酵素化学

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 酵素化学
科目番号 4L018 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 創造工学科(環境生命コース) 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 前期:1
教科書/教材 Essential 細胞生物学第4版(南江堂) B.Albertsら著、中村桂子、松原謙一監訳、ブルース有機化学概説第3版(化学同人)P.Y.Bruice著、大船泰史ら監訳
担当教員 小林 正幸

到達目標

1.アミノ酸の構造、性質を分子レベルで理解し、その特徴を説明できる。
2.酵素に関する実験、研究について原理、方法、成果を理解し、説明できる。
3.酵素の構造、機能を分子レベル(ナノレベル)で理解し、説明できる。
4.酵素反応を物理化学的な観点で理解し、説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1アミノ酸の構造、性質を分子レベルで理解し、タンパク質の構造、性質に拡張して理解できる。アミノ酸の構造、性質を分子レベルで理解し、その特徴を説明できる。アミノ酸の構造、性質を分子レベルで理解できない。
評価項目2酵素に関する実験、研究について原理、方法、成果のそれぞれを関連付けて理解できる。酵素に関する実験、研究について原理、方法、成果を説明できる。酵素に関する実験、研究について原理、方法、成果を説明できない。
評価項目3酵素の構造を分子レベルで説明でき、熱力学と関連付けて説明できる。酵素の構造、機能を分子レベルで説明できる。酵素の構造を分子レベルで説明できない。
評価項目4酵素反応を物理化学的観点で説明でき、分子構造と関連付けて説明できる。酵素反応を物理化学的観点で説明できる。酵素反応を物理化学的観点で理解できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
われわれ生命は,生体内でさまざまな化学反応が必要に応じて,適切に行われることで成り立っている。酵素は,生体内でおこる化学反応の「触媒」としてはたらく「タンパク質」である。本科目では,2年生の基礎生物、3年生の生物化学Ⅰで修得したタンパク質および酵素に関する理解を深める。具体的には,タンパク質を構成するアミノ酸の構造、特性を分子レベルで理解し,それをもとにして酵素の機能,構造を分子レベルで,物理化学的側面で理解し,酵素反応(酵素の機能)が酵素の構造と密接に関連していることを理解する。酵素は生命誕生から何十億年かけて最適化された構築されたシステムであり、酵素を分子レベルで知ることで、生物が長い年月をかけてつくりあげた巧みな分子配置を(場合によっては美しく感じる酵素分子を)知り、その分子構築の英知を利用できれば効率的な分子機械(新規酵素)をつくることができることを体得してほしい。また,酵素に関する初歩から最先端までの実験、研究を紹介・理解し,酵素反応の意義,酵素の応用についてその理解を深める。
「4.質の高い教育を皆に(SDGs)」
授業の進め方・方法:
教科書の「Essential 細胞生物学第4版」に準拠し、講義形式で進める。酵素化学では第2章から第4章が主に該当する。また「ブルース有機化学概説第3版」も適宜利用して分子レベルでの理解を深める。授業中に教科書の問題,章末の演習問題,配布プリントの問題を解いて理解度を向上させる。時間的制約からすべてを授業中に解くことはできないので,自主的にこれらの問題を解いて理解を深めておくこと。また、酵素をナノレベルで理解するには分子の構造を知っておき、自由に使うことができるようになる必要がある。1回目の授業で酵素(反応と構造)をナノレベルで理解するための分子の構造と名称をリストアップしたものを配布するので、これをしっかりと覚えて、自由に使うことができるようになっておくことが重要である。このリストアップしたものの修得度および授業の学修内容の理解度(学修単位科目のための事前、事後の学習)をチェックするため授業内にテストを実施する。
注意点:
テスト100%で評価します。なおこのテストに授業中のテストを含みます。
酵素化学(酵素のナノレベルの理解)には,分子の性質,構造の理解が不可欠であり,その理解のうえに成り立っているといっても過言ではない。2年生の化学基礎,3年生の無機化学Ⅰ,有機化学Ⅰの理解を確実なものにしておくことが重要であるので,これらの科目の弱点は克服しておいて欲しい。また,エネルギーの立場,速度論的立場での理解には,熱力学の理解,数式の変形が不可欠であり,その理解のうえに成り立っているといっても過言ではない。1~3年生の数学,3年生の物理化学Ⅰの理解を確実なものにしておくことが重要であるので,これらの科目の弱点は克服しておいて欲しい。
また、構造における水素原子の重要性の観点から簡略構造を原則使用しない。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 概要説明
アミノ酸

