科目基礎情報

学校 久留米工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 倫理
科目番号 0052 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学科 対象学年 1
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:『新倫理 最新版』、菅野覚明・熊野純彦・山田忠彰 他、清水書院  資料集:『新訂版 倫理 資料集 - ソフィエ -』、清水書院 その他資料については、講義中に適宜配布する。 
担当教員 藤木 篤

到達目標

1.倫理学史についての基礎的な知識を身につける。
2.現代社会における多様な倫理的諸課題を認識することができる。
3.現代社会が直面している倫理的諸問題を、自己の課題として捉えたうえで、先哲の基本的な考え方を手がかりにして、課題解決法について考察することができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1倫理学史における基本的な考え方や単語の意味について、他者に対して簡潔かつ正確に説明できる。倫理学史における基本的な考え方や単語の意味について、他者に対して説明できる。倫理学史における基本的な考え方や単語の意味について、ほとんど他者に説明できない。あるいは説明できたとしても不十分もしくは不正確である。
評価項目2現代社会における多様な倫理的諸課題を、背景や原因とともに、複数認識できている。現代社会における多様な倫理的諸課題を認識できる。現代社会における多様な倫理的諸課題の多くを認識できていない。または認識が不十分もしくは不正確である。
評価項目3現代社会が直面している倫理的諸問題について、先哲の考え方を手がかりにして、実現可能性の高い課題解決法を考察・提案することができる。課題解決法を考察・提案することができる。課題解決法について考察・提案することができない。もしくは考察・提案の内容が不十分である。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
人間尊重の精神に基づいて、青年期における自己形成と人間としての在り方・生き方について理解と思索を深めさせるとともに、人格の形成に努める実践的意欲を高め、生きる主体としての自己の確立を促し、良識ある公民として必要な能力と態度を育てることを、主たる目的とする。また単に良識ある公民としてだけではなく、社会に貢献する専門技術者としての自覚と自負心を涵養するために、人文・社会科学的な視点から人間、社会、文化について多面的に理解し、国際社会の一員として社会的諸問題の解決に向けて主体的に貢献する素養を培うことも、併せて本授業の目的とする。
授業の進め方・方法:
原則として講義形式で授業を行う。
注意点:
点数配分:前後期の期末試験の平均点(50%/回)によって評価する。
再試験:再試を行う。ただし、不合格者が少数の場合は行わない。
評価基準:60点以上を合格とする。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 導入 - 授業の進め方と成績評価について / 人間とは何か ホモ・サピエンス等の用語を手がかりに、人間性の特質について考察することができる。
2週 青年期の課題と自己形成 (1):青年期の意義 青年期の意義(自我の形成)を理解し、今後の自己形成過程の重要性を認識できる。
3週 青年期の課題と自己形成 (2):自己の理解に向けて / 豊かな自己実現のために パーソナリティや欲求階層説、心理-社会的モラトリアム等の用語を手がかりに、青年期の課題(アイデンティティの確立)を理解できる。
4週 古代ギリシア思想 (1):ソクラテス以前の哲学者達 古代ギリシア思想を育んだ時代的・文化的・社会的背景、および世界観の変革が理解できる。
5週 古代ギリシア思想 (2):ソクラテス・プラトン ソクラテスとその弟子であるプラトンの思想の骨子を、魂や理性という概念を軸に理解することができる。
6週 古代ギリシア思想 (3):アリストテレス / ヘレニズムの思想 (快楽主義と禁欲主義) 形相と質料、中庸、友愛と正義といった観点から、アリストテレスの思想を理解することができる。
7週 ユダヤ教・キリスト教 キリスト教の思想的特徴を、母胎となったユダヤ教との類似点・相違点に着目しながら、理解できる。
8週 イスラム教 イスラム教の「姉妹宗教」とも呼ばれるユダヤ教・キリスト教の特徴に留意しながら、イスラム教思想の基礎を理解できる。
2ndQ
9週 仏教 仏教および仏教の成立に大きな影響を及ぼしたバラモン教の思想的特徴を理解できる。
10週 古代中国思想 :儒家思想・老荘思想 日本にも大きな思想的影響を与えた儒家思想(儒教)の諸特徴を、老荘思想と対比しながら理解できる。
11週 日本の風土と伝統 和辻哲郎の『風土』の記述をもとに、日本の風土と人々の生活の関連性について考察できる。
12週 日本における仏教の伝来と隆盛 外来思想としての仏教が、日本において受容されていった過程を理解できる。
13週 儒教の伝来と展開 古代中国思想の一角としての儒教が、日本において受容されていった過程を理解できる。
14週 西洋近代思想の受容 (1) 蘭学をはじめとする西洋近代思想の受容過程を理解できる。
15週 西洋近代思想の受容 (2) 西洋近代思想の受容と、その後の日本での展開の過程を理解できる。
16週
後期
3rdQ
1週 近現代の特質と倫理的課題 脱呪術化や科学革命、進化論といった概念を手がかりに、近現代の特質と限界、そしてそれらが新たに生み出した倫理的課題について理解できる。
