有機化学BⅠ

科目基礎情報

学校 北九州工業高等専門学校 開講年度 令和06年度 (2024年度)
授業科目 有機化学BⅠ
科目番号 0145 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 生産デザイン工学科(物質化学コース) 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 「マクマリー有機化学概説(第7版)」John McMurry著、東京化学同人/ 「『有機化学』ワークブック」奥山 格著、丸善出版
担当教員 大川原 徹

到達目標

1. 代表的な官能基を有する化合物について、IUPACの命名法に基づき名前と構造の相互変換ができる 。
2. 共鳴構造について説明ができる。
3. 芳香族炭化水素の性質および代表的な反応を説明できる。
4. 芳香族求電子置換反応の反応機構を説明でき、生成物が予測できる。
5. 鏡像異性体について説明でき、化合物の立体化学に関してその表記法により正しく表示できる。
6. ハロゲン化アルキルの合成反応やGrignard試薬について説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
IUPAC命名法IUPACの命名法に基づき、授業で学習していない有機化合物の名前と構造の相互変換ができる。IUPACの命名法に基づき、学習した有機化合物の名前と構造の相互変換ができる。有機化合物の名前と構造の相互変換ができない。
共鳴種々の構造の分子の共鳴式(共鳴形)を書くことができ、共鳴の意味を踏まえて説明できる。基礎的な構造の分子について共鳴式(共鳴形)を書くことができる。基礎的な構造の分子について共鳴式(共鳴形)が書けない。
芳香族性芳香族炭化水素の芳香族性を説明でき、代表的反応の試薬やその生成物を正しく書くことができる。芳香族炭化水素について芳香族性を示す化合物の例を挙げることができ、代表的反応について簡単な基質からの生成物を予測できる。芳香族化合物の芳香族性について説明できず、代表的反応の生成物を予測できない。
芳香族化合物が関与する反応芳香族求電子置換反応の反応機構を記述、説明でき、それを基に種々の生成物の予測に応用できる。芳香族求電子置換反応の反応機構を記述でき、それを基に簡単な生成物を予測できる。芳香族求電子置換反応の反応機構を記述できず、簡単な生成物も予測できない。
立体化学鏡像異性体の構造的、物性的特徴について説明でき、化合物の立体化学に関してその表記法により正しく表示できる。鏡像異性体の構造的要件を説明でき、化合物の立体化学に関してその表記法により正しく表示できる。鏡像異性体について説明できず、化合物の立体化学に関してその表記法を使うことができない。
ハロゲン化アルキルが関与する反応ハロゲン化アルキルの合成に関して、その生成物の予測に加えて原料の推測もでき、Grignard試薬の構造や性質、簡単な反応について説明できる。ハロゲン化アルキルの合成に関して、その生成物の予測ができ、Grignard試薬の構造について説明できる。ハロゲン化アルキルの合成に関して、その生成物の予測ができず、Grignard試薬の構造について説明できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B① 専門分野における工学の基礎を理解できる。
学習・教育到達度目標 B② 自主的・継続的な学習を通じて、専門工学の基礎科目に関する問題を解くことができる。

教育方法等

概要:
プラスチック、医薬・農薬、香料、燃料等として利用され、また生命科学の現象を理解するための基礎となる有機化合物の構造とその性質・反応を、「有機化学AⅠ・AⅡ」に引き続いて系統的に学習する。原子軌道や結合の概念、有機化合物の基本構造と IUPAC 命名法、反応や反応機構の記述の仕方の知識を基にして、芳香族炭化水素やハロゲン化アルキルの構造・性質およびその代表反応について、誘起効果と共鳴効果の考え方を基に講義する。また、分子の立体化学に関する基礎的知識も学習する。
授業の進め方・方法:
内容の理解を深めるため授業資料は全て事前にWebClassに掲載するので、授業開始の時点で学生は基本的な理論について理解した状態で授業に臨むこと。理解度を自己評価するために、授業では演習とその解説を中心に講義する。また、中間試験、定期試験1週間前に30分程度の小テストを実施する。WebClass上に講義資料、自習問題や演習解答等を置くので自学自習の助けにして欲しい。
注意点:
基本的に放課後はいつでも質問を受け付けます。授業中の質問も歓迎します。講義資料と演習問題はWebClassまたはメールで配布するので、常に使用できるように準備をしておいてください。成績算出方法は以下の通りです。中間試験総合点=(中間試験素点×0.6)+(中間試験前小テスト×0.2)+(中間試験前演習(の平均点)×0.2)、中間以降の総合点=(定期試験素点×0.6)+(定期試験前小テスト×0.2)+(定期試験前演習(の平均点)×0.2))、最終総合点=(中間試験総合点+中間以降の総合点)/2

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
有機化合物の構造
講義の内容と到達目標を理解できる。
有機化学の構造式について理解できる。
2週 芳香族化合物(1)
ベンゼンの共鳴と芳香族化合物の命名法
ベンゼン環の特異な性質と共鳴による解釈について説明できる。芳香族化合物について、IUPAC命名法に従って構造式と名称の相互変換ができる。ベンゼンの特異な性質と共鳴について説明できる。
3週 芳香族化合物(2)
求電子置換反応—種類と生成物
芳香族求電子置換反応の種類とその生成物および反応機構を説明できる。
4週 芳香族化合物(3)
共鳴形の書き方
種々の分子やイオンについて、適切な共鳴形を書くことができる。
5週 芳香族化合物(4)
求電子置換反応—置換基効果
求電子置換反応の配向性と反応性に対する置換基効果を理解し、生成物が予測できる。
6週 芳香族化合物(5)
求電子置換反応—置換基効果と有機合成への応用
置換基効果を考慮して、目的の化合物を合成する経路を考えることができる。
7週 芳香族化合物(6)
芳香族性
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。
8週 中間試験
2ndQ
9週 中間試験内容についての解説
有機分子の立体化学に関する予備学習
中間試験の内容を振り返り、より深く理解できる。
10週 立体化学(1)
鏡像異性体、キラリティー、立体中心
分子のキラリティーと鏡像異性体について説明できる。
11週 立体化学(2)
立体異性体の旋光性、絶対配置の表示法
キラル化合物の旋光性の特徴を説明でき、RS表記法により立体化学を正しく表示できる。
12週 立体化学(3)
ジアステレオマー、光学分割
複数の立体中心を持つ化合物におけるジアステレオマーの定義を説明でき、それを利用した光学分割法を理解できる。
13週 ハロゲン化アルキル(1)
存在と利用、命名法、構造と性質
ハロゲン化アルキルについてIUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。
14週 ハロゲン化アルキル(2)
合成とGrignard試薬
適切な原料からのハロゲン化アルキルを合成法を考えることができる。Grignard試薬の特徴を説明できる。
15週 ハロゲン化アルキル(3)
アルコールの合成
ハロゲン化アルキルを原料としたアルコールの合成法について説明できる。
16週 定期試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。4前1
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4前1,前2,前13
σ結合とπ結合について説明できる。4前1,前2
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4前1,前2
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。4前1,前2,前4,前13
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4前1,前2
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。4前4
共鳴構造について説明できる。4前2,前4,前5
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。4前5,前6
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。4前7
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。4前2,前9,前10,前11,前12
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。4前10,前12
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。4前11,前12
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4前2,前13
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4前2,前3,前14
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4前3,前14
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4前6,前14
反応機構に基づき、生成物が予測できる。4前6

評価割合

試験小テスト演習等合計
総合評価割合602020100
専門的能力602020100