物理化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 物理化学Ⅱ
科目番号 0026 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 4
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 前期:1 後期:1
教科書/教材 新しい基礎物理化学(三共出版)合原、池田編著;荒川、井上、氷室、宮崎共著
担当教員 小林 正幸,榎本 尚也

到達目標

1.ギブスエネルギーを理解し、物理および化学的変化の自発的進行方向を判定できる。
2.相律の使い方、状態図の読み方、および束一的性質について説明できる。
3.標準電極電位とネルンストの式を理解し、電気化学反応について説明できる。
4.基礎的な反応速度モデルを理解し、微分方程式から反応速度を計算できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
評価項目1ギブスエネルギーを基礎と応用を理解し、物理および化学的変化の自発的進行方向を判定できる。ギブスエネルギーを理解し、物理および化学的変化の自発的進行方向を判定できる。ギブスエネルギーを理解できず、物理および化学的変化の自発的進行方向を判定できない。
評価項目2相律の使い方、状態図の読み方を理解して、応用でき、束一的性質について説明できる。相律の使い方、状態図の読み方、および束一的性質について説明できる。相律の使い方、状態図の読み方が理解できず、束一的性質について説明できない。
評価項目3標準電極電位とネルンストの式の基礎と応用を理解し、複雑な電気化学反応について説明できる。標準電極電位とネルンストの式を理解し、電気化学反応について説明できる。標準電極電位とネルンストの式が理解できず、電気化学反応について説明できない。
評価項目4多様な反応速度モデルを理解し、高度な微分方程式を解いて反応速度を計算できる。基礎的な反応速度モデルを理解し、微分方程式から反応速度を計算できる。基礎的な反応速度モデルを理解できず、微分方程式から反応速度を計算できない。

学科の到達目標項目との関係

学習教育到達目標 B-2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物理化学は、種々の物質の構造と特性について、巨視的および微視的な2つの立場から理解しようとするものである。物理化学2では、エンタルピー、エントロピーなど物理化学1で学んだ熱力学のパラメータからなるギブス自由エネルギーを定義し、物理的および化学的工程が自発的に進む方向の判定について学ぶ。ギブスの相律について学び、単成分、二成分系までの相平衡状態図の読み方を理解し、物質創製の指針や考え方に繋げる。ギブスエネルギーを電子の授受、すなわち酸化還元反応に適用することで電気化学反応の基礎を説明し、現代社会への具体的な応用例を知る。
ところで、相平衡を論じる際には、ある反応系が時間無限大、すなわち十分時間を経過して平衡に達した時点の生成系を論じた。言い換えると、反応系の状態と生成系の状態のみを注視し、その途中経路を問わないのが平衡論の本質であった。物理化学2の後半には、その途中過程、時間変化に視点を置いた反応速度論について学ぶ。反応速度の記述方法やその数学的取扱いに慣れ、単純な反応メカニズムを予測することができる。
授業の進め方・方法:
使用テキスト「新しい基礎物理化学(三共出版)」に準拠し、講義形式で進める。物理化学(II)においては第4章から第9章までを学ぶ。必要に応じて資料を配付し、演習問題を解いて理解を深める。授業中に数値計算を課すので関数電卓は必ず持参すること(定期試験にも電卓持込みとする)。なお、専門用語の英語訳は将来的に極めて重要であると考え、早いうちから慣れておくことを必須課題とする。具体的にはテキスト脚注の英単語はすべて必修とし、定期試験に出題する。
注意点:
物理化学の理解には数式の取扱いが必須であり、これまで数学で学んだ微積分、幾何学などを活用していくことになる。
数学が苦手だった学生には、嫌々復習するのではなく、自然の法則が数式によって記述されることに新鮮な感動を覚え、自身の計算で科学現象を導く醍醐味を味わってほしい。
 1.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。
 2.計算時、必ず「単位」に留意せよ。異なる単位同士の足し算・引き算はあり得ない。異なる単位の掛け算・割り算によって別の単位が生成する。
 3.紙とエンピツによる数式の手計算も重要である一方、エクセル等のPCソフトの活用は極めて有効であると心得よ。
本講義の中にも随所に数学の基礎知識を確認する演習等を行うが、到達目標に達しない場合は追加課題を与える。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 概要説明
2週 ギブスエネルギー① ギブス自由エネルギーを定義でき、その変化を説明できる
3週 ギブスエネルギー② 純物質の絶対エントロピーおよび化学変化でのエントロピー変化を計算できる
4週 ギブスエネルギー③ 化学ポテンシャルについて説明でき、化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる
5週 物質の相平衡① 純物質の状態図を理解し、蒸気圧曲線を説明できる
6週 物質の相平衡② 相律を理解して、純物質および混合物の自由度を計算できる
7週 物質の相平衡③ クラウジウスクラペイロンの式を応用して熱力学諸量を計算できる
8週 中間試験
2ndQ
9週 試験返却 中間試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多面的な理解を深める。
10週 物質の相平衡④ 二成分系状態図を理解して、気液および固液平衡を説明できる
11週 物質の化学平衡① 平衡定数を定義し、平衡状態を記述できる
12週 物質の化学平衡② 気体および液体における化学平衡を説明できる
13週 物質の化学平衡③ 化学平衡に対する温度、圧力条件が与える影響について説明できる
14週 物質の化学平衡④ 均一および不均一反応の平衡を説明できる
15週 期末試験
16週 試験返却 期末試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。
後期
3rdQ
1週 概要説明
2週 溶液の熱力学① 理想溶液と実在溶液を定義でき、実用的な濃度計算ができる
3週 溶液の熱力学② 束一的性質を理解し、沸点上昇、凝固点降下が計算できる
4週 溶液の熱力学② コロイドと界面の特徴を理解し、コロイド分散系について説明できる
5週 電気化学① ギブス標準自由エネルギーと標準電極電位を説明できる
6週 電気化学② ネルンストの式を用いて化学電池の起電力を計算できる
7週 電気化学③ 電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる
8週 中間試験
4thQ
9週 試験返却 中間試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。
10週 反応速度論① 反応速度の定義を理解し、実験的決定方法を説明できる
11週 反応速度論② 反応次数の概念を理解し、反応速度式を立てて解くことができる
12週 反応速度論③ 1次反応、2次反応の半減期を求めることができる
13週 反応速度論④ 律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる
14週 反応速度論⑤ 活性化エネルギーを理解し、アレニウスプロットを説明できる
15週 期末試験
16週 試験返却 期末試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系物理化学純物質の状態図(P-V,P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4前5
2成分の状態図(P-x,y、T-x,y)を理解して、気液平衡を説明できる。4前10
束一的性質を説明できる。4
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4前6
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4前11
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4前12,前13
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4前14
熱力学の第二・三法則の定義と適用方法を説明できる。4前2,前3,前4
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4前3
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4前3
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4前4
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4前12
平衡定数の温度依存性を計算できる。4前13
気体の等温、定圧、定容および断熱変化の U、W、Qを計算できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4
反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。4
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。4
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。4
衝突理論を理解して、アレニウスプロットを説明できる。4
ネルンストの式を用いて、起電力、自由エネルギー、平衡定数の関係が説明できる。4
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力0000000
専門的能力10000000100
分野横断的能力0000000