概要:
建築とは我々の生活に深く関わっているものであり、その設計においては、人間の行動や周囲の環境をよく観察した上で、使用目的に適した美しい空間を、合理的な構造によって創造しなくてはならない。
5学年では、前期のみで2つの課題に取り組む。1つは劇場(演劇、映画館など)と、展示空間(美術品、陶芸など) を併せ持つ「複合施設」である。そしてもう1つは、高等専門学校連合会主催等が主催する「コンペ」への応募であり、次のこと を身につけてほしい。
[1] 自らテーマ設定ができること:与えられた課題に加え、敷地のもつ問題点、あるいは将来性を読み取り、自ら テーマを設定し、計画を行わなければならない。「コンペ」はもちろんだが、多くの人の利用を見込んだ「複合施設」においても、それが街にどのような影 響を与えうるのか、どのように計画すれば、建物のみでなく街全体が魅力的になるのかについて検討し、オリジナリティー溢れる魅力的なテーマを設定してほしい。
[2] ボリュームを的確に捉えることができること:「複合施設」では、指定の敷地に、階段状 の客席や大規模な舞台装置をもつ建築物を計画する。この場合に、シンボル的位置づけとするのか、あるいは周囲の環境に馴染ませるのか、そのボリュームの検討が重要である。事例見学の際には、劇場という巨大建築物を、一歩ひいた外周部からも体験し、身体感覚としてそのボリュームを つかんでほしい。またエスキスではボリューム模型を用いて、環境・景観の面からの検討も重ねる必要がある。[3] 作品に適した図面表現・プレゼンテーションができること:特に「コンペ」では提出した図面1枚のみで全てを判断されることになる。限られた紙面上に、いかに自らの作品の魅力を表現できるか、図面表現能力を養わなければならない。また、プレゼンテーションの方法も工夫し、限られた時間内で的確に自身の作品の魅力を伝える必要がある。
この科目は企業で建築設計を担当していた正木教員が、その経験を活かし、複合施設の計画や最新の設計手法等について演習形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
周辺環境を考慮した適切なボリュームの提案、自らのテーマ設定など下記の教育内容・達成目標に記載した事柄を理解できているかを、作品で評価する。提出期限内に、各課題の要求に応えうる作品を仕上げることができるかを見る。(遅れた場合や未完成の作品を提出した場合は、その度合いに応じて減点)上記についてわかりやすく図面表現できているか、および合評会でのプレゼンテーションがわかりやすかったか、わかりやすく伝えるための工夫がされていたかを評価する。
注意点:
前期のみで2課題の提出をするため、4年次以上のスケジュール管理能力が必要であり、授業時間外も利用して自主的に取り組むことは必須である。また、多くの事例や図面を見ることを通して、コンセプトと空間の関連性、形態の構成の仕方、図面表現の仕方等を学ぶ必要がある。加えて、日頃から社会問題に精通しておかねば、魅力的かつオリジナリティ溢れるテーマ設定はできない。新聞やインターネット等に目をとおすことを習慣化し、今何が求められているのかの社会的ニーズについて、常にそのアンテナをはるようにしてほしい。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
課題説明、課題の敷地調査 |
課題説明(第一課題:複合施設)、作品紹介。敷地調査:敷地分析・敷地調査発表、グループ分け。
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2週 |
エスキス1 |
コンセプトについて説明できる。全体計画について説明できる。
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3週 |
発表1 |
コンセプトと全体計画について説明できる。
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4週 |
エスキス2 |
配置図計画図の作成。配置計画について説明できる。平面計画図の作成。平面計画について説明できる。
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5週 |
エスキス3 |
ボリューム模型の作成。ボリューム計画について説明できる。
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6週 |
発表2 |
配置計画および平面計画、建物ボリュームについて説明できる。
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7週 |
作図1 |
設計図と模型を作成する。建築計画について説明できる。
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8週 |
作図2 |
プレゼンテーション図面を作成する。建築計画について説明できる。
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2ndQ |
9週 |
合評会 |
作品のコンセプト、配置計画、平面計画、デザインについて説明できる。
