物理化学Ⅳ

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 物理化学Ⅳ
科目番号 5C002 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 創造工学科(応用化学コース) 対象学年 5
開設期 後期 週時間数 後期:1
教科書/教材 アトキンス物理化学要論第6版(東京化学同人)P.Atkins、J.Paula著(稲葉、千葉訳)、Essential 細胞生物学第4版(南江堂) B.Albertsら著、中村桂子、松原謙一監訳
担当教員 小林 正幸

到達目標

1.量子力学を理解する。
2.生物の反応を物理化学的観点から理解する。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1量子論を理解し、原子、分子の挙動、原子(分子)軌道を説明できる。量子論を理解する。量子論を理解できない。
評価項目2生物の反応を物理化学的観点から理解し、物質の構造と関連付けて説明できる。生物の反応を物理化学的観点から理解する。生物の反応を物理化学的観点から理解できない。
評価項目3

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
5年生前期までの学修において、エンタルピー、エントロピー、エネルギーという状態量という概念を導入し、化学現象、化学反応について理解することを行ってきた。5年生前期までの学修では、「原子・分子レベルでの反応」「生物の反応」がつじつまが合わないのではないかという疑問を持った学生も多いと推察する。実は「原子・分子レベルでの反応」をしっかりと理解するには『量子論』という考えを導入する必要があり、「生物の反応」は、系(細胞や生物)と外界(環境)の全体をしっかりと見て理解していくことで説明ができるのである。本科目では、『量子論』と『生物反応』の学修を行い、それらが特殊なものではなく、今まで学修してきたことと矛盾なく体系と従っていることを体感し、理解してほしい。
「4.質の高い教育を皆に(SDGs)」
授業の進め方・方法:
講義形式で行う。前半は「アトキンス物理化学要論第7版」のテーマ7、8を中心に、後半は「Essential細胞生物学第4版」の3、13、14章を中心に「アトキンス物理化学要論第7版」の関連部分(テーマ5など)を用いて行う。前半では3年生の無機化学などで学修した波動方程式、波動関数(s、p、dオービタルを含む)を理解することであるので、当該分野の理解が不足している場合は、当該部分の復習をして理解を深めて授業に臨んでほしい。また、後半では、3、4、5年生での生物系の科目(生物化学1・2、生物工学基礎、生物工学)の学修および4年生の物理化学(物理化学2のGibbsエネルギー、物理化学3の電気化学)の学修が重要であることから、これらの理解が不十分である場合は、当該部分の復習をして理解を深めて授業に臨んでほしい。また、時間的制約からすべての問題を授業中に解くことはできないので、自主的にこれらの問題を解いて理解を深めてほしい。学修単位科目であることから事前、事後の学修として、一部または全部をレポート課題にするので指定した期日までに提出をすること。化学・生物分野では、専門用語の英語は極めて重要である。専門用語の英語は早いうちから慣れておくことが重要であり、必須課題とし、テキストの脚注英単語はその意味を含めて定期試験に出題する。
注意点:
本科目はテスト80%、ポートフォリオ20%で評価する。
物理化学の理解には数式の取り扱いが必須であり、これまで数学で学んだことを活用する必要がある。これまで数学で学んだ、解析学(指数対数を含む)、幾何学、微積分などを活用していくことになるので、数学が苦手であった学生には数学の復習も重要となる。特に量子論では微分・積分が重要であるので、復習をして、使いこなせるようになっておくこと。自然の法則が数式で記述できることに感動を覚え、自身の努力(計算)で科学現象を導く醍醐味、未来を予測(予想)できることの感動、工学(工場)での応用・活用への第一歩を知る歓びを知って欲しい。また、
 1.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。
 2.計算時は愚直に電卓に向かい合うことと同時にどう楽をするか(どう効率的に行うか)ということを意識して欲しい。
 3.計算機のほか、紙と鉛筆による数式の手計算も重要である。また、エクセルやPCソフトの活用も有効である。
 4.「単位」は非常に重要である。物理化学でも数値だけの解答であることは特殊な場合(無次元数)を除いてない。異なる単位同士の足し算、引き算はあり得ないし、単位の掛け算、割り算により別の単位が生成することを思い出して欲しい。また、接頭のミリ、センチ、ヘクト、キロなどを軽んじることなく、細心の注意を払って単位を見ることも重要である。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 概要説明
量子論①(量子論の出現)

エネルギーが離散的であることついて理解・説明できる。
2週 量子論②(量子論の出現) 光電効果と電子線の回折について理解し、波-粒子二重性について説明できる。
波動関数の概念を理解できる。
3週 量子論③(微視的な系の動力学) 波動関数の概念を理解し、シュレディンガー方程式の意味を理解できる。
ボルンの解釈を理解・説明できる。
不確定性原理を理解・説明できる。
4週 量子論④(並進運動) 一次元の運動(井戸型ポテンシャル)を理解し、解くことができる。
トンネル現象について理解・説明できる。
一次元の運動を理解し、二次元・三次元の運動を理解できる。
5週 量子論⑤(回転運動)
    (振動運動)
回転運動について理解・説明できる
振動運動について理解・説明できる
6週 原子の構造(水素型原子) 水素型原子について理解し、オービタル(s、p、dオービタル)について説明できる
7週 中間試験
8週 試験返却
生体エネルギー論①
中間試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。
標準Gibbsエネルギー、生物学的標準Gibbsエネルギーの違いを理解する。
4thQ
9週 生体エネルギー論②基質レベルのリン酸化(解糖系、嫌気呼吸) 共役反応、Gibbsエネルギーを理解し、基質レベルのリン酸化(解糖系)について分子レベル、エネルギー的な説明できる。
10週 生体エネルギー論③基質レベルのリン酸化(クエン酸回路、好気呼吸) 共役反応、Gibbsエネルギーを理解し、基質レベルのリン酸化(クエン酸回路)について分子レベル、エネルギー的な説明できる。
11週 生体エネルギー論④化学浸透共役 化学浸透共役について説明できる。
電気ポテンシャルを理解し、電位差とGibbsエネルギーの関係が説明できる。
化学ポテンシャルを理解し、濃淡電池、受動輸送について説明できる。
電気化学ポテンシャルに関する諸計算ができる。
12週 生体エネルギー論⑤電子伝達系 電気化学ポテンシャルを理解し、酸化的リン酸化を説明できる。
プロトン駆動力に関する諸計算ができる。
13週 生体エネルギー論⑥光合成 光エネルギーの吸収と電子の流れおよび電気化学ポテンシャルと関連付けて光リン酸化を説明できる。
14週 生体エネルギー論⑦光合成 光リン酸化と関連付けて、二酸化炭素固定反応を説明できる。
光リン酸化と酸化的リン酸化の類似点、相違点を理解し、それらを説明できる。
15週 期末試験
16週 試験返却
物理化学のまとめ
期末試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合80000200100
基礎的能力0000000
専門的能力80000200100
分野横断的能力0000000