物理化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 2019
授業科目 物理化学Ⅰ
科目番号 0010 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 創造工学科(応用化学コース) 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 前期:1 後期:1
教科書/教材 アトキンス物理化学要論(第6版)
担当教員 榎本 尚也

到達目標

物質(主に気体)の性質を巨視的および微視的な観点の両方から理解すること。具体的には、
 ①気体の法則を理解して、その状態方程式を説明し、活用できる。
 ②熱力学第一法則を理解して、仕事、熱量、内部エネルギー変化、エンタルピー変化を計算できる。
 ③熱力学第二法則および第三法則を理解して、エントロピー変化を計算できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安(可)未到達レベルの目安
評価項目1気体分子運動論から圧力を定義し、理想気体の状態方程式を説明できる。実在気体の理論的取扱いを説明できる。気体の法則を理解して、理想気体の状態方程式を説明し、活用できる。実在気体の理論的取扱いを説明できる。気体の法則を理解して、理想気体の状態方程式を説明できない。
評価項目2熱力学第一法則を理解し、種々の状態変化に伴う仕事、熱量、内部エネルギー変化、エンタルピー変化を計算できる。状態変化に伴う仕事、熱量、内部エネルギー変化、エンタルピー変化を計算できる。状態変化に伴う仕事、熱量、内部エネルギー変化、エンタルピー変化を計算できない。
評価項目3熱力学第二法則および第三法則を理解して、種々の状態変化に伴うエントロピー変化を計算できる。状態変化に伴うエントロピー変化を計算できる。状態変化に伴うエントロピー変化を計算できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物理化学は、種々の物質の構造と特性について、巨視的および微視的な2つの立場から理解しようとするものである。物理化学Iでは、主に気体に注目してその性質を定量的に議論し、熱力学の基礎となる概念と物理量の取扱いを修得する。
授業の進め方・方法:
使用テキスト「アトキンス物理化学要論(第6版)」に準拠し、講義形式を基本として進める。物理化学(I)においては序章(基本概念)から第4章までを学ぶ。必要に応じて資料を配付し、演習問題を解いて理解を深める。授業中に数値計算を課すので関数電卓は必ず持参すること(定期試験にも電卓持込みとする)。なお、専門用語の英語訳は将来的に極めて重要であると考え、早いうちから慣れておくことを必須課題とする。具体的にはテキスト脚注の英単語はすべて必修とし、定期試験に出題する。
注意点:
物理化学の理解には数式の取扱いが必須であり、これまで数学で学んだ微積分、幾何学などを活用していくことになる。
数学が苦手だった学生には、嫌々復習するのではなく、自然の法則が数式によって記述されることに新鮮な感動を覚え、自身の計算で科学現象を導く醍醐味を味わってほしい。
 1.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。
 2.計算時、必ず「単位」に留意せよ。異なる単位同士の足し算・引き算はあり得ない。異なる単位の掛け算・割り算によって別の単位が生成する。
 3.紙とエンピツによる数式の手計算も重要である一方、エクセル等のPCソフトの活用は極めて有効であると心得よ。
本講義の中にも随所に数学の基礎知識を確認する演習等を行うが、到達目標に達しない場合は追加課題を与える。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 基本概念①(質量・体積・密度・圧力) 基本となる7つの国際単位を知り、その組み合わせで種々の物理量が表せることを理解する。
2週 基本概念②(エネルギーと波) 運動エネルギーおよびポテンシャルエネルギーの数式表現に慣れ、その微分形が力になることを理解する。
3週 気体の性質① 理想気体の状態方程式を理解し説明できる。分圧の計算ができる。
4週 気体の性質② 気体の分子論モデルから圧力を定義し、気体分子の速度を説明できる。
5週 気体の性質③ 理想気体と実在気体の違いを理解し、ファンデルワールスの状態方程式を説明できる
6週 気体の性質④ 臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。
7週 気体の性質⑤ 熱力学を学ぶ上での必要な用語と基本的事項を説明できる。
8週 中間試験
2ndQ
9週 試験返却 中間試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多面的な理解を深める。
10週 熱力学第一法則① 仕事、熱量、熱容量、内部エネルギーの定義を説明でき、与えられた条件下での数値計算ができる。
11週 熱力学第一法則② エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。
12週 熱力学第一法則③ エンタルピーの温度依存性を説明できる。
13週 熱力学第一法則④ 等温可逆変化に伴うエンタルピー変化を説明できる。
14週 熱力学第一法則⑤ 断熱可逆変化および断熱不可逆変化に伴うエンタルピー変化を説明できる。
15週 期末試験
16週 試験返却 期末試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。
後期
3rdQ
1週 基本概念③ 前期の内容に含まれる物理量の単位を総括し、エネルギーの保存について説明できる。
2週 熱力学第一法則の応用① 相転移のエンタルピーについて説明できる。
3週 熱力学第一法則の応用② 原子や分子の変化に伴うエンタルピー変化について説明できる。
4週 熱力学第一法則の応用③ 化学変化に伴うエンタルピー変化を説明でき、ヘスの法則により熱化学方程式の計算ができる。
5週 熱力学第一法則の応用④ 標準生成エンタルピーの定義と適用方法を説明でき、反応エンタルピーの温度依存性を説明できる。
6週 熱力学第二法則① エントロピーを定義し、その物理的な意味を説明できる。
7週 熱力学第二法則② 純物質の絶対エントロピーを計算できる
8週 中間試験
4thQ
9週 試験返却 中間試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。
10週 熱力学第二法則③ 膨張、加熱におけるエントロピー変化を計算できる。
11週 熱力学第二法則④ 化学反応におけるエントロピー変化を計算できる。
12週 熱力学第二法則⑤ 化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。
13週 熱力学第二法則⑥ エントロピーの分子論的な解釈について説明できる。
14週 熱力学第二法則⑦ 反応における自由エネルギー変化より平衡定数の計算ができ、その温度依存性を説明できる。
15週 期末試験
16週 試験返却 期末試験範囲で理解不十分であった点を認識する。理解できていた点についても別解法や多角的な理解を深める。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野物理化学気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4
混合気体の分圧の計算ができる。4
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合90000100100
基礎的能力0000000
専門的能力90000100100
分野横断的能力0000000