応用物理

科目基礎情報

学校 北九州工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 応用物理
科目番号 0085 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 生産デザイン工学科(電気電子コース) 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 「新・基礎 力学 (ライブラリ新・基礎物理学)」 永田 一清(サイエンス社) 「新・基礎 波動・光・熱学 (ライブラリ新・基礎物理学)」 永田 一清, 松原 郁哉(サイエンス社
担当教員 中村 裕之

到達目標

1. 各振動現象を微分方程式を用いて記述し、方程式を解くとともに、その物理的意味を正しく説明できる。
2 波動現象の基礎的事項を数学的・図形的表現とともに正しく説明でき、各種の問題について解くことができる。
3. 物質の熱的性質に関する基礎的事項を説明して、状態変化、熱量の計算、熱量の移動に関する問題を解くことができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
振動現象の理解複雑な外力f(t)が作用する場合を含む振動現象(単振動、物理振り子・減衰振動・強制振動)を微分方程式を用いて記述し、初期条件とともに運動方程式を解き、その物理的意味を正しく説明できる。振動現象(単振動、物理振り子・減衰振動・強制振動)を微分方程式を用いて記述し、初期条件とともに運動方程式を解き、その物理的意味を正しく説明できる。振動現象の微分方程式を記述することができない、あるいは程式を解くことができず、またその物理的意味を正しく説明できない。
波動現象の理解波動現象の基礎的事項を数学的・図形的表現とともに正しく説明でき、各種の応用問題について解くことができる。波動現象の基礎的事項を数学的・図形的表現とともに正しく説明でき、各種の基本問題について解くことができる。波動現象の基礎的事項を説明できない、あるいは数学的・図形的に正しく記述することができない。また各種の基本的問題について解くことができない。
熱的現象の理解物質の熱的性質に関する基礎的事項を説明して、状態変化、熱量の計算、熱量の移動に関する応用問題を解くことができる。物質の熱的性質に関する基礎的事項を説明して、状態変化、熱量の計算、熱量の移動に関する基礎問題を解くことができる。物質の熱的性質に関する基礎的事項が説明できない、あるいは状態変化、熱量の計算、熱量の移動に関する簡単な問題を解くことができない。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程の教育目標 A① 数学・物理・化学などの自然科学、情報技術に関する基礎を理解できる。
準学士課程の教育目標 A② 自主的・継続的な学習を通じて、基礎科目に関する問題を解くことができる。
準学士課程の教育目標 B① 専門分野における工学の基礎を理解できる。
準学士課程の教育目標 B② 自主的・継続的な学習を通じて、専門工学の基礎科目に関する問題を解くことができる。
専攻科教育目標、JABEE学習教育到達目標 SA① 数学・物理・化学などの自然科学、情報技術に関する共通基礎を理解できる。
専攻科教育目標、JABEE学習教育到達目標 SA② 自主的・継続的な学習を通じて、共通基礎科目に関する問題を解決できる。
専攻科教育目標、JABEE学習教育到達目標 SB① 共通基礎知識を用いて、専攻分野における設計・製作・評価・改良など生産に関わる専門工学の基礎を理解できる。
専攻科教育目標、JABEE学習教育到達目標 SB② 自主的・継続的な学習を通じて、専門工学の基礎科目に関する問題を解決できる。
専攻科教育目標、JABEE学習教育到達目標 SD② 専攻分野の専門性に加え、他分野の知識も学習し、幅広い視野から問題点を把握できる。

