応用物理学

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 応用物理学
科目番号 3Z009 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 4
開設学科 創造工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 教科書:『総合物理1 様々な運動 熱 波』『総合物理2 電気と磁気 原子・分子の世界』 植松恒夫、酒井啓司、下田正/啓林館、 副教材:『センサー総合物理 補訂版』 高校物理研究会・啓林館編集部/啓林館、 『改訂版 フォトサイエンス 物理図録』 数研出版編集部/数研出版
担当教員 酒井 健,鮫島 朋子,竹内 伯夫

到達目標

物理的な事物・事象についての観察を行い、物理的に探求する能力を身につけると共に、基本的な概念や原理・法則を理解できる。
1.物理学に関する実験を行い、内容を理解できる。
2.気体のエネルギーと状態変化に関する基礎的な計算をすることができる。
3.波動の性質について理解できる。
4.電界と電位、直流回路について理解できる。
5.微分・積分を用いた物理学の基礎について理解できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1実験内容および実験方法、実験することの意味、測定データの整理法ついて説明でき、報告書をまとめて提出できる。実験内容および実験方法、実験することの意味、測定データの整理法ついて概略を説明でき、報告書をまとめて提出できる。実験内容および実験方法、実験することの意味、測定データの整理法ついて概略が説明できず、報告書をまとめて提出できない。
評価項目2熱力学の第1法則を用いて気体の状態変化についてのやや複雑な問題を解く事ができる。モル比熱を使った問題を解く事ができる。熱容量や比熱の概念、熱力学の第1法則を理解でき、気体の状態変化についての簡単な問題を解く事ができる。 気体の分子運動論を理解できる。熱機関の効率について計算できる。熱容量や比熱の概念が理解できない。熱力学の第1法則を理解できない。気体の分子運動論を理解できない。熱機関の効率について計算できない。
評価項目3波動の基本的な性質、音、光について、正しく作図および計算ができ、現象を理解できる。波動の基本的な性質、音、光について、作図および計算ができ、概要を理解できる。波動の基本的な性質、音、光について、理解できない。
評価項目4電場と電位、直流回路等について、論理的に説明できる。電場と電位、直流回路等について、概略を説明できる。電場と電位、直流回路等について、概略を説明できない。
評価項目5微分・積分を使った解法、角運動量、慣性モーメント等について、論理的に説明できる。微分・積分を使った解法、角運動量、慣性モーメント等について、概略を説明できる。微分・積分を使った解法、角運動量、慣性モーメント等について、概略を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 物理学は例えば力学、熱、波動などいくつかの分野に分けられるが、隔週で実施する物理学実験は、物理学の各分野において重要と思われるテーマを取り上げて、学生自身が実験することで体験的に物理的な理解を深めることを目的としている。原則として2人1組で実験を行い、各自で測定データを整理し定量的な結果を求め、得られた結果について検討・吟味して報告書としてまとめるものである。1~2学年で学んだ基礎物理学は物理の分野で学ぶべき基礎的内容の一部であり、工学の分野を学び理解するために必要な内容がまだかなり残されている。2週あたりで3コマのコマ数配分で行う講義形式の授業では、残っている基礎的な物理学の分野の中で、ぜひ理解し習得して欲しい内容について学習する。
 3学年の応用物理学全体を通して、論理的な思考や考え方、数式の展開などについても学年進行にふさわしい学力を身につけることができる。
授業の進め方・方法:
 通年で実験(12コマ:隔週で実施)と講義(48コマ)に分けて実施する。
 実験は、授業において配布する実験書に基づき、「単振り子による重力加速度の測定」「つるまきばねの振動」「ヤング率の測定」「気柱の共鳴」「屈折率の測定」「光の波長測定」「ニュートンリングによる曲率半径の測定」「固体の比熱測定」「等電位線の測定」「抵抗の測定」「電気抵抗率の測定」「放射線の測定」「長さの測定」の中から毎回1テーマを基本的には2人1組で実施する。講義では、内容の理解と定着をはかるため、演習問題を授業の進度に合わせて適宜レポートとして解答・提出してもらう。また、必要に応じて小テスト等を行う。なお、後期中間試験までは高校の検定教科書を使用し、学年末試験までは授業中に配布するプリントを用いて進める。
 なお、成績は定期試験および課題試験類を50%、実験の報告書を30%、小テストおよび宿題レポートを20%として総合的に評価し、60%以上の得点率で目標達成とみなす。
注意点:

