遺伝子・細胞工学

科目基礎情報

学校 久留米工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 遺伝子・細胞工学
科目番号 0375 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 生物応用化学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:基礎分子生物学 第4版、田村隆明・村松正實著、東京化学同人。参考図書:分子遺伝学 第3版、T.A.Brown著、西郷 薫監訳、東京化学同人
担当教員 中嶌 裕之,萩原 義徳

到達目標

1.遺伝子の基礎知識を習得する。
2.遺伝子操作の基本原理について理解できる。
3.遺伝子操作に関する演習ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1遺伝子・細胞工学に関する専門用語を理解し、使いこなすことができる。遺伝子・細胞工学に関する専門用語をある程度理解し、使うことができる。遺伝子・細胞工学に関する専門用語が理解できず、使うことができない。
評価項目2遺伝子操作の原理を理解し、その想定実験を実践することができる。遺伝子操作の原理をある程度理解し、その想定実験を説明を受けながら実践することができる。遺伝子操作の原理が理解できず、具体的な遺伝子実験を想定することができない。
評価項目3遺伝子実験の便利さと危険性を理解することができる。遺伝子実験の便利さと危険性をある程度理解することができる。遺伝子実験の便利さと危険性を理解することができない。

学科の到達目標項目との関係

JABEE C-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
近年、生物のゲノム解析が進み、遺伝子に関して理解することが必須となっている。また、アミノ酸(タンパク質)および細胞レベルでの機能解析も必要である。そこで、本講義では、遺伝子操作の原理および手法について理解させる。
授業の進め方・方法:
教科書および作成プリントを併用した講義を行う。実践的な遺伝子操作を理解することが目的であるため、事例に対してどのような方法が必要となるかを自ら考える力を必要とする。また、生物工学実験において実際に遺伝子解析を行うため、原理について良く理解しておく。
注意点:
(1)点数配分:中間試験50%、期末試験50%
(2)評価基準:60点以上を合格とする。  
(3)必要に応じて再試を行う。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 生物学理解のための基礎知識(生物の分類) 生物の分類に関する概要を説明できる
2週 細胞と生物 原核生物と真核生物についてそれぞれの構造の違いについて理解する
3週 遺伝物質DNAの発見 遺伝物質であるDNAの発見に関する実験例を理解し、それから導かれる結論について説明できる
4週 遺伝子の定義 「遺伝子」の定義について説明できる
5週 情報高分子(DNA,RNA)の構造 DNAとRNAの構造を説明でき、その違いを理解する
6週 DNAの物理的性質 DNAの物理的性質を学び、色々な処理による変化を理解する
7週 RNAの構造・種類と機能 RNAの種類及びそれぞれの機能について理解する
8週 RNAの合成:転写(転写単位とオペロン,プロモーター) 原核生物の転写について理解する
2ndQ
9週 RNAの合成:転写(真核生物の転写後修飾・スプライシング) 真核生物における転写後の修飾・スプライシングについて理解する
10週 タンパク質の合成:翻訳(mRNAのアミノ酸配列情報,コドン) 翻訳においてコドンについて理解する
11週 タンパク質の合成:翻訳(tRNAの構造,リボソームの構造) 翻訳についてその過程を理解する
12週 遺伝情報の保存:DNA複製(半保存的複製,複製単位・レプリコン) DNAの半保存的な複製について理解する
13週 遺伝情報の保存:DNA複製(DNA複製様式,不連続DNA複製) DNAの複製について複製様式を学び、また不連続的複製の過程について理解する
14週 遺伝子の変異と修復 遺伝子の変異についてそのパターン及びその修復方法について理解する
15週 まとめ 遺伝物質や遺伝子に関する基礎的な知識を身に付ける
16週
後期
3rdQ
1週 DNA、RNAの抽出と検出 核酸の特性を理解し、抽出と検出の原理を学ぶ。
2週 制限酵素の種類と性質 制限酵素について学び、その応用方法を考えることができる。
3週 制限酵素地図の作成 制限酵素の特性から、切断パターンが意味するものを読み取ることができる。
4週 遺伝子組換えと選択マーカー 遺伝子組換えの原理を学び、その組換え体の選抜方法を理解できる。
5週 遺伝子解析技術(PCR) PCRの原理について理解できる。
6週 シークエンシング DNAの配列決定の原理が理解できる。
7週 遺伝子クローニング(宿主・ベクター系、形質転換) 宿主、プラスミドベクターについて学び、形質転換の原理と方法が理解できる。
