工学倫理

科目基礎情報

学校 久留米工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 工学倫理
科目番号 0031 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 機械・電気システム工学専攻(機械工学コース) 対象学年 専2
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書:特に定めない。必要な資料に関しては担当教員が授業中に配布する。 参考図書:授業中に指示する。
担当教員 藤木 篤

到達目標

1.人間生活や科学技術の役割と影響に関心を持ち、幸福とは何かを追究しながら、技術者として社会に貢献する自覚と素養を培う。
2.社会が技術者に対して求める倫理観とはどのようなものかを把握する。
3.工学倫理上の事例分析を通じて、倫理的想像力を養う。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1人間生活や科学技術の役割と影響に関心を持ち、自己と他者の双方の幸福を追究しながら、技術者として社会に貢献する自覚と素養が培われている。幸福とは何かを追究する姿勢と、技術者として社会に貢献する自覚および素養が培われている。技術者として社会に貢献する自覚と素養に欠けている。
評価項目2社会が技術者に対して求める倫理観を把握した上で、そうした倫理観に沿って自律的に行動できる。社会が技術者に対して求める倫理観とはどのようなものかが把握できている。社会が技術者に対して求める倫理観とはどのようなものかが把握できていない。
評価項目3既存事例だけではなく、未知の事例の分析が可能なレベルの倫理的想像力が養われている。既存事例の分析が可能なレベルの倫理的想像力が養われている。倫理的想像力に欠けている。

学科の到達目標項目との関係

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教育方法等

概要:
本講義では、技術者へ倫理教育が求められるようになっていった歴史的背景を概観した後、技術者に必要とされる倫理観や、技術者が技術の専門家としての責任を果たそうとするときに直面するであろう倫理的に困難な状況について学ぶ。最終的に、「公衆の安全・衛生・福利」の確保および増進をはかる際に必然的に求められる、自身の専門分野におけるELSI (Ethical, Legal, and Social Implication [倫理的、法的、社会的諸問題])に関する感受性、および専門技術者としての倫理観を身につけることを、本講義の主たる目的とする。
授業の進め方・方法:
講義を中心とする。
注意点:
点数配分:グループディスカッション30%(10%/回)、学期末レポート70%を目安として評価する。
再試験:行わない。
評価基準:60点以上を合格とする。
本科目は学修単位科目であるので、授業時間以外での学修が必要であり、これを課題として課す。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス:シラバスをもとにした講義概要の説明、ビデオ教材「技術者倫理学習のスキル」を用いた工学倫理導入 本授業の概要と目的、評価方法等が理解できる。また工学倫理という分野の特性について理解できる。
2週 環境倫理学と工学倫理:事例分析「筑後川中流域における宮入貝の人為的絶滅」 環境倫理学と工学倫理の境界事例をもとに、技術者に課せられた様々な責務、とりわけ環境配慮義務について理解する。
3週 工学倫理のエッセンス:ウェストン『ここからはじまる倫理』、ハリスら『科学技術者の倫理』、ウ
ィトベック『技術倫理I』を中心に
工学倫理における「古典的」テキストの記述を手がかりに、工学倫理の基本的主張および工学倫理における第一原則「公衆の安全・衛生・福利」の内容と理念が理解できる。
4週 事例分析「スペースシャトルチャレンジャー号爆発墜落事故」 「スペースシャトルチャレンジャー号爆発墜落事故」の分析を通じて、望まざる事件・事故を未然に防ぐために、技術者の倫理観がいかに重要であるかを理解する。
5週 事例分析と意志決定のための代表的技法:創造的中道法、線引き法、セブンステップガイド 創造的中道法、線引き法、セブンステップガイドのそれぞれの特徴について理解した上で、実際の倫理的ジレンマに対して適用し、自ら分析を進めることができる。
6週 製造物に関わる責任:ビデオ教材「ソーラーブラインド」視聴および解説 "How safe is safe enough?" (どれほどの安全水準であれば十分安全か?) という普遍的問いについて、自身の考え方を整理し、それを他者に説明できる。
7週 製造物に関わる責任:「ソーラーブラインド」グループ討議 セブンステップガイドに沿って倫理的意思決定が行われている。それぞれの人物の立場から物事を考えることの大切さが理解できている。またグローバル企業において製造物責任に対処することの難しさが理解できている。
8週 技術者に拘わる法規と倫理規則:知的財産権と製造物責任法(PL法)を中心に 技術者を取り巻く法規と倫理規則について、基本的な知識を身につけている。
2ndQ
9週 安全性問題と組織内における技術者の行動:ビデオ教材「技術者の自律」視聴と解説 技術者にとって極めて重要とされる「自律」の概念について、自身の考えを整理し、他者に対して説明することができる。
10週 安全性問題と組織内における技術者の行動:ビデオ教材「技術者の自律」グループ討議 「自律」という抽象的理念から、具体的行動案が導出できている。
11週 リスクの評価と対応:ビデオ教材「ギルベインゴールド」視聴と解説 自律と他律の適切な妥協点と、内部告発が許される条件について、自身の考えを整理し、他者に対して説明することができる。
12週 リスクの評価と対応:「ギルベインゴールド」グループ討議 倫理的想像力をフィージブル(実行可能)な行動案の策定に昇華させられている。
13週 失敗から学ぶことの大切さ:畑村『失敗学のすすめ』『危険学のすすめ』、ペトロスキ『橋はなぜ落ちたか』『失敗学』を中心に 失敗学の基本的主張が理解できている。
14週 作り出すことと守り続けることの違い:インフラの劣化と事故、維持・保守管理にまつわる様々な困
非技術者からは理解されにくい維持・保守管理の重要性と、そうした作業に特有の倫理的・経済的・政治的困難について把握できている。またそうした困難な状況を、他者に対して説得力をもって説明できる。
15週 技術者が幸福を感じる社会を目指して:フローマン「技術者の実存的快楽」、セリグマン「ポジティ
ブ心理学」の考え方を手がかりに
工学倫理は、決して技術者の行動を一方的に制約するための鎖などではなく、技術者自身が幸福な人生を歩むための指針を提供するものであることを理解する。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を理解し、社会における技術者の役割と責任を説明できる。3前1,前3,前4,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15
説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。3前1,前3,前4,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15
技術者を目指す者として、社会での行動規範としての技術者倫理を理解し、問題への適切な対応力(どうのように問題を捉え、考え、行動するか)を身に付けて、課題解決のプロセスを実践できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、個人情報保護法、著作権などの法律について説明できる。3前8
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを説明できる。3前8
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。4前2,前11,前12,前14,前15
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。3前2,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前14,前15
知的財産の社会的意義や重要性の観点から、知的財産に関する基本的な事項を説明できる。3前8
知的財産の獲得などで必要な新規アイデアを生み出す技法などについて説明できる。3前8
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。2前8
技術者を目指す者として、諸外国の文化・慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令を守ることの重要性を把握している。2前6,前7,前8,前13,前14,前15
社会性、社会的責任、コンプライアンスが強く求められている時代の変化の中で、技術者として信用失墜の禁止と公益の確保が考慮することができる。3前6,前7,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。3前2,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15
技術者を目指す者として、平和の構築、異文化理解の推進、自然資源の維持、災害の防止などの課題に力を合わせて取り組んでいくことの重要性を認識している。3前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオレポート合計
総合評価割合000101080100
基礎的能力000553040
専門的能力000001515
分野横断的能力000553545