教育方法等

概要:
応用物理は各技術分野の基本となる力学・波動・熱学的現象を取り扱うものであり、これら物理現象と物理法則を学習する事により自然科学分野での基礎力と電気電子工学分野におけるこれら利用例の理解と応用力を養う。
授業の進め方・方法:
多くの物理現象が微分方程式の形であらわされるため、数学的理解を深めておくこと、また、力学的現象と電気磁気的現象の対応関係、電気電子工学における応用に留意することが重要である。様々な形で主体的、対話的な学びを実践し、学習の深化(アクティブラーニング)を行う。
注意点:
補助教材として動画資料やグループ学習用大判プリント教材(LSH)、課題プリントなどを活用しながら継続的に学習していくことが重要である。また夏季休業中の課題プリントの取り組みと実力試験を重視した指導を行う。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス・運動について:並進運動と回転運動について運動方程式による記述と数学的扱い 並進運動と比較しながら、回転運動における各物理量を用いて運動方程式をたてて、微分方程式として簡単な場合の回転運動を解くことができる。
2週 振動現象:フックの法則と単振動について 単振動におけるフックの法則を理解し、単振動における運動方程式をたてて、各条件での方程式の解を求め、式とグラフを用いてその運動を説明できる。
3週 振動におけるオイラーの公式、j演算子の利用と数学的な扱いについて 振動に関する運動方程式の解法におけるオイラーの公式と電気回路におけるj演算子の利用について、その数学的な扱いを理解して基本的な問題について適用することができる。
4週 物理振り子について(重心、慣性モーメントと力のモーメント) 単振り子の場合と異なる、物理振り子の重心、慣性モーメント、重力による力のモーメントを理解して、基本的な場合についての運動方程式を解き、その運動を説明できる。
5週 慣性モーメントの計算(直交軸の定理、平行軸の定理)とねじれ振動 慣性モーメンの計算における直交軸の定理、平行軸の定理を理解して、その導出と基本的な場合について計算することができる。ねじれ振動についてその運動の図形的説明と運動方程式による記述をすることができる。
6週 減衰振動:振動の分類、機械モデル、微分方程式とその解法(特性方程式) 減衰振動の運動を理解して、特性方程式により運動方程式(斉次微分方程式)を解く(一般解)ことができる。運動方程式における判別式による振動の分類(減衰振動、臨界制動、過制動)、対応する機械モデルの提示ができる。
7週 減衰振動について:初期条件を含む振動問題の解法と運動の分析 初期条件を含む減衰振動の運動方程式を解き、その運動(特殊解)を説明することができる。
8週 前半のまとめ これまでに学んだ物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
2ndQ
9週 外力が正弦波の場合の強制振動について:j演算子を用いた解法と電気回路との比較 正弦波として記述される外力が振動系に作用する強制振動の場合について、その運動方程式を電気回路におけるj演算子を用いて解くことができ、電気回路との比較からその運動を説明できる。
10週 外力が正弦波の場合の強制振動と共振現象について:共振現象と電気回路との比較 強制振動における変位共振・速度共振の条件の導出と、共振状態の記述・説明ができる。電気回路との比較からその特徴を説明できる。
11週 力学現象と電気的現象の基本的対応関係(等価回路) 力学としての振動現象とLCRからなる電気回路の比較から基本的対応関係と、基本的な場合における等価回路を示すことができる。
12週 振動問題の解法とラプラス変換について ラプラス変換の定義を理解して諸定理の導出ができ、基本的な微分方程式について適用して方程式を解き、振動問題に適用することができる。
13週 ラプラス変換演習:基本的な問題演習と物理への適用 授業で取り上げた振動問題について、その運動方程式をラプラス変換を用いて解くことができる。
14週 ラプラス変換を用いた振動問題の解法:オーバーシュートとリンギングについて 正弦波として表されない外力f(t):擬ステップ関数(ランプ+ステップ)がおもりとばねから成る振動系に作用した場合について、ラプラス変換による解法の説明ができ、オーバーシュートとリンギングの発生条件に付いて説明できる。
15週 前期中の学習事項の振り返りと総合演習 学習した物理現象の説明、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
16週 期末試験 試験範囲となった物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
後期
3rdQ
1週 物質の力学的性質について:変形と歪・応力について、フックの法則と各弾性率 物質の力学的性質について変形の種類、歪・応力の関係について図を用いて説明することができる。フックの法則と各弾性率(ヤング率、体積弾性率、剛性率)について図式を用いて説明できる。
2週 波動現象:波動の種類と波動方程式、波動を表す式、音波・電磁波(光)について 波動現象についてその特徴を波動の種類とともに説明ができる。式を用いて波動方程式、方程式を満たす波動を表す式が説明できる。音波・電磁波(光)について、その諸特徴を図表を用いて説明できる。
3週 弦を伝わる横波、固体を伝わる縦波の方程式と波動方程式について 弦を伝わる横波、固体を伝わる縦波について、各点における運動(振動)の図示と運動方程式をたてることができ、それらから波動ととしての方程式を導くことができる。
4週 進行波と定常波、媒質の疎密と固定端反射と自由端反射、物体の固有振動について 進行波と定常波の式としての記述ができる。境界を有する波動の進行において、媒質の疎密の判断とそれに伴う固定端反射と自由端反射の判定ができる。入射波と反射波による合成波を求めることができ、境界を有する棒などの物体に生じる振動、固有振動について図式を用いて説明できる。
5週 音響インピーダンスと波の透過と反射、工学における応用 媒質の音響インピーダンスによる計算から、境界における波の透過率、反射率を求めることができる。またこれらの原理の工学的応用例を図式を用いて説明できる。
6週 波動特有の諸性質:重ね合わせの原理、反射・屈折、うなり、ドップラー効果について 波動特有の諸性質である重ね合わせの原理、反射・屈折、うなり、ドップラー効果について、図式を用いて説明することができ、基本的な問題について解くことができる。
7週 物理光学 反射・屈折・吸収、干渉、回折、分散、偏光、光学機器の原理 光学としての反射(全反射を含む)・屈折・吸収、干渉、回折、分散、偏光、光学機器の原理について、図式を用いて説明することができ、基本的な問題について解くことができる。
8週 中間試験 試験範囲となった物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
4thQ
9週 物質の熱的性質:温度の概念、絶対温度、熱的諸性質、ボイル・シャルルの法則と気体の状態、内部エネルギー、熱力学法則 絶対温度を含む温度の概念を理解し、物質の熱的性質を説明できる:気体における熱力学法則、ボイル・シャルルの法則と状態、内部エネルギーについて基本的な場合の説明ができる。
10週 温度の変化に伴う物質の膨張収縮、状態変化・相図について 物質の三態を理解し、温度の変化に伴う物質の膨張収縮、状態変化・相図について式・図表を用いて説明できる。