8週 遺伝子クローニング(cDNA、ゲノムクローニング) cDNAライブラリやゲノムDNAライブラリを理解できる。
4thQ
9週 遺伝子導入技術(トランスジェニック動物) 遺伝子組換え動物の作製原理と特性が理解できる。
10週 遺伝子導入技術(トランスジェニック植物) 遺伝子組換え植物の作製原理と特性が理解できる。
11週 幹細胞の種類と性質(ES細胞) ES細胞の作製原理と特性が理解できる。
12週 幹細胞の種類と性質(iPS細胞) iPS細胞の作製原理と特性が理解できる。
13週 クローン技術 クローン技術の原理と問題が理解できる。
14週 細胞融合 細胞の融合原理と方法が理解できる。
15週 まとめ 遺伝子工学や細胞工学の原理と特性が理解でき、実践することができる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野基礎生物原核生物と真核生物の違いについて説明できる。3
核、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、細胞壁、液胞の構造と働きについて説明できる。3
葉緑体とミトコンドリアの進化の説について説明できる。3
代謝、異化、同化という語を理解しており、生命活動のエネルギーの通貨としてのATPの役割について説明できる。2
酵素とは何か説明でき、代謝における酵素の役割を説明できる。3
光合成及び呼吸の大まかな過程を説明でき、2つの過程の関係を説明できる。3
DNAの構造について遺伝情報と結びつけて説明できる。3
遺伝情報とタンパク質の関係について説明できる。3
染色体の構造と遺伝情報の分配について説明できる。3
細胞周期について説明できる。3
分化について説明できる。2
ゲノムと遺伝子の関係について説明できる。3
細胞膜を通しての物質輸送による細胞の恒常性について説明できる。2
フィードバック制御による体内の恒常性の仕組みを説明できる。2
情報伝達物質とその受容体の働きを説明できる。2
免疫系による生体防御のしくみを説明できる。2
生物化学タンパク質、核酸、多糖がそれぞれモノマーによって構成されていることを説明できる。3
生体物質にとって重要な弱い化学結合(水素結合、イオン結合、疎水性相互作用など)を説明できる。2
単糖と多糖の生物機能を説明できる。2
単糖の化学構造を説明でき、各種の異性体について説明できる。2
グリコシド結合を説明できる。1
多糖の例を説明できる。2
脂質の機能を複数あげることができる。1
トリアシルグリセロールの構造を説明できる。脂肪酸の構造を説明できる。1
リン脂質が作るミセル、脂質二重層について説明でき、生体膜の化学的性質を説明できる。2
タンパク質の機能をあげることができ、タンパク質が生命活動の中心であることを説明できる。2
タンパク質を構成するアミノ酸をあげ、それらの側鎖の特徴を説明できる。2
アミノ酸の構造とペプチド結合の形成について構造式を用いて説明できる。2
タンパク質の高次構造について説明できる。2
ヌクレオチドの構造を説明できる。3
DNAの二重らせん構造、塩基の相補的結合を説明できる。3
DNAの半保存的複製を説明できる。3
RNAの種類と働きを列記できる。3
コドンについて説明でき、転写と翻訳の概要を説明できる。3
酵素の構造と酵素-基質複合体について説明できる。2
酵素の性質(基質特異性、最適温度、最適pH、基質濃度)について説明できる。2
補酵素や補欠因子の働きを例示できる。水溶性ビタミンとの関係を説明できる。2
解糖系の概要を説明できる。2
クエン酸回路の概要を説明できる。2
酸化的リン酸化過程におけるATPの合成を説明できる。2
嫌気呼吸(アルコール発酵・乳酸発酵)の過程を説明できる。2
各種の光合成色素の働きを説明できる。2
光化学反応の仕組みを理解し、その概要を説明できる。2
炭酸固定の過程を説明できる。2
生物工学原核微生物の種類と特徴について説明できる。2
真核微生物(カビ、酵母)の種類と特徴について説明できる。2
微生物の増殖(増殖曲線)について説明できる。2
微生物の育種方法について説明できる。2
微生物の培養方法について説明でき、安全対策についても説明できる。2
アルコール発酵について説明でき、その醸造への利用について説明できる。2
食品加工と微生物の関係について説明できる。2
抗生物質や生理活性物質の例を挙げ、微生物を用いたそれらの生産方法について説明できる。2
微生物を用いた廃水処理・バイオレメディエーションについて説明できる。2
遺伝子組換え技術の原理について理解している。3
バイオテクノロジーの応用例(遺伝子組換え作物、医薬品、遺伝子治療など)について説明できる。3
バイオテクノロジーが従来の技術に対して優れている点について説明できる。3
遺伝子組み換え技術のリスクと安全策について説明できる。3

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力300000030
専門的能力300000030
分野横断的能力400000040