金属物理学2

科目基礎情報

学校 久留米工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 金属物理学2
科目番号 4M43 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 材料システム工学科(2017年度以降入学生、但し、令和4年度は材料工学科を含む) 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「基礎から学ぶ構造材料学」丸山公一、藤原雅美、吉見亨祐、内田老鶴圃 およびその他プリント。参考書:「図でよくわかる機械材料学」渡辺義見、三浦博己、三浦誠司、渡邊千尋、コロナ社「金属材料概論」小原嗣郎、朝倉書店「初級金属学」北田正弘、アグネ承風社「金属物理学序論」幸田成康
担当教員 川上 雄士

到達目標

1.金属の結晶構造と材料特性の関係を理解し説明できる。
2.塑性変形と転位の関係を理解し説明できる。
3.金属の強化機構(固溶、微細粒、加工、析出)を理解し説明できる。
4.Fickの法則を理解し、拡散係数の物理的意味について説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1金属の結晶構造と材料特性の関係を理解し説明できる。金属の結晶構造と材料特性の関係を理解できる。金属の結晶構造と材料特性の関係を理解できない
評価項目2金属の強化機構(固溶、微細粒、加工、析出)を理解し説明できる金属の強化機構(固溶、微細粒、加工、析出)を理解できる金属の強化機構(固溶、微細粒、加工、析出)を理解できない
評価項目3Fickの法則を理解し、拡散係数の物理的意味について説明できる。Fickの法則を理解し、拡散係数の物理的意味について理解できる。Fickの法則を理解し、拡散係数の物理的意味について理解できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
材料としての金属及び合金は、それらを構成する元素の原子の集合体であり、これらのミクロの原子の振舞いと集合体として外に現れるマクロな性質との関連を明確にすれば、金属材料の性質やその変化について正確に理解することができる。
 金属材料の機械的性質をミクロレベルから理解し、現実社会での工業的技術開発に活かすことができるようになることが本科目の目的である。
実務経験のある教員による授業科目:この科目は、企業で機械部品材料の研究開発、熱処理・表面処理技術を担当していた教員により、その経験を活かして現場での技術の事例を含めた講義を行うものである。
授業の進め方・方法:
教科書およびプリントを用いて講義を行う。3年で学習した金属物理学Ⅰをさらに深く学習すると共に、今までに学んだ材料組織学など、他科目の学習結果を組み合わせて金属の特性を理解する。実用金属材料に学習内容をどのように適用するか、応用力として理解することが重要。  関連科目:金属物理学Ⅰ、材料組織学、金属材料学Ⅰ
注意点:
定期試験(中間試験40%+期末試験40%)80%、小テスト・課題等20%として評価する。
到達目標に記載した内容を主な評価基準とする試験を実施し、60点以上を合格とする。
必要に応じて再試験を実施するが、評価は60点とする。
次回の授業範囲を予習し、専門用語の意味等を理解しておくこと   
      

