物理化学Ⅲ

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 平成31年度 (2019年度)
授業科目 物理化学Ⅲ
科目番号 0076 科目区分 専門 / 必修
授業形態 演習 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 5
開設期 後期 週時間数 後期:1
教科書/教材 アトキンス物理化学要論第6版(東京化学同人)P.Atkins、J.Paula著(稲葉、千葉訳)
担当教員 小林 正幸

到達目標

1.生体物質、生体反応の熱力学的側面を説明できる。
2.酵素の性質、構造について熱力学を用いて説明できる。
3.生体内のエネルギー生産、利用を熱力学的立場から説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
評価項目1生体物質、生体反応を熱力学を用いて説明できる。生体物質、生体反応の熱力学的側面を説明できる。生体物質、生体反応の熱力学的側面から説明できない。
評価項目2酵素の性質、構造について熱力学を用いて説明できる。酵素の性質、構造について説明できる。酵素の性質、構造について説明できない。
評価項目3生体内のエネルギー生産、利用を熱力学を用いて説明できる。生体内のエネルギー生産、利用を説明できる。生体内のエネルギー獲得、生産、利用を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物理化学1および物理化学2では標準ギブス自由エネルギーという概念のを導入し、化学現象、化学反応について、その熱力学の基礎を学んだ。本講義では、物理化学1および物理化学2で学んだ熱力学の考えを生体に導入し、複雑・難解と思われがちな生体の現象、生体内の反応についても熱力学が適用でき、理解できることを学び、生体の現象、反応の理解を深める。
授業の進め方・方法:
講義形式で行う。テキスト「アトキンス物理化学要論第6版」は必要なところを用いるため、テキストではとびとびの場所となるので、授業に集中し、フォローしておくこと。必要に応じて資料、練習問題を配付する。また、演習問題を解いて理解を深める。授業中に数値計算を課すので関数電卓は必ず持参すること(定期試験にも電卓持込みとする)。時間的制約からすべての問題を授業中に解くことはできないので,自主的にこれらの問題を解いて理解を深める。また,一部またはすべてをレポート課題とするので,指定した期日までに提出すること。化学・生物分野では、専門用語の英語は極めて重要である。専門用語の英語は早いうちから慣れておくことを必須課題とする。具体的には、テキスト脚注の英単語は必須とし、その意味の説明も含めて定期試験に出題する。
注意点:
物理化学の理解には数式の取扱いが必須であり、これまで数学で学んだ微積分、幾何学などを活用していくことになる。
数学が苦手だった学生には、嫌々復習するのではなく、自然の法則(本講義では生物の体内で起こる様々な現象)が数式によって記述されることに新鮮な感動を覚え、自身の計算で科学現象を導く醍醐味を味わってほしい。
 1.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。
 2.計算時、必ず「単位」に留意せよ。異なる単位同士の足し算・引き算はあり得ない。異なる単位の掛け算・割り算によって別の単位が生成する。
 3.紙とエンピツによる数式の手計算も重要である一方、エクセル等のPCソフトの活用は極めて有効であると心得よ。
本講義の中にも随所に数学の基礎知識を確認する演習等を行う。
また、生物の内容も多くを占めるため、生体関連の化合物の名称、構造を復習し、頭に入れて授業にのぞんで欲しい。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 概要説明
2週 生体エネルギー序論①熱力学第1法則、熱力学第2法則 生命現象とエネルギーの関係を熱力学第1法則、熱力学第2法則の観点で説明できる。(示差走査熱量測定、食物とエネルギー貯蔵、生命現象と熱力学第二法則)
3週 生体エネルギー序論②化学平衡 生物の様々な挙動を生物に適応できる。(気体の溶解度と呼吸、ヘモグロビンなどの酸素との結合、血液における緩衝作用)
4週 生体エネルギー序論③自由エネルギー 生物学的標準状態、生物学的標準ギブズエネルギ―を説明できる。(生化学過程における共役反応)
5週 酵素①酵素について 酵素の性質、構造について説明できる。
6週 酵素②酵素反応 熱力学立場、速度論的立場で酵素反応を説明できる。
7週 生体エネルギー論①嫌気呼吸 基質レベルのリン酸化について物理化学的立場から説明できる。
共役反応を説明できる。
8週 中間試験
4thQ
9週 試験返却 中間試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多面的な理解を深める。
10週 生体エネルギー論②好気呼吸 電気化学ポテンシャルについて説明できる。(イオンチャネルとイオンポンプ)
11週 生体エネルギー論③好気呼吸 酸化的リン酸化について、物理化学的立場から理解する。(イオンチャネルとイオンポンプ)
12週 生体エネルギー論④光合成 光合成色素による光の吸収、利用を理解する。
光の二重性について説明できる。
13週 生体エネルギー論⑤光合成 光リン酸化について、物理化学的立場から理解する。
14週 生体エネルギー論⑥光合成 二酸化炭素固定反応について理解する。
15週 期末試験
16週 試験返却 期末試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学化学(一般)化学(一般)酸化還元反応について説明できる。3
イオン化傾向について説明できる。3
金属の反応性についてイオン化傾向に基づき説明できる。3
ダニエル電池についてその反応を説明できる。3
鉛蓄電池についてその反応を説明できる。3
一次電池の種類を説明できる。3
二次電池の種類を説明できる。3
電気分解反応を説明できる。3
電気分解の利用として、例えば電解めっき、銅の精錬、金属のリサイクルへの適用など、実社会における技術の利用例を説明できる。3
ファラデーの法則による計算ができる。3
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4後2
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4後3
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4後2
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4後4
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後4
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。4後10
生物化学タンパク質の高次構造について説明できる。4後5
酵素の構造と酵素-基質複合体について説明できる。4後5,後6
補酵素や補欠因子の働きを例示できる。水溶性ビタミンとの関係を説明できる。4後5
解糖系の概要を説明できる。4後7
クエン酸回路の概要を説明できる。4後7
酸化的リン酸化過程におけるATPの合成を説明できる。4後11
嫌気呼吸(アルコール発酵・乳酸発酵)の過程を説明できる。4後7
各種の光合成色素の働きを説明できる。4後12
光化学反応の仕組みを理解し、その概要を説明できる。4後12,後13
炭酸固定の過程を説明できる。4後14

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合80000200100
基礎的能力0000000
専門的能力80000200100
分野横断的能力0000000