到達目標
1.物理化学実験における基本操作を習得し、計画的に実験を行うことができる
2.実験から得られた結果を正しく理解し、文献等に記載されている値と適宜比較を行う等のデータ処理を正しく行うことができる
3.実験から得られた結果について工学的な考察を行い、図表を用いて論理的にまとめることができる
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
評価項目1 | 物理化学実験における基本操作を習得し、正確な実験を計画的に行うことができる | 物理化学実験における基本操作を習得し、実験を行うことができる | 物理化学実験における基本操作を習得できず、実験を行うことができない |
評価項目2 | 実験から得られた結果を正確に理解し、文献等に記載されている適切な値と適宜比較を行う等のデータ処理を正しく行うことができる | 実験から得られた結果をある程度理解し、文献等に記載されている値と比較を行う等のデータ処理を行うことができる | 実験から得られた結果を理解できず、文献等に記載されている値と比較を行う等のデータ処理を行うことができない |
評価項目3 | 実験から得られた結果について工学的な考察を行い、適切な図表を用いて論理的にまとめることができる | 実験から得られた結果について考察を行い、図表を用いてまとめることができる | 実験から得られた結果について考察を行うことができず、図表を用いてまとめることができない |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
自主性を発揮し、自らをためす絶好の機会が実験である。したがって、実験内容の予習はもちろんのこと、器具の種類や使用方法についても十分な準備が必要である。もちろん、実験においては、尊大な先入観をもって自然が与える解答を求めるものではなく、すなおな心で観察することが重要である。
本実験の各課題は、物理化学のさまざまな分野から精選したものであり、これらの実験を行うことで物理化学を単なる知識としてではなく、体験として学ぶ。物理化学実験の主な授業目標を3つ挙げる。
第1の目標は、物理化学実験における基本操作を身につけることである。実験をはじめるにあたっては、実験はどのような計画で、どのような器具を使えば期待している答えが得られるかを慎重に考えなければならない。
第2の目標は、データの処理の方法を身につけることである。実験結果を理論式にあてはめ物理化学量を導いたり、精度(誤差)の吟味をしたり、また導かれた物理化学的数量がどのような意味をもつか、他の類似のデータを文献から探して比較検討できるようにする。
第3の目標は、レポートのまとめ方を身につけることである。レポートは研究論文に相当するものである。したがって、研究論文にしたがった実験レポートの書き方について習得する。特に、得られた結果に対してどう考察したかが重要であるので、きちんと考察できるようにする
授業の進め方・方法:
週のうち、2コマは実験、1コマはデータ整理およびレポート作成の時間とする。全体を7つの班に分け、7テーマある実験をローテーションしながら実施する。1つの実験テーマは4コマ(2コマ×2週)とする。レポート作成の時間を設けているが完成させるには時間が足らないため、時間外にも計画的に行うこと。また、実験内容、操作、原理、結果について試験を行うので学習しておくこと。
注意点:
物質工学科では1・2年生で一般化学、3年から5年で物理化学の講義が行われる。物理化学実験では、これらの講義に直接関係した内容の実験を行う。また本実験は、物質工学における専門の基礎となる実験であるため、これまでに学んだすべての専門科目の基礎知識を必要とする。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
オリエンテーション |
実験のスケジュール、実験の心得、注意事項、各テーマにおける課題について知る。
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2週 |
【テーマ1】密度と屈折率(一週目) |
エタノール水溶液の密度と溶液中のエタノールの重量分率の関係を理解する。溶液を構成する各成分の部分モル体積について理解する。エタノール水溶液の屈折率と溶液中のエタノールの重量分率の関係を理解する。エタノール水溶液の密度と屈折率の測定値からエタノールと水のモル分率に関して、混合の分子屈折の加成性が成立するかどうか検討する。
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3週 |
【テーマ1】密度と屈折率(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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4週 |
【テーマ2】凝固点降下(一週目) |
ナフタレンをシクロヘキサンに溶かすとシクロヘキサンの凝固点が降下する。測定値から凝固点降下とナフタレンの重量モル濃度の関係を理解する。また、ナフタレンの質量と凝固点降下を図示することで、その傾きから分子量が求まる理由について理解する。
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5週 |
【テーマ2】凝固点降下(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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6週 |
