの定義と根拠を理解できる。標準ギブズエネルギーを使い,化学反応等の化学量論計算ができる。
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12週 |
6-3自由エネルギーの変化と方向 ◆ギブズの自由エネルギーと非膨張仕事 ◆気体の混合とギブズの自由エネルギー変化 |
◆理想気体の自由膨張,理想気体の定圧等温での混合に関するギブズの自由エネルギーの変化を計算できる。 ◆ギブズの自由エネルギーを非膨張仕事の関係を理解できる。
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13週 |
6-4 熱力学の関係式 ◆4種のエネルギーと4種の変数 ◆閉鎖系の熱力学の基本方程式 |
◆閉鎖系の熱力学の基本方程式を理解でき,各熱力学量の定義から導出できる。 ◆等温過程における圧力変化に対するギブズの自由エネルギー変化を計算できる。
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14週 |
6-4 熱力学の関係式 ◆熱力学で使用する微積分(2) ~偏微分と全微分~ ◆Maxwellの関係式 |
◆熱力学における偏微分,全微分の取り扱い方,考え方について理解でき, 理論導出過程で使うことができる ◆Maxwellの関係式を理解でき,導出できる。
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15週 |
前期8週目~14週目までの演習 |
前期8週目~14週目までの演習を通して,ここまでの内容を定着できる。
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16週 |
6-4 熱力学の関係式 ◆ギブズ-ヘルムホルツの式とその利用 ◆部分モル量 |
◆ギブズ-ヘルムホルツの式を理解し,道術できる ◆部分モル量とは何かを理解でき,部分モル体積を例に部分モル量を用いた計算ができる。
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後期 |
3rdQ |
1週 |
7-1相転移と相律 ◆化学ポテンシャル ◆平衡状態と化学ポテンシャル ◆相律と自由度 |
◆化学ポテンシャルが何か説明できる。 ◆化学ポテンシャルの圧力との関係式を導出できる。 ◆平衡状態と化学ポテンシャルの関係を理解できる。 ◆相律が理解でき,与えられた系の自由度を計算できる。
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2週 |
7-2純物質の相平衡 ◆純物質の状態図とクラウジウスークラペイロンの式
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◆クラウジウスークラペイロンの式を理解し、式を用いて計算できる。
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3週 |
7-3 2成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質 ◆ラウールの法則と理想溶液 |
◆理想溶液の概念を説明でき,ラウールの法則を用いた蒸気圧組成の計算ができる。
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4週 |
7-3 2成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質 ◆理想溶液の混合 ◆ヘンリーの法則と理想希薄溶液 |
◆理想溶液の混合によるギブズの自由エネルギー変化を計算できる。 ◆ヘンリーの法則の概念について理解でき,ヘンリーの法則に基づいた溶解度計算,および分圧計算ができる。
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5週 |
7-5 束一的性質 ◆蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下 |
沸点上昇,凝固点降下について理解でき,計算できる。
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6週 |
7-5 束一的性質 ◆浸透圧 |
浸透圧について理解でき,計算できる。
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7週 |
後期1週目~6週目までの演習 |
後期1週目~6週目までの演習を通して,ここまでの内容を定着できる
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8週 |
後期中間試験 |
後期中間試験を通してこれまでの内容における到達目標を達成できる。
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4thQ |
9週 |
9-1化学平衡 ◆質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について学ぶ |
◆質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について理解できる。
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10週 |
9-1化学平衡 ◆質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について学ぶ |
◆質量作用の法則,ルシャトリエの原理,平衡定数について理解できる。
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11週 |
7-32成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質 ◆溶液の活量と非理想溶液 |
◆活量と活量係数の意味を理解し、化学計算に活用できる
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12週 |
9-2 平衡組成の計算 ◆平衡定数とギブズの自由エネルギーの関係について学ぶ |
◆平衡定数とギブズの自由エネルギーの関係について理解し,計算できる。
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13週 |
9-3化学平衡への諸条件の影響 ◆圧力および」温度の影響 9-4不均一反応 ◆固相がかかわる反応 |
◆化学平衡における圧力および温度変化の影響について理解できる。 ◆固相を含む不均一系の反応の化学平衡について理解できる。
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14週 |
後期9週目~13週目までの演習 |
◆後期9週目~13週目までの演習を通して,ここまでの内容を定着できる
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15週 |
1年のまとめと物理化学Ⅲへの導入 |
物理化学Ⅱで学んだ内容を再認識し、次の物理化学Ⅲへ導入する。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 物理 | 熱 | 時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。 | 4 | 前1 |
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。 | 4 | 前1 |
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。 | 4 | 前2,前3 |
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。 | 4 | 前1 |
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。 | 4 | 前1 |
熱機関の熱効率に関する計算ができる。 | 4 | 前8 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 物理化学 | 純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。 | 4 | 後3 |
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。 | 4 | |
束一的性質を説明できる。 | 4 | 後5,後6 |
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。 | 4 | 後5,後6 |
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。 | 4 | 後5,後6 |
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。 | 4 | 後2 |
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。 | 4 | 前2,前3 |
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。 | 4 | 前3,前4 |
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。 | 4 | 前4 |
エンタルピーの温度依存性を計算できる。 | 4 | 前5 |
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。 | 4 | 前3 |
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。 | 4 | 前8,前9,前10,前11 |
純物質の絶対エントロピーを計算できる。 | 4 | 前9 |
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。 | 4 | 前9,前10 |
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。 | 4 | 前11,前12,前13 |
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。 | 4 | 後9,後10 |
平衡定数の温度依存性を計算できる。 | 4 | 後11 |
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。 | 4 | 前8 |