概要:
近年,科学技術の進歩によって,生命現象の様々な謎が分子レベルで解明できるようになり,多くの新事実が日々明らかにされている.工学分野において,生物のシステムを物質のレベルで理解することが必要となり,工学分野のシステムの研究が生物を見本として進められることが多々ある.生物は細胞一つをとっても非常に複雑であり,一固体となると非常に高性能なシステムであるか理解できる.このため工学と生物の両方の知識や視点を身につけることは非常に重要なことである.
本科目ではそれぞれ専門の工学の分野で応用するために生体を構成する構成成分や代謝について分子のレベルで見ることで,基礎的な生命現象の理解を目指す.特にこれまで専門で生物を学んでいない学生が生物学の知識や視点が身につくように,生体分子,分子構造,生体内での様々な反応について理解したうえで,基礎的なバイオテクノロジーついて理解する.
授業の進め方・方法:
講義を中心に授業を進める.
理解度を高めるために事前・事後学習のための課題(レポート)を課す.
注意点:
様々な化合物があるため,各自でしっかり構造等を整理し,必要な化合物はしっかり覚えるように,予習・復習を行ってもらいたい.
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
シラバス説明 生体の構成成分
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生物と細胞の基礎及び生体の構成成分の概要について理解する.
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2週 |
細胞の構造 |
細胞の構造(原核細胞,真核細胞,動物細胞,植物細胞)について理解する.生体内での水の作用及び水素結合について理解する.
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3週 |
炭水化物の構造と性質 |
糖の構造,グリコシド結合,性質について理解する.
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4週 |
脂質の構造と性質 |
脂質の種類,構造,性質について理解する.
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5週 |
タンパク質の構造と性質 |
アミノ酸,タンパク質の構造,ペプチド結合,性質について理解する.
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6週 |
核酸の構造と性質 |
核酸,遺伝子の構造,性質について理解する.
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7週 |
酵素の化学的性質及び反応 |
酵素の性質(分類,基質特異性,補酵素)及び酵素の反応特性(最適温度,pH,ミカエリスメンテンの式,酵素阻害)について理解する.
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8週 |
後期中間試験 |
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4thQ |
9週 |
テスト返却 高エネルギー化合物について |
中間テストの範囲の内容で理解不足であったところ(テストで明確化されたところ)の内容を正確に理解する. ATPのような高エネルギー化合物の作用と構造を理解する.
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10週 |
糖質の代謝
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解糖系,クエン酸回路,電子伝達系,嫌気呼吸について理解する.
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11週 |
脂質の代謝 |
脂肪酸のβ-酸化について理解する.
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12週 |
微生物を応用した物質生産 |
微生物を利用した有用物質の生産(アルコール醸造,抗生物質,発酵食品)について理解する.
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13週 |
酵素を応用した物質生産 |
酵素を応用した有用物質の生産(固定化酵素,バイオリアクター,酵素阻害剤の医薬利用)について理解する.
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14週 |
遺伝子組み換え技術の基礎と応用 |
基本的な遺伝子組み換え技技術(遺伝子組変え,形質転換,PCRなど)の原理とその応用について原理を理解する.
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15週 |
学年末試験 |
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16週 |
テスト返却と解説 |
期末テストの範囲の内容で理解不足であったところ(テストで明確化されたところ)の内容を正確に理解する.
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 基礎生物 | 原核生物と真核生物の違いについて説明できる。 | 4 | 後1,後2 |
代謝、異化、同化という語を理解しており、生命活動のエネルギーの通貨としてのATPの役割について説明できる。 | 4 | 後9 |
酵素とは何か説明でき、代謝における酵素の役割を説明できる。 | 4 | 後9,後11 |
DNAの構造について遺伝情報と結びつけて説明できる。 | 4 | 後6 |
遺伝情報とタンパク質の関係について説明できる。 | 4 | 後6 |
生物化学 | タンパク質、核酸、多糖がそれぞれモノマーによって構成されていることを説明できる。 | 4 | 後5 |
単糖と多糖の生物機能を説明できる。 | 4 | 後3 |
単糖の化学構造を説明でき、各種の異性体について説明できる。 | 4 | 後3 |
グリコシド結合を説明できる。 | 4 | 後3 |
多糖の例を説明できる。 | 4 | 後3 |
脂質の機能を複数あげることができる。 | 4 | 後4 |
トリアシルグリセロールの構造を説明できる。脂肪酸の構造を説明できる。 | 4 | 後4 |
タンパク質の機能をあげることができ、タンパク質が生命活動の中心であることを説明できる。 | 4 | 後5 |
タンパク質を構成するアミノ酸をあげ、それらの側鎖の特徴を説明できる。 | 4 | 後5 |
アミノ酸の構造とペプチド結合の形成について構造式を用いて説明できる。 | 4 | 後5 |
タンパク質の高次構造について説明できる。 | 4 | 後5 |
ヌクレオチドの構造を説明できる。 | 4 | 後6 |
DNAの二重らせん構造、塩基の相補的結合を説明できる。 | 4 | 後6 |
酵素の構造と酵素-基質複合体について説明できる。 | 4 | 後7 |
酵素の性質(基質特異性、最適温度、最適pH、基質濃度)について説明できる。 | 4 | 後7 |
補酵素や補欠因子の働きを例示できる。水溶性ビタミンとの関係を説明できる。 | 4 | 後7 |
解糖系の概要を説明できる。 | 4 | 後10 |
クエン酸回路の概要を説明できる。 | 4 | 後10 |
酸化的リン酸化過程におけるATPの合成を説明できる。 | 4 | 後10 |
嫌気呼吸(アルコール発酵・乳酸発酵)の過程を説明できる。 | 4 | 後10 |
生物工学 | 遺伝子組換え技術の原理について理解している。 | 3 | |
バイオテクノロジーの応用例(遺伝子組換え作物、医薬品、遺伝子治療など)について説明できる。 | 3 | |
バイオテクノロジーが従来の技術に対して優れている点について説明できる。 | 3 | |
遺伝子組み換え技術のリスクと安全策について説明できる。 | 3 | |
微生物の育種方法について説明できる。 | 4 | 後14 |
アルコール発酵について説明でき、その醸造への利用について説明できる。 | 4 | 後12 |
食品加工と微生物の関係について説明できる。 | 4 | 後12 |
抗生物質や生理活性物質の例を挙げ、微生物を用いたそれらの生産方法について説明できる。 | 4 | 後13 |