2週 ルネサンス期における自己肯定の精神と宗教観の転換、モラリストの登場 ルネサンス期におけるヒューマニズム精神の興隆を、時代的背景とともに理解できる。またルターやカルヴァンらの主張をもとに、宗教改革の内実と、その後の歴史に及ぼした思想的・社会的な影響が理解できる。さらに上記の知識に基づいて、人間の尊厳をめぐるモラリスト達の主張を理解できる。
3週 自然や科学技術と人間の関わり:近代科学の誕生、経験論と合理論 ベーコンの経験論とデカルトの合理論を足がかりに、近代科学の誕生とそれを支えた思想的基盤を理解できる。
4週 民主社会における人間の在り方 ホッブズ・ロック・ルソーらの思想を手がかりに、現代の民主社会形成の原動力となった社会契約説について理解できる。
5週 自己実現と幸福 (1):カントとヘーゲル カントとヘーゲルの言説をもとに、自己実現と幸福の追究について、みずから考察ができる。
6週 自己実現と幸福 (2):功利主義とプラグマティズム 功利主義とプラグマティズムの理念を理解し、現実の事例に適用することができる。
7週 個人と社会の関わり(1):社会主義と実存主義 「人間疎外」「自己喪失」「人間性の回復」といった言葉を軸に、社会主義と実存主義の基本的主張と、その後の展開について説明できる。
8週 個人と社会の関わり(2):公共性・対話・正義・他者 ハンナ・アーレントの「公共性」、ハーバーマスの「対話」、ロールズの「正義」の概念について理解できる。社会における自己と他者との関係と社会参加の意義が理解できる。
4thQ
9週 現代における理性の問題 近代市民社会と科学技術文明の基盤となる理性の力について、先哲の議論や具体的事例をもとに批判的に考察することができる。
10週 科学・技術と人間 (1):生命・医療倫理 環境倫理の領域における多様な諸課題とそれらに随伴する倫理的諸問題(クローン、再生医療、安楽死と尊厳死、デザイナーベビー、スマートドラッグ等)を認識し、理解することができる。
11週 科学・技術と人間 (2) :環境倫理 環境倫理の領域における多様な諸課題とそれらに随伴する倫理的諸問題(公害と環境問題、肉食文化維持の是非、外来種対策、予防原則、世代間倫理、環境正義、持続可能性)を認識し、理解することができる。
12週 科学・技術と人間 (3) :情報倫理 情報倫理の領域における多様な諸課題とそれらに随伴する倫理的諸問題(人工知能、ロボット、スマートホーム、プライバシーとセキュリティのトレードオフ等)を認識し、理解することができる。
13週 科学・技術と人間 (4) :工学倫理 工学倫理の領域における多様な諸課題とそれらに随伴する倫理的諸問題(ステークホルダー間の利益相反、システム設計の難しさ、費用便益分析と安全等)を認識し、理解することができる。
14週 科学・技術と人間 (5) :科学技術倫理 科学技術倫理の領域における多様な諸課題とそれらに随伴する倫理的諸問題(食糧問題と遺伝子組み換え食品、科学技術の進歩と格差の拡大、エンハンスメント、仮想現実(VR)技術や拡張現実(AR)技術が提起する倫理的課題、人類の宇宙進出に伴って予想される倫理的課題等)を認識し、理解することができる。
15週 技術者の役割と倫理的責務 現代社会において専門技術者に求められる役割と倫理的責務について認識し、自身もまたそうした役割と責務が期待される一人であることを自覚する。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会公民哲学者の思想に触れ、人間とはどのような存在と考えられてきたかについて理解できる。2前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後3,後4,後6,後7,後8,後9
諸思想や諸宗教において、自分が人としていかに生きるべきと考えられてきたかについて理解できる。2前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後3,後4,後6,後7,後8,後9
諸思想や諸宗教において、好ましい社会と人間のかかわり方についてどのように考えられてきたかを理解できる。2前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後3,後4,後6,後7,後8,後9
地歴・公民現代科学の考え方や科学技術の特質、科学技術が社会や自然環境に与える影響について理解できる。2後1,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
社会や自然環境に調和し、人類にとって必要な科学技術のあり方についての様々な考え方について理解できる。2後1,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
環境問題、資源・エネルギー問題、南北問題、人口・食糧問題といった地球的諸課題とその背景について理解できる。1後1,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。1後1,後3,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。1後1,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。1前2,後1,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力500000050
専門的能力0000000
分野横断的能力500000050