1. 現代社会の動きを的確に捉え,そこに課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解(提案)を導き出せること。
2. 定められた期限内に,自分の提案を説明・表現するのに相応しい手段を用いて作品としてまとめられること。
概要:
これまで,建築の専門分野ごとに理論を学習してきたが,個々の理論の認識だけにとどまり「モノづくり」などの技術で重要な総合化された認識になっていない部分がある。もちろん,建築設計演習はその総合化のための教科であるが,課題や条件が与えられた枠の中での総合化である。しかし,創造的な「モノづくり」の本質は,この課題を自らが見つけ出し,それに対する独自の解を提示することにある。もちろん,社会で活躍をしている建築家も同様であり,それぞれ時代観や問題意識を持ち,日々新しい空間づくりに取り組んでいる。
そこで,本科目では,建築の専門分野毎の個々の理論を総合化するだけでなく,理論に裏付けられた実践的技術を“学生自らの手”で獲得することをねらいとする。具体的な授業目標は,取り組む課題を学生自身で見出すこと,今までにない,あるいは見落とされている新しい空間や施設の提案ができることである。
授業の進め方・方法:
本教科の性格から,授業時間外(例えば,放課後や休日,あるいは夏休みなど)の時間を,資料の収集や調査などに率先してあてる必要がある。
授業では,担当教員とのミーティングを重ねつつ,課題の発見から,その課題に対する解の提示に至る一連の過程に,学生主体で取り組む。
この間,中間発表会を4回(スケジュール次第で実施回数が変わることもある)実施する。中間発表では,個々の進行状況を確認するとともに,課題の妥当性やコンセプトの適切性を担当教員全員で指導する(A1用紙1~2枚程度以内にまとめて発表)。
また,卒業設計展の見学もできる限り実施する(場合によっては実施できないこともある)。他校学生の作品などを見ることで卒業設計に対する認識を深めて欲しいからである。
前期末には,前期での取り組みのまとめとして,第1回発表会を行い,最終発表会での発表可否を決める。
作品提出は,11月中~12月初旬を予定する。そして,最終発表会を行った後,個々の作品についての評価を行う(最優秀作品は日本建築学会の全国大学・高専卒業設計展に学校代表として出展する)。
<卒業設計に要求されるもの >
卒業設計は要求される内容の点で,あるいはそれに費やす時間の点でも課題設計とは大きく異なる。以下,要求される主要な項目をあげる。
・課題性
違いの一つは,課題及び設計条件等がいっさい与えられない点である。
建築とはそもそも社会性が非常に強い分野である。そこで,諸君は現代社会において何が課題であるのか,または課題となりうるのかを概念的に構築することから始めねばならない。作品の出来不出来は,表現力とともにこの課題の設定に大きく左右される。したがって,種々の情報を収集し課題性を高めること。独りよがりの自己満足に終わってはいけない。
・主張性
二つ目の違いは,明確な主張を持つことでありそれを表現することである。つまり,課題に対する自分なりの解を強く訴えること。学生諸君は,これを往々にして文章だけで表現しがちであるが,卒業設計では「所定の枚数を使って言いたいことを視覚的に表現すること」が求められる。例えば,概念図を描くなどの工夫が必要である。
・独創性,創造性
課題の設定やその解決及び表現において独創性,創造性を持つことである。誰かのコピーでは困る。
・密度とプレゼンテーション
表現手段は特定しないが,自分の表現したいものに適した手段(道具)を使う。そして,君たち自身が「高専5年間の中で一番充実していた」「思いっきりやれて悔いはない」と言える取り組みにして欲しい。我々のみならず見る者すべてに感動を与えて欲しい。
<作品の提出 >
・表現内容は,自由であり図面等の特定もない。
・原則としてA1版の用紙6枚以上を使って表現すること。用紙は連結させない。
・表現は,手書きの場合はインキングする。縮尺は対象の規模による。
・各用紙にタイトル,氏名,用紙番号を入れる。但し,日本建築学会の卒業設計展に学校代表で出品される者は学会の標題欄を右上に張り付けることになるので注意する。
注意点:
卒業設計では,これまでに学習した知識や技術をベースにしつつ,さらに独創性と創造性のある作品を提案しなければならない。
卒業設計は,テーマを決めるところから始まる。その際は自分で興味が持てるテーマを探し,そのテーマにどのような問題があるかを明らかにしなければならない。したがって,授業で学習したことだけでなく,建築界はもちろん,日常の社会的問題や環境問題あるいは文化的問題など,こと人間の生活全般にわたる問題に常日頃から目を向けることが求められる。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
オリエンテーション |
本科目の目的と構成,進め方,ならびに評価方法等を知る。
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2週 |
作品研究 |
卒業設計での他者の作品について研究し,課題の種類,課題設定の方法,ならびに解の導き出し方等を理解できること。
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3週 |
ミーティング |
現代社会の動きを的確に捉え,そこに明確な課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解を導き出せること。
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4週 |
同上 |
同上
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5週 |
中間発表 |
自分が設定する課題の妥当性等を理解し,改善点を見いだせること。
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6週 |
ミーティング |
現代社会の動きを的確に捉え,そこに明確な課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解を導き出せること。
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7週 |
同上 |
同上
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8週 |
同上 |
同上
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2ndQ |
9週 |
中間発表 |
自分が設定する課題の妥当性,および課題解決方法の妥当性等を理解し,改善点を見いだせること。
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10週 |
ミーティング |
現代社会の動きを的確に捉え,そこに明確な課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解を導き出せること。