【テーマ3】液体の相互溶解度(一週目) |
フェノールと水は、混合比によっては二つの液相に分離したり、一つの均一な相になったりする。この実験では、この二つの組成を変化させて一つの相が二つの相に分離する温度を測定する。この相が分離する温度を組成に対して図示することで相図を理解する。
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7週 |
【テーマ3】液体の相互溶解度(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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8週 |
【テーマ4】固体の溶解度と溶解熱(一週目) |
純粋な固体物質が、その溶液と平衡にあるとき、その溶液を飽和溶液という。飽和溶液中にある溶質の濃度を溶解度といい、この実験では、安息香酸を水に溶かし、さまざまな温度で安息香酸の溶解度を決定する。溶解度と温度から溶解熱が求められることを理解する。
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2ndQ |
9週 |
【テーマ4】固体の溶解度と溶解熱(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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10週 |
【テーマ5】粘度(一週目) |
高分子を溶媒に溶かすとその溶液はかなり高い粘性を示す。この実験では、ポリビニルアルコールを水に溶解させ、溶液粘度を測定する。得られた測定値からポリビニルアルコールの分子量や溶液中でのポリビニルアルコール分子の広がりなどの情報が得られることを理解する。
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11週 |
【テーマ5】粘度(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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12週 |
【テーマ6】反応速度定数(一週目) |
ショ糖がブドウ糖と果糖に分解する反応速度を測定する実験を行う。反応速度が反応物質の濃度に比例することを理解し、一次反応か二次反応か決定する。また、時間に対する反応液の量の変化から反応速度定数を決定するが、この定数と反応の活性化エネルギーとの関係を理解する。
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13週 |
【テーマ6】反応速度定数(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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14週 |
【テーマ7】反応熱(一週目) |
すべての化学反応はエネルギー変化をともなう。この実験では、希薄な水酸化ナトリウム水溶液に希薄な塩酸を混合するときの熱量変化を定量的に求め、中和熱を決定する。ここでは、化学変化における反応熱が熱力学第1法則に関係していることを理解する。
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15週 |
【テーマ7】反応熱(二週目) |
一週目に引き続き、実験条件等を変更して検討する。
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16週 |
期末試験 |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の工学実験・実習能力 | 化学・生物系【実験実習】 | 有機化学実験 | 収率の計算ができる。 | 4 | |
分析化学実験 | 中和滴定法を理解し、酸あるいは塩基の濃度計算できる。 | 4 | |
物理化学実験 | 温度、圧力、容積、質量等を例にとり、測定誤差(個人差・器差)、実験精度、再現性、信頼性、有効数字の概念を説明できる。 | 4 | |
各種密度計(ゲールサック、オストワルド等)を用いて、液体および固体の正確な密度を測定し、測定原理を説明できる。 | 4 | |
粘度計を用いて、各種液体・溶液の粘度の測定し、濃度依存性を説明できる。 | 4 | |
熱に関する測定(溶解熱、燃焼熱等)をして、定量的に説明できる。 | 4 | |
分子量の測定(浸透圧、沸点上昇、凝固点降下、粘度測定法等)により、束一的性質から分子量を求めることができる。 | 4 | |
相平衡(液体の蒸気圧、固体の溶解度、液体の相互溶解度等)を理解して、平衡の概念を説明できる。 | 4 | |
反応速度(1次反応)を測定し、反応速度定数の温度依存性から反応熱を決定できる。 | 4 | |
評価割合
| 試験 | 発表 | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 30 | 0 | 0 | 0 | 70 | 0 | 100 |
基礎的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
専門的能力 | 30 | 0 | 0 | 0 | 50 | 0 | 80 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 | 0 | 20 |