法学(後期)

科目基礎情報

学校 北九州工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 法学(後期)
科目番号 0106 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 生産デザイン工学科(物質化学コース) 対象学年 4
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 池田真朗ほか(編集代表)『法学六法’21』(信山社、2020年)定価:1,100円(+税)
担当教員 白神 宏,福本 忍

到達目標

1.法の現代社会における意義・機能・役割等を主として民法学の基礎的・入門的学習を通じて理解することができる。
2.法律の条文の読み方、法令用語の基礎知識、および法解釈の基礎的手法について理解することができる。
3.民法の基礎知識・判例の読み方を修得して、具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で論理的に示すことができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1法の現代社会における意義・機能・役割等を主として民法学の基礎的・入門的学習を通じて充分に理解できている。法の現代社会における意義・機能・役割等を主として民法学の基礎的・入門的学習を通じて概ね理解できている。法の現代社会における意義・機能・役割等を主として民法学の基礎的・入門的学習を通じて理解できていない。
評価項目2法律の条文の読み方、法令用語の基礎知識、および法解釈の基礎的手法について充分に理解できている。法律の条文の読み方、法令用語の基礎知識、および法解釈の基礎的手法について概ね理解できている。法律の条文の読み方、法令用語の基礎知識、および法解釈の基礎的手法について理解できていない。
評価項目3民法の基礎知識・判例の読み方を修得して、具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で論理的に示すことが充分にできている。民法の基礎知識・判例の読み方を概ね修得し、具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で概ね論理的に示すことができている。民法の基礎知識・判例の読み方の修得が不充分であり、具体的紛争の解決方法・論拠を自分の言葉で論理的に示すことができていない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 法(法律)は、現代社会に生きる我々が日常生活を送るうえで、それに対して無関係・無関心でいることが不可能なものである。よって、その基礎的知識(法の概念・機能、法の種類・分類、法令用語の基礎、条文・判決の読み方、および“法的思考”)を具体的事案(身近な“もめごと”から民事の裁判沙汰になるような”紛争”まで)の検討を通じて獲得・涵養することがこの授業の最大の目的となる。
 特に、この授業では、一般市民同士の財産関係(契約関係)および家族関係を規律する【民法】を検討・学修対象として、実際の裁判例なども採り上げながら、「法的思考」に依拠して物事を考える(≒紛争解決方法を自分のことばで論理的・説得的に提示する)力を高めてもらう。
授業の進め方・方法:
 初学者には何かと近寄り難い“お堅い”イメージのある“法(学)”に関する基礎的事項について、できる限り身近で具体的な事案・ケースを素材に、その解決方法を考えながら解説していく(授業の後半数回は、実際に下された民事の最高裁判決〔判決理由〕を読んでいくことになる。)。よって、受講生諸君には、法的思考を常にフル回転させて学ぶ姿勢が求められる。議論にも積極的に参加してもらいたい。なお、質問・疑問があればその場で是非提起してほしい(授業が終わってからでもよいけれど……。)。受講生全員でその“気づき”を共有することが肝要である。また、法学は“条文を覚える学問”ではない。本講義で主に扱う「民法」を含め、すべて法律学は、具体的な紛争を想定し、条文中の抽象的な文言を具体的な“ことば”に置き換えて(=法解釈)、その事案をその解釈に“あてはめる”ことによって、より良い紛争解決方法を模索・提示する営みなのである。この“営み”のプロセスをレジュメを用いて解説する。最後に、本講義の受講の成果を中間レポートおよび期末試験で総合的に評価する。                                                     
注意点:
