電気回路学II

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 電気回路学II
科目番号 TE1302 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 情報通信エレクトロニクス工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 、基礎電気回路ノートⅡ、基礎電気回路ノートⅢ
担当教員 大石 信弘

到達目標

①キルヒホッフの法則を用いて回路方程式を立てる方法について学び、回路を解くことができる。さらに、種々の定理を学び、回路に適用することで回路を解くことができる。②相互インダクタンスを含む回路網の取り扱いについて理解し、交流回路計算に活用できる。③四端子回路網について理解し、四端子回路のパラメータを用いて回路の物理量について計算ができる。④簡単な回路の過渡現象を微分方程式を用いて表すことができ、解を求めることができる。⑤三相交流について理解し、対称平衡三相交流の相電圧、線間電圧、相電流、線電流、三相交流電力が計算できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
回路方程式と諸定理回路方程式を立て回路を解くことができる。また、種々の定理を回路に適用し回路を解くことができる。回路方程式の立て方について理解している。また、種々の定理がどのようなものか理解している。回路方程式を立てることができない。また、回路の諸定理が理解できない。
相互誘導回路相互誘導のあるコイルについて成り立つ基礎式から、変成器や理想変成器の等価回路を導いて説明することができ、さらにそれらの等価回路を用いて、結合回路を含む各種交流回路計算ができる。相互誘導のあるコイルについて成り立つ基礎式やT形等価回路を用いて、変成器の入力インピーダンスなどについて、交流回路計算ができる。変成器を用いた回路の交流計算ができない。
四端子回路網四端子回路網について理解し、四端子回路のパラメータを用いて、入出力インピーダンスや電圧増幅率の計算ができる。四端子回路の各パラメータを求めることができる。四端子回路網について理解できない。
過渡現象RL直列、RC直列、RLC直列回路の過渡現象を微分方程式で表すことができ、解を求めることができる。RL直列、RC直列、RLC直列回路の過渡現象を微分方程式で表現することができる。過渡現象について理解できない。
三相交流対称平衡三相交流の相電圧、線間電圧、相電流、線電流を求めることができる。また、三相交流電力、回転磁界について理解し、それらを説明できる。対称平衡三相交流を理解し、相電圧、線間電圧、相電流、線電流を説明できる。三相交流について理解できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
電気回路学Ⅰでの学習内容を踏まえて、さらに、一般線形回路網ならびにその解析に特有の概念についての理解を深めることを目指す。あわせて、回路解析に必要な各種手法の定着を図る。
授業の進め方・方法:
①複素数を用いた表記方法について、その成り立ちや適用範囲について、複数の視点から説明する。②回路の諸定理やキルヒホッフの法則を用いて回路を簡単に、かつ確実に解く方法について説明する。③相互インダクタンスを含む回路網の取り扱いについて説明する。④四端子回路網を取り上げ、回路網解析に必要な基本的な知識を習得する。⑤過渡現象を取り上げ、微分方程式での記述法について説明する。⑥応用上重要な三相交流について、最も基本的な対称平衡三相交流を取り上げ、相電圧、線間電圧、相電流、線電流、三相交流電力の関係について説明する。
注意点:
規定授業時間数は60時間である。評価は、中間試験・期末試験等の筆記試験および課題・レポートにて評価する。年間総合評価が60点に満たない場合は、再提出したレポートや再評価試験にて評価する。再評価でも60点に満たない場合は単位を認定しない。
この科目は専門科目の基礎となる科目であるとともに、各種資格試験や大学編入試験の対象となる科目でもあるため、取り組みには十分な時間をかける必要がある。特に、年度初めの学習においては、事前に2年次での電気回路学Ⅰの復習を十分に行ったうえでの受講が必要である。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
到達目標、評価法、学習方法・進め方などを理解する。
2週 直流回路の復習 定電圧源と定電流源の等価変換を理解して計算できる。直流回路において、回路方程式を立ててこの方程式を解くことができる。
3週 記号法の復習 RLC直列共振回路を取り上げ、記号法を用いて共振周波数および回路のQを求めることができる。
4週 回路方程式と諸定理
1)グラフ、カットセット、ループセット
回路を解くうえで、必要かつ十分な方程式を得るための基礎となるグラフ理論について理解できる。与えられた回路のグラフをもとに、基本カットセット、基本ループセットを示すことができる。
5週 回路方程式と諸定理
2)枝電流法
与えられた回路にキルヒホッフの電流則と電圧則を適用し、回路を解くことができる。
6週 回路方程式と諸定理
3)ループ電流法
与えられた回路をグラフで表し、基本ループセットから閉路方程式を立てることができる。その方程式を解きループ電流を求め、枝電流に直すことができる。
7週 回路方程式と諸定理
4)接点電位法
与えられた回路をグラフで表し、基本カットセットから接点方程式を立てることができる。その方程式を解き各接点の電位を求め、枝電流に直すことができる。
8週 回路方程式と諸定理
5)テブナンの定理とノートンの定理
テブナンの定理やノートンの定理などの諸定理を回路に適用して、回路を解くことができる。
2ndQ
9週 問題演習 問題を解くことにより、回路方程式と諸定理についての理解を深め、実践力を高める。
10週 前期中間評価
11週 相互誘導回路
1)和動接続、差動接続、相互インダクタンスの符号と極性記号
