工学倫理

科目基礎情報

学校 久留米工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 工学倫理
科目番号 7E02 科目区分 一般 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 機械・電気システム工学専攻(電気電子工学コース) 対象学年 専2
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書:特に定めないが、必要な資料はその都度配布する。 参考図書:授業中に指示する。
担当教員 松永 崇

到達目標

1.人間生活への科学技術の役割と影響に関心を持ち、幸福とは何かを追究しながら、技術者として社会に貢献する自覚と素養を養う。
2.社会が技術者に対して求める倫理観とはどのようなものかを把握する。
3.工学倫理に関わる事例研究を通して、倫理的問題を分析し、解決する能力を養う。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1人間生活への科学技術の役割と影響に関心を持ち、自己と他者の双方の幸福を追究しながら、技術者として社会に貢献する自覚と素養が養われている。自己と他者の幸福とは何かを追究する姿勢と、技術者として社会に貢献する自覚および素養がある程度養われている。技術者として社会に貢献する自覚と素養に欠けている。
評価項目2社会が技術者に対して求める倫理観を把握しており、そうした倫理観に沿って自律的に行動できる。社会が技術者に対して求める倫理観をある程度把握しており、そうした倫理観に沿ってある程度自律的に行動できる。社会が技術者に対して求める倫理観とはどのようなものかが把握できていなく、自律的に行動できない。
評価項目3既存事例だけではなく、未知の事例分析が可能なレベルとなり、倫理的問題を解決する能力が養われている。既存事例の分析が可能なレベルとなり、倫理的問題を解決する能力がある程度養われている。倫理的問題を分析し、解決する能力が養われていない。

学科の到達目標項目との関係

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教育方法等

概要:
科学技術の急速な発展に伴い、技術者への倫理教育が求められるようになった歴史的背景を概観する。その上で、技術者に必要とされる倫理観や、技術者が専門職として社会的責任を果たそうとするときに直面する倫理的課題について学習する。「公衆の安全・健康・福利」の確保および増進をはかるために求められる自身の専門分野におけるELSI (Ethical, Legal, and Social Implication [倫理的、法的、社会的諸問題])に関する感受性を養い、専門職の技術者として倫理観を身に付けるとともに、倫理的問題を分析し、それを解決するためのスキルを修得する。
授業の進め方・方法:
講義を中心とするが、事例研究やグループ討議を行う。
注意点:
点数配分:グループ討議とワークシート40%、学期末課題レポート60%を目安として評価する。
再試験:原則行わない。
評価基準:60点以上を合格とする。
本科目は学修単位科目であるので、授業時間以外での学修が必要であり、これを課題として課す。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 シラバスをもとにした講義概要の説明、技術者倫理の歴史的背景、ビデオ教材「技術者倫理学習のスキル」を用いた工学倫理導入 本授業の概要と目的、評価方法等が理解できる。また工学倫理という分野の歴史的背景や特性について理解できる。
2週 技術、倫理、技術者、専門職、技術者倫理、技術者の行動規範・倫理綱領、法と倫理の関係、倫理問題と設計問題 工学倫理に関する基本的な概念および「公衆の安全・健康・福利」を最優先して実現する責任が理解できる。倫理問題と設計問題のアナロジーを理解する。
3週 事例研究:「スペースシャトルチャレンジャー号爆発墜落事故」についての課題レポート 「スペースシャトルチャレンジャー号爆発墜落事故」の分析を通じて、望まざる事件・事故を未然に防ぐために、技術者の倫理観がいかに重要であるかを理解する。
4週 事例分析と意志決定のための代表的技法:創造的中道法、線引き法、セブンステップガイド
行動案の評価方法:エシックステスト
創造的中道法、線引き法、セブンステップガイドのそれぞれの特徴について理解した上で、実際の倫理的ジレンマに対して適用し、自ら分析を進めることができる。
5週 事例研究:セブンステップガイドの応用と課題レポートの発表 セブンステップガイドを理解し、事例に応用することができる。
6週 製造物に関わる責任:ビデオ教材「ソーラーブラインド」の視聴および解説 "How safe is safe enough?" (どれほどの安全水準であれば十分安全か?) という普遍的問いについて、自身の考え方を整理し、それを他者に説明できる。
7週 製造物に関わる責任:「ソーラーブラインド」のグループ討議 と発表 セブンステップガイドに沿って倫理的意思決定が行われている。それぞれの人物の立場から物事を考えることの大切さが理解できている。またグローバル企業において製造物責任に対処することの難しさが理解できている。
8週 安全とリスク
事例研究:フォード・ピント事件
技術者に拘わる法規と倫理規則:製造物責任法(PL法)を中心に
安全とリスク、安全を確保する設計思想について理解する。フォード社の対応と費用便益分析について理解し、批判することができる。
技術者を取り巻く法規と倫理規則について、基本的な知識を身につける。
2ndQ
9週 安全性問題と組織内における技術者の行動:ビデオ教材「技術者の自律」視聴および解説 技術者にとって極めて重要とされる「自律」の概念について、自身の考えを整理し、他者に対して説明することができる。
10週 安全性問題と組織内における技術者の行動:ビデオ教材「技術者の自律」を事例研究とした課題レポート 倫理的問題について整理し、課題を分析して、解決に向けて考察することができる。「自律」という抽象的理念から、具体的行動案が導出できている。
11週 技術者の知的財産権、倫理問題の最終的な解決方法としての公益通報制度の現状と課題 特許と著作権、内部告発が許される条件について理解する。
12週 リスクの評価と対応:ビデオ教材「ギルベインゴールド」視聴および解説 自律と他律の適切な妥協点と、内部告発が許される条件について、自身の考えを整理し、他者に対して説明することができる。
13週 リスクの評価と対応:「ギルベインゴールド」のグループ討議と発表 倫理的想像力をフィージブル(実行可能)な行動案の策定に昇華させられている。
14週 グローバル化・多様化社会における技術者倫理、科学技術と人権、ユニバーサルデザイン グローバル化や多様化における倫理問題を理解する。
人権侵害リスクやユニバーサルデザインについて理解する。
15週 学期末課題レポートの作成
(1)工学倫理の基礎的事項に関する課題
(2)実・仮想事例について
 ・倫理的問題点の指摘・分析
 ・その影響について推測
 ・対策や解決法を考察
 ・意思決定
  などに関する課題
工学倫理の基礎的事項を理解できる。実あるいは仮想事例について倫理的思考・考察ができる。これらについて、課題レポートの作成により達成度評価を行う。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。3
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、個人情報保護法、著作権などの法律について説明できる。3
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを説明できる。3
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。4
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。3
知的財産の社会的意義や重要性の観点から、知的財産に関する基本的な事項を説明できる。3
知的財産の獲得などで必要な新規アイデアを生み出す技法などについて説明できる。3
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。3
技術者を目指す者として、諸外国の文化・慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令を守ることの重要性を把握している。3
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。3
技術者を目指す者として、平和の構築、異文化理解の推進、自然資源の維持、災害の防止などの課題に力を合わせて取り組んでいくことの重要性を認識している。3
情報リテラシー情報リテラシー情報伝達システムやインターネットの基本的な仕組みを把握している。3

評価割合

学期末課題レポート発表相互評価態度ポートフォリオグループ討議・ワークシート合計
総合評価割合60000040100
基礎的能力0000000
専門的能力60000040100
分野横断的能力0000000