 授業中の“過度な”私語は厳禁・減点である。ただし、リラックスした雰囲気で講義を楽しんでもらいたい。その分、法的思考力をフル回転させること。常に自分の頭で考えて受講してもらいたい。高専生諸君にある?と思われる“法律(学)アレルギー”を少しでも払拭できれば幸いである。ちなみに、期末試験は持込み「すべて可(ただし、通信機器の持ち込は不可)」とする。“覚える”のではなく、未知の問題を自分の力で考えて解答する試験を行うので、この点ご注意あれ。なお、指定教科書(薄型六法)および筆記具・ノートは必携である。予・復習項目も指示するので、時間外学修にも積極的に取り組んでほしい。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 ガイダンスおよび法学入門(1):兄弟喧嘩を具体例に紛争解決方法をまずは自由に考えてみる。 日常生活において発生する身近なもめごと(=紛争)の解決方法を自分の“ことば”で論理的に説明できる。
2週 法学入門(2):兄弟喧嘩ケースの“最善”の解決方法についてグループで議論する。 日常生活で発生する身近な“もめごと”(=紛争)の解決方法には様々なヴァリエーションがあることを理解している。
3週 法学入門(3):兄弟喧嘩ケースの“最善”の解決方法を考えるために、「ルール論法」を使ってみる。 法的思考方法の一基礎である「ルール論法」について、具体的事案を想定しながらこれを使うことができる。
4週 法学入門(4):兄弟喧嘩ケースの様々な解決方法と「法の世界」との関係を知る。 日常生活でも発生する身近な“もめごと”(=紛争)の様々な解決方法と法が定める紛争解決方法との類似性を理解している。
5週 法学入門(5):兄弟喧嘩ケースの“まとめ”に替えて、法の分類・種類や条文の読み方の基礎を学ぶ。 ※中間レポート論題発表。 主に民法典の条文を素材に、条文の読み方、法令用語の基礎知識、および法解釈の基礎的手法を理解している。
6週 法学入門(6):民法の世界を知ろう!その①~民法の鳥観図~ 民事の紛争解決の基本的ルール(規範)である「民法」の世界観を知り、わが国の民法の基本構造を自分で図示することができる。
7週 法学入門(7):民法の世界を知ろう!その②~契約法の基礎の基礎を学ぶ~ 契約≒法律行為(完全に=ではない。)である理由を、法律効果、法律要件、法律事実および要件事実という語を用いて説明できる。
8週 中間レポート提出 ※中間試験は実施しない。授業を行う場合は法学入門(8)とし、ここまでの授業の補足を行う。 わが国の民法典が採用している法典編纂方法(=パンデクテン・システム)について、その特色を理解している。
4thQ
9週 民事判例研究入門(1):「三段論法」および「法的三段論法」とは? 判決理由を精読する(=“判例”を読み解く)法的スキルとしての「法的三段論法」について理解している。
10週 民事判例研究入門(2):「法的三段論法」の“7つの論理ステップ”を使いこなす!~判例の射程(距離)とは?~ 具体的な事案を想定しつつ「法的三段論法」を駆使し、いわゆる「判例の射程(距離)」について自分の意見を表明できる。
11週 民事判例研究入門(3):「法的三段論法」を駆使して実際の最高裁判決(判決理由)を読んでみよう!その①:事実関係を押える。 最(二小)判 昭和60年11月29日 民集39巻7号1719頁(実際の最高裁判決文・判決理由)の事実関係を理解している。
12週 民事判例研究入門(3):「法的三段論法」を駆使して実際の最高裁判決(判決理由)を読んでみよう!その②:1・2審の判断は? 最(二小)判 昭和60年11月29日 民集39巻7号1719頁の下級審(1・2審)における判断内容および本件の争点を理解している。
13週 民事判例研究入門(4):「法的三段論法」を駆使して実際の最高裁判決(判決理由)を読んでみよう!その③:判旨の分析(1) 最(二小)判 昭和60年11月29日 民集39巻7号1719頁の判決理由を「法的三段論法」を駆使して精読することができる。
14週 民事判例研究入門(5):「法的三段論法」を駆使して実際の最高裁判決(判決理由)を読んでみよう!その④:判旨の分析(2) 最(二小)判 昭和60年11月29日 民集39巻7号1719頁がその判旨の中で定立した規範(判例)の射程を分析することができる。
15週 グループ討論(予定)および本講義の総括 令和2年4月1日施行の改正民法典(現行民法典=改正債権法)の代表的論点につき、それらに潜在する問題点の概略を理解している。
16週 期末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力人文・社会科学社会公民的分野自己が主体的に参画していく社会について、基本的人権や民主主義などの基本原理を理解し、基礎的な政治・法・経済のしくみを説明できる。3
現代社会の考察現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。3
工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。3
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。3

評価割合

試験演習・レポート相互評価合計
総合評価割合80200100
基礎的能力80200100