相互インダクタンスの和動接続、差動接続について説明でき、極性記号によって相互インダクタンスによる電圧降下の向きを決めることができる。
12週 相互誘導回路
2)T型等価回路
T形等価回路について説明でき、この等価回路を用いて相互誘導回路の回路計算ができる。
13週 相互誘導回路
3)理想変成器
理想変成器の等価回路を、密結合変成器からの等価回路変換により導くことができる。
14週 問題演習 問題を解くことにより、相互誘導回路についての理解を深め、実践力を高める。
15週 前期定期試験
16週 答案返却 問題解答を復習し、さらに、必要な補足説明、関連事項について講義を受ける。
後期
3rdQ
1週 四端子回路網
1)Z行列、Y行列、F行列
四端子回路網について理解し、簡単な回路のZ行列、Y行列、F行列を求めることができる。
2週 四端子回路網
2)直列接続、並列接続、縦続接続
Z行列の直列接続、Y行列の並列接続、F行列の縦続接続について理解し、回路網をこれらの組み合わせとして捉えて計算ができる。
3週 四端子回路網
3)Z行列、Y行列、F行列の相互変換と相反性、対称性
Z行列、Y行列、F行列を相互に変換することができる。また、四端子回路の相反性と対称性について説明できる。
4週 四端子回路網
4)応用例
F行列の応用例として、入力インピーダンス、出力インピーダンス、電圧増幅率をF行列のパラメータを用いて求めることができる。
5週 問題演習 問題を解くことにより、四端子回路網についての理解を深め、実践力を高める。
6週 過渡現象
1)線形常微分方程式の一般解
電気回路の過渡現象が微分方程式を用いて記述できることが理解できる。また、その一般解が定常解と過渡解の和で表せることが理解できる。
7週 過渡現象
2)RL直列回路、RC直列回路の過渡現象
RL直列回路およびRC直列回路の過渡現象を微分方程式を用いて記述できる。またその解を求めることができる。さらに、時定数を求めることができる。
8週 過渡現象
3)RLC直列回路の過渡現象
RLC直列回路の過渡現象を微分方程式を用いて記述できる。素子の値によって、解の振る舞いが場合分けできることを理解できる。
4thQ
9週 問題演習 問題を解くことにより、過渡現象についての理解を深め、実践力を高める。
10週 三相交流
1)対称三相交流のY接続、Δ接続
対称三相交流について理解し、その接続法であるY接続、Δ接続をした時の相電圧、線間電圧、相電流、線電流を求めることができる。
11週 三相交流
2)平衡三相交流のYーY接続、ΔーΔ接続、Y-Δ接続、ΔーY接続
平衡三相交流について理解し、それぞれの接続の場合での相電圧、線間電圧、相電流、線電流を求めることができる。
12週 三相交流
3)三相交流電力
平衡三相交流の三相交流電力について理解し、三相交流電力を求めることができる。
13週 三相交流
4)回転磁界
対称三相交流の回転磁界について説明できる。
14週 問題演習 問題を解くことにより、三相交流についての理解を深め、実践力を高める。
15週 後期定期試験
16週 答案返却 問題解答と必要な補足説明を行い、次年度に向けた学習についても説明する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路電力量と電力を説明し、これらを計算できる。4前10,前11,後4
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。4
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。4
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。4
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。4
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。4
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。4
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。4
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。4
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。4
相互誘導を説明し、相互誘導回路の計算ができる。4後3,後4
理想変成器を説明できる。4後3,後4
交流電力と力率を説明し、これらを計算できる。4
RL直列回路やRC直列回路等の単エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。4
RLC直列回路等の複エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。2
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。4後5
網目電流法を用いて回路の計算ができる。4後5
節点電位法を用いて回路の計算ができる。4後5
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。4後5,後6
電力三相交流における電圧・電流(相電圧、線間電圧、線電流)を説明できる。4
電源および負荷のΔ-Y、Y-Δ変換ができる。4
対称三相回路の電圧・電流・電力の計算ができる。4
直流機の原理と構造を説明できる。4
誘導機の原理と構造を説明できる。4
同期機の原理と構造を説明できる。4
変圧器の原理、構造、特性を説明でき、その等価回路を説明できる。4後1,後2
半導体電力変換装置の原理と働きについて説明できる。4
電力システムの構成およびその構成要素について説明できる。4
交流および直流送配電方式について、それぞれの特徴を説明できる。4

評価割合

試験課題・レポート合計
総合評価割合8020100
基礎的能力501060
専門的能力20525
分野横断的能力10515