11週 物質の熱量、熱容量と状態の変化について 物質の熱量、熱容量、比熱について適切に使い分け、水に氷を加える、氷に水蒸気を当てるなどの場合の状態の変化について、基本的な問題を解くことができる。
12週 伝熱の3形態と熱伝導率、温度勾配、熱伝導、ヒートパイプについて 伝熱の3形態を図示とともに説明できる。熱伝導で基本となる熱伝導率、温度勾配、熱伝導を説明できる。ヒートパイプについて原理とその工学的利用を説明できる。
13週 熱伝導方程式について:方程式の導出とその解法 諸物理量を理解して熱の移動を図示し、熱伝導方程式を導出できる。簡単な熱伝導を表す式(解)を熱伝導方程式を用いて判定できる。
14週 総合問題演習:前期、後期を通じて学習した事項の確認と総合問題演習 後期扱った物理現象について、諸法則を用いて説明できる。代表的な問題を解いてその現象、状態を説明できる。
15週 学年末試験 学習した物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して最終的な学習目標の達成に結び付けることが出来る。
16週 学年末試験返却、問題解説 理解が不足している点を確認して最終的な学習目標の達成に結び付けることが出来る。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学速度と加速度の概念を説明できる。3前1
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。3前1
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。3前1
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。3前1
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3前1
平均の速度、平均の加速度を計算することができる。3前1
物体に作用する力を図示することができる。3前2
力の合成と分解をすることができる。3前2
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。3前2,後1
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。3前2
質点にはたらく力のつりあいの問題を解くことができる。3前2
慣性の法則について説明できる。3前1
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。3前1
運動方程式を用いた計算ができる。3前4,前6,前7
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3前4,前6,前7
運動の法則について説明できる。3前1
仕事と仕事率に関する計算ができる。3前5
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。3前4
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前7
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。3後1
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3前7
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。3前3,前4
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。3前3,前4
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。3前3,前4
力のモーメントを求めることができる。3前4
角運動量を求めることができる。3前5
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。3前5
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。3前5
重心に関する計算ができる。3前5
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3前5
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3前4,前5
原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。3後9,後10
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。3後12,後13
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。3後11
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。3後11
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。3後9
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。3後9
気体の内部エネルギーについて説明できる。3後9
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。3後9
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。3前11,後9
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。3後9
熱機関の熱効率に関する計算ができる。3後9,後14
波動波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。3後2
横波と縦波の違いについて説明できる。3後2,後3
波の重ね合わせの原理について説明できる。3後2
波の独立性について説明できる。3後2
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。3後6
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。3後4
ホイヘンスの原理について説明できる。3後2,後4
波の反射の法則、屈折の法則、および回折について説明できる。3後2,後4
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。3後6
気柱の長さと音速から、開管、閉管の固有振動数を求めることができる(開口端補正は考えない)。3後6
共振、共鳴現象について具体例を挙げることができる。3後6
一直線上の運動において、ドップラー効果による音の振動数変化を求めることができる。3後6
自然光と偏光の違いについて説明できる。3後6,後7
光の反射角、屈折角に関する計算ができる。3後6,後7
波長の違いによる分散現象によってスペクトルが生じることを説明できる。3後6,後7

評価割合

試験課題相互評価協働ポートフォリオその他合計
総合評価割合702001000100
基礎的能力6015050080
専門的能力105000015
分野横断的能力0005005