概要:
科学技術の急速な発展に伴い、技術者への倫理教育が求められるようになった歴史的背景を概観する。その上で、技術者に必要とされる倫理観や、技術者が専門職として社会的責任を果たそうとするときに直面する倫理的課題について学習する。「公衆の安全・健康・福利」の確保および増進をはかるために求められる自身の専門分野におけるELSI (Ethical, Legal, and Social Implication [倫理的、法的、社会的諸問題])に関する感受性を養い、専門職の技術者として倫理観を身に付けるとともに、倫理的問題を分析し、それを解決するためのスキルを修得する。
授業の進め方・方法:
講義を中心とするが、事例研究やグループ討議を行う。
注意点:
点数配分:グループ討議とワークシート40%、学期末課題レポート60%を目安として評価する。
再試験:原則行わない。
評価基準:60点以上を合格とする。
本科目は学修単位科目であるので、授業時間以外での学修が必要であり、これを課題として課す。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
シラバスをもとにした講義概要の説明、技術者倫理の歴史的背景、ビデオ教材「技術者倫理学習のスキル」を用いた工学倫理導入 |
本授業の概要と目的、評価方法等が理解できる。また工学倫理という分野の歴史的背景や特性について理解できる。
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2週 |
技術、倫理、技術者、専門職、技術者倫理、技術者の行動規範・倫理綱領、法と倫理の関係 |
工学倫理に関する基本的な概念および「公衆の安全・健康・福利」を最優先して実現する責任が理解できる。
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3週 |
事例分析「スペースシャトルチャレンジャー号爆発墜落事故」 |
「スペースシャトルチャレンジャー号爆発墜落事故」の分析を通じて、望まざる事件・事故を未然に防ぐために、技術者の倫理観がいかに重要であるかを理解する。
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4週 |
事例分析と意志決定のための代表的技法:創造的中道法、線引き法、セブンステップガイド |
創造的中道法、線引き法、セブンステップガイドのそれぞれの特徴について理解した上で、実際の倫理的ジレンマに対して適用し、自ら分析を進めることができる。
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5週 |
製造物に関わる責任:ビデオ教材「ソーラーブラインド」視聴および解説 |
"How safe is safe enough?" (どれほどの安全水準であれば十分安全か?) という普遍的問いについて、自身の考え方を整理し、それを他者に説明できる。
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6週 |
製造物に関わる責任:「ソーラーブラインド」グループ討議 |
セブンステップガイドに沿って倫理的意思決定が行われている。それぞれの人物の立場から物事を考えることの大切さが理解できている。またグローバル企業において製造物責任に対処することの難しさが理解できている。
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7週 |
技術者に拘わる法規と倫理規則:知的財産権と製造物責任法(PL法)を中心に |
技術者を取り巻く法規と倫理規則について、基本的な知識を身につけている。
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8週 |
安全性問題と組織内における技術者の行動:ビデオ教材「技術者の自律」視聴および解説 |
技術者にとって極めて重要とされる「自律」の概念について、自身の考えを整理し、他者に対して説明することができる。
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4thQ |
9週 |
安全性問題と組織内における技術者の行動:ビデオ教材「技術者の自律」グループ討議 |
「自律」という抽象的理念から、具体的行動案が導出できている。
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10週 |
安全性とリスク 事例研究:日航機墜落事故、フォード・ピント事件 |
安全とリスク、安全を確保する設計思想について理解する。フォード社の対応と費用便益分析について理解し、批判することができる。
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11週 |
リスクの評価と対応:ビデオ教材「ギルベインゴールド」視聴および解説 |
自律と他律の適切な妥協点と、内部告発が許される条件について、自身の考えを整理し、他者に対して説明することができる。
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12週 |
リスクの評価と対応:「ギルベインゴールド」グループ討議 |
倫理的想像力をフィージブル(実行可能)な行動案の策定に昇華させられている。
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13週 |
グローバル化・多様化社会における技術者倫理、科学技術と人権、ユニバーサルデザイン |
グローバル化や多様化における倫理問題を理解する。 人権侵害リスクやユニバーサルデザインについて理解する。
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14週 |
設計と技術革新の倫理、倫理問題と設計問題、「失敗学」や「橋はなぜ落ちたか」から学ぶ 技術者が幸福を感じる社会を目指して:フローマン「技術者の実存的快楽」、セリグマン「ポジティブ心理学」の考え方を手がかりに |
倫理問題と設計問題のアナロジーを理解する。失敗学の基本的主張が理解できている。 工学倫理は、決して技術者の行動を一方的に制約するための鎖などではなく、技術者自身が幸福な人生を歩むための指針を提供するものであることを理解する。
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15週 |
学期末課題レポートの作成 (1)工学倫理の基礎的事項に関する課題 (2)仮想事例において ・倫理的問題点の指摘・分析 ・その影響について推測 ・対策や解決法を考察 ・意思決定 などに関する課題 |
工学倫理の基礎的事項を理解できる。事例について倫理的思考・考察ができる。これらについて、課題レポートの作成により達成度評価を行う。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 工学基礎 | 技術者倫理 | 技術者倫理 | 技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を理解し、社会における技術者の役割と責任を説明できる。 | 3 | |
説明責任、内部告発、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的事項を理解し、説明できる。 | 3 | |
技術者を目指す者として、社会での行動規範としての技術者倫理を理解し、問題への適切な対応力(どうのように問題を捉え、考え、行動するか)を身に付けて、課題解決のプロセスを実践できる。 | 3 | |
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、及び個人情報保護法、著作権などの法律との関連について理解できる。 | 3 | |
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを理解できる。 | 3 | |
技術者を目指す者として、環境問題について配慮することができる。 | 4 | |
技術者を目指す者として、社会と地域について配慮することができる。 | 3 | |
技術者を目指す者として、知的財産に関する知識(関連法案を含む)、技能、態度を身につける。 | 3 | |
知的財産の社会的意義や重要性を技術者として理解し、知的創造サイクルを支えることができる。 | 3 | |
技術者を目指す者として、知的財産を意識した創造性を発揮できる。 | 3 | |
技術者を目指す者として各国・各地域での活動において、各国・各地域の文化、慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令などを守ることができる。 | 3 | |
社会性、社会的責任、コンプライアンスが強く求められている時代の変化の中で、技術者として信用失墜の禁止と公益の確保が考慮することができる。 | 3 | |
技術者を目指す者として持続可能な開発を通じて全ての人々が安心して暮らせる未来を実現するために配慮することができる。 | 3 | |
技術者を目指す者として、さまざまな課題に力を合わせて取り組んでいくことができる。 | 3 | |
情報リテラシー | 情報リテラシー | 情報伝達システムの考え方について理解できる。 | 3 | |