法学(後期)

科目基礎情報

学校 北九州工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 法学(後期)
科目番号 0122 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 生産デザイン工学科(電気電子コース) 対象学年 5
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 池田真朗ほか(編集代表)『法学六法’21』(信山社、2020年)定価:1,100円(+税)/松久三四彦ほか『オリエンテーション民法』(有斐閣、2018年)定価:2,500円(+税)
担当教員 白神 宏,福本 忍

到達目標

1.我々の日常生活(財産・家族関係)を規律する「民法」の現代社会における意義・機能を理解することができる。
2.民法の条文の解釈(論)、民法上の諸制度、および民法分野の重要判例について、その概要を理解することができる。
3.判例の読み方を修得して、民事の具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で論理的に示すことができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1我々の日常生活(財産・家族)を規律する「民法」の現代社会における意義・機能を充分に理解している。我々の日常生活(財産・家族)を規律する「民法」の現代社会における意義・機能を概ね理解できている。我々の日常生活(財産・家族)を規律する「民法」の現代社会における意義・機能が理解できていない。
評価項目2民法の条文解釈論、民法上の諸制度、および民法の重要判例について、その概要を充分理解している。民法の条文解釈論、民法上の諸制度、および民法の重要判例について、その概要をほぼ理解している。民法の条文解釈論、民法上の諸制度、および民法の重要判例について、その概要を理解できていない。
評価項目3判例の読み方を修得し、民事の具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で論理的に充分示せている。判例の読み方を修得し、民事の具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で概ね論理的に示せている。判例の読み方の修得が不充分で、民事の具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で論理的には示せない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 民法は、私人(=一般市民)間の様々な法律関係(財産関係・家族関係)に適用される最も基本的なルール(規律)を定めるものである。コンビニでお弁当を買う(売買)、マンションの部屋を借りる(賃貸借)、結婚や離婚をする、親が亡くなったので財産を相続する、交通事故に遭ったので加害者に損害賠償請求する(不法行為)等、我々の日常生活は民法と無関係ではいられない。この授業では、これらの法律問題を扱う法分野である「民法」の基礎・基本を学ぶ。ところで、わが国の「民法典」という法律には、民法全体に共通するルールを定めた総則(第1編)を頂点に、物権(第2編)、債権(第3編)、親族(第4編)、および相続(第5編)と全部で5つの編が設けられている。現行民法典は、上記5編1,050条もの規定があり、これらをできる限り、効率的に解りやすい順序で学修する必要がある。ところが、民法典は、「私法の一般法」という非常に重要で基本的な法律でありながら、最初の「総則(第1編)」の条文内容がどれもきわめて抽象的で解かりにくく、そのため「民法総則」だけをしっかり学んでも、その抽象的な内容のせいで、たいていの人々は「民法アレルギー」に罹(かか)ってしまう。そこで、この授業では、上記「民法典全5編」の内容につき、具体例をできる限り多く交えながら、各編で最低限理解してほしいポイントを絞って講義することで、民法各編それぞれの特徴や位置づけを明確にする。この授業を通じて、社会人に必須のツールである民法の勘所を押さえよう。
授業の進め方・方法:
 民法初学者であろう受講生諸君に対し、できる限り解かりやすく、かつ、具体的な場面・ケースを挙げて、民法上の様々な制度や概念、条文の解釈(論)等につき平易な解説を加える。この授業を通じて現代社会における民法の役割や意義を一緒に考えたい。ところで、2017(平成29)年5月、「民法の一部を改正する法律案」が国会で可決・成立し、同年6月民法典は約120年ぶりの大改正がなされた(改正民法〔債権法〕公布)。そして、この改正民法は、2020(令和2)年4月1日から施行されている。まさに、民法は現在、改正法施行直後の状態にある。よって、この授業では、現行法である「改正民法」の解説を基本としつつも、受講生諸君が社会人になったとき、依然その適用があると考えられる「改正前民法」についても(民法改正前に締結された契約に関する法的紛争には、原則「改正前民法」の適用がある)、適宜内容をフォローする。改正前民法の諸制度が現行民法(改正民法)でどのように変わったかにつき、指定教科書をもとに解かりやすく解説する。なお、法律学は条文を覚える学問ではない。この授業で扱う民法を含め、法律学は、具体的紛争(事案)を想定し、条文中の抽象的文言を具体的な“ことば”に置き換え(法解釈)、その事案をその解釈に“あてはめる”ことにより、最善の紛争解決方法を模索・提示する営みなのである。この営みのプロセスにも折に触れ解説する(判例の読み方)。最後に、この授業における学びの成果を中間試験および期末試験で総合評価する。