アミノ酸の構造と分類を理解・説明できること。
2週 アミノ酸の構造と性質
アミノ酸の分離・分析
アミノ酸の立体配座、酸、塩基としての性質を理解し、アミノ酸の等電点を理解し、計算できる。
アミノ酸の分離・分析の方法(電気泳動、クロマトグラフィーなど)を理解し、説明できる。
3週 アミノ酸、ペプチド、タンパク質 ペプチド結合について理解し、説明できる。
タンパク質の階層構造について理解し、説明できる。タンパク質における弱い力を理解し、説明できる。
4週 タンパク質の分離・分析① 細胞からのタンパク質の分離方法を原理と対応させて理解し、反応速度、酵素活性、比活性、精製度、回収率といった酵素精製の諸計算ができる。
5週 タンパク質の分離・分析②
酵素(触媒)反応①
タンパク質の一次構造、二次構造、三次構造の決定法を理解し、説明できる。
酵素の性質(基質特異性、最適温度、最適pHなど)について理解する
6週 酵素(触媒)反応② 酵素の反応について理解し、酵素反応を酵素の構造と関連付けて説明できる。
補酵素、補欠分子族、ビタミンについて理解し、説明できる。
7週 中間試験
8週 試験返却
細胞のエネルギー利用①
中間試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。
熱力学第1、第2法則を説明できる。
2ndQ
9週 細胞のエネルギー利用② 熱力学第1、第2法則を説明できる。
代謝(同化と異化)とエネルギーについて説明できる。
生物のエネルギーと活性運搬体について説明できる。
10週 細胞のエネルギー利用③ Gibbsエネルギーと酵素反応の関係(自由エネルギーと触媒作用の関係)を理解する。
11週 細胞のエネルギー利用④ 酵素反応をエネルギーの観点から説明でき、酵素反応の平衡定数、自由エネルギー変化を計算できる。
12週 代謝の有機化学① 異化の4つの段階を理解し、説明できる。
13週 代謝の有機化学②
酵素反応について理解する。基質レベルのリン酸化(解糖系)についてエネルギーの観点から説明でき、平衡定数、自由エネルギー変化を計算できる。
14週 代謝の有機化学③ 酵素反応について理解する。基質レベルのリン酸化(クエン酸回路)についてエネルギーの観点から説明できること。
15週 期末試験
16週 試験返却
酵素化学のまとめ
期末試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。
酵素化学の概要が説明できる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野生物化学タンパク質、核酸、多糖がそれぞれモノマーによって構成されていることを説明できる。4前2
生体物質にとって重要な弱い化学結合(水素結合、イオン結合、疎水性相互作用など)を説明できる。4前2
タンパク質の機能をあげることができ、タンパク質が生命活動の中心であることを説明できる。4前1
タンパク質を構成するアミノ酸をあげ、それらの側鎖の特徴を説明できる。4前10
アミノ酸の構造とペプチド結合の形成について構造式を用いて説明できる。4前10
タンパク質の高次構造について説明できる。4前10,前11
酵素の構造と酵素-基質複合体について説明できる。4前1,前5,前6
酵素の性質(基質特異性、最適温度、最適pH、基質濃度)について説明できる。4前1
解糖系の概要を説明できる。4前8
クエン酸回路の概要を説明できる。4前9

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力0000000
専門的能力10000000100
分野横断的能力0000000