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10週 |
課題説明、グループ分け、資料収集 |
コンペの課題説明を受け、資料収集を行う。
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11週 |
エスキス1 |
コンペの課題に応じたコンセプトを設定し、それを説明できる。
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12週 |
エスキス2 |
設定してコンセプトに応じて作品作成を行う。
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13週 |
作図 |
コンペ作品の作図を行う。
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14週 |
プレゼンテーション |
プレゼンテーション作品を作成する。
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15週 |
発表 |
作品のコンセプト、デザインを説明できる。
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16週 |
発表 |
作品のコンセプト、デザインを説明できる。
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 建築系分野 | 設計・製図 | 製図用具の特性を理解し、使用できる。 | 4 | 前7,前13 |
線の描き分け(3種類程度)ができる。 | 4 | 前7,前13 |
文字・寸法の記入を理解し、実践できる。 | 4 | 前7,前13 |
建築の各種図面の意味を理解し、描けること。 | 4 | 前7,前13 |
図面の種類別の各種図の配置を理解している。 | 4 | 前7,前13 |
図面の尺度・縮尺について理解し、図面の作図に反映できる。 | 4 | 前7,前13 |
立体的な発想とその表現(例えば、正投象、単面投象、透視投象などを用い)ができる。 | 4 | 前7,前13 |
ソフトウェアを用い、各種建築図面を作成できる。 | 4 | 前8,前13 |
各種模型材料(例えば、紙、木、スチレンボードなど)を用い、図面をもとに模型を製作できる。または、BIMなどの3D-CADにより建築モデルを作成できる。 | 4 | 前8,前13 |
与えられた条件をもとに、コンセプトがまとめられる。 | 4 | 前2,前5,前14 |
与えられた条件をもとに、動線・ゾーニングのエスキスができる。 | 4 | 前2,前11 |
与えられた条件をもとに、配置図、各階平面図、立面図、断面図などがかける。 | 4 | 前8,前13 |
設計した建築物の模型またはパースなどを製作できる。 | 4 | 前8,前13 |
講評会等において、コンセプトなどをまとめ、プレゼンテーションができる。 | 4 | 前3,前9,前15,前16 |
敷地と周辺地域および景観などに配慮し、配置、意匠を検討できる。 | 5 | 前8,前13,前16 |
分野横断的能力 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 円滑なコミュニケーションのために図表を用意できる。 | 3 | 前9 |
円滑なコミュニケーションのための態度をとることができる(相づち、繰り返し、ボディーランゲージなど)。 | 3 | 前9 |
他者の意見を聞き合意形成することができる。 | 3 | 前9,前10 |
書籍、インターネット、アンケート等により必要な情報を適切に収集することができる。 | 3 | 前1,前2,前10 |
収集した情報の取捨選択・整理・分類などにより、活用すべき情報を選択できる。 | 3 | 前1,前2,前10 |
収集した情報源や引用元などの信頼性・正確性に配慮する必要があることを知っている。 | 3 | 前1,前2,前10 |
情報発信にあたっては、発信する内容及びその影響範囲について自己責任が発生することを知っている。 | 3 | 前1,前2,前10 |
情報発信にあたっては、個人情報および著作権への配慮が必要であることを知っている。 | 3 | 前1,前2,前10 |
目的や対象者に応じて適切なツールや手法を用いて正しく情報発信(プレゼンテーション)できる。 | 3 | 前1,前2,前3,前6,前9,前15,前16 |
あるべき姿と現状との差異(課題)を認識するための情報収集ができる | 3 | 前1,前10 |
複数の情報を整理・構造化できる。 | 3 | 前1,前10 |
特性要因図、樹形図、ロジックツリーなど課題発見・現状分析のために効果的な図や表を用いることができる。 | 3 | 前1,前10 |
どのような過程で結論を導いたか思考の過程を他者に説明できる。 | 3 | 前9,前15,前16 |
適切な範囲やレベルで解決策を提案できる。 | 3 | 前9,前15,前16 |
事実をもとに論理や考察を展開できる。 | 3 | 前9,前15,前16 |
結論への過程の論理性を言葉、文章、図表などを用いて表現できる。 | 3 | 前9,前15,前16 |