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ・授業の概要説明
【教科書 総合物理1 第2部 熱】
(第1章 熱とエネルギー)
・熱と温度
・熱量(その1)
1年間の取り組みについて理解できる。
温度、物質の三態と分子の熱運動、熱膨張について理解できる。
熱量と温度変化(熱容量・比熱)について理解できる。
2週 ・実験ガイダンス①、安全教育
・熱量(その2)
・熱と仕事
実験上の安全に関する注意事項を理解できる。
測定機器の使用法について理解できる。
潜熱、熱量の保存(熱量保存則)ついて理解できる。
仕事と熱運動のエネルギーについて理解できる。
3週 (第2章 気体分子の運動)
・気体の状態方程式
・ボイルの法則、シャルルの法則
・理想気体の状態方程式
気体の圧力、ボイルの法則、シャルルの法則、ボイル・シャルルの法則、理想気体の状態方程式について理解できる。
4週 ・実験ガイダンス②
・気体分子の熱運動
誤差と最小二乗法について理解できる。
気体の圧力と気体分子の熱運動、分子の熱運動と絶対温度について理解できる。
5週 ・熱力学第1法則 気体の内部エネルギー、気体の体積変化と気体がする仕事、熱力学第1法則について理解できる。
6週 ・実験 No.1
・気体の状態変化と熱・仕事(その1)
実験を行い、報告書を作成する。
定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化について理解できる。
7週 ・気体の状態変化と熱・仕事(その2)
・様々なエネルギーとその利用
熱機関の熱効率、エネルギーの変換と保存、不可逆変化について理解できる。
利用するエネルギーの移り変わり、太陽光の利用、化石燃料の利用について理解できる。
8週 ・前期中間試験
2ndQ
9週 ・テスト返却と解説
【教科書 総合物理1 第3部 波】
(第1章 波の性質)
・波の伝わり方(その1)
中間試験の問題の解法を理解できる。
波の発生、波形の移動と媒質の振動、周期的な波、正弦波を表す式について理解できる。
10週 ・実験 No.2
・波の伝わり方(その2)
実験を行い、報告書を作成する。
正弦波の位相、横波と縦波、波が運ぶエネルギー、波が伝える情報について理解できる。
11週 ・波の性質 波の独立性と重ね合わせの原理、定常波、自由端反射と固定端反射、波の波面と射線について理解できる。
波の干渉・回折・反射・屈折、ホイヘンスの原理について理解できる。
12週 ・実験 No.3
(第2章 音)
・音の性質
実験を行い、報告書を作成する。
音波、音の速さ、音の三要素、可聴音と超音波、音波の性質(回折・反射・屈折・干渉、うなり)について理解できる。
13週 ・音源の振動
・ドップラー効果
共振・共鳴、弦や気柱の固有振動について理解できる。
音源が動く場合、観測者が動く場合、音源と観測者の両方が動く場合、いろいろな場合のドップラー効果について理解できる。
14週 ・実験 No.4
(第3章 光)
・光の性質
実験を行い、報告書を作成する。
光の速さ、光の反射と屈折、全反射、光のスペクトルと分散、光の散乱、偏光について理解できる。
光の反射と屈折に関する問題の解法について理解する。
15週 ・前期末試験
16週 ・テスト返却と解説 期末試験の問題の解法を理解できる。
後期
3rdQ
1週 【教科書 総合物理2 第1部 電気と磁気】
(第1章 電界と電位)
・静電気
静電気、電荷と電気量、電子、導体・不導体・半導体、静電誘導について理解できる。
2週 ・実験 No.5
・電界(その1)
実験を行い、報告書を作成する。
クーロンの法則、電界について理解できる。
3週 ・電界(その2) 点電荷の周りの電界、電気力線について理解できる。
4週 ・実験 No.6
・電位(その1)
実験を行い、報告書を作成する。
電気力による位置エネルギー、電位について理解できる。
5週 ・電位(その2) 一様な電界と電位、等電位面、荷電粒子の運動、導体と電界・電位について理解できる。
6週 ・実験 No.7
(第2章 電流)
・電流
実験を行い、報告書を作成する。
電流とキャリア、電気回路、電気抵抗、電力と電流の熱作用について理解できる。
7週 ・直流回路 抵抗の接続、キルヒホッフの法則、ホイートストンブリッジについて理解できる。
8週 ・後期中間試験
4thQ
9週 ・テスト返却と解説
【配布プリント】
(第1章 微分・積分)
・微分、積分、ベクトル関数の復習
中間試験の問題の解法を理解できる。
微分・積分、ベクトルの内積・外積について基本的な計算ができる。
10週 ・実験 No.8
・微分、積分を用いた物理量の計算
実験を行い、報告書を作成する。
物体の変位・速度・加速度を微分・積分を用いて相互に計算し、求めることができる。
11週 ・微分方程式 簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。
12週 ・実験 No.9
・演習
実験を行い、報告書を作成する。
微分・積分を用いた問題を解くことができる。
13週 (第2章 角運動量)
・角運動量
角運動量について理解し、角運動保存則に関する問題を解くことができる。
14週 ・実験 No.10
(第3章 慣性モーメント)
・慣性モーメント
実験を行い、報告書を作成する。
一様な棒や円板などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。
15週 ・学年末試験
16週 ・テスト返却と解説 学年末試験の問題の解法を理解できる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3後9,後10
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3後11,後12
角運動量を求めることができる。3後13
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。3後13
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3後14
