物理化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 平成31年度 (2019年度)
授業科目 物理化学Ⅱ
科目番号 0041 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 創造工学科(環境生命コース) 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 1
教科書/教材 アトキンス物理化学要論第6版(東京化学同人)P.Atkins、J.Paula著(稲葉、千葉訳)
担当教員 小林 正幸

到達目標

1.ギブズエネルギーを理解し、状態図の説明に適応できる。
2.相律の定義を理解し、自由度を計算でき、平衡状態を説明できる。
3.束一的性質を理解し、その応用ができる。
4.化学平衡を理解し、物理および化学的変化の自発的進行の方向を判定できる。
5.電解質溶液における各種平衡を理解し、各種溶液のpHが計算できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1ギブズズエネルギーを理解し、状態図の説明に適応できる。ギブズズエネルギーを理解している。ギブズズエネルギーを理解していない。
評価項目2相律を理解し、その使い方を理解して自由度を計算でき、平衡状態を説明できる。相律の定義を理解し、自由度を計算でき、平衡状態を説明できる。相律を理解できず、自由度を計算できず、平衡状態を説明できない。
評価項目3束一的性質を化学ポテンシャルを用いて説明でき、束一性を利用した諸計算ができる。束一的性質を説明でき、束一性を利用した諸計算ができる。束一的性質を理解できず、束一性を利用した諸計算ができない。
評価項目4化学平衡を理解し、ギブズエネルギー、平衡定数、平衡組成を計算でき、物理および化学的変化の自発的進行の方向を判定できる。化学平衡を説明でき、物理および化学的変化の自発的進行の方向を判定できる。化学平衡を理解できず、ギブズエネルギー、平衡定数、平衡組成を計算できず、物理および化学的変化の自発的進行の方向を判定できない。
評価項目5電解質溶液の平衡を理解し、各種溶液のpHが計算できる。電解質溶液の平衡を説明でき、単純な系(強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩)のpHが計算できる。電解質溶液の平衡を理解できず、各種溶液のpHが計算できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物理化学は種々の物質の構造と特性について、巨視的および微視的な2つの立場から理解しようとするものである。
物理化学Ⅱでは、物理化学Ⅰで学んだ熱力学パラメータのエンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギーの理解を深める。特に、ギブズエネルギーは化学分野では便利なエネルギーであり、物理的および化学的工程が自発的に進む方向を判定できるほか物質の状態までわかる優れものである。これらの熱力学的パラメータは反応物系(始点)と生成物系(終点)に注目し、その途中は吟味していないことを忘れてはならない。また、ギブスの相律を学び、物質の分離・精製および物質の創成の考え方につながる純物質、混合物(2成分系)の相平衡状態図の読み方を理解する。また、化学反応での反応物、生成物での化学反応平衡から物質生成(化学反応の進行)の予想、平衡溶液の物質の平衡から溶液のpHや沈殿生成などを計算によって求められることは、工場等での適用が重要な位置を占めることを理解する。
授業の進め方・方法:
教科書の「アトキンス物理化学要論第6版」に準拠し、講義形式で進める。物理化学Ⅱでは第5章から第9章が該当する。また,必要に応じて資料や問題を配布する。授業中に教科書の例題、例題の類題、自習問題、演習問題,配布プリントの問題などの計算問題を解いて理解を深めるので関数電卓は必ず持参すること。定期試験においても関数電卓は持ち込みとする。時間的制約からすべての問題を授業中に解くことはできないので,自主的にこれらの問題を解いて理解を深める。また,一部またはすべてをレポート課題とするので,指定した期日までに提出すること。化学・生物分野では、専門用語の英語は極めて重要である。専門用語の英語は早いうちから慣れておくことを必須課題とする。具体的には、テキスト脚注の英単語は必須とし、その意味の説明も含めて定期試験に出題する。
注意点:
物理化学の理解には数式の取り扱いが必須であり、これまで数学で学んだことを活用する必要がある。これまで数学で学んだ、解析学(指数対数を含む)、幾何学、微積分などを活用していくことになるので、数学が苦手であった学生には数学の復習も重要となる。自然の法則が数式で記述できることに感動を覚え、自身の努力(計算)で科学現象を導く醍醐味、未来を予測(予想)できることの感動、工学(工場)での応用・活用への第一歩を知る歓びを知って欲しい。また、
 1.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。
 2.計算時は愚直に電卓に向かい合うことと同時にどう楽をするか(どう効率的に行うか)ということを意識して欲しい。
 3.計算機のほか、紙と鉛筆による数式の手計算も重要である。また、エクセルやPCソフトの活用も有効である。
 4.「単位」は非常に重要である。物理化学でも数値だけの解答であることは特殊な場合(無次元数)を除いてない。異なる単位同士の足し算、引き算はあり得ないし、単位の掛け算、割り算により別の単位が生成することを思い出して欲しい。また、接頭のミリ、センチ、ヘクト、キロなどを軽んじることなく、細心の注意を払って単位を見ることも重要である。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 概要説明
純物質の相平衡①