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 金属材料とその製造プロセス 鋳造、鍛造、熱処理の基礎について説明ができる。
2週 原子と原子間力
物質の結晶構造
物質の基本構造である原子間力、結晶構造について説明できる。
3週 金属の結晶構造、立方晶のミラー指数 正方晶のミラー指数の説明ができる
4週 六方晶のミラー指数 六方晶のミラー指数の説明ができる
5週 格子欠陥 格子欠陥の種類について説明ができる
6週 拡散、Fickの第一、第二法則 Fickの法則について説明ができる。
7週 相互拡散とカーケンドール効果 拡散の問題を解ける。
8週 すべり変形・双晶変形 塑性変形の機構を説明できる
2ndQ
9週 転位における原子配列 転位の種類と特長について説明できる
10週 転位密度、バーガーズベクトル 転位密度、バーガースベクトルの説明ができる
11週 転位に働く力 転位を動かすために必要な応力を計算できる
12週 加工硬化と回復・再結晶 回復再結晶の説明ができる
加工硬化の説明ができる
13週 結晶粒微細化による強化 ホールペッチの関係を説明できる
14週 固溶強化 固溶強化の説明ができる
15週 析出強化 析出強化の説明ができる
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野材料物性金属の一般的な性質について説明できる。4前1
原子の結合の種類および結合力や物質の例など特徴について説明できる。4前1,前3,前12
結晶構造の特徴の観点から、純金属、合金や化合物の性質を説明できる。4前2,前3,前4
陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。3前1
ボーアの水素原子模型を用いて、エネルギー準位を説明できる。3前1
4つの量子数を用いて量子状態を記述して、電子殻や占有する電子数などを説明できる。1前2
周期表の元素配列に対して、電子配置や各族および周期毎の物性の特徴を関連付けられる。2前2
結晶系の種類、14種のブラベー格子について説明できる。4前1,前3,前4
ミラー指数を用いて格子方位と格子面を記述できる。4前1,前2,前3,前4
代表的な結晶構造の原子配置を描き、充填率の計算ができる。4前2,前4
X線回折法を用いて結晶構造の解析に応用することができる。3前2,前4
金属材料製銑および製鋼工程について、原料ならびに主設備、主な炉内反応を説明できる。2前13,前14,前15
純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。4前13,前14,前15
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。3前13,前14,前15
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。2前13,前14,前15
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。2前13,前14,前15
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。2前13,前14,前15
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。2前13,前14,前15
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。2前13,前14,前15
合金鋼の添加元素と機械的性質に関する知識を利用して、合金鋼の用途を選択できる。2前13,前14,前15
状態図を用いて、鋳鉄の性質および組織について説明できる。2前13,前14,前15
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。2前13,前14,前15
黄銅や青銅について、その成分および特徴を理解し、適切な合金を応用できる。2前13,前14,前15
アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。2前13,前14,前15
鋳造用・展伸用アルミニウムについて、その成分や熱処理による組織学的変化の観点から適切な合金を応用できる。2前13,前14,前15
無機材料原子価結合法により、共有結合を説明できる。4前1,前2
イオン結合の形成と特徴について理解できる。4前1,前2
金属結合の形成と特徴について理解できる。4前1,前2
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比などの基本的な計算ができる。3前3,前5
代表的な非金属元素の単体と化合物の性質を説明できる。2前3
代表的な金属元素の単体と化合物の性質を説明できる。3前3
セラミックス、金属材料、炭素材料、複合材料等、無機材料の用途・製法・構造等について説明できる。3前7
単結晶化、焼結、薄膜化、微粒子化、多孔質化などに必要な材料合成法について説明できる。3前7
複合材料複合材料の発展や分類について説明できる。3前8,前14,前15
複合材料の機械的強度や複合則について説明できる。3前8,前14,前15
界面のぬれの観点から、複合化しやすいものと複合化しにくいものを区別できる。2前6
強化形態ごとに主要な製造法を説明できる。2前6
強さの複合則、比強度、比剛性の観点から、複合化するメリットを説明できる。4前10,前14,前15
直交異方性の複合材料の弾性定数について理解できる。4前10,前14,前15
強化材を分類でき、強化機構について説明できる。2前12
ガラス繊維、炭素繊維の製造法を説明できる。2前12
材料組織点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。4前3,前5,前11
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。4前5,前9,前11
面欠陥である積層欠陥について説明できる。4前5,前9,前11
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。2前6,前7
ギブスの相律から自由度を求めて系の自由度を説明できる。2前6,前7
純金属の凝固過程での過冷却状態、核生成、結晶粒成長の各段階について説明できる。2前6,前7
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。3前6,前7
全率固溶体型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。3前6,前7
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。3前6,前7
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。3前6,前7
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。4前8,前9,前10
塑性変形におけるすべり変形と双晶変形の特徴について説明できる。4前8,前9,前10,前12,前13,前14,前15
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。4前8,前9,前10,前12,前13,前14,前15
降伏現象ならびに応力-歪み曲線から降伏点を求めることができる。4前10
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。4前10,前13,前14,前15
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。4前4,前6,前7
拡散係数の物理的意味を説明できる。4前4,前6,前7
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。4前12
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。3前12
再結晶粒の成長機構を説明できる。3前12
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。3前12,前13,前14,前15
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。3前12,前13,前14,前15
力学荷重と応力、変形とひずみの関係について理解できる。4前12
応力-ひずみ曲線について説明できる。4前12
フックの法則を用いて、縦弾性係数(ヤング率)、応力およびひずみを計算できる。4前12
許容応力と安全率を説明できる。1前8
荷重の方向、性質と物体の変形様式との関係について説明できる。2前8
引張、圧縮応力(垂直応力)とひずみ、物体の変形量を計算できる。2前8
縦ひずみと横ひずみを理解し、ポアソン比およびポアソン数を説明できる。3前8
せん断応力(接面応力)とせん断ひずみ(せん断角)を計算できる。2前8
線膨張係数の意味を理解し、熱応力を計算できる。2前8

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合80000020100
基礎的能力4000001050
専門的能力3000001040
分野横断的能力100000010