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3後14
原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。3前1,前4
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。3前1,前2
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。3前1
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。3前2
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。3前2
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。3前3
気体の内部エネルギーについて説明できる。3前4,前5
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。3前5,前6
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。3前7
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。3前7
熱機関の熱効率に関する計算ができる。3前7
波動波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。3前9
横波と縦波の違いについて説明できる。3前10
波の重ね合わせの原理について説明できる。3前11
波の独立性について説明できる。3前11
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。3前11
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。3前11
ホイヘンスの原理について説明できる。3前11
波の反射の法則、屈折の法則、および回折について説明できる。3前11
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。3前13
気柱の長さと音速から、開管、閉管の固有振動数を求めることができる(開口端補正は考えない)。3前13
共振、共鳴現象について具体例を挙げることができる。3前13
一直線上の運動において、ドップラー効果による音の振動数変化を求めることができる。3前13
自然光と偏光の違いについて説明できる。3前14
光の反射角、屈折角に関する計算ができる。3前14
波長の違いによる分散現象によってスペクトルが生じることを説明できる。3前14
電気導体と不導体の違いについて、自由電子と関連させて説明できる。3後1,後5
電場・電位について説明できる。3後2,後3,後4,後5
クーロンの法則が説明できる。3後2
クーロンの法則から、点電荷の間にはたらく静電気力を求めることができる。3後2,後3
オームの法則から、電圧、電流、抵抗に関する計算ができる。3後6
抵抗を直列接続、及び並列接続したときの合成抵抗の値を求めることができる。3後7
ジュール熱や電力を求めることができる。3後6,後7
物理実験物理実験測定機器などの取り扱い方を理解し、基本的な操作を行うことができる。3後14
安全を確保して、実験を行うことができる。3後14
実験報告書を決められた形式で作成できる。3前2
有効数字を考慮して、データを集計することができる。3前2
力学に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後14
熱に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後14
波に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後14
光に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後14
電磁気に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後14
電子・原子に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後14
工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。3後14
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3後14
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。3後14
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。3後14
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3後14
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3後14
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3後14
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3後14
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3後14
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3後14
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3後14

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合50000500100
基礎的能力50000500100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000