ギブズエネルギーを説明できる
ギブズエネルギ―の圧力変化、温度変化を説明できる
2週 純物質の相平衡② 純物質の相図を理解する①
相境界(蒸気圧曲線)、物質に固有な点を説明できる。
3週 純物質の相平衡③
純物質の相図を理解する②
相律を理解し、純物質、混合物の自由度を計算できる。
4週 混合物の性質① 濃度の表し方、部分モル量を理解する。
化学ポテンシャルを説明できる。
理想溶液の定義ができ、ラウールの法則の諸計算ができる。
5週 混合物の性質② 理想希薄溶液の定義ができ、ヘンリーの法則の諸計算ができる。
理想溶液と実在溶液を定義でき活量について理解する。
束一的性質を理解する①沸点上昇、凝固点降下の計算ができる。
6週 混合物の性質③ 束一的性質を理解する②浸透圧の計算できる。
二成分系状態図を理解して、気液平衡を説明できる。
7週 中間試験
8週 試験返却
化学平衡の原理①
中間試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。
標準ギブズエネルギーを説明できる。
2ndQ
9週 化学平衡の原理② 標準反応ギブズエネルギーを理解し、反応ギブズエネルギーを計算できる。
平衡定数が定義し、平衡定数を計算できる。
10週 化学平衡の原理③ 化学平衡を理解し、平衡組成を計算できる。
諸条件による平衡の移動について説明できる。
11週 化学平衡の原理④
溶液の化学平衡①
均一および不均一反応の平衡を説明できる。
酸塩基を理解し、強酸、強塩基、弱酸、弱塩基の平衡について説明できる。
12週 溶液の化学平衡② プロトン移動平衡に関する諸計算ができる①強酸、弱酸、強塩基、弱塩基のpHの計算ができる。
13週 溶液の化学平衡③ プロトン移動平衡に関する諸計算ができる②多プロトン酸、両プロトン性を示す化学種、弱酸の塩、弱塩基の塩のpHの計算ができる。
14週 溶液の化学平衡④ プロトン移動平衡に関する諸計算ができる③緩衝作用について理解し、緩衝液のpHの計算ができる。
溶解度平衡に関する諸計算ができる。
15週 期末試験
16週 試験返却
物理化学Ⅱのまとめ
期末試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野分析化学電離平衡と活量について理解し、物質量に関する計算ができる。4前4,前5
強酸、強塩基および弱酸、弱塩基についての各種平衡について説明できる。4前11
強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩のpHの計算ができる。4前12,前13
緩衝溶液とpHの関係について説明できる。4前14
物理化学純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。3前2
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。3前6
束一的性質を説明できる。4前5,前6
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4前5
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4前5,前6
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4前3
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。3前9
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。3前10
均一および不均一反応の平衡を説明できる。3前11

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力0000000
専門的能力10000000100
分野横断的能力0000000