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11週 |
同上 |
同上
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12週 |
同上 |
同上
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13週 |
同上 |
同上
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14週 |
同上 |
同上
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15週 |
第1回発表会 |
現代社会の動きを的確に捉え,そこに明確な課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解を導き出せること。
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16週 |
予備 |
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後期 |
3rdQ |
1週 |
ミーティング |
現代社会の動きを的確に捉え,そこに明確な課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解を導き出せること。
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2週 |
同上 |
同上
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3週 |
中間発表 |
自分が設定する課題の妥当性,および課題解決方法の妥当性等を理解し,改善点を見いだせること。
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4週 |
ミーティング |
現代社会の動きを的確に捉え,そこに明確な課題を見出し,自らが見出した課題に対し,創造的・独創的で,かつ主張性のある解を導き出せること。
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5週 |
作品づくり |
定められた期限内に,自分の提案を説明・表現するのに相応しい手段を用いて作品としてまとめられること。
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6週 |
同上 |
同上
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7週 |
同上 |
同上
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8週 |
同上 |
同上
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4thQ |
9週 |
同上 |
同上
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10週 |
同上 |
同上
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11週 |
同上 |
同上
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12週 |
同上 |
同上
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13週 |
同上 |
同上
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14週 |
同上 |
同上
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15週 |
最終発表会と最終総括 |
制限時間内に,各自の提案をわかりやすく説明できること。質疑応答や講評等を通じ,各自の達成度を確認できること。
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16週 |
予備 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
分野横断的能力 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 相手の意見を聞き、自分の意見を伝えることで、円滑なコミュニケーションを図ることができる。 | 4 | |
相手を理解した上で、説明の方法を工夫しながら、自分の意見や考えをわかりやすく伝え、十分な理解を得ている。 | 5 | |
集団において、集団の意見を聞き、自分の意見も述べ、目的のために合意形成ができる。 | 4 | |
現状と目標を把握し、その乖離の中に課題を見つけ、課題の因果関係や優先度を理解し、そこから主要な原因を見出そうと努力し、解決行動の提案をしようとしている。 | 5 | |
現状と目標を把握し、その乖離の中に課題を見つけ、課題の因果関係や優先度を理解し、発見した課題について主要な原因を見出し、論理的に解決策を立案し、具体的な実行策を絞り込むことができる。 | 4 | |
事象の本質を要約・整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。 | 4 | |
複雑な事象の本質を整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。結論の推定をするために、必要な条件を加え、要約・整理した内容から多様な観点を示し、自分の意見や手順を論理的に展開できる。 | 4 | |
態度・志向性(人間力) | 態度・志向性 | 態度・志向性 | 日常生活の時間管理、健康管理、金銭管理などができる。常に良い状態を維持するための努力を怠らない。 | 5 | |
ストレスやプレッシャーに対し、自分自身をよく知り、解決を試みる行動をとることができる。日常生活の管理ができるとともに、目標達成のために対処することができる。 | 5 | |
学生であっても社会全体を構成している一員としての意識を持って、行動することができる。 | 5 | |
法令を理解し遵守する。基本的人権について理解し、他者のおかれている状況を理解することができる。自分が関係している技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を理解し、技術者が社会に負っている責任を認識している。 | 4 | |
未来の多くの可能性から技術の発展と持続的社会の在り方を理解し、自らのキャリアを考えることができる。 | 4 | |
総合的な学習経験と創造的思考力 | 総合的な学習経験と創造的思考力 | 総合的な学習経験と創造的思考力 | 工学的な課題を論理的・合理的な方法で明確化できる。 | 4 | |
クライアントの要求を解決するための設計解を作り出すプロセス理解し、設計解を創案できる。さらに、創案した設計解が要求を解決するものであるかを評価しなければならないことを理解する。 | 4 | |