注意点:
 授業中の“過度な”私語は厳禁・減点である。ただし、リラックスした雰囲気で講義を楽しんでもらいたい。その分、法的思考をフル回転させること。常に自分の頭で考えて受講してもらいたい。高専生諸君にある?と思われる“法律(学)ないし民法学アレルギー”を少しでも払拭できれば幸いである。ちなみに、期末試験は持込み「すべて可(ただし、通信機器の持込みは不可)」とする。“覚える”のでなく、未知の問題を自分の力で考えて解答する試験を行うので、この点注意されたい。なお、指定教科書2冊(薄型六法およびオリエンテーション民法)および筆記具・ノートは必携である(レジュメも適宜配布する。)。予・復習頁も指示するので、時間外学修にも積極的に取り組んでほしい。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 ガイダンス&民法入門の入門:民法とは何を規律する法か?~民法の世界を図示・鳥瞰する!? 民法が私法の一般法であること、民法には財産法と家族法の分野があること、および近代民法の3大原則について理解している。
2週 民法を学ぶ上での基礎概念(条文の読み方を含む)の修得とパンデクテン・システム入門 民法典の編纂方式、今次民法・債権法改正の概略を知っており、法律要件・法律効果・法律事実・要件事実についても理解している。
3週 「民法総則」の世界・その①:「民法総則」という巨大な「共通因数?」【自然人と法人】、【権利能力・意思能力・行為能力】 民法総則分野のうち、「自然人と法人」および「権利能力・意思能力・行為能力の異同」についてその概要を理解している。
4週 「民法総則」の世界・その②:法律行為(民法総則の最難関?)と意思表示理論について理解しよう! 民法総則分野のうち、法律行為、意思表示、代理、時効の各制度についてその要点を理解している。
5週 「物権法」の世界・その①:物権の種類・分類、私権の客体「物」、そして、所有権とその内容を概観する! 所有権の内容およびその客体である「物」について理解し、所有権と他の物権との本質的差異について自分のことばで説明できる。
6週 「物権法」の世界・その②:物権変動(論) 不動産物権変動の本質を理解し、「公示の原則」と「公信の原則」の差異および関係について、自分のことばで説明できる。
7週 「担保物権法」の世界&「債権総論」の世界・その①:担保物権の女王「抵当権」の仕組みと債権の基本を押さえる。 抵当権(担保物権)の基礎的仕組みを理解し、債権の目的・効力についても理解している。
8週 中間試験 中間試験:※民法総則分野から担保物権分野までの基礎的な理解度を測定する予定。
4thQ
9週 「債権総論」の世界・その②:責任財産の保全 債権総論分野のうち、責任財産保全制度としての「債権者代位権」および「詐害行為取消権」の概略を理解している。
10週 「債権総論」の世界・その③&「債権各論」の世界・その①:債権債務関係の移転と債権の消滅&債権各論(契約法)入門 債権譲渡の制度枠組みおよび債権の発生原因のひとつである「契約」の成立・効力・解除について、その概要を理解している。
11週 「債権各論」の世界・その②:民法典が定める13種類の「典型契約」を概観する。 債権各論(特に契約各論)分野のうち、贈与・売買・賃貸借・請負・委任といった具体的契約の特色を自分のことばで説明できる。
12週 「債権各論」の世界・その③:法定債権関係概説 「契約」以外の債権の発生原因である「事務管理」、「不当利得」、および「不法行為」について、各制度の概要を理解している。
13週 「親族法」の世界:婚姻法および親子法概説
親族法分野のうち、婚姻・離婚の要件と効果および実親子関係(嫡出推定等)につき、判例を踏まえつつ基礎的事項を理解している。
14週 「相続法」の世界:法定相続・遺産分割・遺言・遺留分の基礎を学ぶ。 相続法分野のうち、法定相続や遺産分割の理論・実務上の問題点および遺言や遺留分に関する基本的な仕組みについて理解している。
15週 実際の最高裁判決(債権各論・契約法分野を予定)を読んでみよう!:この授業の“まとめ”に替えて。 この授業で得た民法の知識を駆使し、最(二小)判 昭和60年11月29日 民集39巻7号1719頁の判旨を分析することができる。
16週 期末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会公民的分野自己が主体的に参画していく社会について、基本的人権や民主主義などの基本原理を理解し、基礎的な政治・法・経済のしくみを説明できる。3
現代社会の考察現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。3
工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。3後14
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。3

評価割合

試験合計
総合評価割合00
基礎的能力00
専門的能力00
分野横断的能力00